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小説「オツトメしたしょ」⑳最終話

 決戊

 東京枯に浮かぶ、通称、「新什和島」。什和島の西偎に造営された新しい埋立地だった。䞀時期は、ここに倧きなカゞノの誘臎が怜蚎され、いずれは舞浜ずも橋で繋いで、子䟛から倧人たで楜しめる、䞀倧゚ンタヌテむメント斜蚭を建蚭しようず、気勢が䞊がったこずもあった。しかし、今ではその勢力は鳎りを朜め、建蚭途䞭で打ち捚おられた建物が数棟取り残されただけの、だだっ広い野原ず化しおいる。

 由乃が呌び出された䜜業班のビルは、ここにあった。階郚分たで䜜られ、そのたた攟眮されおいたビルを、ただ同然で「委員䌚」が手に入れたものだった。敷地は高い鉄のフェンスで囲たれ、足堎が組たれたたたで、萜䞋防止のために匵られたネットが、そのたたになっおいる。おかげでこのビルは、ずおも目立぀が、䞭で䜕が行われおいるかは倖から窺い知るこずができない。

 時折、このビルから悲鳎が聞こえるず話題になり、「心霊話島」ず呌ばれた時期もあった。芖聎数皌ぎの配信者がポツポツ珟れ始めた頃、その噂はあっずいう間に聞かれなくなり、今では蚪れる者もいない。界隈では、「ア゜コはマゞだから、絶察に近付くな」ず蚀われおいるず蚀う。

 この「島」に入るには、北偎の若掲から延びる道路か、東偎の什和島から延びる道路を通るしかない。普段はゲヌトが閉じられおいるが、今日は瑛吉の指瀺で、どちらも開攟されおいた。

 「若掲方面から、車が䞀台。叀いミニバンです。」

 時分、道路を芋匵っおいる男から、信二の持぀無線機に連絡があった。信二が瑛吉に芖線を送るず、瑛吉は静かにうなずいた。

 「よし、恐らくそい぀が笹鳎だ。若掲方面を固めろ。什和島班は念のためたで埅機、動きがないなら、戻っおこい。」

 無線機から、次々ず受領通知が送られおきた。続いお、ビルの前庭を照らし出すように配眮された投光噚のスむッチが入れられ、敷地が明るく照らし出された。

 瑛吉はここに、名の手䞋を朜たせおいる。䜜業班の人数だけでは足りないので、元手䞋で、掟に觊れお、組合から切られた人間や、付き合いのある海倖勢力から借りた人間も含たれおいた。圓然、党員が歊装しおいる。その倚くは朚刀やナむフ皋床の物だが、瑛吉や信二は、銃も携垯しおいた。

 二人は、前庭が党お芖界に入る、階の広い郚屋にいた。ここが指什宀ずなっおいお、䜜業班の䞭枢ずも蚀える堎所だった。普段瑛吉のいる班長郚屋は階に、信二のいる郚屋はこの䞊の階にある。今、この指什宀には、二人の他に名の手䞋がいお、監芖業務ずこたごたした無線のやり取りを行っおいる。

 二人が䞊んで、窓から前庭を芋䞋ろしおいるず、報告にあったミニバンが敷地に入っお来お、ラむトを消した。すぐに、敷地入り口の鉄扉が閉められる

 運転垭のドアが開き、運転しおいた人間が降りおきた。ぎったりずしたトラックスヌツに身を包み、頭はパヌカヌのフヌドで隠されおいる。䞀芋しお女ず分かる䜓型で、瑛吉はそのスタむルを芋お、䞋卑た笑みを浮かべた。手長より、こっちの方が党然いい。

 女は、閉められた門扉を䞀瞥するず、運転垭のドアを閉じ、䞡手をパヌカヌのポケットに突っ蟌んだたた、立っおいた。こちらからの指瀺を埅っおいるようだ。

 「車内には他に誰もいたせん。䞀人です。」

 車を芖認できる䜍眮の人間から、報告が送られおきた。こちらの指瀺通り、䞀人で来たらしい。

 その報告を受けた信二が、手䞋からマむクを受け取っお、静かに話し出した。

 「䞡手を出しお、顔を芋せろ。䞡手は、頭の䞊だ。」

 堎内のスピヌカヌから、信二の声が敷地内に響いた。


 

 その頃、千英は䜕ずかしお拘束服を脱ごうず、身を捩っおもがいおいた。䞡腕は胞の前で亀差するようにされおいお、肩関節を倖す䜙裕がない。だが、少しず぀、服の䜍眮をずらすこずに成功しおいた。右腕の締め付けはどんどん匷くなるが、巊腕に僅かだが、動かせる䜙裕ができおきた。もう少し、䜙裕が欲しい。あず、でいい。

 事務机の埌ろにある窓に、人の気配を感じお顔を䞊げた。ビルの倖に、由乃が立っおいた。由乃は窓から宀内を芗き、他に誰もいないこずを確認するず、ガラスカッタヌで窓に穎を開け、そこから手を䌞ばしお錠を倖し、宀内に入っお来た。

 「んんん んんん」

 千英が声にならない声を䞊げるず、人差し指を口に圓お、声を出すなずゞェスチャヌを送っおくる。千英はうなずいお黙った。

 由乃は無蚀でナむフを取り出すず、千英の拘束具の皮バンドを切り始めた。すぐに䞡手が動くようにはなったが、長い袖が怅子の埌ろで結ばれおいるため、ただ自由にはならない。由乃はナむフを拘束服の隙間に入れ、服自䜓を倧きく裂いた。その間も、由乃は小さく千英、千英ず呟きながら、千英の目から芖線を倖そうずしない。その目に、みるみる涙が溢れおきた。それを芋お、千英も涙を浮かべた。

 やっず、䞊半身が自由になった。千英が䞀番最初にしたのは、さきほど瑛吉に舐められた頬を、拘束服の吐しゃ物で汚れおいない郚分で拭き取るこずだった。これをどうにかいしない限り、由乃に抱き着くこずもできない。由乃たで穢れおしたう。

 その様子を䞍思議そうに芋おいた由乃は、すぐに気を取り盎し、䞋半身の解攟にかかる。拘束服の䞊から、ナむロンバンドで足が怅子に固定されおいた。玠早くそれを切っお身䜓を起き䞊がらせるず、埅ちかねたように千英が由乃の胞に飛び蟌んで来た。声を殺しお、泣いおいる。口枷は、千英が自分で倖しおいた。

 「千英、千英 」

 「よ、しのヌヌヌ」

 お互いに小声で名前を呌び合うのが、粟䞀杯のずころだった。ひずしきり抱き合った埌、身を離し、千英の顔の汚れを拭きながら、状況を説明した。

 その時、倖で倧きな爆発音が起きた。


 

 女は、ゆっくりずポケットから手を出した。その手に、䜕かが握られおいる。瑛吉や信二が異倉を感じ、譊告の叫びを䞊げるず同時に、女は半身を返しお䞡手を開き、ビルの正面口ず敷地入り口に向けお、次々に䜕かを発射した。

 飛翔した光の尟を匕く物䜓は、着匟するず激しい光ずずもに、無数の火花を散らした。たるで倪陜を盎芖した時のような眩しさに、階にある、無灯火の指什宀たでが、昌間のように明るく照らし出された。

 手で顔を芆うようにしおいた瑛吉ず信二が、光の闇から立ち盎るず、前庭では䜓のずころどころに小さな火の着いた手䞋たちが、闇の䞭で螊るようにしながら、必死に衣服に着いた火を消そうず躍起になっおいた。恐らく、階のロビヌでも、同じような光景が繰り広げられおいるに違いない。

 その飛翔䜓を撃った女は、既にミニバンに乗り蟌み、敷地の倖に向けお車を返しおいる最䞭だった。

 「くそっ やられた おいっ 党員階に集めろ 俺の郚屋だっ」


 

 「こっちは終わったわよ 順調に逃走䞭 ごめん、車はボコボコ」

 「ありがずう 車は適圓に捚おおいいわ 無事に逃げおね」

 「はいはヌい」

 由乃ず千英は、無事にビルを脱出し、既に裏手の氎路近くたで逃走しおいた。むダホンから聞こえおきたのは、矎雚の声だった。

 「今の、矎雚」

 「そうよ。停造を䟝頌したの。私のね。」

 「ははっ なるほどね ずころで、私たちはどこに向かっおんの こっち、䜕もないよ 海以倖。」

 「たあたあ、それは着いおからのお楜しみよ。」

 由乃は、走りながら千英にりィンクしお芋せたが、この暗闇では芋えたかどうかはわからない。二人はそのたた、島の端、コンクリヌトの防波堀たで走った。



 海の䞊に、がやけた裞電球の点いた䞀艘の船が浮かんでいた。由乃は迷いなくその船に飛び移るず、間もなく、千英も飛び移っお乗り蟌んだ。それは、逊殖業で䜿うような、小さな和船だった。

 「いいわ 出しお」

 由乃がそう蚀うず、船の゚ンゞン音が高たり、船は驚くほどのんびりず、防波堀を離れた。船の埌郚で、船倖機を操䜜しおいる人物を芋お、千英は仰倩した。

 「あ アむツ」

 「さんよ。本名は、名乗りたくないっお。ただこっちにいたから、応揎を頌んだのよ。」

 垜子を被り、マスクで顔を芆った男は、千英の声に気が付くず、軜く右手を挙げた。釣られた千英が、呆けたような衚情で同じように右手を挙げる。



 あの時、由乃は真っ先に、のこずを思い出した。バッグに忍ばせおおいた携垯をダむダルするず、コヌルで本人が出た。事情を䌝え、頌めた矩理ではないが、ず前眮きしおから話をし、残った品々を集めお枡すこずで、協力を承諟しおくれた。本圓は、正面からは由乃が乗り蟌み、時間を皌いでいる間に、千英の救出を䟝頌しようず思っおいたのだ。の身䜓胜力なら、力技だけで千英の救出は可胜なように思えた。

 だが、協力を埗られたこずで、由乃はもう䞀人、「組合」も「委員䌚」も関係性を掌握しおいないだろう人物がいるこずを思い出した。それが、矎雚だった。矎雚の方は、「自分を停造しお欲しい」ずいう䟝頌を出しお承諟させた。ずいうより、矎雚は由乃が匕くほどに積極的で、事情を䌝えるず、䞀も二もなく飛び぀いおきたのだ。矎雚は前々から、こういう冒険を望んでいたのだずいう。そのためなら、倚少の危険は喜んで冒す、ずたで蚀い切った。

 そしお、矎雚を匕き入れたずころで、これから行われる「仕䞊げ」が可胜になった。由乃はスマホを取り出すず、ある番号にリダむダルした。


 

 明神の瑛吉が先頭になり、駒止の信二が埌に続き、班長郚屋の扉を勢いよく開いた。二人ずも、その手には拳銃を握っおいた。それを構えお、宀内に螏み蟌む。だが、すでに千英がいた怅子は空になり、怅子の足元に切り裂かれた拘束着が捚おられおいた。奥の窓が開け攟しになっおいる。

 「くそっ 逃げられた おい 車を远わせろ どこかで合流するはずだ」

 瑛吉が窓から身を乗り出すようにしお呚囲を確認するが、二人の姿は芋圓たらなかった。信二が遅れお぀いおきた手䞋に呜什を䞋し、無線でも同じこずを指瀺したが、そう簡単にはいかないだろう、ず考えおいた。

 あの火花は、粘着性の可燃物質のようだった。倖の連䞭は転げ回っお火を消そうずしおいたが、いったん消えたず思っおも、すぐに再燃するのだ。䞀階ロビヌの状況は、こちらに向かいながら、カメラの映像をチラッず芗いただけでも、かなり燃え広がっおいたようだ。ほずんどの人間が、その消火に远われおいるはずだ。珟に、ここにも二人しか぀いおきおおらず、無線指瀺に぀いおもどこからも応答がない。

 その時、信二のスマホが着信を告げた。画面を芋るず、笹鳎の由乃からだった。もはや、電話を掛けおくる䜙裕すらあるらしい。

 「・・・なんだ」

 「すぐにそこから逃げ出しなさい。もちろん、手䞋も連れおね。それから、車には近付かない方がいいわよ。」

 「なに ふざけたこずを蚀うな たたすぐに捕たえおやる」

 「ふふ・・・奜きにしたらいいわ。でも、忠告したわよ」

 それだけ蚀うず、通話が切れた。その様子に気付いた瑛吉が、信二に詰め寄った。

 「誰からだ どうなっおる 捕たえたのか」

 「いえ・・・笹鳎からです。すぐに、手䞋を連れお逃げ出せ、ず。」

 「なにぃ あのアマ なめくさりやがっお 委員䌚に盟突いお、無事に枈むず思うなよっ」

 「いや、ありゃあ、脅しじゃねぇ。すぐに逃げた方が・・・。」

 「あ 手前たで、日和やがっお」

 そう蚀うず、瑛吉は手にした拳銃の匕鉄を匕いた。発の銃匟を受けた信二が、口から血を吐きながら吹き飛んだ。

 「ざたぁ芋ろ 前々から、気に食わなかったんだよ」

 瑛吉はそう蚀うず、螵を返しお班長郚屋を埌にした。残された信二は、薄れゆく意識の䞭で、自分が付き埓う人間を間違えたこずを埌悔しながら、自嘲気味に薄く笑った。

 「笹鳎の・・・お頭ず・・・腕を、ふるっお芋たかったなぁ・・・。」 

 最埌にそう呟いお、信二は絶呜した。



 「ホヌリヌ、ワヌブラヌ、アタックアタックアタック」

 「ダヌ。」

 それだけで、スマホを仕舞い蟌んだ。その時、真っ黒の物䜓が、特有の颚切り音を残しお、高速で船の䞊空を通過した。その、数秒埌、今二人が逃げ出しおきたビルが爆発した。䞊空から、炎の矢が立お続けに敷地に向かっお飛んでいき、次々ず爆発が起きた。


 

 䞀気に階段を降りた瑛吉は、䞀階ロビヌの惚状を芋お、思わずたじろいだ。火灜はどうしようもないレベルで広がっおいた。熱気が階段たで抌し寄せお来おいた。もはや、远跡どころではない。たずはここから逃げ出さなければ。

 その時、どこからか、糞を匕く高音が聞こえおきた。その数が増しお・・・。

 ドォオオオン

 倧きな音ず共に、ビルが倧きく揺れ、瑛吉は床に倒れ蟌んだ。あちこちから悲鳎が䞊がり、ビルを囲んでいた足堎が厩れ、入り口を半分ほど塞ぐ。その埌も立お続けに爆発が起こり、そのたびにビルが倧きく揺れ、軋み音や金属の折れる音がそこら䞭に響いた。

 その音が止むず、党員が立ち䞊がり、䞀気に玄関ぞず殺到する。瑛吉も手䞋を抌しのけるようにしお倖に出るず、駐車しおあった車が、すべお炎䞊しおいた。

 「な・・・䜕が・・・䜕が、起こった」

 そう考えた時、瑛吉は頭に匷い衝撃を受けお、意識を倱った。防音ネットで支えられおいた、足堎を接合しおいた金具が萜ちおきお、瑛吉に圓たったのだ。



 

 「うわヌヌヌ ダバ えっ ミサむル」

 「ミサむルなら、ずっくに建物は跡圢もないわよ。あれは、ロケット匟。」

 「いやいやいや ここ、日本だよ」

 「䜕蚀っおんの。定期的に、ミサむル飛んできおるじゃない。北から。」

 「そ、そうだけど 着匟はしおないよ 爆発も」

 「ちょっず、お願いしたの。」




 そこから、玄䞇キロ離れた暗闇で、聖が䜜戊完了の報告を受けおいた。聖は、䞊空から芋䞋ろした爆撃の効果に、満足した様子だった。投入したドロヌン機は、すでに暪須賀沖の米軍艊艇に着艊したず蚀う。今の映像は、静止軌道䞊にある衛星からの映像だ。芋た感じ、人的被害は埮少。恐らく、盎接の死者はいないだろう。ビルの屋䞊ず、車台を砎壊したのみだ。

 「湯浅家を、なめるんじゃないわよ・・・。」

 聖はそう呟くず、モニタヌの電源を萜ずした。ここから先は、兄、秀仁の出番だ。間もなく、珟堎に譊察ず消防が到着する。科孊鑑定で、爆薬が䜿われたこずが刀明するだろう。自動的に、兄の出番ずなる。党おを有耶無耶にし、廃ビルでガス爆発が起きた、ずいうような感じに決着するはずだ。すでに、聖の䞊叞である米囜の囜防長官から、日本政府の䞊局郚に話は通しおある。その事実も、秀仁を助けるに違いない。




 由乃ず千英を乗せた和船は、若掲ゎルフ堎の脇で停船し、そこで二人は船を降りた。

 「じゃあ、手はず通り、船は戻しおおいおね。玄束の品物は、近日䞭に届けるわ。」

 「む、わかった・・・これを、返しお、おく。」

 「ああ、いいのよ。受け取っおおいお。䜕かず必芁でしょ」

 「だが・・・。」

 「いいのよ。本圓に、ありがずう。この恩は忘れないわ。䜕か困ったこずがあったら、連絡をちょうだい。」

 「む・・・。」

 そしお船は、闇に溶け蟌むように消えお行った。由乃はに手持ちの䞇を䞞々枡しおいた。船を借りお、燃料を入れるのにどれくらいかかるのかわからなかったからだ。は残りを返そうずしたが、由乃は受け取らなかった。人間瀟䌚に溶け蟌めない以䞊、金を皌ぐ手段は乏しいはずだ。だが、にも数少ないながら、支揎者がいるようだった。船は、そうした人間の䞀人から借りたものらしい。助けを埗お、圌本来の目的を、無事に果たせるずいいが。


 翌朝

 翌日のニュヌスでは、新什和島での爆発事故が、倧きく報道されおいた。建築途䞭で攟眮されたビルで、倧芏暡なガス爆発があったらしい。消防が消火掻動を終えた埌、ビル内を捜玢するず、䞭から拘束されおいたらしい人間数名を助け出し、珟堎にいた人間名皋床が譊察に逮捕されたず蚀う。どうやら、どこかの反射組織のアゞトのようで、逮捕された䞭には倚数の倖囜人や、指名手配䞭の者も含たれおいたず蚀う。

 たた、明らかに射殺されたず芋られる男性の遺䜓も芋぀かった、ずのこずだ。すでにその犯人ず思しき人物が、凶噚ず共に逮捕されおいるらしい。

 珟堎では、他にも倚数の銃噚や、ロケット匟の砎片のようなものたでが発芋され、日本の銖郜、しかも、倧きなリゟヌト斜蚭からも皋近い堎所に、これだけの闇が迫っおいた事実を、アナりンサヌが驚愕した様子で䌝え、コメンテヌタ―がそれを補匷するコメントをしおいた。

 そのニュヌスを、自宅のリビングで芋おいた由乃ず千英は、束の間の平和を味わっおいた。この埌、二人は組合の聎聞䌚に参加するこずになっおいる。由乃はその埌、譊察にも出頭しなければならない。もしかしたら、倧孊も攟校される可胜性があった。

 間もなく、父が迎えに来るこずになっおいた。垰宅するず、聖から連絡を受けおいた暩蔵や克仁、䌊十郎たでが二人を出迎え、事の顛末に぀いおは話が終わっおいる。今日は、䌊十郎の報告を幎寄がどう受け取り、どのように凊断するかが䌝えられる。

 二人ずも、泣き腫らした顔をしおいた。由乃は、千英を無事に助け出せた安堵ず、事実を事実ずしお受け止め、すべおを受け入れおくれた家族に察する、感謝の涙だった。千英は、自分の䞍泚意で招いた結果のために、由乃の立堎が危うくなり、譊察に逮捕されるかも知れない、ずいう事実を突き぀けられた、悔悟の涙だった。


 終章

 あの事件から、日が経過しおいた。聎聞䌚の結果は、お咎めなしだった。明神の瑛吉の、組合の職務ずは関係のない、数々の悪行が衚沙汰にされたのだ。駒止の信二は、瑛吉ずの䌚話をほずんど党お録音し、自分の死埌にそのデヌタが組合に枡るように、手はずを敎えおいた。その䞭に、千英を誘拐した際のやり取りや、他にも特定の幎寄ずの金ず欲に塗れた䌚話たでが、克明に残されおいた。圓然、その幎寄の瑛吉ぞの過分な肩入れも、問題ずされた。

 ここは公にはされなかった郚分だが、その幎寄は暩蔵ず因瞁のあった人間だった。元手䞋だったその幎寄は、若い頃のお盗めの珟堎で、あろうこずか女を犯そうずした。もちろん、それは暩蔵によっお未然に防がれ、激しい制裁を受けお砎門された埌、経枈界で成功を収め、暩蔵ぞの埩讐を心に秘めお、組合の幎寄ずしお戻っお来たのだ。だが、暩蔵はその時には隠棲しおおり、積幎の恚みは孫の由乃に向けられた、ずいう蚳だ。

 事態を重く芋た組合は、これに掛かる党おの痕跡を消し去りに掛かった。その䞭には、由乃の倧孊構内での噚物損壊事件も、その埌の暎走行為も含たれた。結局、由乃はどこからもお咎めを受けるこずなく、聎聞䌚の翌日から倧孊に戻っおいる。

 たた、駒止の信二に぀いおは、その功瞟が組合に認められ、頭分ずしおの保障を家族が受け取れるこずになった。それは、幌い子䟛二人が、無事に生育するのに十分な金額だった。この件に関しおは、暩蔵、克仁、䌊十郎、そしおもちろん由乃ず千英が、連名で組合に匷硬に申し出た結果ずも蚀える。

 駒止の信二が、由乃や千英を助ける目的でそうしおいたかどうかは䞍明だが、結果的にそうなったのは、間違いがない。由乃は、最初に掛かっお来た信二からの電話は、瑛吉の蚱可を埗ない、独断のものだず考えおいた。あの時、信二に止められおいなければ、事はこんな颚に収たらなかったはずだ。誘拐に「委員䌚」が絡んでいるず知ったから、その埌の由乃の動きが倉わった。だから、由乃は最埌の瞬間、瑛吉ではなく、信二に電話を入れたのだ。


 

 「じゃあ、行こうか。」

 千英がフォヌドの運転垭で、助手垭の由乃に声を掛けた。今倜は、ずの玄束を果たすため、郜内某所の博物通に来おいた。は、ここに収蔵されおいる鎌倉時代の鉢金を手に入れたがっおいた。

 由乃がうなずいお、フォヌドから滑るように降車し、その前で巊手を差し出した。その手を、千英が握る。二人は顔を芋合わせるず、小銖を傟げた。

 「それじゃあ、今倜も」

 「オツトメしたしょ」

 滑るように敷地を進む二人を芋぀めるのは、倜空を明るく照らし出す、䞞い月だけだった。








 豪華な和颚䜏宅の、広い和宀の䞭倮に、䞀人の老人が、いかにも豪華な金刺繍が斜された垃団に包たれお、眠っおいた。

 その枕元に、藍染の装束に身を包んだ小柄な人圱が、老人を跚ぐようにしお䜇み、その寝顔を黙っお芋぀めおいた。

 やにわに、その人圱が、寝おいる老人の頬を、軜く叩いた。老人が目を芚たし、目の前の人圱に気付いお悲鳎を発し掛けた時、その口ず錻を塞ぐように、巊手が添えられた。老人はもがいたが、人圱はその胞の䞊に腰を䞋ろしお、その動きを封じた。

 右手で、口元の芆面を䞋ろす。その顔を芋お、老人の目が、さらに倧きく芋開かれた。

 「久しぶりだな・・・。やっぱり、おめぇはあの堎で殺しおおくべきだったよ・・・。俺の甘さが、孫嚘たちにたで迷惑を掛けるこずになっちたった・・・。」

 巊手の䞋で、老人が必死に銖を振る。正確には、振ろうずしお、振れなかった。

 「ぞっ・・・。俺より十も幎䞋のくせに、だらしのねぇ。明神の、八十吉よぉ。もう、十分だろうよ、黙っおあの䞖に逝きな。おめぇを、長く生かし過ぎちたった、せめおもの、俺のけじめさ・・・。」

 人圱の手の䞋で、老人がガクガクず痙攣した。やがお、芋開いおいた目がぐるんず裏返り、最埌の抵抗も収たった。人圱は、それから分近く手を離さず、そのたた老人を芋守っおいたが、埐々に元の䜍眮に戻っお来た県球の瞳孔が、完党に開いおいるのを確認するず、静かに手を離した。

 そのたた、䞀陣の颚のように、倩井に開いた穎に飛び䞊がるず、やがおその穎に、倩井板が䜕事もなかったように戻った。

 埌には、静寂だけが残されおいた。



「オツトメしたしょ」⑳ 最終話
了。


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