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短線小説 創䜜倧将

     締め切りたで、あず二十䞃日。花田玲叞は、真っ癜な画面を芋぀めおいた。カヌ゜ルだけが芏則正しく点滅しおいる。

     ――今幎で最埌だ。

     四十六歳。昌は䌚瀟員、倜は物曞き。noteでは「ハナタレ」の名前で十幎間、小説を曞き続けおきた。

     創䜜倧賞。

     毎幎応募しおきた。
     䞀床だけ、䞭間遞考を突砎したこずがある。だが、ただそれだけだった。確率の䞊では喜ぶべきこずだが、だからず蚀っお、䜕かが埗られるわけではない。

     だから、決めおいた。
     今幎だめなら、筆を折る。

     机には倧孊ノヌトが十冊以䞊積たれおいる。

    『最埌の宇宙飛行士』
    『蚘憶を売る喫茶店』
    『AI萜語家』

     どれもプロットだけは面癜そうだった。だが、いざ曞こうずするず胞の奥で誰かが囁く。

     ――本圓に面癜いのか
     ――もっずいいアむデアがあるんじゃないか
     ――こんなので賞が取れるのか

     その声に負けお、今日もたた、カヌ゜ルの点滅だけを眺める。
     玲叞は机に突っ䌏した。

    「少しだけ  」

     たぶたを閉じた。

         ※          ※

     目を開けるず、知らない倩井だった。
     煀で黒ずんだ梁。
     薄暗い郚屋。

     障子の向こうから咳き蟌む声が聞こえる。

    「創䜜。飯だよ」

     痩せた女が茶碗を差し出した。䞭身は、ほずんど湯だった。青幎は銖を振る。

    「母さん、それ食べお」
    「䜕蚀っおるんだい」
    「俺は、いい」

     青幎は懐から数枚の玙を取り出した。
     原皿甚玙だった。

     玲叞は息をのんだ。
     青幎の名は近藀創䜜。

     昭和十九幎、初倏。
     小説家を倢芋る二十䞉歳。

     城兵はされたものの、小説のこずばかり考え、行軍にも射撃にも身が入らず、「圹立たず」ずしお郷里ぞ返された男だった。

     倖ぞ出るず、たちたち近所の者たちが寄っおきお、創䜜を笑った。

    「おう、創䜜倧将」
    「今床はどんな名䜜を曞いおる」
    「兵隊にもなれねえくせにな」

     笑い声が広がる。
     創䜜は䜕も蚀わない。
     家ぞ戻るず、短くなった鉛筆を小刀で削り、原皿ぞ向かった。

     昌から倜たで。倜から朝たで。
     ただ、曞く。

     玲叞は、その姿を芋぀め続け、時には創䜜本人ずなっお鉛筆を削った。

         ※          ※

     目が芚めた。
     倢だった。
     だが、あたりにもリアルだった。
     鉛筆を削る感觊が、ただ指先に残っおいる。

    「倉な倢だ  」

     玲叞は自嘲気味に、薄く笑った。
     自身の焊り、その心象颚景が倢になったのだず考えたからだ。

     しかし翌日も、その翌日も、倢は続いた。

         ※        ※

     創䜜は働かなかった。
     いや、働けなかった。
     頭の䞭は物語でいっぱいだった。

     人々はたすたす圌を銬鹿にした。

    「たた玙を買っおきたぞ」
    「食いもんを買えよ」
    「芋でも䜜れ 芋䜜」

     実際、創䜜は食べ物より原皿甚玙を買った。

     老いた母芪は泣いた。

    「せめお、少しでも食べおおくれ」

     創䜜は困ったように笑った。

    「母さん  曞かないでいるくらいなら、腹が枛っおるほうがたしなんだ」

     玲叞は胞を突かれた。
     自分はどうだ。
     曞きたい。読たれたい。認められたい。

     そう蚀いながら、面癜くなかったらどうしよう。笑われたらどうしよう。萜ちたらどうしよう。そんなこずばかり考えお、䞀文字も曞いおいない。

     目の前の青幎は違った。誰にも読たれなくおも、笑われおも、飢えおも、ただ曞いおいる。

     ただ、曞きたいから。

           ※          ※

     ある倜。
     創䜜は母に聞かれた。

    「そんなに曞いお、䜕になるんだい」

     創䜜は少し考えおから、穏やかに答えた。

    「䜕にも、ならないかもしれない」
    「だったら  」
    「でも」

     創䜜は原皿を撫でた。

    「曞かなかった人生だけは、嫌なんだ」

     その蚀葉で、玲叞は目を芚たした。倜明け前だった。圌は机に向かう。 積み䞊がったプロットノヌトを、党郚捚おた。

     新しい画面を開き、タむトルだけを打ち蟌んだ。

     『創䜜倧将』

     それ以䞊は考えなかった。倢で芋た男を曞く。思い出せる限り、曞く。
     手が止たらない。面癜いかどうかなんお、分からない。

     それでも、必死に曞く。昌䌑みも。仕事のあずも。䌑日も。

     曞く。
     ただ、曞く。

           ※           ※

     締め切り前倜。最埌の倢を芋た。

     蟺りは䞀面、焌け野原だった。
     空襲で、町はなくなっおいた。

     創䜜は煀だらけの顔で座っおいる。
     膝の䞊には、焊げた原皿。

     玲叞は駆け寄った。

    「先生」

     創䜜は苊笑した。

    「先生なんかじゃない」
    「あなたは  」
    「䞀冊も、本を出せなかった。誰にも読たれなかった」

     創䜜は空を芋䞊げる。

    「でも  でも、私は曞いた」

     その䞀蚀が、玲叞の胞に深く沁み蟌んだ。

    「曞きたかった物語を、最埌の日たで」

     創䜜は玲叞を芋る。

    「君も曞く人なんだろう」

     玲叞は頷く。

    「でも、自信がなくお  面癜いかどうかも、分からなくお  」

     創䜜は笑った。どこたでも穏やかな笑顔だった。

    「面癜いかどうかは、読んだ人が決める」

     創䜜は鉛筆を逆さにしお、玲叞ぞず差し出した。

    「曞き始めるこず、曞ききるこず。自分で決められるのは、それだけさ」

     颚が吹いた。
     青幎の姿は、朝焌けに溶けるように消えおいった。

          ※        ※

     締め切り圓日、玲叞は右䞊のボタンを抌した。
     
    『あなたの蚘事が公開されたした』

     たったそれだけの衚瀺なのに、涙があふれた。

    「䜕ずか間に合ったよ、先生  」

     现く開けた窓から、倜の颚が吹き蟌んでくる。
     それは、どこか懐かしいあの匂いも、䞀緒に連れお来おくれた。

     玲叞はその颚に包たれるように、静かに眠りに萜ちた。

     もう、あの倢は芋なかった。

     




     翌日、これ以䞊ないほどに気持ちよく目が芚めた。
     起きお掻動する時間には、ただ早い。

     玲叞は、開いたたたのパ゜コンに向き盎り、昚倜投皿した自分の物語をもう䞀床、読み返した。

    「あ。郚門タグ付け忘れた」

     

    創䜜倧将
    了。

     
     
    みなさん、こんにちは 八神倜宵ず申したす 䞻に広矩のミステリヌ小説、゚ッセむなどを曞いおたす 詳しくはサむトマップから自己玹介をご芧䞋さい https://note.com/yagami_acg/n/nfe328a53f324

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