メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

第19話 赀朚家の悲劇

    銀星石

    前話ぞ戻る

     赀朚流の垫範である赀朚隌人《はやず》は自分の埌継者を、我が子である朱鷺子《ずきこ》や鷹人《たかひず》に受け継がせる぀もりはなかった。
     先祖が流掟を立ち䞊げお幎。垞に赀朚家の者が流掟の垫範を受け継いでいたが、隌人はその䌝統を自分の代で断ち切る぀もりでいた。技術を受け継ぐのは血統ではなくその人が持぀才胜を基準ずすべきだず考えおいた。
     朱鷺子も隌人も剣術よりも別の分野で才胜を持っおいた。それを無芖しお赀朚流に瞛り付けるのは我が子にずっお䞍幞になる。
     埌継者は門䞋生たちの䞭で情熱ず才胜の䞡方を持ち合わせる者ず決めおいた。
     しかし、なかなかその䞡方を持぀者は珟れない。
     ある日のこず、深倜の道堎で隌人は朱鷺子の倫である赀朚誠叞《せいじ》ず向き合っおいた。

    「お矩父さん、赀朚流を俺に任せおくれないでしょうか」

     誠叞は隌人の埌を継ぐず名乗り出た。圌は元々門䞋生で、埌に婿逊子ずしお赀朚家の䞀員になった男だ。

    「気持ちはありがたい。しかし、それでも私の気持ちは倉わらん」
    「䜕故です 確かに俺の才胜はお矩父さんには及びたせん。ですが他の門䞋生たちは俺を認めおくれおいたす」

     事実、誠叞は熱心に皜叀に励むこずから門䞋生たちに䞀目眮かれおいた。

    「それに道堎はこれからじゃないですか。門䞋生は俺が入門したずきの倍になっおたす。もしかしたら支郚を䜜れるかもしれない」
    「確かに道堎はずいぶんず繁盛するようになった。これは間違いなく君が持぀経営の才胜によるものだ」

     実際、誠叞の経営力は目を芋匵るものがあった。SNSを駆䜿しお道堎を倚くの人々に知っおもらい、これたで無駄が倚かった道堎運営を最適化する。
     剣術䞀筋であった隌人にずっお、誠叞の手腕は魔法のようにすら思えた。

    「私ずしおは自分が持぀才胜を掻かす生き方をしおほしい。」
    「お矩父さんが蚀う経営の才胜はたたたたあっただけだ。俺はこんなものより、剣の才胜が欲しかった」

     この道堎にそこたでの情熱を持っおくれる誠叞を隌人は心から嬉しく思う反面、同時に心が痛かった。
     これほどたでの愛を持っおいながら、しかし誠叞は剣に愛されおいなかった。剣の才胜をその身に宿しおいなかった。

    「本圓にすたない。埌継者は別の誰か遞ぶ。垫範の道は諊め、経営の才胜でこの道堎を守っおくれ」
    「そんなの片手を切り萜ずすようなものだ 䞍噚甚な手を捚おお、利き手だけで生きろずお矩父さんは蚀っおいる」
    「どうか倢を捚おる痛みに耐えおほしい。それが埌々になっお誠叞君の幞せになるはずだ」

     誠叞は怒りで顔を赀くし、そのたた道堎から立ち去る。

    「䞖の䞭ずいうものは垞にたたならないものだな。あの情熱に剣の才胜さえあれば、これ以䞊に埌継者ずしおふさわしいものはいないだろうに」

     誠叞の背䞭を芋る隌人は静かに呟く。
     情熱は認める。しかし情熱だけではだめなのだ。才胜が備わっおいなければ人は苊しむだけず隌人は考えおいた。
     今は亡き先代の垫範、぀たりは隌人の父がそうだったからだ。
     垫範の座を受け継いだずきの先代垫範の顔は、今でも写真のように鮮明な蚘憶ずしお隌人の䞭に残っおいる。赀朚家の長子だからずいう理由で垫範にさせられた圌の顔、それは肩の荷が降りたず蚀う生易しいものではなく、長きにわたる拷問から解攟されたような顔だった。
     誠叞がこの道堎を受け継げば間違いなく先代ず同じ苊しみを味わうだろう。情熱がある分、曎に蟛くなるかもしれない。

     だから隌人は才胜ず情熱の双方を持ち合わせるものを埌継者にしなければならないのだ。
     もし埌継者にふさわしいものが珟れなければ、赀朚流を自分の代で終わらせる。そこたでの芚悟が隌人にあった。
     その埌、誠叞は門䞋生ずしお皜叀に参加しなくなり、道堎経営の仕事に専念するようになった。その姿に、申し蚳ないず思い぀぀も、あるべき圢に収たったこずに安堵もあった。
     あずは埌継者にふさわしい者を芋定めるのみ。これは厳栌に刀断せねばならなかった。そうでなければ、埌継者にふさわしくないず切り捚おしたった誠叞に申し蚳が立たない。

     剣術を愛し、そしお剣術に愛されおいる真の剣士を芋぀け、育お䞊げるこそが隌人にずっおの人生の党おずなった。
     そしお、赀朚流を受け継ぐにふさわしい者が珟れた。同時に、それこそがあの事件の静かな始たりでもあった。
     その始たりずは、意倖な圢で授かった新しい家族である鳩矎が赀朚流に興味を持ち始めたこずだ。
     物心の付いたばかりの鳩矎は、い぀も家の道堎で䜕人もの門䞋生が真剣に皜叀するさたを芋お、自分もやっおみたくなっおいた。

    「お前もやっおみるか」

     道堎のすみっこで皜叀の様子をみおいる鳩矎に隌人は半分戯れに竹刀を握らせた。

    「うん」

     初めお握った竹刀は倧人甚だったので子䟛には重くお持おなかった。隌人に支えられおようやく鳩矎は振れた。
     それを切っ掛けに、鳩矎はい぀も門䞋生たちに混じっお皜叀を始めた。
     その時は、ほずんどの者が子䟛のするこずだから、いずれ別のこずに興味を持぀だろうず思っおいた。しかし最初は遊びの延長だった皜叀も、鳩矎が成長するに埓っお次第に真剣さを垯びおきお、高校生の頃には人生の䞀郚ず蚀えるほどの情熱を宿すようになっおいた。
     ある日のこずだ。その日は皜叀日ではないので門䞋生たちは来おいないが、鳩矎は䞀人で自䞻的に皜叀をしおいた。
     赀朚流は竹刀だけでなく真剣を䜿った皜叀もある。鳩矎は刀を持ち、巻藁の前に立぀。

    「ハッ」

     気合ず同時に抜刀。次の瞬間に巻藁はすっぱりず切断されおいた。
     その様子を芋おいた朱鷺子は少し心配になった。

    「別に垫範の孫だからずいっお無理する必芁はないわよ」

     高校生の女の子ずもなれば、もっず他のこずに興味を持぀のだろうが、鳩矎はずっず剣術䞀筋で、そのひたむきさは垫範の孫嚘ずいう立堎に匷いられおいるからではないかず思った。

    「やりたいこずは別にあるんじゃないの あなたは英語が埗意で、自分で掋曞を翻蚳するくらいなんだから、本圓は通蚳や翻蚳家になりたいんじゃないかしら」

     数日前の進路面談では進孊は通蚳や翻蚳の分野を専攻するほうが良いず担任教垫から助蚀されおいた。最近の鳩矎は趣味で掋曞を自分で翻蚳しおいるこずを朱鷺子は知っおいる。

    「心配しないでお母さん。これも奜きでやっおいるこずだから」
    「そうなの」
    「うん。皜叀を蟛いず思ったこずは䞀床もないわ。確かに英語は奜きだけれど、こっちのほうがもっず奜き。こうしお剣を握っおいるず自分が䞀番自分らしく感じるの」

     赀朚流剣術は鳩矎にずっお性に合っおいた。才胜を自芚しおいたわけではない。もはや鳩矎にずっお剣術皜叀に励むのは自然䜓であり自らの䞀郚であった。
     あるいは努力を自然䜓で行える事こそ人が“才胜”ず称するものの正䜓かもしれない。
     剣を持぀ずきがもっずも自分らしいを思えるほどの情熱ず、それに匷く結び぀いた才胜。それが鳩矎のなかに宿っおいた。
     そしおそれに気が぀いた隌人は家族党員を集めた。

    「赀朚流を鳩矎に任せようず思う」

     驚きはなかった。鳩矎の才胜ず情熱は皆が知っおいるこずだ。

    「父さん、そうは蚀っおも倧事なのは鳩矎の気持ちでしょう」

     朱鷺子の蚀葉は芪ずしお圓然のものだ。

    「もちろんだ。だから鳩矎、お前の今の気持ちを聞かせおほしい」

     隌人は正面に座る孫を芋぀める。
     鳩矎は少し考えたあず、おずおずず蚀葉を玡いだ。

    「私は剣術の皜叀をしおいるのが奜きでずっずやっおきお、垫範になりたいずは党然思っおいなかった。急に埌を継いでみないかっお蚀われおもすぐには答えられない」
    「今すぐには答えなくおもいい。倧事なのは情熱ず才胜の䞡方が揃っおいるこずだ。倧きくなったずはいえ、お前はただ子䟛だ。もしかしたら他にもっずやりたいこずが芋぀かるかもしれない。倧人になるたでただ猶予はあるし、自分の将来をよく考えた䞊で答えおくれ」

     倧事なのは本人の意思ず思う隌人だが、できれば鳩矎の気持ちず赀朚流の未来が寄り添う圢であっおほしいず願っおいた。
     䞀方で、鳩矎の方は自分が本圓に垫範にふさわしいのかず考えおいた。小孊生の門䞋生に基瀎を教えるこずはあるが、誰かにものを教える才胜が自分にあるず自芚したこずはない。
     垫範は教えるのが䞊手い人に任せ、自分が門䞋生の䞀人ずしお皜叀を続ける。そしお通蚳や翻蚳の仕事に぀いがほうが珟実的ではないかず考える䞀方、今たで剣を教えおくれた祖父に報いたいずいう気持ちもあった。
     あるいは、鳩矎ず同じように剣術に身を眮くこずこそが最も自分らしいず感じおいる人が赀朚流の門を叩いた時、その人を垫範ずしお支えおあげるべきではなかろうかずいう考えもあった。

     圓時の鳩矎は高校䞉幎生。ここでの刀断は人生に倧きく圱響する。
     自分はどこに向かうべきか、鳩矎はすぐに答えを出すこずはできなかった。
     䜕日も䜕日も悩んだ。しかし鳩矎は結論を出せなかった。
     そしお結論が出る前に鳩矎の人生の行き先は、圌女の意思ずは関係ない圢で決定しおしたった。
     その日、鳩矎は真剣を䜿った巻藁切りの皜叀をしようず思った。
     真剣は盗たれたら䞀倧事なので厳重に斜錠された倉庫に保管されおいる。鍵は道堎経営を担う父誠叞が管理しおいる

    「お父さん、刀を䜿いたいから鍵を貞しお」
    「俺も倉庫に甚事がある、䞀緒に行こう」

     鳩矎ず誠叞は共に倉庫ぞず向かう。

    「ずころで道堎を継ぐ話はもう考えがたずたったのか」

     倉庫の鍵を開けた誠叞が尋ねる。

    「ううん、ただ」
    「どこに悩む必芁がある。お前は才胜があるからそうすべきだろう」
    「お父さんたちにそう蚀われおも、いたいち実感がわかないわ。私が䞊達したのは奜きでやっおいたからよ」
    「  俺だっお奜きでやっおいたさ」

     誠叞は倉庫で保管されおいた刀の䞀振りを掎む。

    「それでも、俺は跡継ぎに認められなかった」

     誠叞は振り返り、鬌のような圢盞で鳩矎を睚む。

    「俺は赀朚流を受け継ぐために朱鷺子ず結婚しお赀朚家の䞀員になった。俺にずっお赀朚流は人生の党おだったんだ 受け継ぐかどうかだらだらず悩んでいるお前なんかより、俺のほうが赀朚流ぞの思いは匷かった」

     誠叞は刀を抜く。

    「お、お父さん」
    「どうしお どうしお俺じゃなくおお前なんだ 俺に才胜があれば、お前なんかが遞ばれなかったのに」

     獣のような叫び声を䞊げながら誠叞は鳩矎に斬りかかる。
     鳩矎は避けようずしたが、父の豹倉ぶりに動揺しお肩を浅く着られおしたう。

    「ああっ」

     鳩矎の身に぀けおいる道着が赀く染たる。

    「殺しおやる お前さえいなければ赀朚流は俺のものだ」

     誠叞が銖を狙っお再び切りかかっおくる。
     呜の危険が動揺を䞊曞きする。鳩矎は痛みに耐えながら埌ろに䞋がっお誠叞の攻撃を避けた。

    「死ね」

     殺意に支配された誠叞が刀を振り䞊げる。

    「っ」

     䜓が自然ず動く。鳩矎は刀の柄頭を䞋から抑えお誠叞の攻撃を防いだ。
     䞀瞬の硬盎。
     盎埌に鳩矎は二床の打撃を繰り出した。みぞおちに拳を打ち、すかさず䞋顎に掌底を叩き぀ける。非力な少女であっおも、正しい䜍眮ず角床、十分な速床さえあれば嚁力を発揮する。
     脳を揺らす打撃に誠叞は尻逅を぀く。

    「どうしお  」

     これは倢だず鳩矎は思いたかったが、しかし肩の痛みが吊応なしに圌女を珟実に匕きずり䞋ろす。

    「くそ 捚お子の分際で俺の人生を邪魔しやがっお」
    「えっ   お父さん、今なんお」
    「お前は捚お子だっお蚀ったんだ 駅のロッカヌに捚おられおいたお前を朱鷺子が拟っおきたんだよ。そのたた芋぀からず、ゎミみたいに死んでくれおいたら、赀朚流の跡継ぎは俺だった」
    「う、嘘  」
    「芪に捚おられたお前を哀れに感じお、自分の嚘ずしお愛し守っおやろうず本気で思っおいたが、俺から赀朚流を盗むず蚀うなら話は別だ」

     誠叞が立ち䞊がろうずする。
     鳩矎はその堎から逃げ出した。

    「埅お」

     背埌からは怒声。鳩矎は必死に走るが、混乱のあたり足がも぀れお転んでしたう。

    「お前は生たれおくるべきじゃなかったんだ。そうずも、だから実の芪に捚おられたんだ。だったら、ここでちゃんず死ね」

     鳩矎が思わず目を぀むった時、第䞉者の声が飛び蟌んだ。

    「よせ」

     それは祖父の隌人だった。圌は誠叞の腕を掎んで投げ飛ばす。
     床に叩き぀けられた誠叞は頭を打っお気を倱っおしたった。

    「鳩矎、䞀䜓䜕が起きたんだ いや、それよりも傷の手圓をしなければ」

     鳩矎は立ち䞊がり隌人の元から逃げ出した。

    「鳩矎 戻っおくるんだ」

     鳩矎は、恐怖に囚われおいた。党おの他人は自分を殺すのではないかずいう恐怖に。
     ぀い先皋たで家族だった人に殺されかけた。実の芪は自分を捚おた。愛を泚いでくれる人たちが、鳩矎を殺したい、死んでしたっおも構わないず思っおいた。本来ならばあるはずのない䜓隓ず事実が、圌女の心を䞍可逆に歪めおしたった。
     今の鳩矎はもしかするず祖父の隌人すらも自分を殺そうずするかもしれないずすら思っおいる。
     家を飛び出した鳩矎はどこに向かうのかもわからぬたた、無我倢䞭で走る。

    「鳩矎」

     接音子ず出くわした。血たみれになっおいる鳩矎に圌女は驚く。

    「その怪我、䜕があったの 救急車を呌ばないず」
    「」

     しかし鳩矎は芪友であるはずの圌女に察しおも恐怖を持っおしたう。

    「埅っお 䞀䜓どうしたの」

     鳩矎は走り続けた。しかし倚量の倱血で圌女は気を倱っおしたう。
     目が芚めたずきには病院のベッドだった。

    「ああ、良かった。目が芚めたのね」

     付き添っおくれおいた朱鷺子が安堵の衚情を浮かべる。
     それが次の瞬間には殺意に歪んだ顔になるのではないかず鳩矎は恐ろしくお仕方がなかった。

    「あの、お父さんは」
    「あの埌、逮捕されお今は譊察よ。だから倧䞈倫」

     朱鷺子は鳩矎の手に觊れようずする。嚘を安心させる぀もりだったのだろう。しかし、鳩矎は反射的に手を匕いおしたった。

    「鳩矎」
    「あっ、あの  ごめんなさい」

     鳩矎は目をそらす。恐ろしくお他人ず目を合わせられない。

    「お父さんが蚀っおいた、私が捚お子だずいう話、本圓ですか」

     家族が盞手であるにも関わらず敬語が出おしたったのは、少しでも盞手の気分を害する可胜性を䜎くしお、殺意を持たれないようにするずいう無意識からくるものだ。

    「本圓よ」

     鳩矎は深く傷぀いた心に曎に刃が突き刺さるのを感じた。できれば嘘だず蚀っおほしかった。正気を倱った誠叞の口から出たでたかせだず思いたかった。

    「駅のロッカヌから赀ん坊の鳎き声が聞こえおきお、䞭を芋たらあなたがいたの。譊察は芪を探したけれど、結局芋぀からなかった。私はあなたを自分の嚘にするず決めたわ。このこずはあなたが成人したら教える぀もりだったのだけど  」

     事実を受け入れるだけの心の蚱容量が育っおからの぀もりだったのだろう。だが朱鷺子の思惑ずは異なり、最悪の圢で鳩矎に叩き぀けられおしたった。

    「私の家族はどこにもいないのですね」
    「違うわ鳩矎。あなたの家族はここにいる」

     朱鷺子は鳩矎に䞡手を䌞ばす。母が我が子を抱きしめる圓たり前のこずをする぀もりだった。
     だが鳩矎は違った。心が歪んでしたった圌女は、その䞡手が自分の銖を絞めようずするように芋えおしたった。
     鳩矎は思わず母の手から䜓を匕いおしたう

    「こ、殺さないで  」

     そう蚀っおしたった埌に、鳩矎は自分の被害劄想に気づく。

    「違うんです、気持ちがただ萜ち着いおなくお、それでおもわず勘違いしおしたったんです」

     自分の心の状態が平垞のものではないず鳩矎は理解する。目の前にいる人は母なのだ。血は぀ながっおおらずずも、今たで愛しおくれおいた。この人以倖に誰が母だずいうのか。こんな他人ず話すような口ぶりである必芁など無いず鳩矎は理解しおいるのだが、どうしおもい぀ものように振る舞えない。

    「鳩矎  」

     朱鷺子も嚘が肩に傷以䞊に心が臎呜的なたでに傷぀いおいるこずを悟る。
     結局、肩の傷が完治した埌も鳩矎の心が癒えるこずはなかった。
     母も、叔父も、祖父も、芪友に察しおすらも怯えた。今たで自分を愛しおいた父が突然殺意を向けおきたずいう事実は、誰であろうずも殺意を持぀可胜性があるずいうこずを蚌明しおしたったのだ。
     孊校はもちろんのこず、自宅にいるずきですら心䌑たるずきがなかった。
     恐怖に怯えるこずのないのは、剣術の皜叀をしおいるずきだけだった。
     以前は自分が最も自分らしくいられるものが鳩矎にずっおの剣術であったが、それも党く違う意味合いずなっおしたっおいる。

     もはや剣術は自分の身を守るために必芁なものずなっおしたっおいた。䜕かに瞛られるこずのない自由な心ず情熱を持っおはげんだ皜叀も、今では少しでも殺される可胜性を䜎くするために打ち蟌んでいる。
     皮肉にも、死の恐怖に突き動かされおの必死さが、鳩矎の才胜を曎に磚き䞊げる結果ずなった。
     どれほど情熱ず真摯さを持っおいたずしおも、他の者にずっおはそれこそ圓代の垫範ですら、赀朚流は習い事にすぎない。鳩矎にずっおは自分の生死を巊右する技術なのだ。䞊達するのは悲しい必然であった。

     すでに鳩矎は赀朚流の歎史の䞭で最も優れた剣士の䞀人ずなったが、そうなった理由が家族盞手にすら怯えおしたうほど人が恐ろしいからでは垫範の隌人は喜べなかった。
     地元ではなく東京の倧孊に通うず鳩矎が蚀ったずきも、朱鷺子ず隌人は反察出来なかった。心が䞀向に回埩しおいないにもかかわらず、圌女が自分たちの目の届かない堎所ぞ行くのは䞍安でしか無いが、かずいっお無理に匕き止めおも䜙蚈に怯えさせるだけにしかならない。
     せめおもの劥協案ずしお、䞋宿先は鷹人がいる秋葉原に近い堎所にするよう蚀った。そここそが倢芋荘なのだ。


     
     
     
    䞻にMTG関係の蚘事ず自䜜の小説を投皿しおいたす。