
旨味が人を包み込む ポーランドのお袋の味ビゴス
キッチンの隅でザワークラウトの瓶がポツンと佇んでいる。
スープを作ろうと買ったはずが、料理の名前を忘れてそのままになっていた。
「ビゴスかな…」
ビゴスとは別名ハンターズシチューと呼ばれる、ソーセージやザワークラウトを使ったポーランドの煮込み料理。
去年初めて作った時は市販のザワークラウトがスーパーでは見つけられず、そこから手作りした。
あれ以来、
「最も手間のかかる料理」
という印象が拭えない。
しかし目の前に鎮座する大量のザワークラウトと暫く睨めっこすること10分、遂に腹を決めた。
ビゴスのレシピは調べれば調べるほど、人によって少しづつ違う。
迷った末に幾つかのレシピを参考に、今回は良いとこどりで作ってみることにした。

始めにザワークラウトを水で洗って余分な塩気と水分を取り除く。

鍋に椎茸の戻し汁とザワークラウト、そして千切りにしたキャベツを入れて煮詰めていく。

その間にフライパンでみじん切りした玉ねぎと肉、ソーセージを炒めよう。

火が通ったら、それを鍋に投入。
最後に赤ワイン、トマトピューレ、刻んだ椎茸とプルーン、オールスパイス等のスパイスを入れたら、あとはひたすら煮込むだけ。

一時間ほど煮込んだところで味を整えたら完成!

見よ、この驚くほど地味な見た目を!
そうそう、これ!この茶色がビゴスだったと思い出す。
しかし一口食べてみると、前回の味のイメージを一瞬にして塗り替えた。
程よい酸味のザワークラウトと椎茸やトマトのうま味が爆発。プルーンも影武者のようにさりげなく風味を引き立てている。
「こんなに美味しかったの?ビゴスって??」
そう言いながらスプーンを持つ手を止めて、娘と目を見開いてしばらく見つめ合う。
思わず「お母さーん」と叫びたくなるくらい「ホッ」とする味に舌鼓を打った。
実はビゴスは作った翌日以降の方が美味しいと言われている。
なので翌朝の朝食でも頂くことに。
一晩寝かせたビゴスは、驚くことに味が馴染んで一体感が増していた。
食べ終えた娘が、
「また作って」
と言う。
それを聞いて、オンライン英会話のポーランドの先生たちがいつもビゴスの話しをする時に、
「私の母は···」
と切り出していたことを思い出した。
娘の記憶のなかにもこのビゴスが、母の味として刻まれていたら嬉しい。