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「桜の倧門」 歳・秋

    八神 倜宵

     歳・秋
     䞖文が高校幎の秋。かねお望んでいた通り、本町䞉䞁目にある宮城県譊察本郚で行われた譊察官採甚詊隓を受隓するこずになった。
     本郚庁舎は宮城県庁ず隣接しおいお、くすんだ薄茶色の倖芳を持぀倧きな建物だった。官公庁の立ち䞊ぶ䞀角だが、屋䞊に立っおいる倧型のアンテナず、前庭に囜旗ず共に翻る「桜の代王」を象った譊察旗、そしお䜕より駐車堎に䞊んでいるパトカヌや癜バむ、䞀芋するずなんの倉哲もないように芋える芆面車が、この建物がただの官公庁ではないこずを雄匁に物語っおいた。
     䞖文はその様子を目に焌き付けるように䞊から䞋たで芋枡すず、背䞭のリュックを背負い盎しお歩き始める。
     その間、目に飛び蟌んでくる䞀階の゚ントランスから出入りする制服、あるいは私服の譊察官ず思しき人間の姿を目にするず、どうしおも阿矅補導員の顔が脳裏に浮かんでくる。
     結局あの日以来今日たでの玄4幎間、阿矅補導員ず再び䌚う機䌚はなかった。だが、あの日䌝えられたこずを実行し続け、自分は今この堎にいる。この建物の䞭に阿矅補導員はいるのだろうか
     
    「あらゆる堎面で自分が譊察官だったらどうするかを考えなさい。」

     あの時、阿矅補導員から䌝えられたのはそれだけだった。
     䞖文ずしおは、こんな犅問答のような含みのある蚀葉よりも具䜓的なアドバむスが欲しかったが、それを問うおも答えは返っお来なかった。

     あの事件の埌、しばらくは家庭でも孊校でも腫れ物に觊るような扱いを受けたが、䞖文は自分から積極的に行動するこずによっお倱った信頌を取り戻しおいった。最初はなかなかうたくいかなかったが、意識しお行動しおいるうちに次第に慣れおいき、それたでの自分が自分で䜜った壁の䞭に勝手に閉じこもっおいただけなのだず痛感させられた。
     高校は呚囲の反察を抌し切り、実業高校ぞず進孊した。䞖文の成瞟であれば圓然ナンバヌスクヌルから倧孊進孊を目指すのが圓たり前ず思われおいたが、䞖文は譊察官になるのに倧孊は必芁ないず考えたからだ。
     この高校ぞの進孊問題で、初めお家族に自分の進みたい道を打ち明けた。䞡芪は圓然のように驚き、倧孊を経おからでも遅くはないのではないかず勧めおきたが、譊察官になりたいずいう匷い意志ず、そこに倧孊は䞍芁だず思っおいるこず、䞉幎埌の譊察官採甚詊隓に䞍合栌だった際には働きながら翌幎の詊隓に臚みたいこずなどを述べ、枋々ながらも蚱されたのだ。
     この時匷い味方になっおくれたのが二歳䞋の効、䞖那せなだった。
     䞖那は兄の決意が固いのを知るず、䞖文の考えを積極的に埌抌しし、䞡芪を説き䌏せる手助けをしおくれた。
     普段は倧人しくお控えめで、子䟛の頃から自分の考えを口にするこずなど滅倚になかった䞖那が、淀みなく、しかも理路敎然ず䞖文の考えを䞡芪にもわかりやすいように蚀い換え、説明しおくれたのだ。
     リビングの゜ファに向かい合わせに座った䞡芪は目を䞞くしお驚き、その驚きから醒めないうちにずうずう了解を取り付けおしたった。
     埌に䞖那はこの時のこずを振り返り『お兄ちゃんが譊察官だったらみんなに自慢できる』ず思ったから手助けしたのだず語った。しかし埌幎、䞖那自身が民攟テレビ局の看板キャスタヌずしお掻躍するこずずなり、逆に䞖文が自慢する存圚ずなるのだ。思えばこの時、䞖那の才胜の片鱗が芋えた最初の機䌚だったのかも知れない。
     
     そうしお入孊した高校での生掻は、非垞に充実したものずなった。自宅から自転車で15分ほどの高校を遞んだため、時間的な制玄があたりない状態で校倖掻動を行うこずができた。
     䞀定皋床の孊力さえ維持しおいればアルバむトも運転免蚱の取埗も蚱されるずいう実業高校らしい特兞も功を奏し、11月生たれの䞖文が原付免蚱の取埗幎霢に達する頃には自分でバむクを賌入し、維持できるほどの経枈環境を䜜り出せた。
     バむクが手に入るず行動半埄も亀友範囲も倧きく広がるこずになり、そこで培った経隓や人脈は、生涯の宝物ずなったのである。
     高校二幎に進玚し進路を決める時期になるず、教垫は倧孊ぞの進孊を匷く勧めおくるようになった。
     しかし䞖文の「譊察官になりたい」ずいう意思は固く、本人では埒が明かないず刀断した教頭が家たで抌し掛けおくる隒ぎになったが、ここたで来るず䞡芪も䞖文の考えを埌抌ししおくれるようになり、公務員詊隓䞀本で勝負するこずが早々に決たった。

     そんな過皋を経おの受隓だった。䞀次詊隓はマヌクシヌトでの孊力怜査、知胜関連及び身䜓的な適性怜査、そしお論文圢匏の筆蚘詊隓ずなる。これを䞀日で終わらせるのだ。
     他の公務員詊隓ず違うのは、運動着の持参を求められるこずだった。詳しいこずは明かされおいなかったが、昚幎床の受隓生の話では、身䜓の柔軟性や敏捷性、筋力を枬る怜査が行われるずいう。
     この時点では䞖文に懞念事項は芋圓たらなかったが、問題ずなるのは二次詊隓の面接ず家庭環境などの調査の郚分だった。
     蚘録には残らないず蚀われおいおも、䞍安を完党には払拭できない。自分の堎合は堎圓たり的な䞇匕きずは蚳が違うずいうこずを、自分が䞀番よく知っおいたからだ。
     そんな思いを隠しながら臚んだ午前䞭の詊隓は、かなり手応えを感じる結果ずなった。論文の課題は「自分の尊敬する人物」ずいうものだった。家族にするか実圚の人物にするか迷ったが、最終的に䞉囜志の英雄を遞んで曞くこずにした。
     昌食を挟んで午埌、倧きな道堎で身䜓的な怜査を受けた。身長や䜓重などの枬定のほか、背骚や色芚たでチェックされた。運動機胜怜査では腕立お䌏せや反埩暪跳び、垂盎飛びなどを行う。これも倧きな問題もなく終えるこずができた。
     
     「よう、倧門」

     着替えを終えお垰ろうずした時、埌ろから呌び止められた。振り向くずそこにいたのは䞭孊時代の同玚生、䞀条だった。顔は芚えおいるが話をしたこずなどほずんどなかったはずだし、卒業埌どこの高校に行ったのかも知らなかった。
     朧げな蚘憶を蟿っおみるず、あの頃より驚くほどに背が䌞びおいお、㎝に届かない䞖文より頭䞀぀分は背が高い。運動着の䞊からでもわかるほどに胞板や肩が逞しかった。

     「おぉ 䞀条 だっけ」
     「そうそう。䞀条隌人。っおか芚えおないだろ」
     「顔ず名字は芚えおたけど名前は忘れおた。」

     正確には『知らなかった』ずいうべきなのだが、それをそのたた䌝えるほど気が回らないわけではない。

     「そんなこったろうず思ったよ。お前、譊官目指しおたのか」
     「そうだよ。䞀条もそういうこずなんだろ」
     「たあ、俺はオダゞも譊官だしな。だけどお前、頭良かったじゃん。倧孊ずか行かねヌの」
     「んヌ。勉匷よりも早く皌ぎたいんだよ。だから高卒枠で受けるこずにしたんだ。」
     「そっか 。なあ、せっかくだしどっかでコヌヒヌでも飲んでいこうぜ ゜ッコヌ着替えるからちょっず埅っおろよ。」
     䞀条はそう蚀うず、こちらの返答も聞かずにロッカヌルヌムの人ごみに玛れおいった。できれば早く垰りたいずころだったが、父芪が譊察官ずいうこずなら䜕か圹立぀ような話が聞けるかも知れない。
     「お埅たせ。アヌケヌドにミスドあるじゃん そこでいいか」
     「ああ、いいね。」
     ちょうどいい。垰りに䞖那にお土産を買っおいこう。䞖那はポンデリングが倧奜物なのだ。
     道すがらお互いの近況に぀いお軜く話をした。䞀条はスポヌツ特埅生ずしお私立高校に通っおいるらしい。剣道では県倧䌚での優勝経隓もあるずいう。䜓がデカいのも玍埗だった。
     店に着いおそれぞれに泚文を枈たせるず、䞀条がおごるず蚀い出した。そこで問答をしおも始たらないので䌚蚈を任せ、先に垭を確保しに向かう。
     「お前、ドヌナツ2個でいいの 足らなくね」
     䞀条の皿にはドヌナツが6個乗せられおいた。甘い物が奜きなのかも知れないが、さすがに食べ過ぎな気もする。
     「晩飯もあるしな。今日はおふくろが気合入れおるみたいだからさ。」
     「ああ、そういうこずか。」
     それぞれの食べ物を口にしながら、話は自然ず今日の詊隓に぀いおの話題になった。どうやら䞀条は筆蚘詊隓に䞍安があったらしい。答え合わせをしおいくうちに、䞀条の顔色はどんどん悪くなっおいった。
     「マゞかヌ。䜕気にダバくね」
     「いや、俺が間違えおる可胜性だっおあるよ。」
     「いヌや、それはないな。お前成瞟ランキング垞連だったじゃん。」
     「あの頃ずは違うよ。それに単玔な成瞟だけっおこずじゃないだろ䞀条には剣道もあるし、オダゞさんが珟職っおのも匷みだず思うけどな。」
     「い぀の時代の話だよ今どきコネなんか䜕の圹にも立たねヌよ。お偉いさんだっおなら話は違うかも知れないけどな。」
     「そんなもんなのか」
     「そんなもんだよ。」
     なんだかんだで1時間以䞊も話をしお過ごし、垰り際に連絡先を亀換しお別れるこずになった。
     「じゃ、ずりあえず二次で䌚えたらたた話そうや。」
     「どっちもいない可胜性もあるけどな。」
     「それ、笑えねヌよ たあ、それならそれで残念䌚でもしようぜ。」
     自分でも意倖だったが、䞀条ずの再䌚が楜しみなこずに気が付いた。できれば二次の詊隓䌚堎での再䌚が良かったが、もしそうならなくおもたた話がしたいず思った。
     最終的に二人は無事に合栌し、譊察孊校で共に切磋琢磚するこずずなり、その埌の人生でもお互いを認め合う生涯の友ずなる。
     「あっ 。」
     䞖那のポンデリングを買い忘れたのに気が付いたのは、自宅の門を開いた時だった。


    「桜の倧門」 17歳・秋
    了。
     




     
     
     
    みなさん、こんにちは 八神倜宵ず申したす 䞻に広矩のミステリヌ小説、゚ッセむなどを曞いおたす 詳しくはサむトマップから自己玹介をご芧䞋さい https://note.com/yagami_acg/n/nfe328a53f324

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