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⛪教会に住むピアニスト Kit Armstrong#️⃣75 シューマン《アベッグ変奏曲》🔔楽譜と想像力❝Musique, ma patrie ! ❞

    Musique, ma patrie ! #75では、シューマン(Robert Schumann)《アベッグ変奏曲》(Variations sur le nom ABEGG)(*1)が紹介される。キットアームストロングは、楽譜を見ると音楽が“聴こえる”という音楽家特有の感覚について述べる。その数音からさらに広大な音楽が頭の中で自然に即興されていく瞬間があるという。それは実際の演奏を伴わず、想像力の中だけで生成される「作曲的即興」であり、彼はそこに特別な美しさを感じている。(*2)この感覚を象徴する例として、シューマンの《アベッグ変奏曲》を取り上げる。“ABEGG”という名前から五つの音が導かれ、その音列が瞬時に音楽へと飛躍していく。文字や音名が直接想像力へ接続される、シューマン的な詩的発想が存在しているのである。一方で彼は、この作品を一般的なショパン風の滑らかで感傷的なロマン派様式で演奏することに違和感を抱いていると率直に認める。感情を「演じる」ことではなく、音楽そのものが持つ生成のエネルギーなのである。ここでの音楽は、数音から無限の想像力へ展開していく内面的即興として提示される。

    ①こんにちは、みなさん。音楽家をしていると、楽譜を見たときに音楽が聴こえるのか、とよく尋ねられます。②答えは、もちろん、イエスです。しかし時には、こんなことが起こります。③いくつかの音を見るだけで、それをはるかに超えて広がる音楽が聴こえてくるのです。④その瞬間、頭の中で思い描かれ、楽器なしに即興される音楽です。⑤このような“作曲的即興”は、とても美しい感覚ですが、コンサートではなかなか伝えにくいものです。⑥ともあれ、これから、シューマンが “ABEGG” という名前――つまり五つの音――を目にした瞬間に、その音楽的精神の中へ飛び込んできた作品を演奏します。⑦自分がこの作品を伝統的な性格づけでは演奏していないことは承知しています。しかし、この曲で一般的な、滑らかで感傷的な演奏様式を取ることには、どうしても居心地の悪さを感じるのです。⑧それは私自身の問題なのです。

    ①Guten Tag meine Damen und Herren. Als Musiker wird man ja oft gefragt, ob man Musik höre beim Anblick einer Partitur.〔Guten Tag「こんにちは」〕〔meine Damen und Herren「皆さま」〕〔als Musiker「音楽家として」〕〔wird ... gefragt「尋ねられる」〕〔beim Anblick「〜を見たときに」〕〔Partitur「総譜・楽譜」〕②Die Antwort ist, natürlich, ja. Aber manchmal kommt folgendes vor:〔die Antwort ist ...「答えは〜です」〕〔vorkommen「起こる」〕〔folgendes「次のこと」〕③man sieht ein paar Töne, und man hört eine Musik, die weit darüber hinaus geht.〔ein paar Töne「いくつかの音」〕〔weit darüber hinaus gehen「それをはるかに超える」〕④Eine Musik, die man sich in dem Moment im Kopf vorstellt, und improvisiert, ohne Instrument.〔sich vorstellen「思い描く」〕〔im Kopf「頭の中で」〕〔ohne Instrument「楽器なしで」〕⑤Diese Art von kompositorischem Improvisieren ist ein sehr schönes Gefühl, das sich nicht so leicht im Konzert vermitteln lässt.〔Art von ...「〜のようなもの」〕〔kompositorisches Improvisieren「作曲的即興」〕〔sich vermitteln lassen「伝えることができる」〕⑥Wie dem auch sei, spiele ich Ihnen jetzt ein Stück, das in den musikalischen Geist Robert Schumanns schoss, als er den Namen ABEGG - also, fünf Töne - gelesen hat.〔Wie dem auch sei「ともかく・いずれにせよ」〕〔in den Geist schießen「心に飛び込む」〕〔als「〜したとき」〕〔fünf Töne「五つの音」〕⑦Es ist mir bewusst, dass ich dieses Stück nicht nach dem herkömmlichen Charakter interpretiere, aber ich fühle mich bei diesem Stück mit der traditionellen geschmeidigen, empfindsamen Spielart ganz unwohl.〔es ist mir bewusst「自覚している」〕〔herkömmlicher Charakter「従来の性格づけ」〕〔sich unwohl fühlen「居心地悪く感じる」〕〔Spielart「演奏様式」〕⑧Es liegt an mir.〔es liegt an mir「私自身に原因がある」〕
    出典元(音声)Schumann Variations sur le nom ABEGG Musique, ma patrie !

    (*1)原題《Variations sur le nom ABEGG》シューマンが “ABEGG” という名前の音名配列(A-B-E-G-G)を主題化して作曲した初期作品。

    (*2)実際に楽器を演奏する以前に、音の断片から想像力の中で自発的に音楽が生成・展開していく感覚を指している。

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