
だから、会って話したい。――『会って、話すこと。』刊行記念 田中泰延×今野良介トークイベント@青山ブックセンター
もう11月に入ったというのに、小走りに歩くとじんわり汗をかくような暖かさ。「数週間前は冬が来たと思うほど冷え込んだのになぁ」なんてぼんやり考えながら青山の大通りを歩いていると、長方形を規則正しく積み上げて三角形をつくったような国連大学が見えてきました。その横の道を抜けて、奥のエスカレーターをトトトと軽く降りていきます。
やっと会える。やっと会える。
やっと、一緒の会場で話を聞ける。
弾む息と心を小さく整えて通り抜けた自動ドアの先は、青山ブックセンター。着込み過ぎたヒートテックが、まるでこれからの時間への期待のように、セーターの下で火照っていました。
11月2日。9月に刊行した『会って、話すこと。』(ダイヤモンド社)の著者・田中泰延さんと、編集者・今野良介さんのトークイベント、その名も“「会話の悩み」を、会って話そう。”。やっと、やっと、開催です。
みなさん、こんにちは。廣瀬翼です。「つーちゃん」とか、「つーさん」とか呼ばれています。はじめましての方、よろしくお願いします。いつもましての方、ありがとうございます。
今日は「会話」のお話だから、少しだけ自己紹介しますね。大阪出身、東京在住。普段はwebコンテンツの編集をしています。よくTwitterにいて、最近はお会いする人に「Twitterの!」とか、「田中泰延さんとツイートで話してましたよね?」とか言われることが多くなってきました。あと先日、知人に「夜中にTwitterしてないで早く寝なさい!」と叱られました。
そんな私もリアルの場にだって存在していて、これまでは毎週末のように外出して、インプロ(即興芝居)のワークショップやトークイベントに足を運んでいました。でも、なかなかイベントごとが難しかった1年半。この日は、私にとっても久しぶりの、やっとの集まりです。
密を避けるため60名限定で、チケットは告知後すぐ、開催2週間前に完売。会場は一脚一脚の椅子の間に、十分なスペースが取られていました。それでも最初に思ったのが「わあ、椅子がいっぱいある! 人が集まれるんだ!」。それくらい、リアルのトークイベントが久しぶりで、ドキドキしていました。

開演時間が近づくにつれて続々と人が集まってきて、「本当にはじまるんだなぁ」と、こしょばい感覚が込み上げてきます。
そして、ついに19:00。さあ、みなさん、拍手でお迎えください! 会場後方から、田中泰延さんと今野良介さんの登場です!
【 二人のプロフィール 】

田中泰延(たなか・ひろのぶ)
1969年大阪生まれ。早稲田大学第二文学部卒。学生時代から6000冊以上の本を乱読。1993年株式会社 電通入社。24年間コピーライター・CMプランナーとして活動。2016年退職、「青年失業家」と称し、インターネット上で執筆活動を開始。 Webサイト『街角のクリエイティブ』に連載する映画評「田中泰延のエンタメ新党」が累計500万PV超の人気コラムになる。その他、奈良県、滋賀県、広島県、栃木県などの地方自治体と提携したPRコラム、写真メディア『SEIN』などで連載記事を執筆。映画・文学・哲学・音楽・写真など硬軟幅広いテーマの文章で読者の支持を得る。2019年、ダイヤモンド社より初の著書『読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術』を刊行。2020年、出版社・ひろのぶと株式会社を創業。
Twitter:@hironobutnk
今野良介(こんの・りょうすけ)
1984 年東京生まれ。早稲田大学第一文学文藝専修卒業。2008年日本実業出版社入社。税金、法律、システム開発などの実務書を中心に、子育て、自己啓発書なども担当。2015年ダイヤモンド社入社。書籍編集局第一編集部所属。担当作に『読みたいことを、書けばいい。人生が変わるシンプルな文章術』『お金のむこうに人がいる』『会計の地図』『0メートルの旅』『東大卒農家の右腕になる』『アトピーの治し方』『子どもが幸せになることば』など。現在、13作連続重版中。同人誌『雨は五分後にやんで』寄稿。好きな歌手はaiko。
Twitter:@aikonnor
イベントは二部構成。第一部・泰延さんトーク、第二部・事前に参加者から集めた「会話の悩み」へ泰延さん今野さんが答えます。目次から読みたい箇所へ飛んで読んでくださいね。
泰延劇場、開幕。

止まない拍手と11月2日限定の特別スライド
会場いっぱいに広がる拍手に、「こんなに人生で拍手をもらうことないですよね。ありがとうございます」と泰延さん。今野さんも、聞こえるか聞こえないかの小さな声で「泣きそう」とつぶやきます。さらに泰延さんが「アクリル板があるので」とマスクを外すと、再び大きな拍手が。
泰延さん:すごい! 顔見せただけでこんなに拍手もらえるってことは、これは一枚ずつ脱げば脱ぐほど、拍手もらえるのでは?
会 場:笑
開始一分もしないうちから、笑いと拍手が交互に起こる会場。それだけ、参加者も、そして泰延さんも今野さんも心待ちにしていたのだと実感します。
泰延さんの登壇するリアルイベントは、2020年3月を最後に約1年半ぶりだそう。そのときは約300人が参加したそうですが、今はそうもいきません。それでも、こうして同じ時間・空間に集まれるようになって、本当に良かった。
泰延さん:ほんとにね、今野さん。なんとこの本(『会って、話すこと。』)を出して、皆さんと直接お会いする機会というのが、初めてなんですよ。無理でしたからね。いやぁ、嬉しいですね。
今野さん:完全なリアルイベントは、初めてですね。
泰延さん:ねえ、なんか緊張しますよ。ほんとに。
今野さん:泣きそうですよ、いきなり。
なんだか居住まい正してしまうほど、こちらまでグッとくるものがありました。少ししんみりジーンとしたところで、泰延さんがスライドを送りながらキリッと話しはじめます。

はじまったーーー! 泰延スライド芸!! 「今日は、骨伝導かな? 仮想通貨かな?」なんて思っていると……

おや? 11月2日限定版??
「1985年 阪神タイガース日本一」にはじまり、11月2日が誕生日の著名人4連発、「習字の日」「タイツの日」「死者の日(メキシコ)」と紹介が続きます。聞いている私、笑いながら、泣きそうになってきた。完全に今日のためだけのスライドの数々。本当に特別な日なんだ、今日は。
ちなみに、阪神タイガースが日本一に輝いた1985年11月2日、泰延さんは高校生だったそう。その頃、今野さんは……
今野さん:僕、1歳です。
泰延さん:今野さんと俺、そんな離れとるんや!
今野さん:歴史的事実です、これは。
泰延さん:はあ、縮まらないね、その辺がね。3年も一緒にいるのにね。
会 場: ……?! 笑笑笑
15歳差だという泰延さんと今野さん。そんな二人の出会いは3年前。今野さんからのラブレターのようなメールがきっかけで、一冊の本を創り上げます。それが、2019年発売のベストセラー『読みたいことを、書けばいい。』。2021年、16万部突破に伴い、帯が新しくなりました。

追われるほうが、追うほうに。LOVEの矢印、逆転?
『読みたいことを、書けばいい。』がきっかけで「いろんな想い出があって」と、二人の想い出を語りはじめる泰延さん。そこで出てきたスライドが……

泰延さん:なんなんこれ、なんなん。なんでこんなもん見せる必要があるん。ほんまに。
今野さん:走馬灯みたい(笑)。
泰延さん:走馬灯。いや、死んでない、死んでない。
ちょっと泰延さん、自分で見せつけといて照れんといてください!笑
泰延さんの今野さんへの愛は、さらに続きます。
泰延さん:『読みたいことを、書けばいい。』から2年を経て、新しい本を出させていただいて。で、なんと本の帯にですね、今野さんの言葉を。

泰延さん:今野さんは担当編集者とおっしゃっておられますが、僕はこの本は、はっきり「今野さんとの共著」と。一緒に書いた本。今野さんの原稿もあるし。「ダイアローグ」の部分は、本当に今野さんが全部書いたんですよ。僕ら二人で「こういうテーマについて話さなあかんな」って話してたんですけど、それをおもしろおかしく原稿にしてくれたのは、今野さん。だから、本当に共著で。
真っ直ぐに力説する泰延さん。愛が、溢れてる。好きが、止まらない。
最初に本を書いてほしいとラブコールを送ったのは今野さんだったのに、追われるほうだった泰延さんなのに、なんなら逃げまくってなかなか書かないでいたくらいなのに(参考note)。今では泰延さんから送る熱烈な愛。気がついたら、LOVEの矢印が逆転しちゃいましたね、泰延さん。
それだけ、この3年は二人にとって濃密で、一緒に本を創るというのはすごいことで。ずっと二人は真っ直ぐ向き合って、信頼しあって、話してきたんだろうなと思うと、うらやましいとかなんとかを通り越えて、愛おしく微笑ましくなってきます。
泰延さん:でね、二人で本が出てね。このね、色がね。

ここで、これまで真面目に頷いてきた今野さんが吹き出して、一言。
今野さん:何が出てくるか分からなさすぎて、気になるんですけど!
泰延さんのトークをただただ楽しんでいるようにも、ちょっと照れ隠しをしているようにも見えます。
この二人、一生推せるバディや。きっとマスクの下の私は、ちょっと気持ち悪いぐらいににやけていたに違いありません。マスクで良かった。
「行けたら、行く」 から考える、正直さと誠実さ

ここにきて急な自己紹介。しかも自己紹介スライド、数えてみたら10ページもありました。その内容は……今後もイベントがきっとあるので、そのときの楽しみに取っておいてくださいね。ここでは一番大切な情報だけ。
泰延さん:地球始皇帝に即位しました。
「これ、何がきっかけなんですか?」ときく今野さん。しかし始皇帝はにこやかに「即位しました」とだけ言ってスルー。始皇帝は気ままなのである。始皇帝はマイペースなのである。始皇帝にはきっかけなどなく、なるべくしてなったのである。そのまま続ける地球始皇帝。
地球始皇帝:ということで……

泰延さん:やっとやで。
今野さん:田中さんのおっしゃる閑話休題というのは、本題に入るっていうことで。
泰延さん:そう、そう。俺の言いたいことは終わったから、もうええから、ちょっとやろかっていう。
なるほど、なるほど。ならば気合を入れ直そうと座り直した、そのとき。
泰延さん:でもね……

泰延さん:「早く本題を言えよ」とか、「そんなしょうもない話はいいから、なんなん、用事は」っていう人、いるじゃないですか。あれって俺は、「そんなに仕事したいですか? そんなに金儲けしたいですか? そんなに圧倒的成長したいですか?」って思うんですよね。だから、無駄話がすごく大事かなって。
ドキッ……。思い当たる、思い当たります、過去の自分の数々。私、急に具合が悪くなってきた気がする……。ああ、穴があったら隠れたい。思わず目の前にいる泰延さんから目を逸らしてしまいました。
でも、「無駄話がすごく大事」って、つまり『会って、話すこと。』でしょ? そんな泰延さんの話が好きで本を買い、イベントに来たのだから、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ!
泰延さん:だから、ふざけていると思っていることのほうに誠実さがあると、いつも思っていて。例えば「行けたら、行く」って、僕必ず言うんですよ。
行けたら行きます! https://t.co/0YWm5A5Bgv
— 田中泰延 (@hironobutnk) November 1, 2021
(今回のイベントでも言っていました)
泰延さん:だって、そうでしょ? 昨日確認があって、今日落雷で死んでしまうかもしれない。
そっか。みんな、今日と同じ明日が来ると思っているんですよね、私も。2020年、2021年の夏を超えてもそう。毎日街を走る救急車に、「あなたの番です」さながら、次は自分が発熱するのではとキリキリしていたのに。それでも「必ず行きます!」と言ってしまう。そんな確証、ないのに。
泰延さん:だから、こういうのも「本当に絶対来れる?」と思うと、「行けたら行く」というのは、実は誠実なんじゃないかっていう。
今野さん:真実ですよね。
泰延さん:そう。っていう、「正直にしゃべろうよ」っていうのが、わりと出発点だったんですよ、今野さんと僕の。
「正直」。二人の出会いのキーワードでもある、この言葉。最初の最初、『読みたいことを、書けばいい。』の打診で今野さんが泰延さんへ送ったメールから登場しています。
私が、この本を通して実現したいことは、
「正直な書き手が増える」ことです。
(中略)
私は、田中さんの大量のツイート、
特に、フォロワーの方々とのやりとりを見ていると、
嘘をついている人や、他人を傷つけることに無頓着な人を、
瞬時に見極めてリプライされているように見えます。
(中略)
田中さんならば、
嘘をついてしまう構造や嘘のデメリット、
正直に語る意味と方法を明らかにしていただける、
と思い、ご依頼差し上げる次第です。
前著は「正直に“書く”」。今作は「正直に“話す”」。二人はこの3年、全くブレず変わらずなんだなと思いました。
でもね、「正直」って、口でいうほど簡単じゃないですよね。カッコつけたくなっちゃう。自分の評価が下がらないようにって思っちゃう。面倒くさくなって知ったかぶったりしちゃう。私は「正直な人か」と問われると、全然です。
だから、泰延さんの前に立つのも、今野さんの前に立つのも、正直にいうとちょっと怖い。見透かされちゃいそうな気がするから。何か取り繕っていたら、相手にされなくなる気がするから。
それでも二人と話したいし、二人の話を聞きたいと思うのは、これもやっぱり二人が「正直な人」だからだと思うんです。
よし、ここから「正直にしゃべる」を深めるぞ、とペン先を手帳に落としたところで……
泰延さん:はい、「この人、無駄話終わって本題やな」と思って、メモ取るのやめてくださいね(笑)。
ああ! ほら、もう見透かされた!!
やっぱり泰延さん、怖い(笑)!!!
互いに興味ない。必ず傷つく。なのになぜ会いたいんだろう?

第二部のお悩み相談に移る前に、『会って、話すこと。』をまだ読み終えれていないという人や、読んだけど笑いすぎて内容が飛んでしまったという人のために、ポイントとなる内容を少しだけ紹介します。
・相手はあなたに興味がない
・あなたも相手に興味はない
執筆にあたり、会話に関する本を40冊近く読んだという泰延さん。しかし、そのうち39冊はほぼ同じことを書いてあったそう。それは「相手に興味を持っているような感じで接近して話しかけましょう」「向こうもあなたのことを知りたいはずだから、よく情報を開示して会話をしましょう」。
でも、泰延さんは「それはかなり鬱陶しくないですか? 」と感じたといいます。そこで普通の会話本とは反対の「相手も、あなたも、互いに興味ない」が『会って、話すこと。』の出発点になりました。
では、何を話せばいいのか? その結論として出てきたのがこちら。
・「外部のこと」を話そう
・「おもしろい会話」のベースは「知識」
・「ボケ」は現実世界への「仮説」
・「ツッコミ」は「マウンティング」
読者からは「“ボケ・ツッコミ”はお笑い文化で日常会話には関係ないのでは」と言われることもあるそう。でも「舞台のボケ・ツッコミを会話に持ち込むのではなく、反対。本来は日常会話の中にあるものをデフォルメして舞台演芸に持ち込んでいるんです」と泰延さん。今野さんも「別に面白いボケをしろと言っている本ではないんです」と続けます。
泰延さん:そんな面白いボケなんてできないしね。俺だって、全然できないもん。しかも一生懸命したって、ほとんど失笑されて終わってるからね。
今野さん:本当、そうですよね。
会 場:爆笑
今野さん:すごいなと思って。ボケるには勇気が必要だなというか、覚悟が必要だなと常々感じています。
一方の「ツッコミ」は「マウンティング」だという二人。「ツッコミは、ボケの人が緻密に考えてきた面白いことを終わらす行為」と話します。
うぐぐ……ついついツッコミがち、いやツッコもうと思っているわけでなくても、疑問や気になる点をホロリと口にした結果ツッコミになってしまうことが多々ある私としては、痛い! 悔い改めまする……。
そして続く、会話の心構え。
・人間は会話すると必ず傷つく
ここで私は「あれ……?」となりました。
互いに興味ないうえに、話すと必ず傷つくぐらいなら、そもそも会話しないほうが良くない??
いやでも、今こうして会って話していて、リアルで会話を見ていて楽しいし、ずっと会って話したかったんだから、会話しないほうがいいなんてことはないと思うのだけど……。なら、どうしてそんなに会話したくなるんだろう? 慌ててデカデカと疑問を手帳に書き留めました。

本の振り返りはここまで。書籍にはより多くの項目で、より濃い内容が書いてあるので、ぜひ『会って、話すこと。』を読んでくださいね。
さあ、いよいよお待ちかねの大質問大会です!
大質問大会! 会話の悩み、二人の回答は?

事前に募集した「会話に関するお悩み」へ、泰延さんと今野さんが全力で答えます。当日は1時間半、時間の許す限りいっぱいいっぱいまで回答していきました。今回はその一部を紹介します。
【Q&A①】ふくろうとジャズ。「無理にボケなくたっていい」

ボケって難しいですよね。私もボケられません。どうしたらボケになるのだろうか、どんなボケが正解なのだろうかと考えだしてしまいます。
ボケ続けて52年の泰延さんの回答がこちら。

泰延さん:無理にボケる必要はないと思うんですよね。だって、リスクはいっぱいありますよ。それで、先日ふくろうカフェに行ってきたんです。

泰延さん:ふくろう、昼間行っても、なんにもしてないんですよ。何かに捕まって目も開かない、逆さまになっているやつもいる。名前を呼んで話しかけても完全無視。でも、大人気でしたよ。
ふくろうは、かわいい。ぜんぜんしゃべらないし振り向いてもくれないけど、かわいい。ボケが思いつかないときはふくろうよろしくニコニコ黙って、愛される人を目指すことにいたします。そしてなにより、ふくろうカフェに行っている泰延さんが、かわいい。
続いて今野さん。

かわいいから一転、こっちは洒落たたとえ。さらに続けます。

先ほどの泰延さんとの会話も相まって、会場に広がる笑い。泰延さんも「そうよね。どこかに波長の合う人いるからさ」と苦笑いしていました。
そんな今野さんの回答の〆は、ジャズを題材にしたマンガ『ブルージャイアント』(石塚 真一)の主人公、宮本大の台詞から。
「俺しか出せない音を出すことに、必死です。」
やっぱり、ジャズのたとえだったんですね、今野さん! ちなみに『ブルージャイアント』は2022年のアニメ化も決定しています。音がつくのめっちゃ楽しみです。
ふくろうと、ジャズのマンガ。回答に泰延さん、今野さんそれぞれの色が出ている気がします。話せば、その人の輪郭がこぼれ出るものだなぁ。
【Q&A②】「田中泰延になることは不可能です。」

「私、こんな相談送ったっけ?」と思うくらい、頷いてしまいました。自分のこと、話したくなっちゃいます。実家では、あまりにマシンガンのように話す私に、母から「今は妹の番だから黙ってなさい!」とよく注意を受けました。ってほら、今もまた自分のこと話してるよ、私。
おしゃべり族で歯止めの効かない我らには、口を閉ざしてニコニコするしかないのでしょうか? 教えて、泰延さ〜〜〜〜ん!

「いつだって、今日が一番若い」と言ったのは誰だったか。これからの人生の中で、私は今日が一番若いのだ、だから変われるのだ! なんて泰延さんの回答を聞きながら自分を鼓舞してみる。
続いて、今野さんの回答。

「田中泰延になることは不可能です。」
「田中泰延になることは不可能です。」
そーーーれーーーなあああぁぁぁぁ!!! 思わず、立ち上がって握手を求めに行くところでした!!!
どんなに頑張ったって田中泰延にはなれないと分かっていても、なりたいと思うんですよ、泰延さんみたいにボケて愛されてご機嫌なお話し上手に。でも、泰延さんの一番近くにいるであろう今野さんに明言されると、諦めがつきました。もっと声を大にして言ってほしいくらいです。
田中泰延にならなくても、ふくろうだって愛されるし、田中泰延しか世の中にいなかったらジャズのセッションは生まれない。泰延さんに憧れる我が同士たちよ、泰延さんを目指しすぎず、自分の両手が届く範囲で参考にできるところだけ参考にしていこう!
そして「今からでも間に合うかな」と不安な方へ。菩薩のようなお二人の言葉を届けます。
今野さん:「締め切りは相手の都合です。」という田中さんの名言があります。
泰延さん:いつも言ってる。本にも書いてる。
今野さん:これ、原稿に限らず人生そうだろうなと思っていて。間に合わないって考えるのは、誰かの設定した基準で考えているのかなって。だから、間に合わせる気があれば、絶対間に合うと思うんですよね。
泰延さん:みんな「ここまでにこれをやったら、すごく達成感があって、成果が上がって、お金も儲かって」って考えすぎ。やらんでも大丈夫じゃないかな。だいたい、やるべきと思ってることがやれなくてここに座ってるでしょ、みんな。やれてないですよ、みんな。だからそれでいいんですよ。
【Q&A③】生まれる、自分の中の「会話」


これに対する泰延さんの回答が、こちら。

この回答を聞いた瞬間、「 子どもの撮影アシスタント! チャップリン!」と私の脳内で火花が散りました。
私は大学時代、キッズモデルの撮影アシスタントをしていたことがあります。子どもたちは、確かに物や人形が転げると笑いました。だけど、鈍臭い私が雨上がりに滑っても、足を引っ掛けて花をなぎ倒しながら花壇に突っ込んでも、全然笑ってくれないんです。笑わないだけならまだマシで、シラ〜っと空気が引いていって、チベットスナギツネ顔負けのスンとした表情で見つめられることも多々ありました。
「“リアル”と“リアリティ”は違う」。即興芝居のワークショップで教わった言葉ですが、マジで転んだ私はリアルすぎて痛々しかったのでしょう。
じゃあ、どうコケたらいいのか。それが、チャップリンなわけです。彼の軽やかな転び方は、リアリティがありながらもリアルじゃないから、安心して笑える。それも全世界共通で笑われています。
泰延さんのアドバイスを受けて、コケてみようと思った方。ケガしないように、ふわっと軽やかにコケたらいいのでは? 知らんけど。なんて、心の中で一生懸命メッセージを送ってみました。
続いて、今野さんの回答。


ということで、参考図書はこちら。

「自分と話す」については、『会って、話すこと。』の「なぜわたしたちは、会って話をするのか? その5 違う人と、同じものを見る」にあります。この章、手帳に挟んで持ち歩きたいくらい、好き。
それは、他人と話す前に、「自分と話せ」ということだ。まず、自分自身が自分と楽しく会話できなければ、他者と会話することはできない。
今野さんの回答を聞きながら、ふと、さだまさしの話を思い出しました。彼は高校受験に失敗して挫折したとき、その日あった嫌なことを毎日書き出していたそうです。それこそ「あいつの目つきが気に入らない」ということまで。そうして書き出していくうちに、自分の悩みの根源は「私はだあれ?」が分からないことだと気がついたといいます。そこで彼は「16、7にそんなことが分かるわけがない!」と思えて、気が楽になったそうです。
「書く」って、すごいパワーがあるんだなぁと。どんな形でもいいから一度書き出してみると、モヤモヤと自分との間に少し距離ができる。だから、鏡と向き合うように客観的に、もう一人の自分を立てて話せる気がします。
さて、読んでくださっている方の中には、「泰延さんと今野さんの話を読みたかったのに、なぜ廣瀬がズッコケた話やらチャップリンやらさだまさしやらが出てくるんだ」と思っている人もいるかもしれません。私も、そう思います、ごめんなさい! でも伝えたかったのは細かな内容ではなくて、「二人の話を受けて、自分の中でいろんな発想が生まれた」ということなんです。
リラックスして笑いながら、なにかしらのリアクションが自然と湧き上がっている。一方通行ではないコミュニケーション、会話が生まれる瞬間に触れられた気がしました。
これがオンラインだと、なかなか発生しません。どうもオンラインの画面には、ATフィールドが張っているような気がします。リアルだと、空気を共にできて境界線が溶け合うから、自然と言葉にしないコミュニケーションが生まれるのかも。それは話さなかったとしても、一種の会話といえるのではないでしょうか。
やっぱり、場を共にするって、いいですね。
【Q&A④】実演! ボケを重ねるとはこういうことだ!

ああ、この人、優しいな。相手のせいにするでもなく、嫌いにならないですむように最初から期待するのをやめるでもなく、自分から離れようかと思い悩むんだもの……って、あれ、人? 宇宙人??
これには「離れたらいいじゃないですか。世界には80億人近い人間がいます」と真面目に回答しだした泰延さんも、ネクスト・スライドで急展開。

そんなことより(笑)。そして続く今野さんの回答は……

アドバイスしているのかどうかもわかりません(笑)。さらに宇宙人と人間が交信し、はぐれものが集結して宇宙を目指すマンガ『度胸星』(山田芳裕)を参考図書として紹介。 そして、もう一枚スライドが。

だから宇宙人の名前に反応しすぎ!笑
会場にいた人、もはや誰もお悩みがなにだったか覚えていないんじゃないかというくらいの、ジョン卍次郎の破壊力!
もうこの二人、どこまで本気でどこまで冗談でなにがボケなのか(笑)。しかも今野さん、まだ名前で超絶真剣に悩んでいるんです。
今野さん:書いた後に思ったんですけど、これ違うんじゃないかと思って。「錦織圭」っているじゃないですか。「にしきおり」って書いて「にしこり」。卍次郎さんも同じで、「じじ」がつながるリエゾンなのかと。「卍次郎」で「まんじろう」って読ませるんじゃないかって。
お腹をプルプルさせて笑いながら、同時に頭の中でシナプスとシナプスが急につながったような感覚がしました。
これが、ボケにボケを重ねるってことやん!!!
「宇宙人ジョン卍次郎」をペンネームだと流すのではなく、その案にのっかる。ボケを重ねるのは難しいと思っていたけれど、最初に相手の発想にそのままのっかっていけば、意外とシンプルなのかもしれない!
こんな分かりやすいお手本、そうそうないと思います。宇宙人ジョン卍次郎さん、あなたの名前のおかげです。降臨してくれてありがとう!
【余談】宇宙人ジョン卍次郎さん、早速せっせと自分が何者なのか書いていました。歴史的偉業が達成されたのでしょう。良かったね!
【Q&A⑤】滑ろうが滑るまいが、ただその場を楽しむ。たぶんそれが「正直」ということ


1枚目のスライドを読み上げながら「ああ、分かる」とつぶやいた泰延さん。そんな泰延さんの回答は……


基本姿勢はこれ。ただし、初対面の場合は違うそう。
泰延さん:僕、初対面の方にボケたりギャグをかましたりすることは、絶対ないです。だって、失礼やん。ギャグとかボケとか、どうしようもないことを言うのは、相手と信頼関係ができてからじゃないと無理なんですよ。だから、初対面の人に無理はしなくていいと思いますよ。ただ、信頼関係ができたら、存分に滑ったらいいと思います。
確かに。信頼関係、大事。でも、読者である私たちがみている泰延さんは、いつもボケを重ねていますよ……?
泰延さん:会場にきてくれた皆さんの前でマイク持って存分に滑っているのは、まず直接の個人的な付き合いの利害関係はないから。初対面でも、『ボケていいですよ』という場ですよね。それともう一つ、本を読んでくださっている人との間には、最低限の信頼関係があると思っています。中に書いてあることをやっているわけやからね。
泰延さん、信頼してくれてありがとう! おかげで今日も笑いの尽きない時間を過ごせています。
では、続けて今野さんの回答いってみよう!


今野さん:田中さんとは、互いになんの興味もないし、全然確かめようとしない、知ろうともしない関係を続けてきてるんですけど。それが心地いいから続いているんだと思うんですよね。「俺はこれ知ってるけど、お前これ知ってるか?」って、一度も言われたことがない。
泰延さん:人は試すと、いいことない。「こいつはどれくらいまで知識あるのかな」とか「ここまで突っついたら怒るかな」とか、いいことは起こらないですよね。
今野さん:たとえその期待に応えられたとしても、試されたことは変わらないわけで。
泰延さん:そう、残るからね、試されたのって。
ああ、そっか。人を「試す」のって、「正直じゃない」よなぁ、と聞きながら腑に落ちました。そういえば、最初のボケたいという悩みへの「トクをしようと思っていませんか」という回答。これも、「トクをしよう」って意図があって、「正直じゃない」なんだなと思います。
「正直じゃない」って、いわゆる「嘘をついている」とは違うんですよね。
実は「正直じゃない(嘘)」とはなになのか、『読みたいことを、書けばいい。』にすでに載っていました。再び今野メールを抜粋します。
私が考える「嘘」とは、あからさまに悪意のあるものだけでなく、
「本当に思っていないことを書く」
「他人から借りてきた言葉をそのまま使う」
「その対象に愛がないのに紹介する」などを含みます。
もちろん、嘘をつかなければならない場面はあります。
嘘をつける関係は、豊かだと思うこともあります。
でも、小さな嘘を積み重ねているうちに、
自分の嘘に無自覚になってしまうと、
相手と心が通じ合わなくなるのではないかと思うのです。
負けたくない、損したくない、トクしたい。そういう利害の意図とは“さよなら”して、正直にその場をただ楽しみながら会話できる人になりたい。自分の「正直じゃない」に気づくのは難しいこともあるけれど、でもいつからでも間に合うはず。二人の回答を聞きながら、そんな想いを握りしめました。
それでは大質問大会、最後はこの一枚で終了します。

だから私たちは、会いたいんだ。

大きな笑いと拍手とともに終了したトークイベント。その後には、泰延さんと今野さんによるサイン会がおこなわれました。
続く長蛇の列に、サイン会が終了したのは21:45。なんと、1時間以上もサインを続けていた二人。その間に泰延さんのサインペンは2度もインクがなくなっていました。
それでも一人ひとりと言葉を交わし、笑い、写真に応じる泰延さんと今野さん。丁寧に本を手渡す様子に、どれだけ二人が読者に会いたいと思っていたのかがひしひしと感じられて、その光景を見ているだけで幸せな気分になりました。
みなさんと、会えて、話せて、嬉しかったです。
— 田中泰延 (@hironobutnk) November 2, 2021
ありがとうございました。
ありがとう。#会って話すこと pic.twitter.com/RneEzaRRug
いや、「会って、話すこと。』って本をつくって、読んでくれた人と会って話す、をやりたかったんですよ。
— 今野良介|編集者 (@aikonnor) November 2, 2021
ほんとうにありがとうございました。#会って話すこと pic.twitter.com/EzolWpVlwU
サインをもらった後も会場に残って、ほかの参加者と話している人もちらほら。その姿は、今日ここで共有した時間を名残惜しんでいるよう。
もちろん私も、何人かとお話ししました。中には持っていたハンドバックを見て「もしかして、つーさんですよね」と声をかけてくださった方もいます。こういう会話の生まれ方は、リアルで会っているからこそだなぁと、とても嬉しくなりました。
かわいい……💕😋💕
— 廣瀬 翼(つー) (@wingYORK930) September 20, 2021
はぁ、かわいい💕😋💕#スナワチ#KIGO pic.twitter.com/LLOQKMUEzg
(持っていたハンドバック)
私たちは、人に対して互いにあんまり興味はないし、会話をすれば必ず傷つく。会話の悩みだって尽きません。
それでも、やっぱり会いたいと願う。会って、時間を、空間を、共にしたいと思う。そうして共にする時間・空間、それが「わたし」と「あなた」の“間”なのかもしれません。

“間”がないと、ただの“ヒト”。そうではなく、“間”のある“人間”になって、心揺らしていたい。会って話したいと思うことにそれ以上の理由は不要で、人間とはそういうものなのだと、強く感じました。

これから、会って話せる環境が当たり前に戻ったとしても、今日の記憶があれば「会って、話せること」に無頓着にならないと思います。反対に、また会って話すのが難しい状態になったとしても、今日の記憶が「絶対、また会って話せるから」と希望になってくれる。そんな予感がしています。
泰延さん、今野さん。当日一緒に過ごした参加者の皆さん。そして長いnoteをここまで読んでくださった皆さま。ありがとうございます。
また、会って、話しましょう。
※お悩みは相談者名を削除するなど、できるだけ個人が特定されないようにしておりますが、もし「これ私の悩みだわ、ちょっと恥ずかしいな」という方がいらっしゃれば、廣瀬翼のTwitterまでDMください。該当箇所の削除など、調整いたします。
Special Thanks
西園寺俊児さん(@saipoda)
トップ画像とサイン中の写真の使用をご快諾いただき、ありがとうございます!
ひろのぶさん今野さんありがとうございます。カナさんミチュルルトミタさんマナミさんへんきょさんけいさんうみちゃんほなみさん池田さんつーさんルルさん三上さんもう書ききれないけどみなさんお会いできてうれしかったです。#会って話すこと pic.twitter.com/i97rHjCyGF
— 西園寺俊児 (@saipoda) November 2, 2021
池田翔汰さん(@seepfly)
noteおよび泰延さんによる引用RTのツイートのリンクをご快諾いただき、ありがとうございます!
『会って、話すこと。』関連記事紹介
・DAIAMOND ONLINE『だから、この本。』連載
・1話10分で学びを支援する音声メディア「VOOX」収録裏話
・ログミー 田中泰延×阿部広太郎 『会って、話すこと。』刊行記念(全6回)
他にもいろんな記事が出ています。多分これからも出てきます。noteの感想文もたくさん。Twitterで「#会って話すこと」で探してみてくださいね。
関連note紹介
大阪の美人・砂糖塩さん(@sugarndsalt)が、2年前『読みたいことを、書けばいい。』に関連しておこなわれた泰延さん・今野さんの登壇イベントを記事にしています。笑いも熱量も勢いもたっぷりなぶっ飛びnoteです。