メインコンテンツへスキップ
見出し画像

「気をつけ」があなたの不調をつくっている

    「私たちは『気をつけ』を教わったのであって、『楽な立ち方』は一度も教わっていない。」


    「先生、姿勢が悪いから肩こりになるんですよね?」

    40代の女性がそう言いながら、胸を大きく張りました。

    肩を後ろへ引き、背すじをピンと伸ばし、あごを引き、腰に力を入れる。

    いかにも「いい姿勢」です。


    「普段から気をつけているんです。なるべく姿勢を良くしようと思って。」

    その表情には、「これで合っていますよね?」という期待がありました。

    私は少し笑って言いました。

    「もう少し、力を抜いてみましょうか。」

    すると女性は驚いた顔で私を見ました。

    「えっ? 力を抜いたら姿勢が悪くなりませんか?」

    「実は、その逆なんです。」

    このやり取りは、私の整体院では特別なことではありません。


    肩こりや腰痛、首の痛み、反り腰で来院される多くの方が、「姿勢を良くしよう」と努力しています。

    そして、その努力が、かえって体を苦しめていることが少なくないのです。

    私は整体師として、多くの患者さんの体に触れてきました。

    そこで気づいたことがあります。


    不調を抱えている人ほど、「姿勢を良くしよう」と頑張っています。

    本来なら逆のはずです。

    姿勢を意識している人ほど健康であっても、おかしくありません。

    それなのに、なぜ肩こりはなくならないのでしょう。

    なぜ腰痛は繰り返すのでしょう。

    なぜ反り腰は改善しないのでしょう。

    その答えは、「姿勢が悪いこと」ではなく、「いい姿勢」だと思い込んでいる姿勢そのものにあるのではないか。

    私はそう考えるようになりました。


    気をつけという思い込み


    「気をつけ!」

    私たちは、この言葉を人生で何回聞いてきたでしょう。

    教室で。

    体育館で。

    校庭で。

    入学式で。

    卒業式で。

    朝礼で。

    先生が教室に入ってくると、

    「起立。」

    「気をつけ。」

    「礼。」

    この動作を何百回、何千回と繰り返します。

    そのたびに私たちは、「これがいい姿勢なんだ」と体で覚えていきます。

    胸を張る。

    背すじを伸ばす。

    あごを引く。

    腰に力を入れる。

    子どもの頃には何も疑いません。

    先生が教えてくれたことだから。

    学校で教わったことだから。

    だから大人になっても、「姿勢を良くしよう」と思った瞬間、私たちの体は自然とあの姿勢を再現します。

    それが「気をつけ」です。


    でも、ここで一つ考えてみてください。

    そもそも「気をつけ」とは、何のための姿勢なのでしょうか。

    「気をつけ」は、長時間楽に立つための姿勢ではありません。

    規律を保ち、合図とともに一斉に動くための姿勢です。


    その歴史をたどると、近代の軍隊で用いられた立ち方が学校教育にも取り入れられ、集団行動や礼儀を教える場面で定着していった経緯があります。

    つまり、「気をつけ」は規律を示す姿勢であって、体を休める姿勢ではありません。

    もちろん、その姿勢を学校で教えること自体を否定したいわけではありません。

    学校には学校の役割があります。

    規律を学ぶことも、礼儀を学ぶことも大切です。

    しかし、規律のための姿勢と、健康のための姿勢は、同じではありません。

    ここを、私たちは誰からも教わっていないのです。


    私たちは「気をつけ」は教わりました。

    けれど、「楽な立ち方」は一度も教わっていません。

    だから肩が凝ると、もっと胸を張ろうとします。

    腰が痛くなると、もっと背すじを伸ばそうとします。

    その結果、さらに体は緊張してしまう。

    良くなろうとしているのに、悪循環に入ってしまうのです。


    私は整体院で、その光景を何度も見てきました。

    「姿勢を良くしてください。」

    そうお願いすると、多くの患者さんは決まって同じ姿勢になります。

    胸を張る。

    肩を引く。

    腰に力を入れる。

    あごを引く。

    まさに「気をつけ」の姿勢です。

    誰一人として相談したわけではありません。

    それなのに、驚くほど同じ姿勢になるのです。

    これは偶然ではありません。

    私たちの体には、「いい姿勢とは気をつけである」という記憶が深く刻み込まれているからです。


    しかし、その姿勢を続けるほど、首や肩、背中、お腹、お尻、太ももの筋肉は休むことなく働き続けます。

    私はこの状態を「過緊張姿勢」と呼んでいます。

    見た目はきれいでも、体の中ではアクセルを踏み続けている。

    そんな立ち方です。

    そして私は、この「過緊張姿勢」こそが、多くの現代人の不調を生み出している大きな原因の一つではないかと考えています。


    過緊張という落とし穴


    「先生、力を抜いているつもりなんですけど……。」

    施術中、患者さんからこんな言葉をよく聞きます。

    私は肩にそっと手を添えながら、

    「では、この肩の力だけ抜いてみましょう。」

    と声をかけます。

    でも、なかなか抜くことができません。

    「先生、力を抜くって難しいですね……。」

    本人は一生懸命力を抜こうとしているのに、どこかが必ず緊張してしまうのです。

    その様子を見ていると、私はいつも同じことを思います。

    この人は「力を入れること」が上手なのではありません。

    力を抜くことを習ってこなかったのです。

    だから悪いわけでも、体が硬いわけでもありません。

    ただ、知らないだけなのです。


    私は整体師として何万人もの体に触れてきました。

    その中で、一つ気づいたことがあります。

    不調を抱える人ほど、体が頑張っています。

    肩こりの人は肩が頑張っています。

    腰痛の人は腰が頑張っています。

    反り腰の人は腰だけでなく、お腹やお尻、太ももまで頑張っています。

    本人は休んでいるつもりでも、筋肉はずっと仕事を続けています。

    私はこの状態を「過緊張姿勢」と呼んでいます。

    筋肉は、本来とても真面目です。

    必要なときにはしっかり働きます。

    そして仕事が終われば、ちゃんと休みます。

    歩くときは脚が働く。

    荷物を持つときは腕が働く。

    階段ではお尻や太ももが働く。

    どれも役目が終われば力を抜きます。

    それが自然な体です。


    ところが過緊張姿勢では違います。

    立っているだけ。

    話しているだけ。

    信号を待っているだけ。

    それなのに首は頭を支え続け、肩は上がり、胸は張り、腰は固まり続けています。

    私はよく患者さんに、こんな例え話をします。

    「車で赤信号に止まっているとき、アクセルを踏み続けますか?」

    もちろん、誰も踏みません。

    ブレーキだけで十分だからです。

    もしアクセルを少し踏みながら止まっていたら、燃料は無駄になり、エンジンにも負担がかかります。

    人間の体も同じです。

    必要以上の力を入れたまま生活していれば、筋肉は疲れ、血流は悪くなり、呼吸も浅くなります。

    そして、その小さな負担が何年も積み重なっていきます。

    だから私は、不調はある日突然始まるものではないと思っています。

    毎日の「少し頑張りすぎ」が積み重なった結果なのです。


    実際に施術をしていると、不思議な瞬間があります。

    余計な力が抜けた瞬間です。

    「あれ?」

    患者さんがそうつぶやきます。

    「立つのって、こんなに楽なんですね。」

    「呼吸が入りやすいです。」

    「足が軽い。」

    その表情は、何か特別な技術を身につけた人の顔ではありません。

    頑張ることをやめられた人の顔です。

    私はその瞬間を見るたびに思います。

    人間の体は、本当はもっと楽に立てるようにつくられている。

    無理に胸を張らなくてもいい。

    背すじを意識し続けなくてもいい。

    腰を固めなくてもいい。

    必要な力は自然に入ります。

    そして不要な力は自然に抜けます。

    それが健康な体です。

    ところが私たちは、いつしか「頑張ること」が正しいと思うようになりました。

    仕事も頑張る。

    勉強も頑張る。

    運動も頑張る。

    そして姿勢まで頑張る。

    でも、体には少し酷な話です。

    筋肉には、「真面目さ」は分かりません。

    分かるのは、「使っているか、休んでいるか」だけです。

    だから体は、頑張れば頑張るほど疲れてしまいます。

    私は、姿勢だけは頑張らなくていいと思っています。

    いや、むしろ頑張らないほうがいい。

    本当にいい姿勢とは、筋肉が必要最小限だけ働き、呼吸が自然にできて、長時間立っていても疲れない姿勢です。

    では、その姿勢とはどのような姿勢なのでしょうか。

    私は長年、多くの患者さんの体を見続ける中で、一つの共通点に気づきました。

    頑張らなくても美しい姿勢には、ある共通したバランスがあります。

    私はその姿勢を、「フラット姿勢」と呼んでいます。


    楽な立ち方はフラット姿勢


    では、本当にいい姿勢とは、どんな姿勢なのでしょうか。

    私は整体師になってから、この問いを何度も考えてきました。

    患者さんの体に触れ、立ち姿を見て、歩き方を見て、施術をして、また立ってもらう。

    その繰り返しの中で、一つだけ確信したことがあります。

    いい姿勢とは、「形」だけではありません。

    状態です。


    私たちは姿勢というと、どうしても見た目を気にします。

    背すじは伸びているか。

    猫背になっていないか。

    肩は左右そろっているか。

    骨盤は立っているか。

    もちろん、それらも大切です。

    しかし、もっと大切なことがあります。

    その姿勢は、楽ですか。

    私はいつも患者さんに、そう問いかけます。

    どれほど見た目がきれいでも、立っているだけで疲れる姿勢なら、それは体にとって自然な姿勢とは言えません。

    反対に、余計な力が入っておらず、呼吸が深くできて、長く立っていても疲れない姿勢なら、それは体にとって良い姿勢だと私は考えています。

    私はそんな姿勢を、「フラット姿勢」と呼んでいます。

    フラットとは、真っ平らという意味ではありません。

    力が入りすぎてもいない。

    力が抜けすぎてもいない。

    必要な筋肉だけが静かに働き、それ以外は休んでいる状態です。


    見た目も同じです。

    胸を張りすぎない。

    背中を丸めすぎない。

    腰を反らせすぎない。

    どちらかに偏るのではなく、体が自然と真ん中に戻っている。

    そんな状態です。

    見た目も良く、適度にリラックスした姿勢、それが「フラット姿勢」です。

    私はこの姿勢を考えるとき、いつも一人の人物を思い浮かべます。

    お坊さんです。

    お寺で静かに立っているお坊さんの姿には、不思議な美しさがあります。

    胸を張っているわけではありません。

    肩を引いているわけでもありません。

    腰を反らせているようにも見えません。

    それなのに、背すじは自然に伸びています。

    呼吸は穏やかで、立ち姿には安定感があります。

    イメージは「ビシッ」ではなく「スーッ」とした感じです。

    見ているだけで、こちらまで心が静かになるような立ち方です。


    私は、お坊さんだから姿勢がきれいなのではないと思っています。

    余計な力が抜けているから、美しく見えるのです。

    つまり、美しい姿勢は「つくるもの」ではなく、「現れるもの」なのです。

    患者さんにも、私は同じことを伝えます。

    「姿勢を良くしようとしないでください。」

    初めて聞く人は、たいてい驚きます。

    「えっ、いい姿勢にしなくていいんですか。」

    そう聞かれます。

    私はこう答えます。

    「姿勢を良くすることより、体を楽にしてあげてください。」

    余計な力が抜けると、体は自分で一番楽な場所を探し始めます。

    肩は自然に下がります。

    呼吸は深くなります。

    首は軽くなります。

    腰も必要以上に反らなくなります。

    そして結果として、見た目まで美しくなるのです。

    私はこれまで、多くの患者さんがその変化を見せてくれました。

    施術が終わったあと、鏡の前に立った患者さんが言います。

    「何も頑張っていないのに、姿勢が良くなっています。」

    私はいつも、その言葉がうれしくなります。

    そうなんです。

    本当にいい姿勢とは、頑張った結果ではありません。

    頑張ることをやめた結果なのです。

    私たちは子どもの頃から、「もっと頑張りなさい」と教えられてきました。

    だから姿勢まで頑張ってしまいます。

    でも、人間の体は機械ではありません。

    締めつければ締めつけるほど、動きは悪くなります。

    少し余白があるから、よく動きます。

    少し遊びがあるから、疲れません。

    姿勢も同じです。


    健康とは、力を入れ続けることではありません。

    必要な力だけを残し、余計な力を手放すことです。

    私は、この考え方がもっと広がれば、日本人の肩こりや腰痛は今よりずっと減るのではないかと思っています。

    目的は、姿勢を矯正するためだけではありません。

    あなたの体に長年染みついた、「頑張るクセ」をほどいていくことです。

    もし、この話を読み終えたあとに、あなたが一日に一度でも肩の力を抜き、「今日は少し楽に立ってみよう」と思えたなら、それだけで私はこの話を書いた意味があったと思っています。

    本当にいい姿勢とは、誰かに見せるための姿勢ではありません。

    あなた自身が、心地よく生きるための姿勢なのです。


    藤沢市で整体をお探しならこちら!
    肩こり・腰痛専門整体サロン デイリーエコケアステーション


     
     
    姿勢コーディネーター。神奈川県藤沢市の整体サロン デイリーエコケアステーションを運営しています。お店の情報や肩こりや腰痛、姿勢やリラクゼーションに関する情報を発信していきます。正しい姿勢の知識を通じて穏やかで健やかな生活が送れるようなお手伝いができれば嬉しいです。

    あなたへのおすすめ