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夏バテと私

    タグチテルヒコ

    小学生の頃、毎年夏休みの前には、いろいろ注意ごとの書かれたプリントが配られた。
    曰く、規則正しい生活をしましょう、冷たいものの取りすぎに注意しましょう、まぁそういった内容である。

    その中で男の子が弱って座っているイラストに、夏バテに注意という文章が添えてあった。
    小学校の低学年の自分は「夏バテ」という言葉にこの時初めて出会ったわけだが、終業式の日には先生にも配るものが山ほどあって、いちいちプリントの説明をしてくれない。
    イラストから考えて、どうも夏にかかる特有の病気のように思われたが、同じプリントに夏風邪に注意、というのがあって今ひとつ違いがわからなかったのである。

    もちろん後に夏バテとは病気というより、暑さによる体調不良全般をいうのだと知るのだが、いまいちピンと来なかった。
    なぜか?
    もちろん暑くて体調が悪い、という体験をしたことがなかったからだ。

    散々いわれていることだが、昔は今ほど暑くなかった。
    クーラーもなかったが、子供心に扇風機すら欲しかったという覚えがない。
    そして何より、子供は元気だ。
    誰かと遊ぶ約束などなくとも、とりあえず外に出て、太陽の下を徘徊していたが、それが辛かった記憶はないし、ラジオ体操だ、プールだ、お盆の帰省だと、こなさなければならない屋外イベントも、楽しくはあれ大変ではなかった。

    つまり自分は夏バテというのをしたことがなかったし、その後も大人になるまで、特に夏に体調が悪いという経験がないのである。
    夏バテという言葉は世に敷衍しているほどには、わたしには当たり前ではなかったのだ。

    だがしかしだ。
    地球温暖化による異常気象は、ここ数年まさに異次元の域に突入した。
    特に今年の夏はなかなかに厳しい。

    今日もちょっと用を足しに外出した後は、ずっと冷房の効いた部屋で過ごしているのだが、なんだか体が重い。
    立ち上がれば少々立ちくらみがしたり、ちょっと昼寝をしてみてもどうも頭がすっきりとしない。

    いよいよ歳をとって老化しているのかとも思ったが、もしかしたらこれこそが噂に聞く夏バテなのかもしれない。
    ついにこの異常な暑さが、わたしにも「バテる」という経験をもたらしたのだろうか・・・・・。

    なんてことを考えたのだが、相変わらず食欲だけはある。
    やっぱりただの老化かもしれない。


     
     
     
    ずっと好きなもの作りをしていたら、還暦を過ぎてしまった人。 人生の満足度はそこそこ。 だが無名、かつ売れてない。 胡散くささとは無縁の人生を送ってきたつもりが、じゅうぶん胡散くさいよね。

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