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あの頃、通帳はいつも空っぽだった

    あの頃、私の通帳はいつ見ても空っぽでした。
    記帳しても、安心できる数字が並ぶことはなかった。

    今の私のお金の使い道は、とても地味です。
    パートで稼いだお金を、少しずつ貯蓄すること。若い頃には、どうしてもできなかったことを、今になって静かに続けています。

    20代の頃、私の家は苦しかった。
    父はアルコール依存症になり、無職に....
    その瞬間から、家の空気は変わり、
    私たち家族の生活は、お金中心に回り始めた。

    悲しんだり、父を責めたりする暇はなかったです。考えるのは、どうやって今月を乗り切るか、それだけでした。

    母はパートに加えて深夜の清掃の仕事を始め、
    姉は美容師を辞め、ふたつの仕事を掛け持ちした。
    私は歯科助手として働き、家計に入れるお金を必死で稼いだ。

    三人で集めたお金は、
    父の入院費と生活費で、あっという間に消えていった。
    通帳は、働いた証のはずなのに、
    なぜかいつも空っぽのままだった。

    同世代の友人たちは、海外へ行き、好きなことにお金を使っていた。
    その話題に、笑顔で相槌を打ちながら
    夜になると、ひとりで泣いた。

    家庭の事情は、誰にも話せなかったです。
    話してしまったら、何かが壊れてしまいそうで、ずっと胸の奥にしまい込んでいた。
    私の家は普通じゃ無いので恥ずかしくて話せませんでした。

    それでも私は、
    この経験はいつか自分の役に立つ!と信じて生活をしていました。
    きっと自分のためになる出来事だと!
    言い聞かせるしかなかっただけですが....

    姉は、父親の代わりのような存在でした。
    母は、仕事と家族と父のことを、
    一度も手放さずに抱え続けていた。

    当時の、疲れて丸くなっていた2人の背中を今でも思い出します。
    父が亡くなるまで、母や姉が本当に休めた日はなかったのかもしれない。

    あの頃があったから、
    私は今、お金を怖いものではなく、
    守ってくれるものとして扱えるようになった。

    少額だけれど、貯蓄をしている。
    投資の勉強も少しずつ始めている。
    貯蓄の数字が増えるたび嬉しくなる。

    昔、銀行で働いていた友人が、
    「通帳を開いて、残高が増えているのを見るのが好き」と
    言っていたことを思い出す。

    今なら、その気持ちがよく分かる。
    私も、自分のお金が増えていくことが、
    ただ、嬉しい。

    来年は新年早々、主人と投資のセミナーへ行く予定だ。無料のものだけれど、私にとっては、十分すぎる一歩だと思っている。

    あの頃の通帳は、いつも空っぽだった。
    でも、あの空っぽがあったから、
    今の一桁一桁の重みを、私は知っている。

    あの苦しかった時間に、
    今なら、ありがとうと言える気がする。

     
     
     
    1980年生まれ。 糖尿病。過去・現在・未来 気持ちを綴る。 古い建物や看板フォントがスキ。イラストは遊び。

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