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Photo bylively_hebe767

【ショートショート】旅路の果て

    久しぶりの京都駅。新幹線のドアが開くと、むわっとした熱気に出迎えられて、あぁ帰ってきたんだなと思う。


    周りで賑やかに聞こえる関西弁。そこかしこに見られる外国人の群れ。ホームに流れる接近メロディ。懐かしさを胸いっぱいに吸い込んで、JR京都線に乗り換えた。


    車窓から見える西山の影は9月だというのに青々としていた。秋の気配はまだまだ遠いようだ。


    実家の最寄り駅に着き、改札を出て階段をおりると、見慣れた紺色のインテグラがバス停の横に停まっていた。

    車に近づくと運転席から母が私を見つけて手を挙げている。

    後部座席のドアを開けて「ただいま。まだこの車乗ってるんやな」と声をかけると、「そんなもん簡単に買い替えられへんやろ」と後ろを振り向くことなく母が答えた。

    随分髪の毛が薄くなった気がする。それでもしつかりと運転する母の後ろ姿を見ながら、「元気してた?」と聞くと「あんたこそ、しっかりしぃや」と言われて苦笑する。

    車はやがて、かつて通った小学校の横を通り過ぎた。

    「あれ、校舎の位置、変わってない?」

    「あんたなぁ、もう建て替えたん15年前やで。前に帰った時もおんなじこと言ってたわ」

    と呆れられる。

    「そやったっけ?」と言いながら、なんて平和な時間なんだろう、と目を細めた。

    窓を開けると風が気持ちいい。


    「お父さんは家?」と聞くと、「コーヒーいれて待ったはる」と母が言う。


    「早くお父さんのコーヒー飲みたいわ」


    そう言いながら、目を閉じて風を感じる。微かにまじる金木犀の香りで、家に着いたんだなと分かった。


    車のバックする音を聞きつけて、父が待ちきれない様子で玄関先から顔を出した。


    「おかえり」


    「ただいま。帰ったよ」






    気がつくと母の泣き顔が目の前にあった。


    「ん……?」


    「あんた……良かった……」


    息が苦しい。手足を動かそうとしても思うように動かない。どうやら横になっているようだ。


    「うまくいったようです。おめでとうございます」


    横から知らない男の人の声がする。


    声がする方に目線を向けると、白衣を着た男性がこちらを見下ろしている。


    「先生、ありがとうございます……!」


    母が泣きながらその男性にお礼を言っている。
    母の白髪混じりの髪の毛は乱れ、明らかにやつれている。さっき見た母よりも随分歳をとった気がする。


    その奥で父が心配そうにこちらを見ていた。やはりその目には光るものがある。


    「2人とも、どうしたん?」


    私が聞くと、白衣を着た男性が代わりに答えた。


    「あなたは事故にあって、5年間意識もなく寝たきりだったんですよ。半年前に承認された新たな治療で記憶の旅に出てもらったんです。結果は大成功です」





    その時、母のメガネに映る姿に言葉を失った。



    たくさんの管が繋がった褐色の物体。



    脳だ。




    なんだコレハ?



    オレはドウナッテシマったんダ……?








    よしまるさん、参加させていただきます。よろしくお願いします!


    #あなたの旅ショートストーリー

     
     
     
    ティッシュ字検定TWE師範 | 岩男を笑わせろ杯特別賞 | モノカキングダム2024優勝 | 第六回灯火杯 変態道でも祝っちゃうで賞 | 京大薬博士の読むサプリ| #なんのはなしですかを文芸ジャンルにする |

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