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Photo byshinya_chanpuru

1人追いかけ下書き再生工場⑭ 『脳内家族を紹介します』

    「それではこれから被告人に対する殺人事件について審理します」


    静かな法廷で裁判官の声が響く。

    一時期ニュースを賑わしたK大学教授殺人事件ということで、傍聴席は満席だ。

    皆の視線は1人の男に注がれている。
    ーーー被告人(38歳)だ。

    彼は静かに弁護士の隣に座った。
    その顔に表情は無い。
    髪の毛は小綺麗に刈り上げられ、白いワイシャツは右腕だけ少しまくり上げている。グレーのズボンはアイロンがしっかりあてられ折り目がピッチリついている。

    そしてその目線はまっすぐ目の前の検察官を向いていた。


    検察官は立ち上がると高らかに言い放つ。

    「それでは脳内再生を始めます」

    頭の中を投影できる技術、『脳内再生』が開発されて以来、面倒な証拠集めも不要になり、供述の真偽に裁判員が頭を悩ます必要もなくなった。

    『脳内再生』は正に読んで字のごとく脳内を投影し、周りの人間が観られるようにする技術だ。
    これがあれば、被告人の脳内に犯行を行った映像があるかどうかでシロクロがついてしまう。

    流石にまだ最高裁判所に1台しかない貴重な機械なので、今日の裁判の注目度を上げるのに一役買っているのは間違いない。

    ガラガラガラ


    キャスターを転がして職員2人がかりで持ち込まれた『脳内再生機』

    おびただしい数の端子が職員によって手際よく被告人の頭に装着されていく。

    その間も被告人は目を見開いたま微動だにしない。

    「この為に髪の毛剃ってたんだね」
    傍聴席で小学生くらいの子供が得意げに隣の父親に耳打ちする。


    五分ほど経つと設置されたスクリーンに映像が浮かび上がった。

    留置所での被告人の生活が被告人目線で映し出される。


    見ている人々が思わず息をのむ。


    脳内の映像は徐々に時間を遡り、とうとう被害者の教授が現れた。


    そして


    目の前で


    胸にヒトツキ


    フタツキ


    教授は動かなくなった。



    傍聴席の父親は呆然とその光景を観ていたが、慌てて息子の目を手で隠した。

    それは圧倒的にリアルな犯行の瞬間だった。




    この瞬間被告人の有罪がほぼ確定した。

    ところがまだ動機が分からない。


    「もう少し遡ってみましようか」

    再び検察官が発言する。もっと過去に動機につながるやりとりがあるかもしれない。



    映像はどんどん昔に戻った。


    まるで1人の男の人生を巻き戻して観ているようだ。


    だけど動機につながりそうな映像は見つからない。



    そうこうするうち遂に、若かりし頃の教授が表れた。
    教授は小さい子供の手を引いている。
    被告人の手だろう。
    優しい眼差しの教授。



    人目でわかる映像だった。

    教授と被告人は親子だった。



    ◇◇◇

    その一部始終を見て誰よりも混乱していたのが教授の息子だった。


    あの父親が、おれの知らないところで別の家庭を持っていたというのか!





    ……おれの知らないトコロ……?


    いや、そうじゃない。
    知らなかったわけじゃない。


    受け入れ難いその事実を忘れようとしていたのだ。


    おれの中にいるもう1人の私。


    父親がおれではなくてもう1人の私を愛している。


    その事実に耐えられなくて刺したのだった。


    そうだ。思い出した。


    おれは。



    おれが、犯人だった。




    ◇◇◇

    何が起きているのか分からず皆が静かに見守る中、被告人はヨロヨロと立ち上がった。

    頭に繋がれていた端子のいくつかが、ポンッと場違いな音を立てて外れて床に落ちる。

    そして、被告人はポツリと呟く。


    「思い出しました。おれが、父親をこ〇しました。」


    「それは今映像を見たから分かります。何故犯行に至ったのですか?」

    検察官が問いかける。


    「それは、おれの中にいる別の人間を……父が愛しているのが許せなかったから……です。おれという……人間を否定されたから……です」





    ◇◇◇


    K大学教授殺人事件。

    犯人は息子だったが、解離性同一性障害であったことから心神喪失状態にあったかどうかが争点となった。


    『脳内再生機』という無敵の機器をもってしても、その点を明らかにすることは難しかったようだ。






    本田すのう工場長のボツネタを供養する下書き再生工場跡地にできた変態再生工場にて、細々と1人で再生を続けています。

    オリジナル作品ははそやmさんの記事でした。ほのぼのした素敵な作品として再生されていますので貼らせて頂きます。

    その後、ゆったんの手でリメイクされたのがこちら。面白いです。


    今回、絶対ごりごりの変態道にしてやんよ!と意気込んで書き始めたものの、どこにどう変態性を絡めればいいか最後まで掴めず終わってしまいました。非常に悔しいです。昨日𝕏でも、

    「明日は変態記事ですよ(*´>∀<`*)キャハッ」

    「お、楽しみにしてます」

    みたいなやりとりをしていたのに、なんてことだ!変態が書きたかったのに!!

    って なんのはなしですか



     
     
     
    ティッシュ字検定TWE師範 | 岩男を笑わせろ杯特別賞 | モノカキングダム2024優勝 | 第六回灯火杯 変態道でも祝っちゃうで賞 | 京大薬博士の読むサプリ| #なんのはなしですかを文芸ジャンルにする |

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