
記憶のページ・第3話 満月の決意 :認知症になりつつある母親
9年前の8月満月の夜
大好きな孫娘とお寿司を食べに行った写真を嬉しそうに見せるイキシアおばあちゃん。これ以上何を言ったところで・・・とリュネットも悟り大きくため息だけつき、ただ写真を見つめました。
イキシアおばあちゃんにとっては、ダリアが4月にフランスへ行った事も、「先月」として間違いなく記憶の中で『近い過去』に認識していました。
だから本人は、たわいもない、ちょっとした間違い程度の感覚だったのでしょう。
反対にイキシアおばあちゃんの中では、リュネットの方がおマヌケさんの忘れっぽい相手で、『近い過去』に一緒に楽しくお寿司を食べた写真があるんだから!自分は間違いないと確信に満ちた思いでいっぱいだったのです。
まだ、認知症とは決まって無いけど・・・。どうしたらいい?
リュネットは帰りの車に戻るとエンジンもかけず色々としばらく考えていました。真夏の8月でも実家の周りは田んぼが広がり夜になると涼しい風も吹いてきます。
駐車場からは満月の光が大きく見えて月明かりの下にはイキシアおばあちゃんが大切に育てているバラの庭。花はもう咲き終わって枝葉が勢いよく伸びて上手く仕立てられています。
そして、その奥にはロッシュおじいちゃんと二人で大きくした会社が1階に、2階には自宅があり窓からは灯りが見えていました。
「会社の人は何か異変に気づいているのかな・・・。そういえば、会社の創立50周年の記念パーティーをするってロッシュおじいちゃんが言ってたけど遠方からの来客は森の宿に泊めたいって話してたなぁ・・・。お盆も宿泊客が多いし、秋には結婚式の予約も入ってるから私も来週から忙しくなるなぁ。とにかく、何とかしなくちゃ・・・。」
実家から30分、買い物もすませ車を運転しリュネットは森の宿の自宅へ帰ってきました。
「ただいまぁ、遅くなってごめんね、今から夕飯つくるから。あ!そうそう肉まんが東京から届いたのお裾分けでもらって来たから、セイロで本格的に蒸してアツアツを食べようよ。私もお腹すきすぎて死にそう!途中で抜けて出たから、仕事もまだ残ってるんだよねぇ」
<つづく>
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