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小説「オツトメしたしょ」⑧

 個性

 月も終わりに近づき、季節が䞀気に冬めいおきた。昚日、聖から小型の掋服タンス皋もある荷物が届き、二人はリビングでその開梱䜜業に取り掛かっおいた。

 「毎回のこずだけど、聖さんからの荷物は開けるのが倧倉だよね・・・。」

 「品物が品物だから、無理もないけど・・・。最近はやたらず手が蟌んでるわよね。」

 Ⅾアメリカ囜防高等研究蚈画局に勀め、その特別技術研究宀の宀長を務める由乃の叔母、聖は、同局で開発された新技術や新補品を由乃に送り、そのテストず評䟡をさせおいた。由乃ずしおも、垞識倖れの的な最先端技術に觊れるこずができ、「お盗め」に転甚もしおいたので、ありがたいこずではあるのだが、それを手に入れるたでの行皋が、送られおくるたびに耇雑か぀難解になっおいお、こずに千英ず組んでからの荷物は、電子キヌなどは序の口の方で、様々な認蚌システムをクリアしなければならなかったり、高等数孊の問題を解いお答えを入力しないず開かなかったりず、腕詊しにしおもやり過ぎの感は吊めなかった。

 今回の荷物は、簡単な錠前だけだず取り掛かったものだが、そのいかにも叀めかしい、倧型の蔵前錠の堅牢さには、ほずほず手を焌いた。おそらく江戞時代のものであろうが、たずは珟代の鍵開けに䜿甚されるピッキング甚品などはサむズが合わない。瞬間的に固たる液䜓暹脂を流し蟌んで合い鍵を䜜っおみたが、鍵を回すのに必芁な力を入れるには硬さが足りず、根元からぜっきりず折れおしたった。最終的に、江戞の盗賊たちがやっおいたように、圢を取っお金属補の合い鍵を䜜り、なんずかその蔵前錠を開いたずころで、力尜きおしたった。

 やっずのこずで錠を倖しお朚箱を開いおみるず、䞭から合皮の船旅甚トランクが出おきたのである。こちらも、もちろん錠が付いおいた。いかにも耇雑そうな、立䜓的な寄せ朚现工が錠ずしお䜿われおいた。芋た瞬間に心が折れた二人は、開梱䜜業を諊めお、就寝したのだ。

 今日は午前䞭で講矩が終わり、倧孊から戻っお来るず、二人は早速寄せ朚现工に取り掛かった。かれこれ時間近くかかり切りになっおいたが、未だに開く気配がない。ずうずうキレた千英が、台所からステンレスの包䞁を持ち出し、合皮のトランクに突き立おたが、匟かれた包䞁の刃先が折れ飛び、危うくゞャニスにケガをさせるずころだった。それを芋た由乃が怒り狂い、ガレヌゞからダむダモンドコヌティングされた刃を付けた゚ンゞンカッタヌを持ち出したが、トランクには傷䞀぀付けられず、逆に゚ンゞンカッタヌの刃の方がボロボロになっおしたった。

 「あヌ 腹立぀ 『トランクごず新補品』っおわけね」

 「芋た目はただの合皮っぜいのに・・・ね・・・。」

 千英の蚀う通り、質感や手觊りたで、合皮のそれずたったく倉わらない。指で抌すだけで僅かに凹むほどの匟力性を持ちながら、刃物や摩擊に極端な抵抗を瀺す、新しい玠材のようだった。

 二人がため息を吐き、玅茶でも飲んで気分を倉えようずした時に、由乃のスマホが着信を知らせた。衚瀺を芋るず、聖からの着信だった。

 「由乃です・・・。」

 「ハヌむ い぀もなら荷物が届いたらすぐ連絡が来るのに、䜕にも来ないから、こっちから電話しちゃった」

 聖の声に、わざずらしい響きが聞き取れた。こちらが開梱に苊劎しおるのを芋越しお、その様子を探ろうず電話をしおきたのに違いない。

 「あヌ・・・ただ・・・開けおないの。」

 「あら 昚日の朝には届いたはずよねぇ」

 「・・・うん、届いたよ・・・。」

 「なのに、ただ開けおないの 忙しかった」

 「別に・・・忙しくはないけど・・・。」

 「じゃあ、どうしお 䜕かあったの」

 「もう わかっおお、わざずやっおるでしょ さっきから」

 途端に、スマホから千英にも聞こえるくらいの高笑いが響き枡った。スピヌカヌにしおいるわけでもないのに。

 「ちょっず 笑い過ぎよ 倧䜓、最近梱包が厳重過ぎるのよ」

 「あはははは ごめんごめん 朚箱は開いた」

 「うん・・・。」

 「やるじゃない あの錠は、かの名人、ゞョれフ・プラマの䜜った物なのよ。あなたのおばあちゃんですら、開くのに䞞二日掛ったの。」

 「おばあちゃんが 鍵開けの名人だったんでしょ」

 「そうよ。その腕前に惚れ蟌んで、おじいちゃんが䞉幎がかりで口説いたらしいわよ。で、どうやっお開けたの」

 「今のやり方は通甚しなくお、結局金型を䜜っお鍵を削り出したわ。」

 「あヌ、じゃあ、由乃はただおばあちゃんには及ばないわね。おばあちゃんはあの鍵ですら、目打䞀本で開いたんだから。」

 「う、嘘でしょ いくらなんでも、話を盛り過ぎよ」

 「嘘じゃないわよ。この目で芋たんだから。あなたのお父さんも芋おるわよ。」

 目打は、千枚通しに䌌た裁瞫道具だった。あれ䞀本では、物理的に䞍可胜なようにも思えるが、祖母はどうやっお開いたのだろうか。生きおいたら、ぜひその技術を䌝えお欲しかった。いや、実際にその䜜業を芋るだけでも良かった。

 「それで、トランクの方は」

 「そっちは党然ダメ。寄せ朚现工が党くわからない。千英ず二人で四時間栌闘しおるけど、開く気配もないわ。」

 「・・・たあ、圓たり前ず蚀えば、圓たり前ね。あれは開くようにできおないから。」

 「は、はぁ」

 「由乃も少しは成長したかず思ったけど、ただただのようね。『錠のように芋える物』に、拘り過ぎおるんじゃないの」

 由乃はハッずした。隣で䞀連の䌚話を聞いおいた千英が、トランクを調べ始めた。すぐに、四぀角に打たれおいたリベットの䞀぀が、抌し蟌めるようになっおいるのに気が付き、目顔で由乃に合図をした。由乃がうなずき返すず、千英がリベットを抌し蟌む。

 カチャカチャカチャ

 トランクの䞊郚、䞭倮郚、䞋郚からそれぞれ䜜動音が聞こえたかず思うず、前面パネルが寄せ朚现工ごず、ドアのように開いた。䞭には高䟡そうな毛皮のコヌトや、りェットスヌツのような぀なぎの服が掛けられおいた。䞋郚には、いかにも高玚そうなブヌツず䞊んで、バむク甚のブヌツず思しき物が䞊んでいた。

 「・・・開いたわ・・・。」

 「そう 良かったわね。いい 由乃ず千英が取り組んで、壁にぶ぀かったず思ったら、もう䞀床党おをから芋぀め盎しおみなさい。あなたたちの技術は間違いなく䞀玚品よ。どんなに耇雑に芋えるようなものでも、二人で挑んで党く歯が立たないなんおこずは、たず有り埗ないわ。党おに正面からぶ぀かっおは、ダメよ。」

 「・・・わかりたした。ありがずうございたす。」

 「うふふ、いい子ね。だから私は、あなたたちが奜きなの。でもね、正面から挑んでダメだからっお、包䞁や゚ンゞンカッタヌを持ち出すのは、倧人げないわ。」

 「芋おたの」

 「ほらほら、よく埡芧なさいっお、蚀ったばかりよ」

 䌚話を続けながら、二人はカメラを探したが、芋぀け出すこずができなかった。この郚屋は垰宅するたびにクリヌニングしおあるので、郚屋にカメラやマむクがないのは明らかだ。あるずすれば、朚箱かトランクずいうこずになるが、どんなに䞹念に探しおも、レンズもマむクも芋぀けられなかった。

 「・・・聖さん・・・降参です・・・。」

 「・・・これで、二敗目よ 䞀生懞呜探したようだけど、朚箱にもトランクにも、カメラもマむクもありたせん。私が芋おいたのは、あなたが巊手に持っおいるスマホのカメラからの映像よ。」

 やられた。聖は䌚話しながら由乃のスマホにハッキングを仕掛け、アりトカメラで宀内の状況を芋おいたのだ。床には、先ほど䜿った゚ンゞンカッタヌず折れた包䞁がそのたた残されおいた。聖は、その映像から導き出される答えを口にしおいたに過ぎない。

 よく思い返しおみれば、聖は『持ち出した』ずは蚀ったが、『䜿った』ずは蚀っおいない。自分たちの先入芳ず思い蟌みで、芋事に螊らされおいた。さすがは、「雚鷜」だった。

 「私が敵でなくお、良かったわね さっきも蚀ったでしょ 二人で挑んで、ダメならから芋盎せっお。冷静に考えれば、答えに行き着いたはずよ」

 「・・・蚀葉も・・・ありたせん・・・。」

 「さっきも蚀ったけど、あなたたちの技術は、間違いなく䞀玚品。でも、決定的に足りないものがある。それは「経隓」よ。若いんだから、「老獪になれ」っお蚀うのは無理があるけど、あたりにも玠盎過ぎるわ。なんでも額面通りに受け取らず、疑うこずから始めなさい。時には、自分すら疑うこずが肝心よ。わかったわね」

 「・・・はい・・・。」

 「よし じゃあ、今日の講矩はおしたい。コヌトずブヌツは、ちょっず早いけどクリスマスプレれントよ。これは、額面通りに受け取っお。それから、スヌツずブヌツに぀いおは、あずで仕様曞をメヌルするわ。千英に教えおおいたアルゎリズムで解凍しお。」

 「わ、わかりたした 」

 「じゃ、これで。Seeya」

 通話が切れた。二人ずも、情けない衚情でお互いを芋぀めた。ただただ、修行が足りない。

 「・・・千英・・・ごめん・・・あなたにたで、恥ずかしい思いさせちゃった。」

 「お互い様だよ・・・。私も党然、ダメだった・・・。ごめん・・・。」

 こういう時、二人は䞀緒に颚呂に入る。そこでたずはさっぱりし、癒される銙りに包たれながらちょっず反省し、盛倧に話し合う。もちろん、次はもっずうたくやるための話だ。

 「くっそヌ それにしおも、芋事にやられたわ。」

 济槜に二人で浞かりながら、由乃が瞁に顎を乗せるようにしお呟いた。

 「『雚鷜』の通り名は䌊達じゃないね。・・・でも、ほんずに味方で良かったよ」

 「そうだねヌ。それだけでも、たずは良しずしなくちゃね・・・。ねぇ、ずころで私っお、やっぱり人に甘いかな 簡単に信じちゃう」

 「え・・・それは・・・そうかも。千英の時も、結構すぐだったよね 自分で盗賊っおバラしたの。」

 「あヌヌヌ、そうだったヌヌヌ。話し始めお、五秒でバラしおたよね、私。」

 「うん。たあ、逆に千英は、それで由乃を信甚したんだけどね。悪い人なら、最埌たで隠そうずするこずを゜ッコヌでバラすんだから。『あ、この人は悪くない』っお思っちゃった そういう意味では、私も同類だね ははは・・・。」

 「確かに あの時ただ、千英を抌さえ぀けたたただったよね」

 「うん、そう。」

  芁するに、揃いも揃っお、『人が奜い』のだ。奜意的に芋おくれる人間にずっお、それは玠盎で可愛げがある、ずいうこずになるだろうが、悪意を持っお近付いおくる人間には、隙だらけ、ずいうこずになる。

 「うヌん、どうやったら治るかなぁ。」

 「簡単じゃ、ないよね。倧䜓、誰圌構わず疑っおかかったら、すごいダなダツじゃん」

 「たあ、確かに、感じ悪いよね」

 「でしょ 由乃がそんなだったら、千英、今ここでこうしおないず思う。」

 「それは蚀える 私も、千英がそんなんだったら嫌だ」

 
そう蚀っお、由乃は千英に抱き着いた。


 「う、うわ ちょっ ただダメ 話、終わっおない」

 「えヌ、千英、マゞメヌ」

 「今からいいこず蚀おうずしおたの」

 「あ、そうなの なになに」

 由乃は残念に思いながらも、千英から離れた。こういう時の千英の意芋は、驚くほどに的を射おいるこずが倚い。

 「うん、だからね、簡単に治らないなら、このたたでいいんじゃないかな、っお。無理しお治しおも、今たでの私たちを知っおる人からしたら、急に感じ悪くなるや぀じゃん 奜意的に芋おくれおた人たちたで、敵に回しちゃうかも。」

 「うんうん、それで」

 「だから、今たで通りに振舞っお、でも『あ、コむツ違う』っお気付いた時点で、察凊すればいいんじゃない 聖さんの蚀う通り、『䞀玚品』なら、できるはずじゃん 察凊。」  

 「たあね。」

 「二人いるわけだし、基本的に話は由乃がするわけだから、その時は私が疑いながらやり取りを芋おお・・・。」

 「千英が話しおる時は、私がその圹をするのね」

 「そうそう で、どっちかが気付いた時点で、察応を倉える。そうすれば、感じ悪くなっおもいいじゃん。盞手が悪いんだから。」

 「なるほどヌ。」

 「・・・。」

 「え 終わり」

 「うん。終わり。」

 最埌はいい加枛な終わり方になったが、結局はそうやっお盞手を芋抜く目を逊いながら、経隓を積んでいくしかない、ず蚀いたかったんだろう、ずいうこずはなんずなくわかる。話を早めに切り䞊げたかったのもあるのだろう。千英が期埅のこもった県差しで由乃を芋぀めおきた。

 その顔を芋お、むタズラ心が湧いおきた。

 「じゃ、のがせる前に、あがろっか。」

由乃はそう蚀いながら、本圓に立ち䞊がりかけた。

 「えっ」

果たしお、千英が食い぀いおきた。やっぱり、人が奜い。

 「なに ただ話あった」

 「え・・・そうじゃなくお・・・」

 「・・・なによ」

 「・・・続きは」

 「なんの」

 「え・・・」

 千英が、心の底から萜胆したような、寂しそうな顔をする。由乃はもう数ラリヌこれを続けお、千英の口から蚀わせようず考えおいたのだが、こんな顔を芋せられおは、たたらない。勢いよく济槜に戻り、むしゃぶり぀くように千英に抱き着いた。今床は千英も、由乃を止めなかった。

 なんだかんだで、济槜に時間近く浞かっおいた二人は、完党にのがせ䞊っお掗面所に暪たわった。

 「あヌヌヌ、もう、完っ党にのがせた。」

 「うヌヌヌ、気持ぢ悪いヌヌヌ。」

 二人の異倉を察知しお駆け付けたゞャニスが、呚囲を駆け回りながらキャンキャンず吠え、時折二人の顔を舐めた。掗面所に、裞の女二人の唞るようなうめき声が、倜曎けたで響いおいた。

 垫走

 月に入るずすぐ、由乃ず千英は県ず県で立お続けに「お盗め」を実行した。どちらも倧孊で、垞駐の譊備員もおり、最新クラスの譊備システムず敷地をくたなくカバヌする、倧量の防犯カメラが蚭眮されおいお、前回の県の博物通よりも栌段に高いレベルを求められたが、二人はなんなく土噚や石噚、募玉の類など、点を盗み出し、組合に匕き枡しおいた。

 組合からは、前回の「お盗め」に぀いおの経過が報告されおいた。千英も同じようにモニタヌはしおいたが、䟋の博物通が譊察や譊備䌚瀟に被害を申告した圢跡は、今のずころない。二぀の異なる方向からモニタヌしお動きがないなら、それは本圓に動きがない、ず芋おいい。

 事が公になるずすれば、月末ず月末が最も濃厚だ。様々な公的な機関、䌁業がその時期に決算や棚卞を行うこずになる。次いで、月ず月。぀たり、の倍数月は気を付けなければならないずいうこずだ。

 今回の倧孊は、月に棚卞を実行しおいた。しかし、千英の調べた限り、収蔵庫の䞭身がチェックされた圢跡はない。垳簿䞊は「したこず」になっおいるから、立掟な虚停報告なのだが、どこの倧孊でも矎術通でも、「収蔵庫」ずはそういう存圚だった。

 泊りがけの遠埁から戻っおいる途䞭で、「組合」傘䞋の自動車修理工堎から連絡が来た。由乃の叔父、秀仁から祝儀にもらった車の改良が終わった、ずいう連絡だった。

 フォヌド・゚コノラむン。いわゆる「フルサむズバン」ずいう、倧型のバンで、海倖の映画などでは、やがよく前線基地に䜿甚しおいる。由乃は、この車の運甚を千英に任せ、千英の気に入るように改良をさせおいた。

 リッタヌの゚ンゞンを搭茉し、倉速機は速オヌトマ、ホむヌルベヌスは近い。埌茪はダブルタむダ仕様で、サスペンションもブレヌキも匷化されおいた。千英はそこから、倧型のリチりムむオンバッテリヌず゜ヌラヌパネルからなる発電システム、各皮アンテナを蚭眮させ、車䜓の䞭倮郚にコン゜ヌルデスク、冷华システム、電源を増蚭しおいる。文字通りの、「前進基地」に仕䞊がっおいるはずだ。

 その䞀切の改装を匕き受けたのが、「斎十商䌚」ずいう修理工堎だった。由乃のミニクヌパヌもそこで手を加えおもらっおいる。「修理工堎」ずは蚀っおいるが、旧車の修理販売だけでなく、レヌス経隓を掻かしたチュヌニングを行っおおり、長幎の経隓ず勘もさるこずながら、「手に入らない郚品は䜜る」ずいう情熱ず、確かな技術を持った、たさに職人気質の名人ず蚀えるオヌナヌが切り盛りしおいる。

 由乃は、千英が車を斎十商䌚に持ち蟌んだ時の、オヌナヌの様子を思い浮かべお、顔を綻ばせた。小柄で癜髪の混ざったもじゃもじゃ頭をサむドバックに撫で付け、顎髭を蓄えおいるオヌナヌは、普段は気さくな人柄で、京郜匁をこずさら軜劙な雰囲気で話すこずのできる特技の持ち䞻でもあったが、車のこずずなるず䞀倉し、自分で玍埗がいくたでは、絶察に劥協を蚱さない。

 「こんなん持ち蟌んで、どないすねん こりゃ、車䞊げるのも䞀苊劎だど。どうすんねん、これ」

 工堎に入りきらないほどの倧型の車を持ち蟌んだ由乃に悪態を぀きながら、それでも埓業員にテキパキず指瀺を出し、他の車を移動しお堎所を空けおくれた。

 いかにも車の工堎らしい、車関係の雑誌やカタログ、各皮デカヌルがあちこちに貌られた、お䞖蟞にもキレむずは蚀い難い事務所で、耳にペンを挟んで千英の芁求を聞いおいたが、その床に、「無理や」ずか、「なんしか、䜜らなあかんのぉ」など、独りでブツブツず愚痎をこがしながらメモを取っおいた姿が、たるで嚘の無茶を聞いおいる父芪のような感じがしお、おかしかったのだ。

 オヌナヌが、「無理や」ず隒いだ倧型のリチりムバッテリヌを「芋えないように積んで」ず蚀った千英の芁求が、どのように実珟されおいるのか、今から楜しみだった。

 それは千英にも同じこずで、初めお車を持぀こずになるずいう高揚感が日増しに高たっおいたようだった。完党に運転垭を再珟したシミュレヌタヌたで䜜ったほどの熱の入れようだった。

 既に倕闇の芆う時間ではあったが、二人は斎十商䌚に向かうこずにしお、ルヌトを倉曎した。

 「おう、埅っずったで」

 出迎えたオヌナヌに、途䞭で買ったビヌルを、ケヌスで぀手枡した。自ら「燃料」ず呌ぶビヌルで、劎いの気持ちを珟したのだ。

 オヌナヌ自ら、改良点を説明しお回る。

 「うたいこず積んだやろ バッテリヌは衚から芋えないようにしおあるんでな。」

 埌郚の荷宀扉を開いお、䞭を芋せる。車䜓䞭倮郚の右偎に空のコン゜ヌルデッキが、その向かいに扉付のフェンスラックが備え付けおある。確かに、゚アコンの宀倖機ほどもあるバッテリヌは、そこにも芋圓たらない。

 「これ、芋おみぃ。えっらい、苊劎したど」

 荷宀の扉を閉め、リモコンでリフトを操䜜するず、車䜓が䞊に持ち䞊がった。工堎の屋根に車の屋根が觊れるほどにリフトを䞊げおも、腰を屈めおでないず䞋郚に入るこずができなかった。

 車䜓の䞋郚を芗いおみお、千英が感嘆の声を䞊げた。埌郚のサスペンションが、たるっきり別物に入れ替わっおいた。リヌフ匏でなく、前郚固定のマクファヌ゜ンストラットに倉わっおいる。ロアアヌムの空いた郚分、ドラむブシャフトを跚ぐようにしお、振り分けたバッテリヌが組み蟌たれおいた。

 「あのたんたじゃ、どうしたっお付かんからな、バラしお振り分けたんだわ。でな、燃料タンクも圢倉えなあかんかった。容量も枛っおしたうから、゚ンゞンルヌムに隙間こさえお、ℓのタンク二぀積んで、ようやくや。」

 たるで、それが党お、ず蚀わんばかりだった。サスペンションの総入れ替えなど、あたり頭になかったかのように聞こえる。

 「䜙蚈な座垭は党郚ずっぱらったし、゜ヌラヌも茉るだけ茉せた。コンバヌタヌやなんかは、コン゜ヌルの裏や。電源は、぀ず䞀぀な。で、どうや」

 「たさか、ほんずにやるずは思わなかった・・・すごい」

 「アホか そら、蚀われたらやるよ なんや、やらんで良かったんか」

 「ち、違う違う 蚀っおはみたけど、どう蚈算しおも芋えないように積めるずは思わなかったから たさか、サスたるごず入れ替えお、バッテリヌをバラしお振り分けるなんお、想像もしおなかった。」

 「えらい頭䜿うたわ 冬やのに、頭から湯気出しお考えたんや たるっきり、パズルやど でっかいように芋えお、ほずんど隙間ないねん、この車」

  そう蚀っお、オヌナヌは詳しい仕様曞や匷床蚈算曞を挟んだ車怜蚌を千英に手枡した。

 「た、いろいろ倉えたずは蚀え、匷床もバッチシやし、車重も元から増で抑えたからな。この車いじるんは初めおやったけど、いろいろ勉匷んなったわ。」

 これが、このオヌナヌの尊敬できるずころだ。をいく぀か超えおいるはずだが、珟状に満足せず、垞に䞊を目指しお積み重ねおいくこずを、決しおないがしろにしない。

 皋床だが、慣らし走行をしおみおも、たったく䞍安はなかったず蚀う。たた、小柄な千英でも運転がしやすいように、ペダル類の䜍眮も倉えおあり、シヌトの調敎幅も増やしおあった。この蟺りは、千英の泚文にははいっおいなかったはずだが、きちんず運転する人間のこずたで考えた、いかにも職人らしい配慮ず蚀えた。

 「ビヌル、おおきにな」

 二人の満足した顔を芋お、オヌナヌも安心したようだった。笑顔でぎょこっず手を挙げるず、バックで出庫する千英の誘導のために、小走りで道路に出お行った。千英もシミュレヌタヌで鍛えた腕を掻かしながら、ゆっくりず車を道路に出した。由乃のミニクヌパヌず䞊ぶず、その倧きさがよくわかる。

 千英が先頭で、垰宅の途に぀いた。倧通りに出お巊折する時たで、オヌナヌが笑顔で手を振っおいるのがミラヌ越しに芋えた。

 千英の車は、もちろん家のガレヌゞには入れられない。倧型のカヌポヌトを発泚しおあったが、特泚品だったこずもあり、蚭眮工事は来春の予定だった。

 「運転は、どうだった 埌ろからは、䞊手いなヌず思っお芋おたけど。」

 「うん 最高だよ 芋晎らしが、特に。さすがにバむクから乗り換えだず、加速に䞍満はあるけど、思っおたより曲がりやすいし」

 「そっか。私も運転の緎習しおおかなくちゃね。巊ハンドル。」

 「由乃も気に入るず思うよ 特に、芋晎らしが」

 千英は車からの眺めが、盞圓気に入ったようだった。あれだけ高さがあれば、確かに気持ちは良さそうだった。それから千英は、遠埁の疲れも忘れお、いろいろな小物を取り付けたりしおいたようだった。


 翌日、倧孊で人文孊の講矩を受け終え、教宀を出ようずしたずころで枡蟺准教授に呌び止められた。

 「湯浅さん、ちょっず、いい」

 「はい なんでしょう」

 「倧孊院に進む぀もりっお聞いおいたけど、今も、そうなの」

 「ええ、その぀もりです。」

 「じゃあ、就職掻動ずかはしおないのね」

 「はい・・・。しおたせんけど・・・。」

 月に入り、幎生の就職掻動もたすたす掻発になっおいた。すでに、内内定的な物を手にした孊生もおり、そういった噂話が呚囲の焊りを生み出しおいた。卒業の芋蟌みが立ったものからそうした掻動に入っお行くわけだが、ただ目途の立たない孊生も、それなりにいるようだった。

 「実はね、関西の倧孊から、合同で発掘調査をやらないか、っお、お誘いが来おるのよ。纒向遺跡なんだけど、湯浅さん、興味ない」

 「えぇ もちろん、ありたすけど」

 「本圓 それでね、䞀、二幎生を䜕人か連れお行く予定なんだけど、湯浅さんにそのリヌダヌをお願いできないか、ず思っお。」

 「それは・・・ずおも光栄ですけど、四幎生や倧孊院の方々は」

 「うん・・・それがね、みんな、自分のこずが忙しくお、それどころじゃないみたいなの。あ、来週の月曜から、日間の予定なんだけど、倧䞈倫」

 「はい。特に、予定はないので。」

 「良かった 旅費は党額倧孊で出すし、講矩に出垭した扱いになるし、院に進孊するための経歎曞にも曞けるから、お願い、できないかな」

 「䞀応、家族にも盞談したいので、返答は明日でもいいですか もちろん、前向きに考えおいたすけど。」

 「それは、そうよね うん 明日でいいから、ぜひ、お願い」

 そう蚀っお、枡蟺准教授が手を合わせおきた。盞圓、困っおいるようだ。実は、前々から噂にはなっおいたが、枡蟺准教授は他の考叀孊、歎史孊の教授たちからは受けが悪いらしい。䜕事もズバズバ蚀う人だし、若い女性、ずいうのも、お歎々には気に食わない芁玠のようだった。提出しおいる論文を䜕件も握り぀ぶされおいおいる、ずいう話も聞いたこずがある。

 纒向遺跡ず蚀えば、邪銬台囜の可胜性が指摘されおいる、日本でも有数の遺跡だ。いくら個人の甚事があるからず蚀っお、四幎生や院生の党おが断るずは、到底考えられない。この話が、枡蟺准教授にもたらされたこずが面癜くない教授たちが、嫌がらせのためにそういった孊生を囲い蟌んだ可胜性は、十分に有り埗た。  

 枡蟺准教授ず別れるずすぐ、千英から電話が掛かっお来た。未だにリモヌトでしか講矩を受けられないようだが、恐らく二人の様子を仕掛けたカメラで芋おいたのだろう。

 「由乃 なんの話だった」

 恐らく千英は、スマホを䞡手で挟むように持ちながら、勢い蟌んで電話をしおきたのに違いない。由乃は今の話を千英に語っお聞かせながら、ピンず閃いた。

 「千英、今どこ」

 「え・・・ミニクヌパヌの䞭。」

 「オッケヌ、すぐ行くわ。」

 由乃はクルッずタヌンし、廊䞋を戻っお駐車堎ぞず向かった。せっかく関西たで行くのなら、ぜひ手に入れたい『挬物』がある。

 廊䞋を小走りに進みながら、由乃は具䜓的な蚈画を、頭で描き始めおいた。


「オツトメしたしょ」⑧
了。


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いいなず思ったら応揎しよう

八神 倜宵 蚘事が「いいな」ず思っおいただけたら「心付け」よろしくお願いしたす 犬や猫などの動物保護掻動に䜿わせおいただいおおりたす ï¿¥300でノミダニ忌避薬がか月分買えたす