
PdM視点:マルコフ連鎖でサイト全体の“経路構造”を見える化して最適化する可能性について
この記事を書き終えて改めて考えると、そもそもユーザージャーニーの分群(クラスタリング) をMixture of Markov Models(MMM)や、マルコフ特徴を使った KMeans で行い、お客様の嗜好=行動タイプ(例:クラスタ1:快買型/クラスタ2:比価・逡巡型 …)を把握できれば、これまでのように一つのUIで全員に対応する発想から卒業できるのではないかという結論に至りました!
いまは生成AIの台頭でコード生成コストが大きく下がり、Microsoft のCEOが述べたようにこれからは超カスタマイズの時代です。ゆえに、最初からお客様の行動パターンのカテゴリが分かるなら、初手からその嗜好に合ったUIを出し分け、1つではなく 4〜5 のUIを用意して運用するのがむしろ今後のスタンダードになり、このやり方の方がもっとパフォーマンスを発揮することができると強く考えるようになりました。
最近 YouTube の 「The Trillion Dollar Math Chain」(Markov Chain の超わかりやすい解説)を観て、「これ、PdMの仕事にそのまま使えるのでは?」と思いました。
ECや SaaS / B2B の購買フローや機能利用フローは、まさに「ページ(状態)間の遷移」と思いました。
そこで今回では、マルコフ連鎖を「サイト全体の経路構造を理解するための利器」として使う方法の可能性を書いてみました。(ChatGPTに感謝!)
参考:YouTube「The Trillion Dollar Math Chain」
参考記事:Clustering Customer Journeys using a Mixture of Markov Models
マルコフ連鎖(Markov chain)とは?
「次にどこへ行くかは今いる場所だけで決まる」―そんな動きを確率で表すモデルです。ページや画面のような地点を状態、矢印についている数値を遷移確率と呼びます(各状態から出る矢印の確率を足すとおよそ100%)。

図の説明:
4つのページ Amy / Ben / Chris / Dan が状態です。
Amy → Ben 100%:Amyのページを見た人は必ず次はBenへ進みます。
Ben からは Amy 33%/Chris 33%/Dan 33%(合計≈100%):Benを見た人は3方向に同じくらい散ります。
Chris → Dan 50%、Dan → Amy 50%:下段の横矢印・左列の上向き矢印は、その向きに2人に1人が進むことを示します。
斜め矢印は Amy ↔ Chris、Ben ↔ Dan への行き来を表し、横に書かれた数値の確率で遷移します。
このように、「状態(ページ)間の移動に確率を貼る」=マルコフ連鎖。
なぜマルコフ連鎖が PdM に効くのか
A/B テストは「特定変更の因果」を見るのに最強ですが、複数ページ・複数入口が絡む「全体経路」の理解と分析には弱い面があります。
マルコフ連鎖は、各ページ(= 状態)間の遷移確率でサイト全体をモデル化できるので、
どこで迷い(ループ)や離脱が起きるか
どの経路が最短で転換(購入/完了)に至るか
ページ間の相互作用を変えたら「全体」がどう変わるか
を定量で把握できます。
先行事例:Mixture of Markov Models(MMM)でユーザージャーニーを自動で「型」に分ける
上の Medium 記事は、 ユーザージャーニーの分群(クラスタリング)に Mixture of Markov Models を用いる方法を紹介しています。
入力:イベントログ(ページ/機能の連続)と「群の数 K」
学習:EM(期待値最大化)で K 個のマルコフ連鎖(各クラスタの遷移行列 A と初期分布 π)を推定
K の決定:AICc(小さいほど良い)で自動選択
出力:K 種類の“代表的な経路地図”(各クラスタの行動型)
ポイントは手作業の特徴量設計や距離定義が不要なこと。
「サイト内の実際の歩き方」に沿って、快買型 / 比較・逡巡型 / 迷子型…のような行動パターンを自動で抽出できます。
ミニ例:オンラインストアを「地図」にする
状態(ページ)
HOME → SEARCH → PDP(商品詳細)→ CART → CHECKOUT → PAY → CONVERT(購入完了)/EXIT(離脱)
ユーザーの例
A:HOME → SEARCH → PDP → CART → PAY → CONVERT
B:HOME → PDP → SEARCH → PDP → EXIT
C:HOME → PDP → CART → CHECKOUT → PAY → CONVERT
作業の流れについて
各ユーザーの遷移確率表を作る
例:A の PDP→CART は 100%、SEARCH→PDP は 100% …など。要点だけの数字に要約(例)
PDP→CART の確率、SEARCH↔PDP の往復度、平均ステップ数、最終転換確率 など
KMeans などで分群
クラスタ1:快買型 … HOME→PDP→CART→PAY→CONVERT(寄り道少)
クラスタ2:比価・逡巡型 … SEARCH↔PDP を往復後に CART
クラスタ3:ぶらり型 … HOME/PDP を眺めて早期離脱
施策化
快買型:チェックアウトで高利益のアドオンを提示
逡巡型:PDP に価格・仕様比較/レビューを強化、決断までの往復を削減
ぶらり型:HOME に人気直行導線を配置
平均 CVR だけを見るより、「どう到達したか」がわかるので個別最適が可能になります。
実装手順のイメージ(今後検証する予定)
状態を定義
ページ/機能を 6〜10 個程度の意味状態へ圧縮(例:検索/閲覧/比較/決済/完了/離脱)。セッションごとに列を作る
先頭に START、末尾に CONVERT/EXIT を付与。MMM を学習(K=2..8 を試す)
それぞれ EM で {π, A} を学習 → AICc で K を決定。
クラスタごとに要約を自動生成 (テンプレート方式/LLM方式)
主幹パス:上位3ルート(サンキー図/表)
鍵遷移:全体比で上振れ/下振れした遷移 TOP5
摩擦点:離脱率・往復度・遷移エントロピーが高いノード
期待ステップ数と吸収確率(完了/離脱)
施策へ設計(ルールベースで雛形化)
SEARCH ↔ PDP の往復が多い↑ ⇒ PDP に比較表を作成
CHECKOUT → EXIT の離脱が多い↑ ⇒ 入力簡素化や自動入力機能を作成
検証
クラスタ別の A/B を設計し、遷移確率と全体最適化のそのものが意図通りに変化したかを確認(最終CVRだけでなく)。運用
月次で再学習(季節・キャンペーンにより構造は動く)。新規セッションは最尤クラスタに即時割当して施策分岐。
EM と AICcについて紹介
EM:
1回目は「なんとなく K 種類に分ける」→ その分け方で地図(遷移表)を描き直す → また分け直す…そして、地図がもう変わらなくなるまで繰り返す。
AICc:
「説明が上手いほど加点/地図を増やし過ぎると減点」のテスト。
スコアが最小の K(ちょうど良い複雑さ)を採用。
付録:クラスタ別レポートの雛形(自動生成用)
クラスタ名:例「快買型」
規模/成果:ユーザー比 xx%|転換 xx%|離脱 xx%|平均 xx ステップ
主幹パス Top3:HOME→PDP→CART→PAY→CONVERT(xx%)…
鍵遷移(全体比):SEARCH→PDP +35%、CHECKOUT→EXIT +22% …
摩擦点 Top3:CHECKOUT(離脱↑)、PDP(往復↑) …
推奨アクション:PDP 比較表、自動入力機能… など
📌 引用・参考リンク
参考:YouTube「The Trillion Dollar Math Chain」
参考記事:Clustering Customer Journeys using a Mixture of Markov Models