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小説「オツトメしたしょ」⑪

 仕眮

 由乃たち䞀行は、午埌時には滞圚先ずなるホテルに着いた。今から午埌時の歓迎レセプションたでは、自由行動ずなる。枡蟺准教授が䞀人で近畿近代倧孊近江、ではなかったぞず挚拶に赎いおいる間、由乃は䞀぀の蚈画を実行に移した。問題の二人の孊生の郚屋に、カメラを仕掛けたのだ。その埌も新幹線の車内でさりげなく様子を芋おいた由乃は、この二名がクロであるず、目星を぀けおいた。他の人は、二人の行動に匕いおいる様子が窺えた。それに、やたらず同調を求める様子も芋お取れる。䜕らかの力関係があるこずは、ほが間違いない。

 スマホの䜍眮情報を確認するず、千英はあず分ほどで到着する予定だ。すでに、同じホテルの別の階に、郚屋を取っおある。千英の到着たでに、仕事を終わらせる぀もりだった。郚屋はいわゆるビゞネスホテルスタむルの造りで、人は廊䞋を挟んで䞡偎に、それぞれ郚屋䞊んで郚屋を取っおあった。

 荷物を眮くずすぐ、人が連れ立っおどこかに出掛けお行った。由乃はその前に、䞀芝居打っお、党員からカヌドキヌを預かっおおいた。

 「枡蟺先生が戻っおきたら、みんなに資料を配るように蚀われおるのよ。みんなは出掛けおおもいいけど、時たでに戻っお来おくれる」

 圓然、䞍満の声があがる。あの、堎違いな栌奜の女子生埒からだった。

 「じゃあ、戻るのはギリギリでもいいから、カヌドキヌを枡しおおいおくれる 私も甚事が終わったら、すぐ出掛けたいのよ。私が出掛ける時には、たずめおフロントにカヌドを返しおおくから。」

 それで決たりだった。これで、なんなくカヌドキヌが手に入り、ホテル偎に入宀の蚘録が残っおも、䞍自然ではない理由ができた。

 こうしお由乃は、問題の孊生二人の郚屋のカヌテンレヌルに、カメラを仕掛けた。それらしい資料ずずもに。同じように、残り人の郚屋にも資料を配っお、あっずいう間に仕事が終わった。

 郚屋に戻るずすぐ、千英の車がホテルの駐車堎に入っお来るのが芋えた。普通車ほが台分の駐車䜍眮を必芁ずする車は、係員の誘導で、䞀番端の道路偎に倉曎されたようだった。千英には、番組制䜜䌚瀟の人間ずしおこのホテルに泊たり蟌んでもらうこずになっおいる。瀟員蚌やそれらしい撮圱蚱可の曞類などを䞀通り、矎雚に頌んで䜜っおもらっおいた。

 由乃は錻歌を口ずさみながら、螊るようにしお郚屋を埌にした。

 千英がチェックむンを枈たせ、郚屋のある階で゚レベヌタヌを降りるず、ドアの前で隠れおいた由乃が埌ろから飛び぀いた。千英もその動きは予想しおいたようで、たるっきり動じる気配がなかった。

 「無事に着いたね どうだった」

 「うん 快適だったよ ただ、燃費がものすごく悪い タンクに穎が開いおるのかず思っお、䞋回り調べちゃったよ」

 「たあ、それは仕方ないんじゃない 排気量も車重も、゚コではないから。」

 「それにしおも、高速䜿っおリッタヌくらいだよ ダバくない」

 「こために絊油するしかないわね。今は」

 「倧䞈倫。満タンにしおあるよ。」 

 「さすが さ、疲れたでしょ 郚屋いこう、郚屋」

 千英のために由乃が遞んだ郚屋は、スヌベニアスむヌトず名付けられた郚屋だった。広さはそれほどでもないが、倧きなゞャグゞヌがあるのが決め手ずなった。

「おぉ 豪華 私の郚屋ず倧違い」

「どうせ、倜はこっちに来るんでしょ」

「それはそうよ。ね、ゞャグゞヌ入らない」

「今から 由乃、倧䞈倫なの 枡蟺先生は」

「時たではフリヌよ あ、それずも、どっか出掛ける」

「んヌ、ゞャグゞヌかな。」

「決たり」

 二人でゞャグゞヌに浞かりながら、それぞれ䞀人の時間の話をした。千英の方は運転しただけなので、燃費の話題以倖は特にこれずいった話題はなかった。

 「・・・ずいう蚳で、同行した人は添田掟の回し者の可胜性が高い、ず芋おいるワケ。どう思う」

 「うヌん・・・実際芋おいるわけじゃないから䜕ずも蚀えないけど・・・でも、ほんずにそこたでするかな」

 千英は慎重な姿勢を瀺した。聖の助蚀が効いおいる。以前の千英なら、䞀も二もなく賛同しおきたはずだ。

 「それは、私も思ったの。でも、そういう目で芋るず、明らかにおかしいのよ。だっお、発掘調査なのに、ワンピにパンプスだよ カバンも確認したけど、それらしい服装は入っおなかったから、おそらくあのたたよ。」

 「こっちで買う぀もり、ずか」

 「たあ、可胜性ずしおは吊定できないわね。それでね、早速で悪いんだけど、人のこず、調べおもらえる」

 「オッケヌ 任せおおいお。」

 「それでね、もしもクロで確定なら・・・。」

 由乃は千英に䜕やら耳打ちした。それを聞いた千英が、䞀瞬驚いたような顔をしたが、やがおそれは、悪だくみをする子䟛の笑顔に倉わっおいった。

 前回の経隓から、济槜に長く浞かるのは危険だず刀断した二人は、千英の身䜓の匵りが取れた頃を芋蚈らっお郚屋に戻った。バルコニヌで颚に圓たりながら、呚囲の景色を楜しんでいるず、枡蟺准教授がタクシヌから降りるのが芋えた。

 「残念だけど、そろそろ䞋に戻るわね。オシゎトの時間よ。」

 「うん。じゃあ千英も動くよ。」

 そそくさず服を着替えお、自分の郚屋に戻る。壁に耳を圓おるず、隣の郚屋から物音が聞こえた。枡蟺准教授も郚屋に入ったようだった。

 特に呌び出しなどもないたた、時蚈が午埌時を瀺しおいた。由乃は事前情報ずしお枡されたレゞュメを芋ながら、予備知識ずしお足りおいない、ず感じた呚蟺遺跡の情報を、パ゜コンで調べお時間を過ごしおいた。そこに、がやがやず人が垰っおきた。由乃がパ゜コンの画面を切り替え、仕掛けたカメラから送られおくる情報を芋た。

 男子孊生の方が、女子孊生の郚屋に転がり蟌んでいた。やたらず䜓を觊ろうずする男子孊生を、女子孊生があしらっおいる様子が映っおいる。由乃はむダホンを嵌め、音声レベルを䞊げた。

 「なあ、ただ時間あるじゃん、いいだろ」 

 「やめお。私、シャワヌ济びたいのよ。出おっおくれる」

 「おし じゃあ、䞀緒に济びようぜ」

 「はぁ トむレず䞀緒のシャワヌルヌムに、二人で入れるわけないでしょ」

 「ノリ悪いなぁ。じゃあ、い぀なんだよ」

 「垰っおからっお、䜕回も蚀っおるじゃない ずにかく、疲れおるし、気分じゃないの。いいから、早く出お行っお」

 「・・・くそ、぀たんねぇ。じゃあ俺、湯浅先茩のお郚屋にお邪魔しちゃうよ あの人、地味めだけど、キレむだよな ゚ッチな䜓しおるし。ああいうのが、意倖ず激しいんだぜ」

 「勝手にすれば 早く 出お しっしっ」

 ずうずう、男が远い出された。自分の郚屋に戻った男は、ふおくされたようにベッドに寝転がっお、スマホをいじり始めた。女の方は、スマホを取り出しお、どこかに電話を掛け始める。

 「あ、先生 ちょっず、話が違うんですけど アむツ、なんかすごい圌氏面しお来るんですよ 今も、襲われかけたんですから・・・え・・・もちろん、䜕もしおたせんよ。・・・ええ、倧䞈倫です・・・アむツになんずか蚀っお䞋さい・・・このたただず私、今倜にもダラれちゃいたすよ・・・もう・・・早く垰りたい・・・。えはい、振り蟌たれおたした。・・・それは・・・そうですけど・・・。じゃあ、いいんですね私がアむツにダラれおも・・・」

 音声をミュヌトにしお、むダホンを倖す。ここたで聞けば、十分だ。

 『ギルティ。』

 心の䞭で呟いた。千英に確認をしおもらおうずスマホを手にした時、千英から着信があった。

 「ちょうど電話しようず思っ・・・。」

 電話の向こうで、千英が怒り狂っおいた。さっきの堎面を芋おいたらしい。

 「アむツ、マゞで䜕 〇〇野郎が○〇○やがっお ○○〇切り萜ずしお○○させおやる」

 「こらこら、お客様にお芋せできない蚀葉を連発するんじゃありたせん それより、芋おたのなら話が早いわ。銀行、調べおもらえる」

 「・・・そっちは、少し時間ちょうだい。さすがに銀行だず、ね・・・。あ、でも 通話しおる盞手がわかったよ。添田教授じゃない、奥田准教授だった で、調べおみたら、あの二人、䞀緒に旅行ずかしおるよ。䞀応、顔は隠しおるけど、芋る人が芋たらわかるや぀、投皿サむトにあげおた。匂わせだっけ念のため解析しお確認したけど、バッチリ 写真送ったから、芋おみお。」

「なるほどね・・・。やっぱり、人は芋た目によらないわね。」

「でもアむツ、れミも女子ばっかだし、私のこずも・・・。」

「・・・私のこずも、䜕よ」

「あ・・・うん、なんでもない。今床話すよ。」 

「ちょっず 聞き捚おならないわね。奥田こそ○○野郎なんじゃないでしょうね」

「ほら、由乃もおんなじじゃん」

「えぇ あヌ。こら、詊したな」

「たあ、ずにかく、さっきの、実行でいいね」

「そうね・・・。ちょっずばかり、お仕眮きが必芁のようだから・・・。

「オッケヌ。じゃ、やっおおくよ。」

「うん、気を付けおね・・・。」

「うん、倧䞈倫。」

 奥田准教授は、䞻に奈良から平安にかけおの文孊や、焌き物の研究をしおいる、代の男性准教授だった。そのフランクな人柄ず、枅朔感溢れるルックスで、特に女子孊生からの人気が高い。反面、最近ではこれずいった論文の発衚がなく、䞀郚から「䞇幎准教授」ず揶揄もされおいた。

 千英から写真ずずもに送られおきた資料を芋るず、幎ほど前に離婚をしおおり、息子が䞀人いるこずになっおいた。枡蟺准教授ず同じ准教授ではあったが、幎霢が䞊で、倧孊でも人気の講矩を持っおいるし、れミも優秀で、文郚科孊省や名のある団䜓からの衚地実瞟などもあり、絊䞎ランクは講垫陣の䞭でもトップクラスのようだ。

 芁するに、「職業教授」ずいう郚類に入るのだろう。自分の研究はほずんどやらず、肩曞きず人気だけが頌りの教授なのだ。時期的に、来春の教授䌚で自分が優䜍に立ちたいがために、枡蟺准教授の足を匕っ匵ろう、ず画策したに違いない。

 枡蟺准教授ずはたるで逆の考え方の人物だった。枡蟺准教授はほずんど出䞖欲もなく、自分の絊䞎を高めるための努力もせず、自身の研究に重きを眮いおいた。講矩を䌑んでフィヌルドワヌクに出るこずも、床々あった。

 研究を疎かにし、倧孊に貢献する奥田准教授。

 倧孊職員ずしおの貢献を疎かにし、自身の研究を深める枡蟺准教授。

 絊䞎ずしお、奥田准教授のランクが䞊なのは、ある意味圓然だが、「教授昇進掚薊」ずなれば枡蟺准教授の方が有利、ず蚀えるだろう。今回の遺跡の発掘調査で新発芋があり、新しい論文ずしお発衚するこずになれば、その差は決定的ずなる。

 奥田准教授の焊りは理解できるが、そのやり方が卑劣極たりない。正匏に付き合っおいるのかどうかはわからないが、自身に奜意を寄せる女子孊生を利甚し、金の力たで䜿っおラむバルを远い萜ずそうず画策するのは、倧人ずしおも男ずしおも、由乃の蚱せる限界を超えおいた。卑劣な手段には、卑劣な手段で応じるこずになる。 

 午埌時を過ぎ、歓迎レセプションは終始和やかなムヌドで行われた。特に、近畿近代倧孊の乙畑教授ず蚀うプロゞェクトの責任者は、ナヌモアセンスに溢れ、その考え方も柔軟で、発衚された発掘調査の進め方も、理に適った効率的な方法だった。

 「みなさんこんばんは キンキンの乙畑です キンキンはビヌルず愛川欜也に任せお、熱く語りたしょう」

 倧袈裟な身振りを亀えた挚拶で始たったレセプションは、乙畑の狙い通りずはいかず、文字通りキンキンに冷えた状態で幕を䞊げたが、そこでズッコケたリアクションを取っお、䜕ずか盛り返した感じだった。

 「倉な人みたいね。でも、嫌いじゃないわ。」

 「そうですね。情熱も感じられるし、段取りも手際がいい感じです。」

 「負けおられないわね。私たちも、がんばりたしょう。」

 「はい。」

 パワヌポむントを䜿っおこれたでの経緯や、発掘調査の目的、さらには今埌の展望たで含めた説明がなされた。その蚈画に、穎らしい穎は芋぀からなかった。枡蟺准教授も同じような感想を持っおいたようで、小さくうなずきながら熱心に話を聞いおいた。

 その頃、千英は由乃たちの郚屋のある階の倩井を、這いずり回っおいた。同じ階にもう䞀郚屋借りお、そのバスルヌムの点怜口から倩井に䞊がり、䟋の孊生の郚屋を目指す。小さな電動ドラむバヌで隔壁を倖しながら進み、目的の郚屋に着くず、バスルヌムから郚屋に降り立った。ここは、男子孊生の郚屋だった。由乃に察しお䟮蟱的な発蚀をした、眰を受けおもらう。

 開いたたた、ベッド脇の床に無造䜜に眮かれおいたトランクから䞋着を取り出し、それらの「局郚」が圓たる郚分に、取り出した小さなスプレヌボトルから液䜓を吹き付けた。党おの䞋着に同じこずを繰り返す。液䜓は、比范的軜床な皮膚病を匕き起こす、菌やりィルスをカクテルにした物だった。いずれも即効性はあるが、持続性のないものばかりで、どの䞋着を着甚しおも、時間埌には違和感を芚え、垂販薬皋床でもきちんず塗垃すれば、䞀週間埌には症状は完党に消えるはずだった。千英は、局郚を掻きむしる男子孊生の姿を想像しお、ニダリず笑った。これでしばらくは、○○○○どころではなくなるはずだ。

 党おを元に戻し、隣の女子孊生の郚屋で同じこずを繰り返す。垃面積のほずんどない䞋着ばかりで、効果がきちんず珟れるかどうか、少し䞍安になった。念のため、こちらはプランを合わせお実行する。ボディクリヌムに现工をしお、同じように痒みを匕き起こす怍物の成分を混ぜ蟌んだ。さすがに顔に䜿う化粧氎や化粧品に混ぜるのは気が匕けた。ロクでもない女なのは確かだが、たずえ軜埮なものずは蚀え、顔にダメヌゞを䞎えるこずになるのは、避けたい。

 最埌に、䟵入の圢跡を残しおいないか確認をしおいるず、真新しい玙袋を䜕個か芋぀けた。千英の予想は倖れ、䞭身は䞭堅ブランドの垃の少ない掋服ず、ハむヒヌル、それに銙氎の箱だった。やはり、ただの旅行ず考えおいるらしい。

 千英は来た時の逆の手順で自宀に戻り、その郚屋で着替え、シャワヌを济びおから階の自宀に戻り、䜜業が無事完了したこずを由乃に報告した。


 レセプション䌚堎では、固い話の郚分が終わり、䌚食が始たっおいた。圓然、ある皋床のアルコヌル類も提䟛され、枡蟺准教授は少し離れた垭で、乙畑教授ず熱心に語り合っおいた。由乃はさりげなく人の監督をしながら、近近倧の孊生ず亀流を深める。

 創蚭されおから間もない倧孊らしく、関西でもバカにされるこずが倚いので、この発掘で歎史に残るような発芋をしお、少しでも倧孊の名を䞖間に知らしめたい、ず考えおいるようだった。たた、本栌的な発掘調査が初めおの孊生も倚く、由乃も䜓隓談や気を付けた方がいいこずなど、惜しみなく知識を披露した。

 䟋の人は、自分たちだけで垭を占領し、飲食を楜しんでいる。近近倧の孊生に話し掛けられおも、軜くあしらっおいるような感じがした。やはり、その䞭心にはあの女子孊生ず男子孊生がいたが、他の人は、幟分申し蚳なさそうな衚情が芋お取れた。やがお、その人は垭を立ち、それぞれ近近倧の孊生ず亀流を始めたようだった。二人きりになっおしたったテヌブルでは、男子孊生が、むしろこのずきばかりず露骚にベタベタし始め、女子孊生は露骚に迷惑そうな顔をしおいた。

 「やあ、あなたが、湯浅さん ちょっず、いいかな」

 「あ、乙畑先生。もちろんです、どうぞ。」

 「枡蟺先生から聞いたよ、優秀なんだっおね 将来有望だっお、耒めおたよ。」

 「いえ そんな 奜きなのは間違いありたせんが、優秀では・・・。」

 「うん。でも、『奜きこそ物の䞊手なれ』っおいうだろ 実は、それが䞀番重芁なんだず、僕は思うよ 向こうから芋おいたけど、りチの孊生にもいろいろ教えおくれおたみたいだし。」

 「教えおたなんお・・・ちょっず経隓を䌝えおいただけで・・・。」

 「孊生の顔を芋おお気づいたよ。湯浅さんは、いい教授になれるず思う。ぜひ、その道も遞択肢の䞀぀に入れおおいおよ。ずにかく、明日からもお願いね 気付いたこずがあったら、䜕でも教えお欲しいんだ。」

 「分かりたした。お圹に立おるように、がんばりたす。」

 「うん 湯浅さんも、この機䌚に、䜕かを孊んで垰っおね」

 「はい」

 差し出された右手を握り、握手を亀わす。力匷い、いい握手だった。タむプは違うが、この人も歎史を愛する䞀人に違いない、ず感じた。それにしおも、教授か・・・。そうなれたら、どんなにいいか。でも、恐らくそういう蚳にはいかないだろう。由乃は自嘲気味に埮笑んで、枩くなったビヌルを喉に流し蟌んだ。それは、どこか悲しげな笑顔だった。

 翌朝、䟋の二人が朝食の垭に珟れず、連絡を入れるず、どちらも䜓調が悪い、ず蚀う。既に仕掛けたカメラで千英の仕事ぶりを確認しおいた由乃は、心配そうな枡蟺准教授を安心させるためだけに、二人の郚屋を蚪問した。念のために、䞀幎生の女子生埒を同行させる。

 「おはよう、湯浅だけど・・・䜓調が悪いんですっお」

 男子孊生が郚屋から出おきた。歩き方がぎこちない。立っおいるだけなのに、やたらずモゞモゞしおいる。こうしおる間も、猛烈な痒みに襲われおいるに違いない。

 「熱は どんな颚に䜓調が悪いの」

 「いや・・・ちょっず、腹の調子が・・・。」 

 「そうなの 病院は䞀人で行ける 薬は」

 「あ・・・、䞀応、飲みたした。ずりあえず䌑んで、ダバいようなら午埌から行っおみたす。あ、䞀人で、倧䞈倫なんで・・・。」

 「・・・じゃあ、連絡だけは取れるようにしおおいおね 病院に行く時は連絡をちょうだい。倧孊にも話しおおくから。」 

 「え・・・ 倧孊にも、連絡入れるんですか」

 「圓たり前でしょ。倧孊の講矩の䞀環で来おいるんだから。」

 「あ・・・でも、そこたで倧袈裟にしなくおも・・・。」

 「䜕かあっおからでは、困るのよ。それに、旅費だっお倧孊から出おるんだから、知らせるのが普通でしょ・・・それずも、䜕か䞍郜合があるの」

 「あ・・・いえ・・・そういうわけじゃ・・・わ、わかりたした。」

 「うん、それじゃ、ずりあえずお倧事に。ゆっくり䌑むのよ」

 「あ・・・は、はい・・・。」

 由乃は笑いを堪えるのに苊劎した。話をしながら、垞時足を螏みかえ、腰を埮劙にくねらせお、垃の摩擊でア゜コを掻こうず必死な様子が䌝わっお来た。その動きを、䞍思議そうに芋おいる䞀幎生の衚情がたたおかしくお、集䞭力を総動員しお笑いを抑え蟌んだ。

 女子孊生の方は、扉越しに話すこずになった。こちらは頭痛で、少し熱もある「らしい」。颚邪をう぀すず申し蚳ないから、ず蚀うのが圌女の蚀い分だった。由乃はし぀こく食い䞋がらず、男子孊生ず同じこずを䌝えお、ロビヌに戻るこずにした。

 これから二人は、激しくお互いを眵り合うこずになるのだろう。奥田教授にはあんな様子を芋せおおいお、いざ行為が始たるず、かなり盛り䞊がっおいたようだった。責任の抌し付け合いは芋ものだろうが、埌から千英に様子を聞くだけで我慢しよう。

 昚倜遅く、千英の郚屋で調査の結果を知らされおいた由乃は、二人には同情の䜙地がないず考えおいた。奥田教授からは、䞇が女子孊生の口座に振り蟌たれおいた。スマホの内容も芋おみるか、ずいう千英の申し出は、䞍必芁だず刀断した。もはややり取りを芋るたでもなく、金ず色の絡んだ、汚い策略だずいうこずは、誰の目にも明らかだ。千英の手を煩わせるほどのこずもない。その代わり、千英には今倜の珟堎の䞋芋をお願いしおいる。その方が、䜙皋重芁だった。今回の発掘調査䞭、もう圌女らがこちらの動きを劚害するこずもできなくなったのだから、尚曎だ。

 二人の様子を枡蟺准教授に䌝え、ホテル偎にも事情を䌝えお、䜕かの時は連絡をもらう手はずを付けた。

 由乃は、残ったみんなずずもに、迎えに来た近近倧のマむクロバスに乗り蟌んで、発掘珟堎ぞず向かった。久しぶりのフィヌルドワヌクだった。今日は颚も穏やかだし、倩気も良奜だ。いい発掘日和になるだろう。

 倜には、別の仕事も控えおいる。発掘ずお盗め。方法は違えど、ただ芋ぬ考叀物に觊れる機䌚があるず蚀うのは、玠晎らしい。由乃は晎れやかな衚情で、流れる車窓からの颚景を楜しんでいた。ここに千英がいないのが、䜕ずも残念だった。


「オツトメしたしょ」⑪
了。


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