まる4
もう1人の自分を作りました。
僕の名前はまるなので、そいつのことをまる2と名付けます。
まる2は、自分の代わりに働いてくれます。
仕事に行ってくれるのです。
しかも、それは自分だから、同僚や上司との会話も不自然なくこなしてくれます。
いつも僕がそうしているように、会話も仕事もします。
だから、僕は家で好きなことをしています。
ゲームをしたり本を読んだり、好きな時間を過ごしています。
まる2はいつもの僕どおり職場でお昼ご飯を食べ、面倒くさいから外食をし、ミスドを食べて帰ってきました。
僕も、家で夜ご飯を食べています。
そして、僕も、まる2も、一緒に部屋で寝ます。
僕は気づきました。
僕と全く同じ自分を作ったら食費が2倍かかってしまうじゃないか。
寝るスペースが2倍になってしまうじゃないか。
しかも、働いているのは、まる2だけなので、給料は1人分しか貰えません。
損した気分になったので、まる2を変えました。
食欲と、疲労をなくしました。
こうすればいいじゃないか。
僕は変わったもう1人の自分、まる3を見送って、家で好きなことをしていました。
収入に繋がりそうなスキルアップも目指そうとしました。
まる3が仕事から帰ってきました。
帰ってきたまる3は言いました。
「僕はお腹が空かないからお昼休憩の時間にすることが無かった。自席でお昼も食べずに本を読んでいたら、周りの人から何も食べなくていいの?と心配された。
あと、食に関してとか、疲れたー、とか、周りの会話についていくことができなくなったから、これまで通りのまるのように周りと関係を築くことはできない。」
これまで通り関係を築いていくことができないのは厄介だと思ったので、僕は対策を考えました。
これからは僕の代わりにこいつが働いてくれるから、と思い、僕の中にあった疲労と食欲を無くしました。
まる3をまる2に戻しました。
僕は十分に寝なくても食べなくても生きていけるようになりました。
労働はまる2に任せて、遊びの予定とか楽しいものは僕が行くことにしました。
僕は友達と話が合わなくなりました。
遊びの予定も、昼食の時間帯と夕食の時間帯を避けるようになりました。
友達が「喉が乾いたからお店に入ろう」と言った時もそれについて理解できなくなりました。
このままじゃ悲しいと思ったので、僕を元通りにして、まる2にスイッチをつけてまる4にしました。まる4を充電式にしました。家の中では小さくなるようにしました。
仕事以外の時間はスイッチを切れば良いことにしました。小さくなるのでスペースもとりません。
そして、会話のネタが無くなると困るので、僕の経験を共有できるようにしました。
朝、起きてまる4のスイッチをつけて、仕事に行かせました。
お昼ご飯は食べなくて良いけど、周りから心配されないようにおにぎりを1つ持たせました。
まる4が帰ってきました。
何も不自由はないみたいです。
水道代などが2倍かかってしまうので、
まる4をお風呂に入らなくても良いようにしました。髪も伸びないようにしました。
容姿の手入れが不要なように変えました。
僕はまる4が働いている間に、スキルを身につけ、仕事を見つけました。
自分で見つけた仕事だったのですが、それもまる4に行かせました。
僕は家で好きなことをしていました。
まる4は職場で昇進していき、給料も増えました。
月日が経って、まる4には彼女ができました。妊娠していることも分かりました。
まる4は自分に子どもができたことを親に報告しました。親は喜んでいました。
僕は「親が喜んでくれてよかった」と思いました。
まる4は幸せそうな顔をしていました。
僕が居なくても、まる4が僕の代わりに人生を過ごしてくれるようになりました。
僕は家でだらだらと過ごしました。
まる4は結婚をし、相手と同棲をすることになりました。
僕が2人居るのはおかしいので、まる4を消しました。
僕はこの世に1人だけになりました。
経験を共有しているので、相手の事も、これまでのまる4のことも理解しています。
仕事内容も、全部分かっています。家族への愛情もあります。
僕は働くのが面倒くさいからまたまる4を作ろうとしました。
でも、今回は以前と違います。
まる4を作ろうとしても、妻と子どもが居る都合上、なかなか作れませんでした。
だから、妻に許可を得ようとしました。
「僕の代わりに働いてくれる僕を作ってもいい?」
妻は反対しました。
「私は働いているあなた、外で活動しているあなたに惹かれたのよ。どちらも同じあなただとしても、同じように両方に愛情を注げるかどうかわからない。」
僕はじゃあ僕1人のまま生きていこうと思いました。
愛する人ができたおかげで、そう思えるようになりました。
でもたまに朝になると考えます。
今日だけ、まる4が居てくれたなら、と。