
脱衣所でiPhoneメモ帳の数字を眺めながら
朝5時30分。バスタオルに身を包んだまま、髪も濡れたままであることを忘れ、私はiPhoneをぼーっと眺めている。
気づけばメモ帳には4281件もの記録たち。そのうちの1件を、何気なく開いてしまって。
さっきからひたすら下から上に指を動かしている。
動かしても動かしても、なかなか上に辿りつかない。
6/4
57.4
47.2
→10.2kg
3/24
58.3
48.3
→10kg
1/13
60.2
50.6
→9600g
あれ、グラムになった。
10/2
58
49.4
→8600g
6/24
59.8 母乳、ミルク後
51.2
→8600g
母乳のあとミルクをつくってあげる、を一日に何度も繰り返してた頃だ。
本当は飲ませる前に測りたいのに、うっかりすることがよくあったなあ。
そもそも母乳なんて、差し出せばうまい具合に飲んでくれるものだと思ってたし、ミルクにこんなにも種類があって選ぶだけで悩むなんて、思いもしなかった。
どちらかをあげるのか、両方あげるのか、どんなタイミングであげるのか。自分の意思なんてないし、正解なんて、何一つわからなかった。
12/24
MK 58.6
M 52.8
→5800g
はじめは測り方さえわからなくて、服を着たまま二人分を測ってから、自分の分を引く……こんなやり方でいいのかなって不安になったりもしたね。
たまに専用の機器で測れるチャンスがあると、ここぞとばかりに測りに行って、答え合わせしたっけ。
11/12
MK 59.1
M 54.9
→4200g
1週間で1日57g +
いつからだろう、1日何g増えたとか、気にしなくなったのは。
10/20 7:30
M服あり 54.7
K服ありおむつあり おむつ変えた後
服は肌着、カバーオール 57.5
→2800g
いつからだろう、おむつを変えたとか変えてないとか。服を着てるとか着てないとか、気にしなくなったのは。
この1年7ヶ月なんて、きゅっとまとめてグラフにしてしまえば1枚の画像で終わりだ。
平均におさまるような形で順調に育ってますね。なんて、言われるのだろう。
でも一つひとつの点には、確かな葛藤や、絶望や、それを乗り越えた自負や、イライラや、ちょっとした嬉しさや、あたたかさや……私と彼女のこれまでが詰まっている。
メモ帳の中のただの数字の羅列は、私にはちゃんと「日々」に見える。
これまで生きてきた私自身の37年だって、シンプルな履歴書やグラフにしようと思えばササッとまとめることができる。
人に紹介するには、それで十分だ。
でも、誰が知らなくても自分だけは、確かにそこにあった日々の存在を、ちゃんと認めてあげたいなと思う。
6/10
10.1(保育園計測)
以降は保育園で計測したものを参照
これでメモ帳への記録は卒業するけれど。
私たちの日々はこの先何年も、何十年も、続くはずだし、続いてほしい。
これを読んでいる、この先いつかの自分へ。
今、何歳ですか。何kgになりましたか。
もはや年齢にも重さにも何の感情もないかもしれないけど、歳を重ねることとか、体重が増えることって、あたりまえじゃないから。
その積み重ね、ちゃんと大事にしていってね。
そろそろ、脱衣所のドアがコンコンとされる時間。「あーけーてー」と言われて、「いーいーよー」と返す。
こうして私たちの「点」は、今日も始まる。
