
第18話 限りなくグレーな企業誘致
第18話 限りなくグレーな企業誘致
永久町には、
最近、
やたらベンチャーが集まっていた。
AI。
宇宙。
物流。
映像。
教育。
まだ上場していない会社ばかりだった。
「また来るんですか?」
八代ハルが聞く。
REIは、
スマホを見たまま答える。
「来ますね」
「今、
日本で一番、
挑戦しやすい町なんで」
永久町では、
会社を始めるハードルが、
異様に低かった。
固定費が安い。
人が近い。
失敗しても、
死ににくい。
そして。
税金が、
妙に軽かった。
もちろん。
法人税ゼロ、
みたいな話ではない。
でも。
永久町では、
AI。
宇宙。
インフラ。
教育。
そういう“未来産業”は、
研究開発扱いになっていた。
研究開発費は、
経費になる。
つまり。
利益が、
ほとんど残らない。
結果。
法人税も、
かなり軽くなる。
永久町では、
税収より、
時価総額の方が重要だった。
町民たちも、
少しずつ、
その感覚に慣れ始めていた。
「今年、
まだ赤字らしいぞ」
老人が言う。
すると、
若者が答える。
「でも時価総額、
去年の3倍っす」
老人は、
少し考えてから頷く。
「じゃあ成功か」
その空気が、
もう普通じゃなかった。
若い職員が、
恐る恐る聞く。
「……それ、
大丈夫なんですか?」
REIは、
少し笑った。
「限りなくグレーですね」
部屋に、
小さな笑いが起きる。
REIは、
缶コーヒーを開ける。
「でも、
日本って、
挑戦する前に死ぬんですよ」
「家賃」
「固定費」
「税金」
「審査」
「未来へ投資するほど、
苦しくなる」
モニターには、
永久町へ移転した企業一覧。
去年は3社。
今年は27社。
その頃。
東京では。
あるAIベンチャーが、
資金調達失敗で解散していた。
理由は単純だった。
固定費。
永久町では、
そのニュースを見ながら、
若者たちが笑っていた。
「東京、
レベル上げる前に
ラスボスいるもんな」
誰かが言う。
「永久町、
チュートリアルエリアっぽい」
その時。
通知音。
《財務省、
永久町スキーム調査開始》
数秒。
誰も喋らなかった。
REIだけが、
少し笑っていた。