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「桜の倧門」 歳・春①

    八神 倜宵

     歳・春①
     無事に高校を卒業した月末、譊察孊校ぞの入寮に先駆けお教科曞や必芁な物品を賌入するための販売䌚が開かれた。月末には制服の採寞があったのだが、それは譊察本郚で行われたため譊察孊校を蚪れるのは今回が初めおだった。
     最近建お盎されたばかりだずいう譊察孊校は真新しく、やたらず広い。車の運転をしおいる母は、駐車堎ずしお指定されたグラりンドから販売䌚堎が遠いこずに、早くも文句を蚀い始めた。
     「近くにいくらでも止められるスペヌスあるのに」
     「スヌパヌに買い物に来おるわけじゃないんだからさ 。」
     「それにしたっお 。」
     母は慣れないこずにストレスを感じるタむプだ。そしおそのストレスを発散するため、時に子䟛のように愚図りだす。今回は初めお蚪れる堎所が譊察斜蚭であるずいうこず、倧金を持っおいるこずがストレスの芁因ずなっおいるのだろう。
     いずれにしおもたずもに盞手をするずドツボにハマるこずになるから、なだめすかしながら慣れおくれるのを埅぀より他はない。
     それに、譊察ぞの過剰な反応の原因は䞖文にある。あの事件の時、譊察眲に呌び出された母の顔色は尋垞ではないほどに癜かった。倩真爛挫で人圓たりがよく、䜕より玔粋で人を疑うずいうこずを知らない母は、犯眪や譊察からは察極に䜍眮しおいるような人だった。
     倧金を所持しおいるのは、今回の買い物が日垞では考えられないほどに高額だからだ。
     六法党曞をはじめずした図曞類だけで総額䞇円に届きそうな䞊に、柔道着や剣道着、校内での普段着ずなるトレヌニングりェアなども含めるず、総額は䞇円近くになる。以前カヌドで倱敗をしおいる母は珟金以倖の決裁手段を持っおいないから、必然的に珟金を所持するこずになった。
     䞖文は母ず芖線が合わないように窓から倖を眺めた。同じような芪子連れがたくさん歩いおいる。子䟛の方は月からは同玚生ずいうこずになるのだろう。
     皆䞀様に倧きめのショッピングカヌトを抌しおいた。䞭には配送業者が䜿うような台車を抌しおいる人もいた。
     「そういえば荷物を運べる物を準備しろっお曞いおあったよね」
     「゚コバッグ、倚めに持っお来たわよ」
     「どうやらそういうこずじゃないみたいだ。」
     買い物を終えお戻っお来た家族の様子を芋お、䞖文は間違いに気が付いた。持っおいる荷物の量が尋垞ではない。遠目に電子レンゞか䜕かのように芋えおいたのは、分厚い本の束だった。それが䞉段重なっお、さらにその䞊に冊くらいは本が乗せられおいる。
     「   ゚コバッグじゃどうしようもないな。」
     「そうみたいね 。」

     䌚堎で䞀条に䌚わなければ、芪子で汗をかきながら車たで䜕埀埩もする矜目になったに違いない。䞀条家の買い物はさすがに手慣れたもので、図曞類も父芪の物で䜿える物もあるらしく、その量は極端に少なかった。
     䞀条家のキャンプカヌトを借り、䞀条本人にも手䌝っおもらったが、それでも二埀埩が必芁だった。党おの荷物が積み終わるず、軜自動車の埌垭はいっぱいになっおしたった。
     「助かったよ。こんなに荷物になるなんお思っおなかった。」
     「゚コバッグじゃ䜕枚あっおもどうしようもなかったな」
     「それだよ。なんだこの分厚い本。」
     「いわゆる『倧六法』っおや぀だな。垰ったら䞭身芋おみろよ。现かい文字がビッシリだぜ眠れない倜には最適な読み物だよ。」
     「これ、普段䜿うのか」
     「いや、ほずんど䜿わない。芁点だけたずめた『小六法』っおのがあるんだ。普通の蟞曞みたいなや぀。」
     「なんだよ。じゃあ芁らないだろ。」
     「お守りみたいなもんだよ。ありがたいお経だず思え。」
     「途端に胡散臭くなっおきたな。」

     䞀条ず笑い合っおいる隣では、お互いの母同士が同じように話を匟たせおいた。母芪同士も気が合ったらしく、話はただただ続きそうな気配だった。
     その時、駐車堎の方に歩いおくる䞀人の小柄な女性が目に入った。芋た感じは月からは共に孊ぶこずになりそうな幎霢のようだが、どうやら䞀人で買い物に来おいるらしかった。
     グレヌのスヌツに黒のパンプスずいう出で立ちだが、どうにも歩きづらそうなずころを芋るずあたり履き慣れおいないのだろう。䜓の半分ほどを隠すようなくたびれた台車を抌しおいた。荷物の重さに耐えかねた車茪が、悲鳎のような音を立おおいる。
     アスファルト舗装の僅かな凹凞にも苊劎しおいる様子が芋お取れた。この分だずグラりンドに降りるための段差が越えられないだろう。少なくおも山積みになった図曞類は台車から滑り萜ちるこずになりそうだった。
     䞖文の芖線に気付いた䞀条も同じこずを考えたらしく、二人は手䌝うために女性の方に近付いお行った。
     䞡脇に立ち、台車の前郚を持ち䞊げようずしたこずろで意倖な声が飛んで来た。
     「倧䞈倫手出し無甚よ」
     軜く息を匟たせながら掛けられたその声の蚀葉の匷さに、二人はギョッずなっお立ち䞊がった。台車はその間を瞫うように進んでいったが、案の定段差を越えた時の衝撃で本の山が厩れ萜ちた。
     「党然倧䞈倫じゃなかったじゃん 。」
     䞀条が呟きながら萜ちた倧六法を拟おうずした時、たた声が飛んだ。
     「觊るな自分で拟える」
     今床は明らかに敵意を感じる蚀葉だった。さすがの䞀条も興醒めした圢ずなり、面癜くなさそうな顔をする。
     その埌䞀人で黙々ず本を積み盎し、固いずは蚀え砂地のグラりンドを、それこそ枟身の力で台車を抌しおいく女性を芋送った。
     「なんだ、あれ。」
     「なんだかな。 いろんな人間がいるっおこずだな。」
     「あの感じで譊察職員っおどうよ」
     「さぁな。たぁ犯眪者にしたら怖い存圚にはなりそうだ。」
     今日ここにいるずいうこずは、圌女も譊察職員ずしお入校予定いうこずになる。婊譊課皋なのか䞀般職員課皋なのかは分からなかったが、どちらにしおもたた顔を合わせるこずになるだろう。
     自分たちの車に向かっお歩き出すず、圌女の運転するSUVが脇を通り抜けおいった。運転垭から二人を睚み぀けるようにしお走り去っお行く。
     「おっかねぇなに俺らそこたで気に障るこずした」
     「ありゃマトモじゃないな。入校したら近付かないようにするリストの䞀番䞊に躍り出たぜ。」
     「車、岩手ナンバヌだったな運転しお来たっおこずは倧卒か」
     「お、さすが譊察官の息子だけあるな。しっかりチェックしおんだな。」
     䞖文ず䞀条は高卒皋床の孊力で受隓資栌のある「譊察官B」ずいう採甚区分で受隓をしおいる。倧卒皋床の「譊察官A」ず違い、生たれ月の関係で自動車の運転免蚱が取埗できないたた採甚される堎合もある。
     そんな事情もあり、譊察官Bで採甚された者は入校埌に実斜される運転技胜怜定を受けおからの運転を掚奚される。
     もちろん完党にダメずいうわけではないが、入校前に事故や違反があった堎合は採甚取り消しになる可胜性もあるため、しないのが䞀般的なのだ。今回の販売䌚に私有車で蚪れたずいうこずは、譊察官Aでの採甚ずいう可胜性が高い。
     たた、譊察官採甚詊隓は䞀床の受隓で耇数の勀務地を遞択するこずができる。採甚人数の関係もあり、競争倍率にも倚少の差が生たれおくる。䞖文は宮城県譊を受隓するず同時に譊芖庁ず神奈川県譊も受隓し、いずれも合栌しおいた。
     あの女性も同じように岩手県譊ず宮城県譊を同時受隓し、宮城県譊を遞択した可胜性がある。䞀条は車からそこたでの可胜性を導き出したずいうこずだ。
     その埌、息子たちのちょっずした事件に気付きもしないたた話に花を咲かせおいた母芪たちの垌望で、近くの商業斜蚭に行くこずになった。母芪同士がカフェで時間を過ごしおいる間、䞖文ず䞀条はゲヌムコヌナヌの『頭文字D』で公道最速を競い合った。
     結果は勝敗で䞀条の圧勝ずなった。
     


    「桜の倧門」 歳・春①
    了。

     
     

      


     

     


     
     
     
    みなさん、こんにちは 八神倜宵ず申したす 䞻に広矩のミステリヌ小説、゚ッセむなどを曞いおたす 詳しくはサむトマップから自己玹介をご芧䞋さい https://note.com/yagami_acg/n/nfe328a53f324

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