
おれの子だから。
「もう夏休み終わってんねんで」
言いたくなかった小言がつい口をついて出て、こっちを見て一瞬だけ表情を曇らせた長男の視線は再びパソコンの画面に戻った。
彼はこの暑い夏をほぼ経験していない。
ずっとクーラーの効いたリビングに籠ってゲームかYouTubeだ。
先生から温情で出された宿題は「生き物の写真をとってタブレットで送ってください」だったけど、結局彼が家を出たのはちいかわの映画を観に行った時だけ。
そんなレアな生き物観たんだから、せめてちいかわの写真送れよ、と思う。
そうするうちに夏休みは終わって、一緒にオンラインでゲームをしていたクラスメイトは日常生活に戻った。だけど長男だけは生活リズムも何も変わらない。
4年生の途中で学校に行けなくなって以来、長男はずっと家にいる。
6年生の修学旅行は行かずに終わった。
小学校最後の夏休みも終わってしまった。
このまま、運動会も終わって、音楽発表会も終わって──きっと小学校生活が終わるのだろう。
周りのお友達が過ごす場所に長男だけがいない。
やっぱりそれってとても、とても辛い。
「長男くんが笑顔なら、元気でいられる居場所があるならいいじゃない」
そんな風に言ってもらうことは有難いし、自分も自分にそう言い聞かせてきたし、不登校の初期よりは格段に笑顔が増えた長男を見ると、(これでよかったんだよ)と思わなくもない。
だけど、もう勉強らしい勉強はこの2年間ほとんどしてないし、 ご飯とお風呂以外はずっとヘラヘラと画面を見ている長男を見ると、(ほんとにこれで良かったのかな)と思ってしまう。
そのうちエネルギーがチャージされたら動き始めるはず、って言っても「そのうち」がやってくる気配は今のところない。むしろ、前は少し見えた気がした「そのうち」の背中も、もう遠ざかってしまったようにも思う。
どうしたらいいのかな、って思うよ。
甘えるなよって。
いつまでこれが続くのかなって思うと「どうするの?」って詰め寄りたくなる。
パパもママもそのうちいなくなって、あんた1人でどうやって生きてくのよ、って。
すーーーー
はーーーー
でもね。
大丈夫って信じてる。
おれの子だから。
小さい頃見てた、たまに発揮する異常な集中力を知ってるから。
絵だって工作だって、君が好きな物にかける情熱を知ってるから。
大丈夫だよ。
大丈夫。
(本文951文字)
こちらのエッセイ部門に出させていただきます。
わたしの好きな〇〇、ということで息子について書きました。
須川さん、まきさん、どうぞよろしくお願い致します☺️
