何を、受け渡すのか。― 情報・判断・権限・記録。
―必要なものを、必要な瞬間に、必要な人へ。
前回、
私たちは、
点と点をつなぐ「パス」を見てきました。
本人から救急へ。
社会の中にある「目」から救急へ。
救急隊から傷病者へ。
そして、
一つのことを考えました。
接続とは、受け取った人が、次の行動を始められること。
では、
その「次の行動」を始めるためには、
何が必要なのでしょう。
今日は、
パスそのものではなく、
パスの中を流れるもの
を見てみたいと思います。
一本の線の中には、何があるのか。
作戦ボードなら、
二つの点の間に、
一本の線を引くことができます。
でも、
現実の救助では、
線があるだけでは、
人は動けません。

「異変があります」
という一言だけで、
次の人は、
十分に動けるでしょうか。
誰に起きているのか。
どこにいるのか。
何が起きているのか。
いつからなのか。
今、どんな状態なのか。
それを見た人は、
なぜ「おかしい」と感じたのか。
そして、
受け取った人は、
次に何をしてよいのでしょう。
こうして考えると、
接続の中には、
少なくとも、
四つのものがありそうです。
① 情報|何が起きているのか
最初に必要なのは、
もちろん情報です。
本人。
場所。
症状。
時間。
連絡の可否。
普段との違い。
こうしたものが、
次の判断を助けます。
ただし、
ここで一つ、
気を付けたいことがあります。
すべての情報がそろうまで、待つ必要はない。
ということです。

救助につながる場面では、
情報を完璧に集めることよりも、
次の人が、
次の行動へ進めることの方が、
重要な場合があります。
だから、
必要なのは、
完全な情報ではなく、次の行動を始めるために必要な情報。
なのかもしれません。

② 判断|なぜ、次へ渡したのか
次にあるのが、
判断です。
ただし、
ここでいう判断は、
診断ではありません。
「これは脳梗塞です」
「これは心筋梗塞です」
と、
正解を当てることではありません。

「いつもと違う」
「呼びかけに反応がない」
「何度連絡しても出ない」
「予定の行動が起きていない」
「機器が異常を検知した」
そうした、
なぜ次へ渡そうと思ったのか。
という理由です。
前回、
私たちは、
「緊急」の感じ方は、
人によって違うと考えました。
だから、
判断を完全にそろえる必要はありません。
分からなければ、
分からないまま、
次に確認できる人へ渡すこともできる。
判断を完成させてから、渡す必要はない。
ここも、
接続を止めないためには、
大切なことだと思います。

③ 権限|受け取った人は、何をしてよいのか
情報が届いた。
異変も伝わった。
でも、
そこで、
もう一つの壁が出てくることがあります。
自分がここまでしていいのだろうか。
家族。
近隣。
訪問職。
管理人。
見守り事業者。
救急隊。
それぞれ、
できることは違います。
情報を見る。
本人へ連絡する。
別の人へ知らせる。
確認へ向かう。
救急へ渡す。
ある場所へアクセスする。
こうした行動には、
それぞれ、
「してよいこと」と、
「してはいけないこと」があります。
だから、
情報だけが届いても、行動するための権限がなければ、接続は止まる。
ということがあります。
一方で、
権限は、
広ければいいわけでもありません。
必要な人に。
必要なときに。
必要な範囲で。
使えることと、悪用されないこと。
その両方が、
求められます。

④ 記録|何が行われたのか
そして、
最後に必要になるのが、
記録です。
誰が、
いつ、
何を知ったのか。
いつ、
連絡したのか。
誰が、
受け取ったのか。
そのあと、
何が行われたのか。
こうした記録は、
誰かを責めるためだけにあるものではありません。
むしろ、
仕組みが、本当に作動したのかを確かめるため。
に必要です。
異変は、
何時に拾われたのか。
通知は、
何時に届いたのか。
次の行動は、
何時に始まったのか。
その間に、
どれくらいの時間があったのか。
それが見えれば、
どこで接続が止まったのか。
も、
見えてきます。
そして、
次の改善につなげることができます。

四つを並べてみる
こうして見ると、
接続には、
四つの要素がありそうです。
情報
何が起きているのか。
判断
なぜ次へ渡すのか。
権限
何をしてよいのか。
記録
何が行われたのか。
この四つが、
次の行動を支えます。
でも、
もう一つ、
大事なことがあります。
「送った」と、「つながった」は違う
情報を送った。
通知も出た。
でも、
誰も見ていない。
それでは、
接続したとは言えません。
情報を受け取った。
でも、
意味が分からない。
それでも、
次の行動は始まりません。
権限がある。
でも、
使われない。
記録だけが、
残っている。
それでも、
救助にはつながりません。
だから、
受け渡しには、
「受け取られたか」
だけではなく、
「次の行動に使われたか」
という視点が必要になります。
多ければいい、ではない
ここまで考えると、
つい、
「それなら全部渡せばいい」
と思いたくなります。
でも、
情報が多すぎる。
確認項目が多すぎる。
権限設定が複雑すぎる。
記録項目が多すぎる。
そうなると、
今度は、
仕組みそのものが、新しい壁になる。
ことがあります。
だから、
私たちが目指すのは、
全部を、
全部の人へ、
常に渡すことではありません。
接続に必要なのは、
「全部」ではなく、
「次へ進むために必要なもの」。
なのだと思います。
必要なものを、必要な瞬間に、必要な人へ。
本人。
家族。
近隣。
訪問職。
見守り。
救急。
住宅。
医療。
社会の中には、
すでに多くの点があります。
その点の間を、
パスが通る。
そして、
そのパスの中を、
情報。
判断。
権限。
記録。
が流れる。
でも、
それらは、
すべての人に、
同じ形で渡される必要はありません。
必要なものを。
必要な瞬間に。
必要な人へ。
そして、
受け取った人が、
次の行動を始められる。
そこまで進んで、初めて「接続」が仕組みになる。
私たちは、
そんな形を考えていきたいと思います。

では、誰に、いつ渡すのか。
ここまで来ると、
次の問いが出てきます。
誰が受け取るのか。
どのタイミングで渡すのか。
どこまで見せるのか。
どこまで使えるのか。
いつ権限が生まれ、
いつ終わるのか。
そして、
どうすれば、
必要な人には使えて、
悪意のある第三者には利用されないのか。
ここから先は、
少しずつ、
「考え方」から「設計」へ
近づいていきます。

ここから先は、「設計」の話になります
ここまで、
私たちは、
自宅の中で起きる異変を、
いろいろな角度から見てきました。
誰かを責めるのではなく、
人ではなく構造を見る。
すでにある備えを見る。
その備えが、
どんな条件なら作動するのかを見る。
そして、
点と点をつなぎ、
その間を、
何が受け渡されているのかを見てきました。
ここから先は、
少し話が変わります。
誰に渡すのか。
いつ渡すのか。
何を見せるのか。
どこまで使えるのか。
誰が承認するのか。
何を記録するのか。
そして、
必要な人には使えて、
悪意のある第三者には利用されないためには、
どうすればよいのか。
ここからは、
「考え方」から、「設計」へ。
もう一段、
深いところへ入っていきます。
そのため、ここから先の一部を有料記事にします
これまで、
協会が考えていることの多くを、
できるだけ広く公開してきました。
社会課題そのものや、
その見方は、
多くの人と共有したい。
それは、
これからも変わりません。
一方で、
具体的な設計に入ると、
安全性。
個人情報。
権限。
悪用防止。
記録。
知的財産。
そして、
実際に社会へ実装するときの責任。
そうした問題が、
一緒に入ってきます。
そのため、
今後、
具体的な設計に踏み込む部分については、
有料記事として整理していく予定です。
答えを隠すためではありません。
安全に、正しく、社会実装へつなげるためです。

これまで会員募集を急がなかった理由
自宅内遭難対策協会を立ち上げてから、
私たちは、
会員募集を前面には出してきませんでした。
理由は、
とても単純です。
何をする団体なのかを十分に示さないまま、先に人を集めたくなかったからです。
「こんな問題があります」だけで、
人を集める。
「こんな未来をつくりたい」だけで、
支援をお願いする。
それも、
一つの方法だと思います。
でも、
私たちは、
まず自分たちが、
何を見て、
何を考え、
どこまで進もうとしているのか。
それを、
できるだけ見える形にしてから、
一緒に考えてくれる人に、
声をかけたいと考えてきました。
だから、
少し時間をかけました。
ようやく、入口が見えてきました
まだ、
完成した答えがあるわけではありません。
むしろ、
これからが、
設計と検証の始まりです。
でも、
何を見ようとしているのか。
何を大切にするのか。
どこへ向かおうとしているのか。
その輪郭は、
少しずつ見えてきました。
そこで今後は、
有料記事という形で、
より深い設計の議論も始めます。
そして、
この研究や活動を、
継続して支えてくださる方とのつながりも、
少しずつつくっていきたいと考えています。
有料記事から得られた収益については、
研究活動、知的財産の保護、特許・商標に関する費用、実証、そして将来の社会実装
へつなげる原資として活用していきます。
読んでいただくことが、
次の研究につながる。
研究が、
仕組みになる。
仕組みが、
いつか、
誰かの時間を取り戻す。
そんな循環を、
つくっていきたいと思っています。

コメントについて
ここで、
一つお知らせがあります。
noteの仕組み上、
有料記事へコメントを書き込めるのは、
その記事を購入された方に限られます。
でも、
有料記事を購入しないと、私たちとの対話に参加できない。
という形にはしたくありません。
有料部分を購入されていなくても、
今回のテーマについて、
「ここはどう考えるのだろう」
「自分の地域では、こんなことがある」
「この部分には別の見方もあるのでは」
そんな意見や疑問があれば、
どうぞ残してください。
有料記事についてのコメントは、
一つ前の無料記事のコメント欄
へ書いていただければ、
そちらで読ませていただきます。
また、
協会の無料記事のコメント欄であれば、
どの記事でも構いません。
設計の一部は有料になります。
対話まで、有料にはしません。
読者のみなさんから見える景色も、
この研究を進めるための、
大切な観測の一つだと考えています。
入口は、これからも開いておきます
社会課題や、
私たちの考え方を伝える記事まで、
すべて閉じるつもりはありません。
広く共有する部分は、
これからも広く。
一方で、
設計として守るべき部分は、
守りながら。
思想は開く。
設計は守る。
その両方を大切にしながら、
次の段階へ進みます。

誰に、いつ、渡すのか。
― 接続の条件を考える。―



今回の区切り線について
今回の記事から、
本文の合間に、少し賑やかな「区切り線」が登場しました。
この表現を記事に取り入れるきっかけをくださったのは、
noteで相互フォローさせていただいている HONOさん です。
HONOさんから教えていただいた表現のアイデアと、
紹介していただいた元の記事を参考にしながら、
「協会なら、どんな区切り線にするだろう」と考えてみました。
そして、もう一つ。
私は以前から、
本宮ひろしさんの漫画 『雲にのる』 が大好きで、
そこに描かれていた、神さまたちがどこか身近で、人間くさく、時にユーモラスに動き回る世界観に惹かれてきました。
いつか、
そんな神さまたちの空気感を、
自宅内遭難対策協会の発信にも少し取り入れられたら――。
そんなことを考えていました。
HONOさんからいただいたきっかけと、
昔から心の中にあった『雲にのる』への思いが重なって、
今回の区切り線が生まれました。
研究の記事は、
どうしても少し固くなりがちです。
その合間で、
神さまたちには、
少し空気を変えてもらおうと思っています(笑)
HONOさん、素敵なきっかけをありがとうございました。
そして神さまたちには、
これから協会の中で、それぞれ仕事をしてもらいます。
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