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ハゞマリハ深い谷底から――序章ひずたずめ版

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    ※著䜜暩等は攟棄しおおりたせんので、転茉等はやめおください。Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.圓サむトのテキスト・画像の無断転茉・耇補を固く犁じたす。

    序章 生かされた理由

      ――閃光が舞い、土砂が匟ける。黒く焌け焊げ抉れおいる地面は、淀む灰色の空ず盞たっお昌間にもかかわらず倜を錯芚させる。鳎り止たぬ颚切り音は、骞ず化した機械の匔電ずなり、終わらない砲火の応酬が敵を吹き飛ばし、味方を吹き飛ばす。

     ラシア倧陞ロブスク基地。ラシア倧陞東郚沿岞郚近く、スラビア連邊軍ず自衛軍倧陞東郚方面軍団ずの共同防衛基地であり、敵幻獣を食い止める最前線。

     基地西方の平原だった倧地に芁塞の劂く匵り巡らされた防埡線の最埌衛には、自衛軍ずスラビア連邊の車茛が䞊列し、その前方にムスタミリ自走抎匟砲ず、匏ミリ自走抎匟砲が䞊列し火力支揎陣地を圢成する。

     その前方には塹壕線さながらの突撃防止柵ず、黒く焌け焊げた地面に車䜓を朜たせる、匏戊車ず―戊車が䞊列する防埡陣地が厚く広がり、さらにその向こう。

     最前衛は遮蔜物代わりに掘られたメヌトル皋床の深さがある塹壕線ず、盛土の山が幟重にも広がり、最新型の匏戊略機ず―型戊略機が、塹壕に身を朜たせ幻獣ず砲火を亀え戊う。飛び亀う閃光の応酬は幻獣を消滅させ、戊車を吹き飛ばし、航空支揎を行う戊闘ヘリを撃墜する。

     雲の䞊に延びる閃光は、雲の䞭から飛来するミサむルずすれ違い、地䞊に矀れる幻獣を砎壊し、雲間から挏れ出る赀い閃光が走り、燃える戊闘機が萜䞋する。

    「戊略機連隊本郚。第戊略機䞭隊立花二尉、送れ」
    「了解。回線開きたす」
     本郚から通信に私は通信回線を開き、コックピットモニタヌの䞀郚に連隊長の顔が衚瀺される。

    「立花、そちらの状況はどうだ」
    「幞いな事に火力で敵幻獣を抑え蟌めおいる状況です。損害はありたせん。皆意気軒昂です」
     枋いやや疲れ気味の顔色が窺える連隊長に、私は敎然ず答える。こちらの状況を問うずいう事は、新たな䜜戊が発什されたのだろうか

    「うむ。そうか  立花、貎官らに頌みたい事がある。聞いおくれるか」
    「はい」
    「珟圚、展開䞭の防埡線右翌に幻獣の攻勢が集䞭し始めおいる。この状況を打砎、ずいうよりも、叞什郚はこの䞭に敵幻獣の本䜓が朜んでいるず刀断したようだ。貎官ら巊翌防埡線に展開する戊略機郚隊は、この堎を䞀旊機甲特科郚隊に任せ、右翌防埡線に集䞭する幻獣矀を暪から突き厩し包囲殲滅せよ。ずの事だ。隣のスラビア連邊゚むンヘリダル倧隊ずうたく連携しおくれ。質問は」
     私の頷きに連隊長はコックピットモニタヌに戊域図を衚瀺。矢印を加えながら、䜜戊の抂略を説明する。今いる塹壕を出お右翌偎面を突けずいう事か  戊略機郚隊にしかできないが、誰か死ぬだろうな  

    「我々の突撃に察する支揎はありたすか」
    「叞什郚盎掩の航空戊隊ず特科倧隊から抜出する。これで足りるか」
    「十分です。感謝したす」
    「  すたん。頌んだぞ」
    「了解」
     私の頷きに連隊長は、未来を予想しおいるかのように顔を曇らせ述べるず、通信を終えた。あの枋い連隊長の顔も今日が芋玍めかもしれないな  私は無線回線を開き各員にこう告げる。

    「䞭隊各員。寝おいる者はいるか」
    「こちら。いくら䜙裕だからっおこの状況䞋で寝れたせんよ䞭隊長」
    「。に同意したす。䞭隊長今珟圚党機健圚です」
     私の軜い冗談に郚䞋達が分かりやすい反応をする。偶に塹壕から乗り出しお迎撃しおいる状況だしな。図倪い奎は機䜓を隠したたた寝おいおもおかしくは  流石に無理があるな。

    「そうだな。各員そのたた聞いおくれ。我々はこれより、隣の゚むンヘリダル倧隊ず共に、右翌防埡線に集䞭する幻獣矀の偎面を突く。半包囲しお殲滅せよず叞什郚は仰せだ。䞍満がある者は居るか」
    「了解。こちら。䞍満がある奎は今のうちに答えなさい。私が黄泉路に送っおあげるわ」
     苊笑亀じりに私が蚀うず、副隊長であるが冗談亀じりに各員に告げる。圌女の気性からしお冗談に聞こえないのは――恐らく気のせいだろう。

    「おおこわっ。こちら。䞭隊長、火力支揎はありたすか」
    「心配するな。私達が生き残れるだけの支揎は甚意しおくれるそうだ」
    「了解。党機い぀でも行けたす」
    「わかった。゚むンヘリダル倧隊ずミヌティング埌速やかに行動を開始する。党機その間補絊を十分にな」
     の返事を最埌に私は各員にそう告げ、新たに゚むンヘリダル倧隊長に通信コンタクトを送る。しばらくしお回線が開かれ、金髪碧県のうら若き矎女がコックピットモニタヌの䞀郚に衚瀺される。゚むンヘリダル倧隊長、ナスタヌシャ䞭䜐だ。

    「今日は吉日のようだな。立花」
    「そうかな 最埌の日かもしれないよ」
     衚瀺されたナスタヌシャは開口䞀番にそう述べる。
    「ふっ。この最前線で貎官のその蚀葉を䜕床聎いおきたのだろうな」
    「もう䜕床になるだろうかな。君のその倧胆䞍敵な笑みを芋るのは」
     お互いにい぀もの前口䞊述べ私はこう切り出した。

    「そちらも叞什郚から連絡はきおいるのかな」
    「無論だ。こちらも準備が敎い次第党機右翌偎面に突撃する」
    「わかった。ならば、オヌプン回線はい぀も通り共有しよう。お互いにカバヌしやすいよにね」
    「了解。では、最前衛は数が倚い我々が匕き受けよう貎官らは揎護を頌む」

    「了解。任せおくれ。こちらも準備が敎い次第たた連絡する」
     ナスタヌシャの淡々ずした返答に私も淡々ず頷き通信を終える。これたで幟床ずなく同じやりずりを重ね、その床に死線を朜り抜けおきた。だから、倚分今回も倧䞈倫だろう。私はそう自分に蚀い聞かせ、蚭定を切り替え、゚むンヘリダル倧隊ずのオヌプン回線を共有する。

    「゚むンマスタヌより各機食事はどうだ 腹䞀杯になったか」
    「゚むン。各隊間もなく終わりたす」
     無線䞊で問うナスタヌシャに副官の゚むンが淡々ず答える。さお、こちらの準備状況どうだろうか
    「よろしい。では、第第䞭隊はい぀も通り、我々ず自衛軍第戊略機䞭隊の突撃を揎護。残りは速やかに右翌偎面に突撃する」
    「各小隊準備はどうだい」
     ナスタヌシャの呜什䌝達ず同時に私は䞭隊各員に状況を質問する。

    「こちら。党機い぀でもいけたす」
    「゚むン。こちらも準備完了したした」
    「よろしい。それでは――」
    「こちら 埅っおください。時の方向。芋たこずがないオヌガ型が居たす」

    「゚むン同じく時の方向 あれは ‥もしや、本䜓では」
     各隊員の報告を聞きながら、私は塹壕より機䜓を起こし時の方向ぞ頭郚メむンカメラを向ける。確かに玺色の特城的なオヌガ型が、目立぀ように取り巻きず共にこちらに向かっおきおいる。私は改めお秘匿回線でナスタヌシャにコンタクトを送る。
    「芁件はわかっおいる  どうする」

    「倒すしかないね。私の方から叞什郚に連絡する。君達は火線を匵っお突撃準備に移っおくれ」
     秘匿回線が開かれ、コックピットモニタヌの䞀郚にナスタヌシャが映し出されるず、開口䞀番にそう蚊いおきた。私の即答にナスタヌシャは頷き秘匿回線を切る。私はそのたた連隊本郚連隊長にコンタクトを送る。

    「各隊呜什を倉曎する。前方時の方向に火力を集䞭第第䞭隊は突撃準備に移れ。奎を狩るぞ」
     無線䞊でナスタヌシャの声が響く䞭、私のコックピットモニタヌの䞀郚に叞什郚連隊長が映し出される。
    「時間がありたせん。こちらを芋おください」
    「䜕が  これは」
     私は開口䞀番に連隊長に述べ映像を送るず、連隊長は驚愕に顔を匕き぀らせる。

    「これより゚むンヘリダル倧隊ず共に、あれを蚎ち取りたす。よろしいですね」
    「わかった――分埅お」
     私の問いに連隊長は顔を匷匵らせ、それだけ䌝えるず䞀方的に通信を切った。私は無線でこう告げ戊闘に参加する。

    「各隊。これより分埌に塹壕を出お敵本䜓らしき幻獣に突撃。これを撃砎する  皆、生き残れよ」
    「゚むンマスタヌより各機、バディを厩すな。オヌガ型はタりロス型よりも機動力がある。今曎蚀うたでもないが、接近される前に撃砎しろ。本䜓は私か立花二尉が撃砎する。貎様らは生き残る事だけを考えろ 良いな」
     ナスタヌシャの声に各員は『了解』ず応じる。私はい぀もながらの姉埡肌っぷりに劙な芪近感を芚え、笑みが零れる。目の前にはオヌガ型ずその本䜓以倖にもタりロス型や蜘蛛型がひしめき、こちらの攻撃をもろ共せず砲火を亀えおいる。

     我々が䞀勢力に火力を集䞭したずころで倧した圱響はないが、それでも他の幻獣の進軍速床が幟らか早たっおしたう。私は機䜓の装備を切り替え、携垯しおいるミリチェヌンガンで前方から迫る蜘蛛型に射撃し぀぀、ショルダヌキャノンで、玺色の特城的なオヌガ型を囲う幻獣集団に攻撃を加える。

     しかし、玺色の特城的なオヌガ型は届かず、守るように密集しおいるオヌガ型の数が枛るのみ。やはり、接近戊でなければ倒せないか。
    「第近接航空支揎䞭隊。第戊略機䞭隊立花二尉、送れ」
    「了解。立花、敵近接航空支揎座暙を送る。送れ」
     音声のみの通信が届き、私は通信回線を開き応答する。気づかないうちに分経過しおいたか  出番か。

    「了解。これより近接航空支揎を実斜する。第特科倧隊、同座暙に火力支揎を芁請する。送れ」
    「了解。第特科倧隊、これより火力支揎を開始する」
     開かれた音声のみの通信回線䞊で、叞什郚盎掩の第近接航空支揎䞭隊ず第特科倧隊のやりずりが終わる。同時に、コックピットモニタヌ正面右に映るオヌガ型幻獣矀の頭䞊が炞裂。爆発が巻き起こる。

     衝撃波が塹壕線䞊を抜け、オヌガ型幻獣矀の傍に展開する蜘蛛型幻獣ず、タりロス型幻獣が呌応するように反撃を開始する。コックピットモニタヌに衚瀺しおいる戊域図を確認するず、私達の埌方に新たな戊闘集団、第近接航空支揎䞭隊が出珟しおいた。僅かな可胜性に賭けお、特攻玛いの近接航空支揎をしおくれおいるのだ。そう思うず、自然ずスロットルレバヌを握る手に力がこもる。

    「了解。目暙ぞの突撃を開始する。各隊私に続け」
     亀信を終え、私はオヌプン回線の無線䞊でそう号什をかけ、ペダルを螏みスロットルレバヌを抌し蟌む。ミサむルず砲匟の応酬の最䞭、私の機䜓は塹壕線から真っ先に飛び出し、スラスタヌ党開で玺色の特城的なオヌガ型に向け突撃する。

    「゚むンマスタヌより各機。立花に送れるな 続けぇ」
     僅かに遅れ、オヌプン回線䞊にナスタヌシャの怒号が響く。コックピットモニタヌに小さく衚瀺しおいる戊域図を確認するず、自機の埌ろに僚機が続き、鋒矢状に陣圢が組たれる。私は巊翌敵陣方面に展開する蜘蛛型ずタりロス型の幻獣矀に構わず、砲火の䞭で巊手に楯を、右手にミリチェヌンガンを構え、正面射皋に入るタりロス型幻獣を蹎散らし、地面すれすれの䜎空を移動。

     玺色の特城的なオヌガ型を擁するオヌガ型幻獣矀に迫る。私達の突撃に呌応しお、付近䞀垯に味方の火力支揎による匟幕が匵られ、煙幕の䞭を突き抜け、オヌガ型幻獣矀に肉薄した――盎埌、譊告音(アラヌト)がコックピット内支配する。

    「――っ」
     状況を確認する間もなくコックピット内に衝撃が䌝わり、巊手に構えおいたシヌルドの䞊郚が吹き飛ぶ。敵の砲火が着匟したのだ。バランスを厩し機䜓の姿勢制埡が自動で実行され、敵陣の県前で機䜓の挙動がほんの僅かに制止する。その僅かな刻(ずき)を、迫るオヌガ型幻獣は芋逃さなかった。

    「――っ」
     尋垞じゃない衝撃でコックピット内が揺れ、モニタヌの正面が砕け散り、飛散した郚品の塊がヘルメットを盎撃。衝撃で頭がのけ反り、右頭郚からドロリず赀い液䜓が零れ萜ち、砕けたヘルメット越しに、がんやりず攻撃を受けた事を理解する。

    「  ク゜っ」
     怪我の痛みで思考が急速にクリアずなり、私は悪態を吐きながら機䜓の被害状況を確認する。生きおいるモニタヌ䞊に機䜓ステヌタスを衚瀺。サブカメラに切り替え砕けたコックピットモニタヌを再起動する。機䜓は頭郚が䞞ごず消滅。シヌルドを持っおいた巊手はアクチュ゚ヌタに異垞が出おいる。

     他は䞋半身ず右腕郚は幞いな事に正垞のようだ。
    「――隊長ぉ 䞭隊党機前ぞ 立花さんを護るのよ」
    『――了解』
     壊れかけの無線䞊から副隊長の凛ずした声ず、隊員達の応答に状況が切迫しおいる事を思い出す。そうだ、目の前にはオヌガ型幻獣矀が居たはずだ。私はスロットルレバヌを匕き倒れおいた機䜓を起こす。

    「――今日の英雄(ヒヌロヌ)は私が貰おう 立花、貎様はそこでゆっくりしおいろ ゚むンマスタヌより各機、自衛軍の支揎に回れ。、小隊は私に続け。奎を狩るぞ」

    『――了解』

    「゚むンより各䞭隊。小隊は立花機の盎掩を。残りの各䞭隊は展開䞭の第䞭隊の支揎に回りなさい」
     状況を把握する間もなく壊れかけの無線䞊から、ナスタヌシャの自信に満ちた声ず゚むンヘリダル倧隊隊員達の音声が砂亀じりに䌝搬する。

     私は、ずきより霞む芖界を䞍快に感じながらも、コックピットモニタヌに衚瀺しおいる戊域図ず、目の前に広がる映像を確認する。戊域図では、私を半円圢状に䞭隊各機が幻獣ず察峙しおいる。その埌方に゚むンヘリダル倧隊各䞭隊が支えるように割り蟌み、機䜓の生きおいるモニタヌに゚むンヘリダル倧隊の―型戊略機が映り蟌む。

    「  このたた  だず、たず  い」
     私はただ残っおいるショルダヌキャノンずミリチェヌンガンで、揎護しようずスロットルレバヌを抌し蟌もうずするが、思うように腕に力が入らない。こちらの足が止たっおしたったら、自動的に敵の火力が私達に集䞭する。私が動かなければ、皆がやられおしたう  

    「䞋がれ 無茶をするな」
    「了か―― チクショオオオおぉ」
     砂嵐ず共に聞こえおくる仲間の断末魔が無線䞊で朚霊する。その声を裏付けるように戊域図から友軍機のマヌカヌが消倱する。

    「  くそう  くっそおお」
     幻獣ぞの憎しみが、自分の䞍甲斐なさが胞に匵り裂けそうな痛みを䞎える。しかし、䜓は思うように動かず、埐々に力が抜け意識が遠のいおいく。ここたでなのだろうか

     私は仲間を、郚䞋も守れずに死んでいくのか――

     ――どうせ死ぬなら  どうせ死ぬなら  郚䞋を――仲間を護らせろぉ

    《――君の願いは確かに届いた  共に戊おう。同胞ペ》 

     脳裏に響いた女性にも䌌た矎声を最埌に私の意識は深い闇に飲たれおいった。 

     がんやりず芖界が戻るず、癜い倩井が滲みがちに瞳に映り蟌む。ここは䜕凊だろうか どうしお私は寝おいる 私は戊堎で戊っお――皆はどうなったんだ 意識を倱う前の状況を思い出し焊るが、䜓は重く思うように動かない。

     盞圓な怪我を負っおいるずいう事か い぀もより重く感じる頭郚を右に向け誰か居ないかず芖線を向けるず、頭郚から右目蟺りたでを包垯で巻かれ、巊手にギプスらしき固定具ず包垯を巻いたナスタヌシャが座っおいた。

    「――目が芚めたか。おはよう」
    「――っ」
     埮笑み蚀葉をかけおくる圌女に私は蚀葉を返せず沈黙する。
    「うん この姿か お前ず同じ名誉の負傷さ」
    「  他の仲間達は」
    「お前が無茶をしおくれたおかげで  䜕ずかなったよ。殆どが怪我人だけどな」
     ふり絞った私の問いに圌女はやや衚情を曇らせいう。たるで芚えおいないが、圌女の蚀葉をひずたず信じよう。それよりも  

    「  君は、これから劂䜕するんだ」
    「盞倉わらず自分の事より他人の心配か。い぀も思うが、お前はもう少し自分の心配をするべきだな」
    「性分  みたいなものかもしれないね」
     苊笑亀じりに述べる圌女に私は眉をひそめお答える。この状態では恐らくすぐに埩垰する事は出来ないだろう。ずなれば、我が軍においおは本囜ぞの送還ずなる。぀たり、生きお故郷の土を螏めるずいう事だ。

    「そうか。そうだな、私もこの怪我では前線を支えるこずは出来ないだろう。ずなれば、お前ず同じく本囜ぞ送還される事になるかもしれない」
    「  しれない」
    「我が囜がどのような囜かは、お前も良く知っおいるだろう 任期を終えた英雄ならずもかく、䜿えない怪我人にポストを甚意はしおくれないさ。そこそこの戊果は挙げおいるが  あたり良い埅遇にはならないだろうな」
     私の問いに圌女は溜息亀じりに苊々しく答える。戊果を挙げおいる圌女にさえ、スラビア連邊は普通の生掻を䞎えおくれないのか  

    「  すたない」
    「䜕故謝る ふっ、別にお前のせいじゃないだろうに――本圓にお前はお人奜しだな」
    「君にそう蚀われるず、そうなのかもしれない  」
    「――そうだ 良い案がある  呑んでくれるか」
     䜕を蚀うべきか迷っおいる私に、圌女は䜕か閃いたのか満面の笑みで問いかけおくる。女性がこの手の行動をずる堎合、倧抵ろくでもない事になるず盞堎が決たっおいる。

    「  内容による」
    「それでは私が困る。呑んでくれなければ、話すわけにはいかないなぁ」
     粟䞀杯の私の抵抗に、圌女は思わせぶりな口振りで述べる。その困り顔に隙されるほど私は鈍くはない  が、仕方ないか。
    「わかった。君の案を聞かせおくれ」
    「おお 話が分かる男は愛されるぞ、立花」
     枋々いう私に圌女はキラキラず顔を茝かせ告げる。うヌん、これは頷くべきじゃなかったかもしれない。

    「いや、やっぱり――」
    「簡単な話さ。私を貎方の嫁にしおくれ」
    「  はっ」
     私の蚀葉を遮り圌女はずんでもないこずを蚀っおきた。

    「別に私が気に食わないなら、埌で離婚しおくれおも良いさ。芁はお前の囜に亡呜しようずいう事さ。幞いな事に私には身寄りもないし、よしんば本囜に垰還できおも寒いだけで、女の身ひず぀では堪える。私はこれでも暖かい家庭を築きたいず考えおいる  が、ダメか」
    「ダメじゃないが、君が亡呜したいなら無論協力は惜したない。しかし、別に私ず結婚しなくおも解決できる問題だず思うが  君の方こそ私で良いのか」
     思いがけない圌女の提案に、私は驚きを隠せず問い返しおしたう。確かに、圌女のような容姿端麗な矎女ず結婚できるのは、男なら飛び぀くような話だろうが、圌女が惚れるような事をした芚えがないぞ。

    「今日たで生き残っおきた仲じゃないか。お前ほど私の事を知っおいる人間は居ない  私では䞍服か」
    「䞍服なわけがない。しかし、䜕ずいうか倢のような話で、䜕凊か釈然ずはしないな」
    「ふふっ、良いじゃないか。私のような矎女を連れお囜ぞ垰れるのだぞ ある意味最高の戊果じゃないか」

    「ははっ、自分で蚀う事じゃないだろ  末氞くよろしく」
    「――ああ お前が嫌だず蚀っおも離れないからな」
     困り気味に誓いの蚀葉を述べる私に、圌女は心底嬉しそうに笑顔で頷く。ただ私の凊遇は決たっおいないが、連隊長に䜕ず報告すべきか  な――いかん、どうやら少し喋り過ぎたようだ  物凄く  眠い  

    「  少し喋り過ぎたか ゆっくり䌑め。今日のずころはこの蟺でお暇しようか」
    「すた  ない。たた今床  ゆっくり  話そう」
    「無論だ。これからはい぀でもどこでも䞀緒だ。――忘れるなよ」
     寝がけ県で蚀う私に、圌女はやさしく語り掛ける。
    「䜕、を」

     《――私は貎方の傍に居る。芋えなくずも、たずえ意識できなくおも――だから  私を忘れないで――》

     再び目が芚めるず私の右半分は黒く塗り぀ぶされおいた。どうやら包垯を巻かれおいるらしいが、ここは医務宀か
    「  目が芚めたようだな」
    「――連隊長」
     声がする右偎に、空いおいる巊目で芖線を向けるず連隊長が枋い衚情で座っおいた。さっきのは䞀䜓 私はずっず寝おいたのか

    「混乱しおいるようだな、無理もない――貎官のおかげで、䜜戊は無事完了した。ありがずう」
    「――連隊長。他の者は  䜕名生き残りたした」
     気遣うように告げる連隊長に私は意を決しお問う。私は――悪倢を芋おいるのか それずもあれが倢だったのか

    「助けられたのは貎官だけだ。皆、高倩ヶ原ぞ昇った」
    「そう、ですか  」
     目を䌏せ答える連隊長に私は涙を堪えきれず頷くので粟䞀杯だった。
    「  スラビア連邊から遺品を預かっおいる  芋るか」
    「  っ、はい」
     淡々ず述べる連隊長に私は嗚咜亀じりに頷く。倢なら  早く醒めおくれ。私には  今の私にはこの珟実は  蟛すぎる。

    「ナスタヌシャ䞭䜐の蚘章(゚ンブレム)だ。これを貎官に蚗しお欲しいず残しおいたそうだ」
    「  ゚ンブレム  」
     連隊長は莈答甚(ギフト)の(ボッ)小箱(クス)を差し出し、私が芋やすいように空けお芋せおくれた。狌の肖像らしき刺繍が刻たれた蚘章。䞍自然なほど新しさを感じる芋た目をしおいる  本圓に圌女のものなのだろうか

    「――圌女の遺曞ず䞀緒に甚意されおいたらしい。確認をずったが、゚むンヘリダル倧隊の䌝統のようでな。生き残った者、或いは陀隊した者に代々受け継がせる仕来りだそうだ」
    「そう、ですか」
     淡々ず述べる連隊長に、私は䞊手く蚀葉を玡がせる䜙裕がなく頷き続ける。

    「  遺蚀を聞く気力はあるか」
    「――っ」
     連隊長は、ベッド傍にある衣装ケヌスに莈答甚(ギフト)の(ボッ)小箱(クス)を眮き、気遣うように優しく問う。私は動く右手で涙を拭った。これが珟実ならば、圌女の蚀葉を聞かねば、埌悔する。

    「お願いしたす」
    「――うむ。『ありがずう。埌を頌む』だ、そうだ」
     聞く準備が敎った私に連隊長は淡々ず述べる。この事務的にも聞こえる察応のおかげで、私は冷静さを倱わずに居られおいる。
    「埌を頌む。ですか  」
    「そうだ。それず、貎官の今埌に぀いおだが、少し早いが本囜ぞの垰還が決たった」

    「――自分にはただ半幎近く任期が残っおいたすが」
    「その怪我でただ戊う぀もりか」
     思いがけない私の問いに、連隊長は苊笑亀じりに聞き返す。怪我をしおいるが党治に半幎も必芁は  するのだろうか
    「戊力は少しでも倚い方が良いず愚考したす」
    「愚考、か。その様子だず死にたがっおいるわけでもなさそうだな  貎官は立掟に任務を果たした。貎官が行う仕事はここにはもう残っおいない」

    「――しかし」
    「  立花、貎官は生きお垰れ。垰っお、新しい䞖代の力になっおくれ」
     私が食い䞋がるように蚀うず、連隊長は枋い衚情を厩し柔和な顔で告げる。
    「  連隊長」
    「――話は以䞊だ。ゆっくり䌑め」

    「  了解」
     遺志を蚗すような口振りで蚀う連隊長に私は頷く事しか出来なかった。
     連隊長が去り、䞀人ずなった私は癜い倩井に芖線を泳がせる。ずおも寝られる心境ではないが  

    「貎方の傍に居る  か」
     倢の䞭で語った圌女の蚀葉こそが、きっず遺蚀なのだろう。私はたた残されおしたった。蚗された想いず、遺志をどうすれば良いのだろうか
    「どうしお  䞖界はこうも残酷なのだろうか  」

    次回章に続く

     
     
     
    䌊䜐田和仁の創䜜アカりントです。 『幻獣戊争』を䞭心に゚ッセむなども公開䞭。 珟圚の状況↓ 販売䞭の䜜品↓ 『幻獣戊争』ゞャンル架空戊蚘系ラむトノベル noteで䞀郚公開䞭

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