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Photo bymithuha_328

【ショートショート】 お父さん大好きっ子

    「ミキちゃん。す、すきです。おれとつきあってください!」

    満開の桜の下。おれは勇気を振り絞りミキちゃんに告白した。

    「……うれしい。でも……」





    くっ……! だめなのか?! 数秒の沈黙が何分にも感じる。


    「いいのかな。わたしで? ”お父さん大好きっ子”だよ?」


    上目遣いにこちらを見るミキちゃんに一気に力が抜けた。

    「え? 家族が大切ってことでしょ。アリよりのアリっしょ!」

    「うふふ。ケントくんやっぱり、おもしろい。じゃあこれからよろしくお願いします♡」


    おれたちを祝福するかのように桜吹雪が舞い散る。大学2年の春、おれとミキちゃんはお付き合いを始めた。



    🍁🍁🍁

    あれから半年。ミキちゃんは家庭的ないい子だ。

    お花見に行ったときにお重のお弁当を作ってきてくれた(しかも3段!)のには驚いたけど、おれのシャツのボタンが取れかかっているのを見て、すぐにその場で直してくれたり(カバンからでっかい裁縫バサミが出てきてびびったけど!)、風邪をひいた時はおかゆを作って看病してくれた(熱を測るのにおでこをくっつけてきてドキドキした……!!)。

    確かにちょっと過剰だけど、いいご家庭で育ってきたのがすごくよくわかる。”お父さん大好きっ子”って自分で言ってたもんなぁ。いい奥さんになりそうだなぁ。


    「ねぇ、ケント。なにニヤニヤしてんの?」

    「あぁ、ごめん。旅行のこと考えたら楽しくなっちゃって」

    そう、おれとミキちゃんは初めての旅行に行くのだ。場所は京都。秋の京都なんてきっと紅葉が美しくて、鴨川で等間隔に座っちゃって、肌寒いねって2人の距離も近くなって……!!


    「まぁたニヤけてる!」


    「ごめんごめん」



    🍁🍁🍁


    そして京都旅行当日の朝。

    新幹線の改札で待つおれに手を振るミキちゃん……とあれはだれだ?


    「えと……こちらのひとは?」

    「あ、わた」

    「ミキの父です」

    ミキちゃんが返すのを遮って割り込んできたのは髪の毛をオールバックにした口髭のおじさん。

    「へ……お父さん? なんで?」

    「君にお義父さんと呼ばれる筋合いは無い!」

    「え? あ! すいません! そういうつもりじゃ……」

    「あ、ごめん☆ これ1度やってみたかったんだよ。それにしても京都久しぶりだなぁ。なぁ、ミキ、いつ以来だろ?」


    え? 一緒に来るの?


    「桜観に行って以来だから半年ぶりかな? ね、お父さん♡」

    行ったばっかじゃん! 来なくていいじゃん!

    「そうだったな。あの時はタケルくんだっけ?」

    「違うよ! それ去年だし。もう、お父さんやめてよ! ケントの前で!」

    こんな形で元カレの話聞くとは思わなかったよ。てか、どんだけ京都行ってんだよ!


    「お。新幹線きたぞ。ミキは窓際だよな。隣が私。通路挟んでケントくんね」


    なんでその席順なんだよ。


    「ん? ケントくん、なにか言いたそうだなぁ。あ、心配しないで! ちゃんと持ってきたから。これでしょ?」


    トランプじゃねぇわ!




    🍁🍁🍁


    結局名古屋までは「大富豪」、名古屋から京都までは「ババ抜き」をしていたら乗り過ごすところだった。そしてババ抜きじゃなくてパパ抜きで京都には来たかった。


    清水寺、三十三間堂、平安神宮、そして嵐山。
    全てお父さんの解説付きで見て回った。
    嵐山ではお父さんオススメの猿を教えてもらい、お父さんオススメのお茶屋さんで和菓子を食べて休憩をとる。

    さすが京都に行きまくってるだけのことはある。もうあれだ。この人をツアーガイドと思えばいいんだ。


    いやいや、やっぱり無理だ。ちょいちょいタケル(元カレ)とのエピソードを挟んでくるのが、要らない情報すぎる。


    確かにこの2人、仲が良い。
    よく見たらお揃いのネックレスしてるし、どっちもボーダー柄でペアルックみたいだし、気がつくと2人で仲良く歩いている後ろをおれが付いていく形になっている。


    これじゃあ2人の旅行におれがお邪魔してるみたいだ。


    おれは勇気を出してミキちゃんに聞いてみた。


    「ねぇ、前付き合ってたタケルって人とどうして別れたの?」


    「んとねぇ。わたしにも分からないんだけど、京都旅行から帰ったら別れようって言われたんだよね」


    やっぱりそうなるよな。会ったことないけど、タケルとは仲良く飲める気がする。


    「ねぇ、ケント。ケントは違うよね?」


    急に真顔になってジロリと見つめるミキちゃん。



    その向こうで、同じくおれをジッと凝視するミキちゃんの父親と目が合って、思わず下を向いた。







    ちょっと間が空きましたが、よしまるさんの企画参加4作目です。

    「旅」をテーマにしたショートストーリーということですが、私はショートショートの修行と捉えて参加させていただいてます。

    同じテーマで書くって難しいけど楽しい😊


    よしまるさん、よろしくお願いします☺️

     
     
     
    ティッシュ字検定TWE師範 | 岩男を笑わせろ杯特別賞 | モノカキングダム2024優勝 | 第六回灯火杯 変態道でも祝っちゃうで賞 | 京大薬博士の読むサプリ| #なんのはなしですかを文芸ジャンルにする |

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