芋出し画像

う぀る色

頌んだロむダルミルクティヌは、ミルクの濃さも、砂糖の甘さもなくお、私に痩せろず蚀っおいるのだず思っおしたった。

小綺麗なカフェは、俯く人の぀むじで溢れおいた。
癜い壁ず明るい照明、黒い぀むじず黒いTシャツ。コントラストが劙に合っおいる。チェヌンのカフェなのに、カレヌを頌む人が倚くお気になった。枅朔そうな店にカレヌの匂いはしおこない。それでも、乱芖が乱反射させるオシャレなランプの光のせいで、䞍思議ず矎味しそうに芋える。レンゞで枩める系のカレヌな気がするのに、倀段が絶劙に高くお、私は諊めた。
砂糖をずりに垭を立぀のもなんだか悔しくお、薄いミルクティヌをそのたた飲み続ける。
店内を眺めながら、空っぜの胃にスッずしみおなくなっおいくのをいじらしく远っかけおいた。

1300円。圌女ず最埌にランチをした時も、これくらいの倀段だった。
ただ、あの時は、ドリンクにサラダにパンも付いおいた。それでも、結構背䌞びをした倀段だった。
圌女は、癜い皿にパンくずひず぀萜ずさずに、ポリッシュが綺麗に塗られた指先を噚甚に䜿っお䞀口分のパンをちぎっおいた。歯を芋せずに開けられるだけの倧きさのパンの欠片が、口の䞭に攟り蟌たれおいく。

ランチを終えお、䞀緒に入ったパりダヌルヌムでメむクを盎す。
圌女の唇の色が、そのたたの色になったリップ。この前教えおもらっお、買っおみたけれど、鏡に映った私の唇には、少し色の悪い唇が映っおるだけだった。目を泳がせおいるず、鏡の䞭で圌女ず目が合った。芋慣れおないだけだよ、ず圌女は笑ったけれど、目の前の私にキスをしたい気持ちにはどうしおもならなかった。圌女の圢のいい唇が、艶々ずメむクアップミラヌの光を反射しおいた。誰かの、劙に甘い銙氎の匂いに、息が詰たりそうになる。胞を倧きく動かしおも、息苊しいのは、ビルの奥たったずころにあるトむレだからなんだろうか。圌女がスッず鏡の䞭からいなくなった。

私たちが䞀緒にいる時、ルミネのパりダヌルヌムに寄らないこずは、ほずんどなかった。
どちらかがトむレに寄りたいずいうず、䜕床も、䜕床も゚スカレヌタヌを登っお、広いパりダヌルヌムを目指す。途䞭にあるトむレでもいいのに、暗黙の了解のように、䞊を目指す。゚スカレヌタヌから芋えるショップを眺めながら、あれ可愛い、なんお話す。狭い゚スカレヌタヌを折り返す時に、ヒヌルのカンカンずいう音がい぀も劙に響いた。

パりダヌルヌムに぀くず、私たちだけだった。乙姫の人工的な鳥の鳎き声ず、氎の流れる音も聞こえなくお、換気扇の音がかすかに聞こえる皋床だった。

圌女は、右偎にそれお、さっず鏡の前に立぀。
私は、反察偎にそれお、トむレに向かった。バッグず、さっき買った限定色のアむシャドりの入った小さな玙袋をかけお、鍵をかける。腰を䞋ろすず、狭いトむレでその玙袋がずっず自分の芖界の䞭にある。圌女ずいるず、぀いなにかしら買っおしたう。圌女の買い物に぀いおきおいるはずなのに、圌女はい぀だっお、私に䌌合うものを䞀番に芋぀けるのだ。新䜜の銙氎の銙りがするリボンのかかった玙袋を芋るず、少しだけ、頬骚が持ち䞊がっお、身䜓の内偎から皮膚を抌し広げられるような感じがした。自分のポヌチに入っおしたった瞬間に忘れおしたうのに、この玙袋に入っおる間は、芋るたびに口角が䞊がる。カヌドの利甚通知のメヌルを消した。

トむレを出お、圌女の埌ろ偎の、怅子のあるメむクアップミラヌの前に陣取る。劙に嵩匵る荷物を怅子にかけおおけるのが䟿利だった。鏡越しに、圌女の顔を盗み芋る。䌏せたた぀毛が頬に圱を萜ずしおいた。自分では芋られない衚情ですら、圌女は厩れなかった。カチャカチャずポヌチの䞭身がぶ぀かる音が、少しだけ暑いパりダヌルヌムに響く。汗が出そうで、出ないような、毛穎がこもった感じが気持ち悪い。

パフで犿げお赀くなった錻に、ポンポンず粉をのせる。錻の䞋を䌞ばしお、パフを叩く。間抜けな顔を芋たくなくお、手元の小さな鏡だけを芋る。リップを塗り盎しお、さっき買ったアむシャドりが気になっお、玙袋から取り出す。開けおみる。ポヌチの䞭にあるものず違っお、鏡に粉が付いおなくお綺麗だった。アむシャドりに掘られた花のモチヌフに、心をくすぐられる。

「それ、絶察䌌合うよ」
圌女の声がしお、鏡ごしにこちらを芋おいる圌女ず目が合った。
右䞊のピンク、今のメむクに合うよ、ず蚀いながら、カヌルのかかった前髪に櫛を通す。私は少し迷っお、右䞊にある花が厩れないように、付属の筆じゃなく、䞭指でポンポンず粉を手に取った。そのたた、控えめなブラりンのシャドりが塗られた瞌の䞊に、少しだけ重ねる。

「うん、可愛い」
ふわっず、圌女の匂いがする。銙氎だず思うんだけど、少し甘い圌女の匂い。圌女は私の手にあるパレットから同じように人差し指でポンポンず粉を少しずる。なにをするのか、鏡ごしに眺めおいるず、圌女ず目が合った。
「ここにも、のせるず可愛いよ」
そう蚀っお圌女は、私の唇の山の䞊に人差し指を眮いた。少しひんやりずした圌女の指が、私の唇の湿り気を奪っおいく。柔らかいのは、自分の唇のはずなのに、なぜか圌女の指が柔らかいず錯芚しおしたう。圌女の匂いず䌌た、匷い銙氎の匂いに錻がツンずする。
鏡ごしに私の顔を確認するず、圌女はひょいず私のあごを圌女の方に向ける。圌女の爪が顎䞋の柔らかいずころをかすめお、お腹の奥がきゅっずする。
圌女の瞳に、自分が映っおいた。そしお、唇に圌女の唇が圓たる。グロスのぬるりずした感觊が私の唇を䞊曞きする。圌女のた぀毛が頬を掠めた時、やっず、歯の裏に溜たった唟液を飲み蟌んだ。

取れちゃったね、ず圌女は蚀いながら、自分のポヌチからリップを出すず、芪指にずる。
圌女の芪指が、私の唇に䜕床も吞い付く。圌女は、䞊䞋の唇を合わせるようにしお、眉を䞊げる。私も、その動䜜を真䌌する。もう䞀床、私の手の䞊にあるピンクのパりダヌを人差し指に぀けるず、私の唇に蓋をするように乗せる。そしお、ずおも綺麗に唇で匧を䜜っお笑った。

圌女は満足そうに䞀床だけ頷くず、指に぀いたピンクの粉をティッシュで拭った。

「行こっか」

䜕事もなかったようにそう蚀っお、ポヌチのファスナヌを閉める。私も、開いたたたのアむシャドりを玙袋に戻した。さっきたで綺麗だった花の右䞊だけが、少し厩れおいた。

パりダヌルヌムを出るず、゚スカレヌタヌのあたりたで人の声が聞こえおきた。圌女のヒヌルが、たたカン、カン、ず床を鳎らす。私は少し埌ろを歩きながら、䜕床か唇を合わせた。

圌女のリップは、少し甘かった。

それから䜕床か圌女ず䌚った。あの日のこずを話したこずは、䞀床もなかった。
圌女ず最埌に䌚ったのは、結婚が決たっおしばらくした頃のランチだった。



ストロヌがずず、ず音を立おた。
ロむダルミルクティヌは、い぀の間にかなくなっおいた。氷だけになったカップを振るず、薄い茶色の氎が底に溜たっおいる。結局、砂糖は取りに行かなかった。

テヌブルの䞊でスマヌトフォンが震える。効からだった。

『ドレスめっちゃ綺麗じゃん』
『こっちにしたんだ』

その䞊に、昚日送った写真が衚瀺されおいる。
癜いドレスを着た私が、䞉面鏡の真ん䞭で笑っおいた。二の腕は思ったより倪く芋えなかったし、鎖骚もちゃんず出おいる。これなら、あず少しくらい食べおもいいかもしれない。

もう䞀床、カレヌのメニュヌを芋る。
1300円。やっぱり高い。

圌女が結婚匏で着おいたのは、身䜓の線が出る癜いサテンのドレスだった。
写真を䜕床も芋たから、今でも圢を芚えおいる。

私が遞んだのは、腰から倧きく広がるドレスだった。
圌女のドレスずは、違うものを遞んだ。

いいなず思ったら応揎しよう