
【エッセイ】倍速
近頃、映画やドラマのレビューでよく見る光景があり、それは「結末が早く知りたくて倍速で一気見した」「二倍速でも面白かった」という声だ。率直に言えば、驚きを隠せなかった。たった一秒にさえ意味があるからだ。会話の間、役者の微妙な表情の変化、それらを観る折角の体験を雑に扱っているようで勿体なく感じてしまう。登場人物の葛藤からクライマックスに至る緊張感は薄れやしないか、過程をもっと味わうのはどうかと考える。しかしそういった視聴法を一概に否定するのも、悪い。多忙を極めており、けれども物語の世界観に触れたい一心で現実的な手段を取るのは合理的ではある。そもそも配信プラットフォームが一・五倍、また二倍速機能を搭載しているのだから業界が需要を認めているわけだし、自分のライフスタイルを尊重したうえで、多様な視聴スタイルが共存する時代なのだろう。どちらの楽しみ方も一長一短あり、各々の状況に適切な方法を選べばよい。