
静かな街
ある雪の降る冬の日、私は実家に帰った。
親戚のおじさんが亡くなったので、故郷へ戻ることになった。今私が住んでいる街から電車で2時間ほどの田舎町だ。
亡くなったという連絡を受けて、私はすぐに葬儀に出ようと思った。幼少期にお世話になった親戚だからだ。
仕事を早退して、私は故郷へ向かった。仕事で疲れた身体に冬の冷たい空気が刺さった。北海道は一月、雪の多い時期だ。今は少し吹雪いているが、電車の運行に支障はなかった。
冷たくなった手で切符を受け取り、人気の少ないホームから電車に乗った。もう遅い電車だからか、行き先が田舎だからかわからないが、電車内には人がぽつぽつと座っていた。以前乗った時よりも乗客が少なく感じた。
街の名前が車内でアナウンスされた。そろそろ到着だ。人のいない雪まみれの駅のホームを抜けて、歩いて実家に向かう。夕方だというのもあるが、数年前に帰ってきた時よりも街が暗い。コンビニの駐車場にも車はないし、歩いている人も一人も見ない。聞こえるのは、雪の降る音と自分の呼吸だけ。
除雪されず積もった雪に、実家は埋もれるように建っていた。電気もついておらず、真っ暗だった。
家に向かって進んだ。除雪されていない雪を踏むたび、ギュッという音がした。電気の消えた暗い玄関のドアを開けた。
ただいま
帰ってくる声はなかった。暗くて寒い玄関に私の声だけが広がった。
電気をつけ、靴を脱ぐと、携帯電話へメッセージが来ているのに気づく。母からのメッセージだった。先ほど届いたようだ。
ついた?今日は仕事で遅くなるから、先に家で休んでて。テーブルの上におかずあるからたべていいよ。
母は仕事で忙しい。きっと帰ってくるのは深夜だろう。
コートをかけて、食卓テーブルの椅子に座った。テーブルの上の母が作ってくれたおかずと冷飯をよそいながら、さっき通った街の中を思い出した。
私が小さかった頃、まだこの街ではたくさんの音が聞こえていた。
学校が終わる時間になると、帰り道で楽しそうに話す子供たちの声が聞こえた。夕方になると、近所の公園の遊具が軋む音と、それで遊ぶ子供たちの楽しい声も聞こえた。
近所には同年代の子供がたくさん住んでいた。毎日、夕方六時まで一緒に遊んだ。たまに七時過ぎまで遊んで、怒られたこともあった。そういえば、おじさんに帰る途中で会って、家まで車で送ってもらったこともあったっけ。
もう六時だよ、遅いから送って行っちゃる!と言って、送ってくれたおじさんの日に焼けた顔と腕が頭に浮かぶ。
昔聞いた子供たちの声、遊具の軋む音、おじさんの声と車の音を思い出しながら、一人静かに冷たくなった料理を食べた。
ふと窓から外を見ると、大粒の雪がしんしんと降って、周りの音を吸い取っていた。