
【ニュース】NTT、Amazonの衛星ブロードバンド通信サービス「Amazon Leo」を提供
1. 【ニュースの核心】NTTとAmazonによる戦略的提携の深化
NTTグループ3社による再販事業者契約の締結
NTTグループは、Amazonとの戦略的協業を具体化するため、2026年6月9日までにグループ3社がAmazon Leoとの再販事業者契約を締結したことを発表しました。契約を締結したのは、NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)、株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー、NTTメディアサプライ株式会社の3社です。今回の合意は、2023年11月に発表されたAmazon、NTT、スカパーJSATによる戦略的協業の枠組みをさらに拡大させるものです。今後は、国内の法人や官公庁向けに高度な衛星通信サービスを提供するための体制構築を急ぎます。具体的には、災害時のバックアップ回線の確保や、これまで通信環境の整備が困難だった山間部・離島におけるインフラの高度化など、幅広いユースケースへの対応を検討しています。また、NTTドコモの携帯電話基地局のバックホール回線としてAmazon Leoを活用することも計画されており、これによりモバイルサービスの提供エリア拡大とレジリエンス強化が同時に図られる見通しです。
ブランド名の変更と最新の運用状況
かつて「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」のコードネームで知られていたAmazonの衛星インターネット事業は、2025年11月に「Amazon Leo」へと正式に改称されました。Leoは「低軌道」を意味する「Low Earth Orbit」に由来しており、高度約590kmから630kmの軌道に数千基の衛星を展開する計画です。2026年6月時点において、Amazon Leoはすでに300基以上の衛星を軌道上に展開しています。2025年5月に初の低軌道衛星打ち上げに成功して以来、着実にネットワークの構築を進めており、最終的には3,232基の衛星コンステレーションによって、地球上の人口の約95%をカバーする通信サービスを提供することを目指しています。日本の排他的経済水域(EEZ)全体もエリアに含まれる予定であり、北緯56度から南緯56度の範囲で大容量・低遅延のブロードバンド環境が実現されることになります。
高速・低遅延を実現する3種類の通信端末
Amazon Leoは、利用者の用途に合わせて3種類の通信アンテナ端末を提供することを計画しています。以下の図を参照してください。

。最も小型な「コンパクト」端末は、約17.8cm四方のサイズで最大100Mbpsの通信速度を実現します。標準的な「スタンダード」端末は約28.9cm四方で最大400Mbpsの速度を提供し、一般企業や家庭での利用に適しています。そして、最上位モデルである「プロフェッショナル(Leo Ultra)」は、約48.3cm×76.2cmのサイズで、下り最大1Gbps、上り最大400Mbpsという光ファイバー並みの超高速通信を可能にします。これらの端末には、操作可能なフェーズドアレイアンテナが搭載されており、地上に半径10km弱の仮想的なスポットを作り出すことで、移動する衛星間でもシームレスな通信の切り替え(ハンドオフ)を制御します。これにより、低遅延かつ安定した通信品質をエンドユーザーに届けることが可能となっています。
2. 【業界構造と戦略】スターリンク対抗とAWS連携の強み
AWSエコシステムとのシームレスな統合
Amazon Leoが競合するSpaceXの「Starlink(スターリンク)」に対して打ち出す最大の差別化要因は、Amazon Web Services(AWS)との強力な連携です。企業ユーザーはAmazon Leoの衛星回線を利用することで、インターネットやVPNを経由せずに、AWSのクラウドサービスへ直接かつセキュアに接続できる「プライベート接続サービス」を利用可能になります。これは、世界中のあらゆる場所から低遅延で秘匿性の高い通信を求める企業にとって、極めて重要な付加価値となります。メディアスケッチ代表の伊本貴士氏は、Amazon Leoが個人利用よりも、企業がIoTシステムに組み込むなどのビジネス用途を主眼に置いていると分析しています。例えば、ジャングルなどの辺境地にある建設現場で車両の稼働状況をリアルタイムに把握し、その膨大なデータをAWS上のAIや機械学習で統合管理するといった、高度なソリューションの導入が容易になります。
NTTグループの宇宙ビジネスブランド「NTT C89」
NTTグループは、Amazon Leoとの協業を自社の宇宙ビジネスブランド「NTT C89(エヌティティ シーハチキュウ)」の重要な一翼として位置づけています。2024年6月に立ち上げられたこのブランドは、地上ネットワークと非地上系ネットワーク(NTN)を融合させる「TN-NTN」の推進を掲げています。NTTは、自社の強みである堅牢な地上インフラやシステムインテグレーション技術と、Amazon Leoの低軌道衛星網、さらにスカパーJSATの衛星アセットを組み合わせることで、あらゆる場所でシームレスに接続可能な次世代通信基盤の実現を目指しています。このような複数社による「共創」の姿勢は、自前主義でサービスを拡大するスターリンクの戦略とは対照的です。NTT代表取締役副社長の川添雄彦氏は、各社のリソースを結集することで、ICTインフラの高度化と社会課題の解決を加速させる未来に期待を寄せています。
3. 【今後の展開】打ち上げの遅延とサービス開始への道筋
打ち上げスケジュールを巡る不透明感
Amazon Leoの計画には、現在大きな課題も浮上しています。ジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙企業Blue Originの次世代大型ロケット「New Glenn」が、2026年4月に行われた試験飛行で衛星の軌道投入に失敗し、米連邦航空局(FAA)から運航停止命令を受けました。New GlennはAmazon Leoの衛星を大量に輸送するための主力ロケットとして期待されていただけに、このトラブルは衛星配置計画全体に支障をきたす可能性があります。米連邦通信委員会(FCC)との合意では、2026年7月までに全衛星の50%(約1,600基)を配置する義務が課せられており、Amazonはスケジュール面で窮地に立たされています。すでに1万基以上の衛星を運用するスターリンクに対し、Amazon Leoは現在約300基にとどまっており、外部の打ち上げ業者への依存を強めざるを得ない状況が続いています。
2026年度内の日本提供開始に向けた展望
数々の技術的・ロジスティクス的な課題を抱えつつも、日本国内でのサービス提供に向けた準備は着実に進んでいます。総務省は、衛星コンステレーションが地上ネットワークを補完する重要性を認め、円滑な導入に向けた制度整備を急いでいます。2025年12月には技術的条件に関する案が提出され、Ka帯非静止衛星通信システムの運用を可能にする省令改正に向けた意見募集も行われました。Amazon Leoの日本でのサービス開始は2026年度内を予定しており、当初はアンテナを固定して使用するブロードバンドサービスが中心となる見込みです。以下の図を参照してください。

。移動体での利用(ESIM)については、当初の検討対象からは外されていますが、将来的な拡大も期待されています。NTTグループは、今回の再販契約を通じて提供体制を整え、日本の通信インフラの安定化と、産業のDX推進に向けた新たな選択肢を提示していく方針です。