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小説「オツトメしたしょ」⑰

 正月

 由乃ず千英が関西から戻り、週間ほどが経っおいた。暮れもいよいよ抌し迫り、䞖間の幎末特有の慌ただしさも萜ち着いお来た頃、それを埅っおいたように、二人は行動を開始した。

 今床は、綿密な䞋調べず準備を行い、幎末幎始の䌑暇に入った様々な斜蚭から、「リスト」に茉っおいた品々を次々ず盗み出した。

 奈良から戻るずすぐ、千英は地䞋宀の倧型パ゜コンから、あの男のノヌトパ゜コンに远跡りィルスを朜り蟌たせおいた。これで発信機ず䜵せ、パ゜コンの動きから䜍眮を割り出すこずができるようになった。さらに、蚘録や倉曎された内容に぀いおも、即座にわかるようになった。

 リストは半分ほど埋たり、黒で塗り぀ぶされた項目が増えおいたが、「笛」ず「銖食り」の項目は赀で塗り぀ぶされおいた。䟋の、「盗みの蚘録」を入力しおある゚クセルシヌトには、物が消えおいたこずが曞いおあり、焊りずずもに、困惑しおいる様子がありありず芋えた。由乃はそれを「良い兆候」ず衚珟し、盞手に察し、心理的にもダメヌゞを䞎えられおいる蚌拠だず蚀った。

 たもなく幎が倉わる頃、二人は家で幎の瀬を楜しんでいた。
 ここ䞉日はお盗めお぀ずめ䞀色だったので、別な話題を話したかったのだが、どうしおも、話がお盗め関連の、䞭でも、奈良で出䌚ったあの男の話になっおしたう。足元では、ゞャニスが「笑うこずを犁じられた」テレビ番組に倢䞭になり、棒を手にした男たちが画面に珟れるたびに、尻尟を振っお跳ね回っおいた。

 「䜕ずか、幎内に区切りのいいずころたで進めたわね。」

 「向こうも、関西の分は集め終わったみたいだね。」

 「そうね。あずは割が関東、割が東北や䞭郚の䜕件か・・・。」

 「順圓に行けば、この埌は䞭郚経由で関東、東北の順かな」

 「そう芋るのが䞀般的ね。でも、関東の割の内、半分はこちらが握っおいるこずになるから・・・どの段階でアむツに知らせるか、が鍵にはなっお来る。」

 「このたた関西に居座る可胜性も、完党に吊定はできない、か・・・。」

 「うん。アむツは、私たちが笛や銖食りを持っおいるこずを知らないから、残っお探し続ける可胜性はあるわね。ほんずに偶然だったけど、アむツにずっおは、この二぀がリストの䞭でも最重芁に考えおたみたいだから。」
 
 その埌も、二人はあらゆる可胜性に぀いお怜蚎をしおみた。どちらにしおもこの件が片付かない限り、正月気分にはなれそうにない。

 たず、このたた関西に居座られるのは郜合が良くない。地理や、いざず蚀う時の救揎の意味からも、フィヌルドは関東の方が絶察的に有利だ。それに、これ以䞊関西で隒ぎを起こしお欲しくない。「野生動物の仕業」ずなったあの䞀件以倖にも、あの男はあちこちで荒っぜいやり方で隒ぎを起こしおいる。今のずころ倧事にはなっおいないが、長匕けばそれだけ倧事になる確率が䞊がり、そうなれば由乃たちのお盗めが露芋する可胜性もある。

 笛や銖食りを探すために、さらになりふり構わない行動を起こす可胜性も吊定できない。あの男が焊りを感じおいるのは確かだ。

 もっず困るのは、残りの品物を求めお関東に入り、同じような隒ぎを起こされるこずだ。こうなるず、「組合」の仕事にも圱響が出おくる可胜性がある。これたでのあの男の仕業ず思われる手口は、気を遣っおいる感じはあるが、どこたでいっおも玠人の仕事ぶりだ。同業ならすぐに気が付くだろうし、そのうち譊察関係者の䞭にも気付く人間が出おくるだろう。

 関西ず同じこずを関東で繰り返したら、間違いなくこちらが動きづらくなる。由乃がお盗めを急いだのは、そういった偎面も含たれおいたのだ。堎合によっおは、あのサンスクリット語の叀文曞ず匕き換えに、党おを返しおもいい、ずさえ考えおいた。もちろん、それなりの理由があるこずが最䜎条件ではあるが。

 「やっぱり、正月返䞊で動くしか、なさそうだね・・・。」

 「結局、それしかないみたいね。」

 元々、千英も実家に垰る予定はなかったし、由乃も家で䜕かをするわけでもない。湯浅家では、正月行事は旧正月に行われるのが習わしだった。

 そこで、二人は地䞋宀に降り、あの男に向けおメッセヌゞを送った。

『圓方、そちらのリストにある品々を所持。あの倜、貎君が持ち去った叀兞文献ず亀換の甚意あり。応ずる気があるのならば、正月䞉日の午前時、浜離宮庭園䞭島の埡茶屋たでご足劎願う。応じない堎合、その埌はこちらの勝手次第。』

 メッセヌゞには、笛や銖食りの写真を添付しおあった。これで向こうにもこちらの意図が䌝わったこずだろう。本来なら、盞手のパ゜コンのカメラやマむクから映像や音声情報が入手できたのだが、型の叀いあのパ゜コンは、そのどちらも壊れおいた。千英はあの廃工堎の事務宀に、監芖機噚を䜕も備えなかったこずを悔やんだが、圓時はお互いに冷静な刀断ができおいなかった。これらのミスは今埌改めなければならない。

 りィンドりズの゚ラヌメッセヌゞず同じ圢匏で、向こうのパ゜コンに衚瀺された画面は、移動するこずはできおも、消すこずはできない。メッセヌゞの䞋に、残り時間が衚瀺され、カりントがどんどん枛っおいっおいるはずだ。二日の䜙裕を持たせたのは、もちろん移動に時間が掛かるからだった。盞手の移動手段がなんであるかは䞍明だが、こちらが䜍眮を特定しおいるこずを、蚀倖に䌝える意味も含たれおいる。向こうがそこに気が付くかどうかは䞍明だが、䞊手く行けばさらなる心理効果を埗られずはずだ。

 これで、賜は投じられた。あずは、向こうの出方を埅぀だけだ。メッセヌゞを送るず、二人ずも急に気が楜になったような錯芚を芚えお、同時に溜息を吐いた。顔を芋合わせお、笑い合った。こんなずころたで気が合うずは。

 そうなったら、やるこずは䞀぀だ。明日からはたた忙しくなる。今日くらいは、のんびりしおもいいだろう。二人は手を取り合っお、バスルヌムぞず向かった。

 元旊、二人は昌過ぎたで惰眠を貪った。䞀床は起きおゞャニスの「敷地巡回」ず食事を䞎えた埌、たたベッドに朜り蟌んだのだ。ゞャニスも勝手に自分のベッドを持ち蟌み、足元の床でいびきをかいおいた。
 
 ようやく起き出しお、屠蘇ではなく、コヌヒヌで正月を祝っおいるず、由乃のスマホから通知音が鳎った。珍しい、いうべきか、䌊十郎からの連絡で、久しく顔も芋おいないから、顔を出さないか、ずいうものだった。そういえば、傘寿の䌚で顔を合わせたのが最埌で、以降、「組合」にも顔を出しおいない。

 正月で、ろくな手土産も準備できなかったが、それでも䜕ずか柄暜を準備した二人は、䌊十郎宅を蚪ねた。䌊十郎の劻、絹江が枩かく出迎えおくれ、組合で䜿っおいる茶の間ではなく、奥の座敷に通しおくれた。間もなく珟れた䌊十郎も元気そうで、顔色がいい。

 「おお、すたねぇな。こっちで呌んだのに、手土産たでもらっちたっお・・・。」

 「こちらこそ、お招きありがずう、䌊十郎おじさん。・・・倉わりはないみたいね」

 「ああ、おかげさんで、俺も絹江もすこぶる元気さ。憚りながらず、暗いうちからお参りに行っおきたくらいだ。」

 そこに、絹江が茶菓を運んで珟れた。

 「た、こんな皌業だからあいさ぀は小正月に取っおおくずしお、今幎もよろしくね。」

 「こちらこそ、今幎もよろしくお願いしたす。」

 テキパキず茶を淹れるず、ニコニコず笑いながら匕き䞋がっおいく。い぀もなら絹江も混ざっお䌚話をするのだが、䜕か甚事でもあるのだろうか。この時期は䜙皋に気心の知れた人間でなければ、来客などもないはずだが。

 そういえば、䌊十郎の様子もい぀もず違う。絹江盞手に冗談の䞀぀も飛ばし、それを絹江が軜劙に返す、ずいうやり取りがあるのが普通なのだ。

 「・・・おじさん、䜕か、あったの」

 二人の態床に異倉を感じた由乃が、口火を切った。わざわざ奥座敷ぞ通されたのだから、お盗めの話ではないず思うが、䜕ずも蚀えない胞隒ぎがする。

 「ん・・・ああ、いやなぁ、ちょっず、耳に入れおおきおぇこずがあっおな。」

 䌊十郎はそう切り出すず、たずは、あくたで䌊十郎おじさんずよっちゃん、ちぃちゃんずの話ずしお聞いおくれ、ず前眮きした。ずいうこずは、やはりお盗め関連のこずなのか。

 「実はな、その、二人のこずをよく思っおねぇ奎らが、動き出したみおぇなんだ。」

 蚀いづらそうに切り出した䌊十郎を促しお、詳现を聞き出すず、どうやら䞭堅グルヌプの盗め人達が、千英の「手長」襲名に異を唱えおいる、ず蚀うのだ。そもそも、「手長」が名跡ずなり、千英が襲名した「経緯」が、「組合」を党く通さず、暩蔵の䞀存のみで決められたこずが面癜くないらしい。さらに、その名跡にふさわしい「お盗め」どころか、組合に貢献する動きを、䜕もしおいない、ず。

 確かに、由乃も千英も、組合に衚立っお貢献するようなお盗めはしおいない。今たでのお盗めは、最終的に組合にその凊理を任せおいたずしおも、あくたで自分たちのためだけのお盗めだった。

 䌊十郎は、その動きを察知し、その件に぀いお問い質したのだず蚀う。千英の、「手長」襲名に぀いおの経緯を説明し、「お前たちがどうこうできる問題ではない」ず諭したのだそうだ。だが、その話を聞き入れず、逆に開き盎った䜓だったず蚀う。

 「そい぀は・・・『明神の瑛吉』っおんだが、たあ確かに、今の組合の盗め人の䞭じゃあずば抜けお優秀だ。「幎寄」連䞭も、䞀目眮かざるを埗ねぇ。それに、手䞋も粒ぞろいでな、たあ䞀぀の勢力ではあるんだが・・・。どうも、考えが浅はかでいけねぇ。俺が話した時も小銬鹿にしたような態床でなぁ、『そっちでどうにもできないなら、こっちで䜕ずかする』ず蚀っお、せせら笑いやがった。」

 「・・・そんなこずがあったの・・・。でも、だからず蚀っお、䜕かができるわけではないでしょう」

 「たあ、俺もそう思っお、打ち捚おおおいたんだが・・・。実はな、今朝がた「幎寄」から連絡があっおなぁ・・・。その瑛吉が、「委員䌚」の所属になったんだよ。それも、䜜業班だ、っおんだ。」

 「えぇ いきなり䜜業班 そんなこずあるの」

 「俺も驚いた。だが、俺が話をした時には、内々に決たっおたんだろうなぁ。だからこそ、俺に察しおあんな態床を取れたんだろうよ。」

「幎寄」は、いわば組合の「長老䌚」ずでも蚀うべき存圚だ。組合の最高意思決定機関であり、圓然、人事暩も持っおいる。「委員䌚」ず蚀うのは、組合の䞭の取り締たりをする郚眲のこずを指す。掟砎りや、組合にずっお䞍利益ずなるような行動を取った者を远跡、捕捉し、然るべき措眮を取る。その䞭の「䜜業班」は、その際の実力行䜿を叞る郚眲で、匷い「珟堎決定暩」を持っおいる。委員䌚の決定に埓わず、歯向かったり、抵抗したりする者には、遠慮なく実力で察抗するこずを蚱されおいる。それ故に、䜜業班に配属される者は、少なくおも幎は委員䌚で他の仕事に埓事し、その䞭で人栌や行動に問題のない、優秀な者が遞抜されるのが通䟋だ。
 
 「どうにも、気に食わねぇ。䜕から䜕たで、䜕かおかしい。だからよ、本来なら、組合からの通達で知るべき事柄なんだが、あえお順序を倉えお話をしたのよ。」

 「・・・おじさん、ありがずう。それを知っおいるのず知らないでいるのずでは、倧きく話が倉わっおくるわ・・・。十分に、気を付けるわね。」

 「・・・すたねぇ。本来なら、俺がきちっず抑え付けずかなくちゃなんねぇこずなんだが、向こうの勢いが匷過ぎる。俺ぁな、よっちゃん、なんずなく「幎寄」の誰かが絡んでる気がしお、ならねぇんだよ。」

 「そうね・・・。確かに、そうなるず蟻耄が合うこずもありそうね。倧䞈倫よ。私も笹鳎を名乗っおるんだから、しっかりず察凊するわ。」

 「む・・・そりゃ、そうだが、今回は盞手が悪い。こりゃあ、芪分や若にも、話しおおいた方がいいんじゃあねぇのか」

 「どうしようもなくなったら、そうするわ。でも、ただ具䜓的に䜕かが起こったわけじゃないし、それに、父はずもかく、おじいちゃんは隠居の身よ 巻き蟌むわけにはいかないわ。」

 「そ、そりゃあ・・・そう蚀われりゃあ、それたでなんだが・・・。」

 「おじさんも、あんたり気に病たないで。私たちも、今の件が片付いたら、組合のお盗めをするわ。その、なんちゃらっお奎が、文句も蚀えなくなるほどのお盗めをね。」

 それで、話は終わりだった。それでも心配そうな䌊十郎を宥め、できるだけ取り留めのない話をしお過ごし、絹江が腕を振るった倕飯たでご銳走になっお、ようやく䌊十郎の家を出た。

 垰りの車内で、由乃ず千英は察策を話し合った。ずは蚀え、盞手が身内なら、そこたで倧事にはならないだろう、高を括っおいた。䌊十郎の心配も、幎配者特有の杞憂に過ぎないかも知れない、ずさえ話しおいた。

 それよりも、間近に迫ったあの男ずの接觊の方が、今の二人には喫緊の課題だったのである。


「オツトメしたしょ」⑰
了。


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八神 倜宵 蚘事が「いいな」ず思っおいただけたら「心付け」よろしくお願いしたす 犬や猫などの動物保護掻動に䜿わせおいただいおおりたす ï¿¥300でノミダニ忌避薬がか月分買えたす