
歯医者の裏歯なし[その歯、何が何でも残さなければならないものですか?]
「かなり悪くなった歯でもなるべく抜かないことが良いことだ」という考え方があります。
何度も治療を繰り返したため、ほとんど歯質がなくなったボロボロの歯や縦に大きく割れた歯であっても接着剤でくっつけるなどして何とか残すケースが散見されます。
また、治癒しない根の先の病巣があっても長期にわたって根管治療(根の治療)を延々と繰り返すケースや歯磨き習慣が定着せず歯周病でグラグラになった歯を接着剤で連結させて抜歯を避けるケースも見られます。
しかし、「抜歯=悪」と言った単純な思考で良いはずがありません。
浅はかな思考で抜歯を避け続けた結果、取り返しのつかない健康被害が生ずることを患者だけでなく歯科医師も理解しておかなければならないのです。
医学的根拠なく「抜歯すべき歯を無意味に残す」ことで起こりうる健康被害についてお話ししたいと思います。
1) 周辺の骨が溶けてなくなる
歯周病は歯の周囲の骨が溶ける疾患です。その歯科治療の根幹は原因である歯周病原因菌を減らすために患者による自宅でのセルフケアと定期的なクリニックでのプロケアを欠かさず続けることです。
また、喫煙などのリスクがあればこれを無くしていく努力も不可欠です。
このようなトータルの歯周病対策を実施すれば、歯周病の進行は遅くなり、その歯を延命できる可能性が出てきます。
しかし、セルフケアが定着しない、リスク管理が徹底されないなどの患者の場合は、ほぼ確実に歯周病は進行し周囲の骨が溶けてなくなり歯はグラグラになっていきます。
こういった重症歯周病の歯を持つ患者の場合、「抜歯=悪」という考えに囚われてしまうと、その歯の周囲から放出される歯周病菌が別の歯に感染して新たな歯周病を発生させるリスクが高まります。
また、最終的に歯が自然に脱落するところまで行くと、骨が大きく欠損してしまっているため、次に行う治療にも様々な制限が出てきます。
また、歯周病菌が毛細血管を通じて全身に暴露すると糖尿病や心臓病などの全身疾患を発症させるリスクにもなるのです。
2) 治らない根の先の病巣を持つ歯は、全身の健康状態を悪化させる
根の先に病巣ができた状況では、歯の内部の根管という無数の細かい管の内部に様々な毒性の強い細菌が増加していることを意味します。
従って根の先に病巣が存在する状況が長期化すれば、これも毛細血管を通じて毒性の強い細菌を全身に暴露させることになるのです。
これも「抜歯=悪」という考えに囚われて、不毛な根管治療を繰り返せば益々細菌を全身に暴露させることになります。
その結果、心臓、脳、腎臓、肝臓などの主要臓器へのダメージが蓄積する可能性が高まることが報告されています。
3) 何度も被せ物が外れる歯
特に虫歯で歯質の少なくなった歯や割れた歯を土台にした被せ物は接着力が持続しませんので被せ物が頻繁に外れます。
例え被せ物を新製しても土台が悪いのですから同じことの繰り返しになるのです。
この状況では、患者さんはその歯で噛むことを避けるようになります。そのような異常な咀嚼パターンが生じれば噛み合わせの異常(咬合異常)が生じます。
さらに咬合異常が原因となって顎関節や咀嚼筋の異常を来たすことにつながっていきます。症状としては、頭痛、顎関節の痛みや異常音、食事をすると顎が疲れる、話すと顎が痛くなるなど様々です。
いかがでしょうか?
歯を何が何でも残すと却ってトラブルが大きくなることをご理解いただけたでしょうか?
歯を抜かない歯科医師が良い歯科医師ではなく、口腔全体そして全身の健康も考えた診断の結果、抜歯を行い、骨、他の歯、顎関節、全身の健康を守るのが良い歯科医師なのです。
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