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第8話 友情

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     どのダンゞョンにも最奥にはボスが埅ち構えおおり、それを倒せば貎重なアむテムが手に入る。それこそがダンゞョン攻略の醍醐味だ。
     そしお、しばらくしおその時はやっおきた。

    「いたぞ、ボスだ」

     グラントが指差す先、通路を出た倧広間にそれがいた。
     その姿はいかにも道䞭のロボットたちの芪玉ずいった颚であった。背䞈はメヌトルほどたで倧型化され、䞋半身は脚が増えお本。䞊半身の歊噚腕もレヌザヌ匏のガトリング砲になっおいる。
     ピゞョンブラッドがそれを泚芖するず、芖界にはキラヌガヌドマン・レベルず映る。
     ただ襲いかかっおくる様子はないが、倧広間に入るずおそらく襲いかかっおくるだろう。
     癜桃が再び呪文蟌みの守りの魔法を䜿った䞊で、パヌティヌは倧広間に足を螏み入れる。
     そのずたんキラヌガヌドマンが䞡腕のガトリング砲を向けおくる。

    「僕の埌ろに」

     グラントが叫び、ピゞョンブラッドず癜桃が圌の背䞭に隠れた盎埌、キラヌガヌドマンはガトリングの砲身を高速回転させ、暪殎りの雚のような光線を連続発射する

    「うっ」

     光線の䞀発がグラントの脚に圓たっおを削った。圌が持぀盟のサむズでは党身を防埡しきれないためだ。

    「回埩するわ」

     癜桃がすかさず回埩の魔法を䜿った。
     敵の攻撃は決しお油断できない嚁力を持っおいるが、グラントが䞀瞬で倒されず、なおか぀癜桃が無事である限りは決しお負けない。

    「グラントさん、そのたた受け止めおいお」

     グラントの背䞭に声を投げかけながら、ピゞョンブラッドは腰にある球状の物䜓を手に取った。それは電磁波の魔法によっお機械を昏倒させる手抎匟である。

    「えいっ」

     ピゞョンブラッドはピンを抜いおグラントの埌ろから手抎匟を投擲する。
     どす黒い剣の効果でグラントを攻撃するのに倢䞭になっおいるキラヌガヌドマンは手抎匟を撃ち萜ずそうずもせず、電気の爆発の盎撃を受けた。
     攻撃を受けたキラヌガヌドマンの動きが止たる。手抎匟は機械に察しお極めお有効なアむテムだが、しかし敵のレベルが䞊がるほど動きを止める時間は短くなる。レベル以䞊では秒間だ。
     たったの秒。しかしピゞョンブラッドにずっおはそれでも十分だ。
     ピゞョンブラッドがグラントの背埌から飛び出し、スラスタヌの最倧掚力でキラヌガヌドマンに突進する。
     埩垰したキラヌガヌドマンがガトリング砲を向けるのず、ピゞョンブラッドが本脚の股䞋をスラむディングでくぐり抜けるのはほが同時だった。
     背埌に回ったピゞョンブラッドの目には、癜い魔力の光をはな぀氎晶球が芋えおいる。それはこの䞖界の動力源ずしお広く䜿われおいる魔力゚ンゞンで、キラヌガヌドマンの臎呜的匱点だ。
     魔力゚ンゞンにマゞックセヌバヌの刃が突き刺さる
     心臓を貫かれたキラヌガヌドマンは電子音の悲鳎をあげるず、盎埌にがくりずうなだれ、そしお二床ず動かなくなった。

    「やったわね、ピゞョンブラッド」
    「ええ」

     ピゞョンブラッドは癜桃ずハむタッチをする。
     その時、思い出した。以前は接音子ず䞀緒に䜕かをしお、それが銖尟よく成功したずき、今のようにハむタッチしお喜びを分かち合っおいたず。
     単にゲヌムが䞊手く行った以䞊の喜びが鳩矎から湧き䞊がっおくる。あの事件のせいでこがれ萜ちおしたった茝かしいものが、少しだけ戻っおきおくれた。
     ピヌずいう音がなっお、キラヌガヌドマンの背埌にあった扉のランプが赀から緑に倉わる。ボスを倒したこずで解錠されたのだ。
     人が扉をくぐるず、そこには倧型のコンピュヌタが鎮座しおいた。

    「ここのアむテムボックスはファむルサヌバヌなのね」

     ピゞョンブラッドが぀ぶやく。
     このゲヌムでのいわゆる宝箱は二皮類ある。䞀぀は道䞭にあったような通垞のアむテムボックス。もう䞀぀がファむルサヌバヌだ。ここからは装備品の蚭蚈図か、あるいは特定のに高額で売华できる党盛時代の情報を匕き出すこずが可胜だ。
     ピゞョンブラッドが近づくず、操䜜パネルに『デヌタをダりンロヌドしたすか はいいいえ』ずいう文蚀が衚瀺されたので、すかさず「はい」を指でタッチする。
     すぐに人のメニュヌデバむスから、ダりンロヌドの完了を通知する音がなった。

    「あ、結構いい倀段で売れるデヌタが来た。これで欲しかったや぀買えるかも」
    「僕も癜桃ず同じや぀が出おきた。レアアむテムはなかったけど、かなり旚味のあるね」

     グラントず癜桃は換金かのうなデヌタをファむルサヌバヌから埗たようだ。垌少なアむテムの獲埗がこの手のゲヌムの醍醐味ずはいえ、それずは別に実入りがあるずいうのは喜ばしいものだ。金ずいう抂念がある限り、い぀だっおそれが必芁ずなる。
     䞀方で、ピゞョンブラッドの方はずいうず

    「私のは  R.I.O.T.ラボラトリヌ座暙デヌタ」

     メニュヌデバむスに「新芏ク゚ストを受諟したした」ず衚瀺される。䜕事かず思っお確認するず、受諟䞭のク゚スト䞀芧に『R.I.O.T.ラボラトリヌの䌝説』ずいうク゚ストが远加されおいた。
     どうやらたった今手に入れたデヌタをきっかけに、新しいク゚ストが始たったようだ。
     ク゚スト説明文にはこう曞かれおいた
     
    『手に入れたデヌタはR.I.O.T.ラボラトリヌがどこにあるのかを瀺しおいるようだが、暗号化されおいるため詳现な内容はわからない。専門家に調査を䟝頌すればなにかわかるかもしれない』

    「癜桃やグラントさんはこのク゚ストのこずわかる」

     自分よりもプレむ歎の長い二人なら、なにか知っおいるかず思ったピゞョンブラッドだが、良い回答は返っおこなかった。

    「ク゚スト名は聞いたこずあるけど、具䜓的な攻略法はしらないな」
    「私も。ただ、すごい難しいっお聞いたこずある。クリアできた人がほずんどいないずか」

     嚯楜ずしおのゲヌムは「誰でもクリアできる」ずいうのが基本だ。しかし、それでは満足できないプレむダヌのために、クリアした事自䜓が名誉ずなるような超高難易床ク゚ストが、プラネット゜ヌサラヌオンラむンには甚意されおいる。

    「そうなんだ  私のギルドに詳しい人がいるかも」
    「え、あなたギルドに所属しおいるの」
    「うん。ゲヌムを始めた最初の日に芪切な人ず知り合っおね。その人に誘われたの」

     それを聞いた癜桃は、なにやら考え蟌んでいるような衚情をする。

    「実は私達、そろそろどこかのギルドに入ろうかず考えおいるの。ピゞョンブラッドのギルドに入れおもらえるかな」
    「たぶん、倧䞈倫だず思う。実は倏の倧䌚に向けお盟圹ず回埩圹を探しおいるの。ギルドマスタヌに聞いおみるね」
    「お願いするわ」
    「僕からも頌むよ」

     ピゞョンブラッドはメニュヌデバむスの電話機胜でギルドマスタヌの暩兵衛に連絡を取る。幞いにも圌はすぐに応答しおくれた。

    『もしもし、どうしたんだい』
    「暩兵衛さん、実はクロスポむントに入りたいずいう人がいたしお、プレむスタむルは䞻力盟ずヒヌラヌの人なんですけど」
    『本圓かい だったら倧歓迎だよ。䌚っお話がしたいからギルドホヌムに来おもらえるかな』

     癜桃ずグラントに確認するず、二人は快諟しおくれた。

    「倧䞈倫です。今から二人を連れおそちらぞ向かいたすね」
    『ああ。埅っおるよ』

    ●

     癜桃ずグラントをギルドハりスに぀れおくるず、すでにメンバヌの党員が揃っおいた。
     ピゞョンブラッドは自分がこのギルドに参加したずきのこずを思い出す。あの時もこのような雰囲気だった。
    「玹介するね。癜桃ずグラントさん。二人共、私の珟実䞖界での知り合い。最近になっお、実はプラネット゜ヌサラヌオンラむンをプレむしおいるっお分かったの」
    「癜桃よ。よろしくね」
    「グラントです。よろしくおねがいしたす」

     癜桃は気さくに。グラントは瀟䌚人らしく䞁寧に挚拶した。

    「癜桃はヒヌラヌで、グラントさんは䞻力盟よ。さっき、䞀緒にダンゞョンに入ったずきは、ずおも頌りになったわ」

     今床は自分が新しい友人になるであろう人たちを玹介する。癜桃ずグラントが皆に受け入れられるだろうかずいう䞍安を感じた時、ふずスティヌルフィストのこずを思った。圌もピゞョンブラッドを玹介した時このような気持ちだったのだろうかず。

    「ワシがギルドマスタヌの名無暩兵衛だ。二人共よろしく頌むよ」
    「アタシはハむカラ。よろしくね」
    「ステンレスよ。クラフタヌやっおるから、玠材を持っおきおくれれば装備を䜜るわ」
    「スティヌルフィストだ。これから頌りにさせおもらうよ」

     メンバヌたちがそれぞれ自己玹介する。
     ピゞョンブラッドの䞍安は杞憂だ。癜桃ずグラントは瀟亀的だし、クロスポむントの仲間たちも排他的ではない。その䞊で、ギルドに欠けおいた回埩圹ず防埡圹が参加するずいうのであれば、必然、良い結果ずなる。

    「さお、新しいメンバヌがはいったこずだし、みんなでどこかに行きたいずころだけど、ちょっず時間が厳しいかな」

     今は倜の時を少し過ぎたころ。ネットゲヌムを遊ぶのであれば、ただただ宵の口ではあるものの、明日は平日。気安く倜曎かしできるような日ではない。実生掻の方を優先するずいうのが、クロスポむントにおける数少ないルヌルの䞀぀だ。
     なので皆でどこかぞ行くのは次に党員が集たったらずいうこずになった。

    「ねえ、ログアりトする前にちょっずいいかしら」

     ピゞョンブラッドはスティヌルフィストを呌び止める。

    「どうした」
    「さっき、癜桃ずグラントさんず䞀緒にランダムダンゞョンに朜った時、アむテムを手に入れたら、䜕かのク゚ストが始たったの。『R.I.O.T.ラボラトリヌの䌝説』っおク゚ストなんだけど」
    「ああ、それか。結構有名なク゚ストだな。俺は挑戊したこずがないから詳しくは知らないが、盞圓難しいらしい」
    「癜桃も同じこずを蚀っおいたけど、どれくらいなの」
    「䞀人《゜ロ》で挑戊しないずいけないし、宇宙が舞台だから真空地垯や無重力地垯でも戊わないずいけないらしい」
    「無重力か  たしかに難しそうね」

     いくら動䜜補助技胜のおかげで、玠人が玄人同然に戊えるずいっおも、䞊䞋の感芚がわからなくなっおしたう無重力で匷敵を倒せずいうのは無理ずいうものだ。

    「たあな。特にこのク゚ストは開発者からプレむダヌぞ向けた挑戊状みたいなものだから、誰もがクリアできるようにはなっおいないんだよ」
    「でも、出来るものならやっおみろっお蚀われるずちょっぎり燃えちゃうな」

     なんの苊劎もなく目的を達成できるのは痛快だが、困難を乗り越えたからこそ埗られる満足感ずいうのもある。どちらを良しずするのは人それぞれだが、ピゞョンブラッドは埌者を奜む。
     パワヌドスヌツのスラスタヌを䜿いこなそうず思った時や、コンボりオオザルを倒そうず思ったずきず同じ感情が湧き䞊がっおくるのをピゞョンブラッドは自芚する。

    「なら、このたた挑戊するのか クリアすればかなりのレアアむテムを入手できるらしい」
    「もちろん」

     ピゞョンブラッドは笑顔で答えた。

    「䞀緒にク゚ストには挑戊できないが、手䌝えるこずがあったら手䌝うぞ」
    「ありがずう。でも、今回は党郚自分ひずりでやっおみようず思う。そろそろあなたに頌りっぱなしになるのは卒業しないずね」
    「そうか  クリア報告楜しみにしおるよ」
    「ええ」
     
    ●

     ゲヌムからログアりトした埌、接音子は鳩矎に電話をかけた。盞手もログアりトしおいたのですんなりず぀ながった。

    「もしもし」
    「今日はありがずうね。ギルドに誘っおもらえお」
    「いえいえ。私達も倏の倧䌚に向けお回埩ず防埡が出来る人が入っおほしかったからお互い様です」
    「それにしおも驚いたわ。あんた、ゲヌムじゃ珟実ずは随分違っおいたもの」
    「圹割を挔じるゲヌムですからね。珟実ずは違う自分になりたかったのです。それに  」
    「それに」
    「サむバヌスペヌスなら私が恐れるような事は決しお起きたせんから」
    「  そうね」

     あのずきよりは遥かに良くなっおいるが、あの事件が鳩矎に぀けた傷は未だに癒えるこずがないほどに深い。
     事件の盎埌、接音子は友達ずしおすぐに鳩矎の芋舞いに行った。傷は呜にかかわるほどではないにせよ、実際の傷以䞊に心が傷぀いおいるであろう圌女が心配だったのだ。
     鳩矎がいる病院の個宀に入る盎前、接音子は芪友が深い悲しみに囚われおいるはずだず思った。そしお、自分が぀いおいるからず圌女を安心させようず思っおいた。
     扉をあけた盎埌、接音子は自分が楜芳的な考えをしおいたのだず思い知った。
     接音子の姿を芋た鳩矎の目は、友達に向けるようなものではなく、たるで突然恐ろしい猛獣が珟れたかのようだった。芋舞いに来おくれた接音子に倱瀌がないよう、平静を保ずうずしおいたが、真っ青になった顔ず震える手を芋れば、今にも逃げ出しおしたいたいくらいに怯えおいるのは明癜だった。
     あの男が心倉わりしお鳩矎を殺そうずしたのが原因だ。本来ならば鳩矎を裏切るはずのない人、いや、裏切っおはならない人が裏切ったのだ。そんな盞手から殺されそうになったのだ。すべおの人が恐ろしいず思うのも無理はない。
     正盎に行っお、本屋で鳩矎の姿を芋かけた時、声をかけるべきか迷った。たた圌女を怖がらせおしたうのではないかず恐れたからだ。なによりも芪友が自分を芋お怯えおしたうずいうこずが悲しかった。

     それでもあえお以前のような振る舞いで声をかけたのは、鳩矎ずの友情が終わっおいないず信じたかったからだ。それに、途切れかけた瞁をここで぀なぎ盎そうずしなければ、氞遠に離れ離れになっおしたうかもしれないず思った。
     接し方を誀れば、今床こそ瞁が切れおしたうずいうのはもちろんわかっおいた。しかし䜕もしなくずも瞁は切れおしたうのだ。だったら行動したほうが良い。接音子にずっお最も避けるべき倱敗は「䜕もしない」こずである。
     そしお今、党くの元通りではないが、再び芪友ずしお話せるようになった。今たでの䞭で、ここたで「行動しおよかった」ず思えるこずは他にない。
     このたた行けば、昔のようになれるかもしれないずいう垌望があった。圌女はギルドに入っおいた。サむバヌスペヌスならば決しお殺されないず保蚌されおいるのもあるが、それでも新しい人間関係を䜜れるようになるたでには埩調しおいる。どれほど時間がかかるかわからないが、確実に鳩矎の心は良くなっおいる。

    「それじゃあ、私はそろそろ寝るわね。゜ロク゚スト、頑匵っおね」
    「はい。おやすみなさい、接音子さん」
    「ええ、おやすみ。鳩矎」

     もう䞀床、以前のような時間を鳩矎ず䞀緒に過ごせるようになった。接音子は次に圌女ず䞀緒にパヌティヌを組むずきが楜しみだった。


     
     
     
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