
子供のことで、距離ができてしまったママ友のこと
私には仲良しのママ友がいる。
子供同士がとっても仲良しで、もう何年もお付き合いのあるHくんのママだ。
歳は私よりずいぶん若いけれど、コロコロとよく笑い、いつも感じのいい彼女。
さりげない気遣いがあって、一緒にいると気持ちが和む。とっても居心地のいい人だ。
うちの息子とHくんは、小学校に上がってすぐからの親友だ。
Hくんはとっても明るくて、ノリがいいのでいつも男子の人気者。
どちらかと言えば目立つことのない息子とは、全く違うタイプなのだが、二人はとにかく気が合うらしい。
「いーなぁ、〇〇(息子)の家は。ここんちの子になりたいよ」と、Hくんはなぜか我が家も大好き。
「バーバ、バーバ」と甘えるHくんに、
「おれのバーバだからな?」と息子と二人でバーバの取り合いをしていた幼い日を思い出す。
もうHくんはうちの子みたいなもんだねぇ、と
バーバこと母は目を細めてよく言っていた。
私にとってもそれは同じで、ほかのお友達には言いにくいことも、Hくんには我が子同然に言えてしまう。
「怪我したんだって?どこ?」
Hくんのおでこに触れる。
私はあまり人に触れない方なので、子供であってもお友達に触れることはめったにないけれど、
Hくんは別だ。
ふざけて肘でつついたりもするし、怪我をしたと聞けば、どこだどこだと傷を探す。
イタズラをすれば「コラ!」と、ポンと頭に手を乗せるのも、我が子にするのと何ら変わらない。
そんな関係から、自然とHくんのママとも親しくなっていった。
いつからか、学校のイベントはいつも一緒だった。
夏祭りや花火大会、家族みんなで楽しんだ思い出も数えきれない。
Hくんママは、一緒に我が子の成長を見守ってきた大切な仲間であり、同志なのだ。
そんな彼女と、最近ふとしたことで距離を感じるようになった。
原因は、他ならぬHくんだ。
中学校に入ってからヤンチャさに磨きがかかったHくんは、学校で度々問題を起こすようになった。
スマホを教室に持ち込んでしまったり、部活をサボったり、喧嘩して怪我をしてしまったり。
どれもそれほど大きなトラブルではないけれど、
親としては何度言い聞かせても聞かない我が子に悩み、トラブルが起こるたびに胸が押しつぶされる思いだろうと思う。
「毎日のように学校から電話がくるんだよ…」
困り果てた顔で、Hくんのママが言っていたことがある。
学校から電話が来るたびに謝りに行き、喧嘩の時は相手のお宅にお詫びに行ったという。
「大変だったね…」
私はうまくフォローすることができなかった。
彼女の気持ちがわかるだけに、
「大丈夫だよ」と、安易に言葉をかけてはいけないような気がしたのだ。
でも今思えば、その時彼女が欲しかったのは
その「大丈夫だよ」の、一言だったのかもしれない。
いつも一緒に行っていた授業参観に、ある日
「用があって行けない」と彼女が欠席した。
珍しいことだし、今回はどうしても都合がつかなかったのだと、何の疑問も持たなかった。
けれど彼女は、次第にほかの学校のイベントにも姿を見せなくなっていった。
子供のことで学校に行きづらくなってしまったのだろうと気がついた時には、もうほとんど彼女との接点はなくなっていた。
私が想像していた以上に、Hくんのママは胸を痛めていたのだろう。
当の本人Hくんは、今も相変わらずクラスのムードメーカーだという。
ただ、最近では息子とHくんも次第に仲間が変わり、前ほど一緒にはいないようだ。
子供の成長と共に、友達関係は変わっていく。
それは自然なことだ。
けれどやはり、我が子のように思ってきたHくんが息子から離れていくのは寂しかった。
そして、Hくんのママも。
夏休み前の授業参観。
彼女は来ないとわかっているのに、無意識に目が探してしまう。
いつもなら、一緒に子供たちの様子をみていた時間。
彼女の気持ちを思うと、胸が痛む。
学校に足を運ぶだけで、心が重くなる。
そんな日々を重ねてきたのだろう。
どんな言葉をかけても、今は彼女に届かないかもしれない。
子供は子供。
もちろん大切な存在に変わりはない。
けれど私にとっては、彼女も大切な友人だ。
母親ならみんな、子供のことで悩むし、傷つくこともある。
その痛みがわかるからこそ、母親同士で支え合えたらと思う。
時間はかかるかもしれないけれど、
Hくんママとまた前みたいに、笑って一緒に子供たちの成長を見られる日が来てほしい。
いつか今日の日を、懐かしく笑って思い返せる日がくるはずだ。
その時も私は、変わらず彼女の隣にいたいと思う。