
みそ汁の具を考察する
はじめに
いまの職場で働き始めた2022年2月から、私は平日の毎朝、みそ汁をつくっている。
朝の1杯、昼はスープジャーで持っていって1杯、夜は妻と2杯。一日4杯分、800ミリリットル。計算すると、今日までで約900リットル。これは風呂4杯分にあたる。
風呂4杯分のみそ汁…!
これはもう、みそ汁職人への道を歩んでいると言っても過言ではない。
しかし、わが身を振り返ると、みそ汁に対して私はあまりにもぼんやりしていなかったか。
もしかしたら、通りすがりの人にみそ汁の極意を聞かれるかもしれない。
「考えるな、感じろ」と名言を借りて逃げることも可能だが、900リットル作った末の答えがそれでは、いかがなものか。
きっと言語化できていない知見があるはずなんだ。
この機会に、みそ汁について考察していきたい。
ここではまず、「みそ汁の具」に焦点を当てることにする。
みそ汁の具についての考察
みそ汁を作るとき、私は具を3つ選んで入れている。
具によって、主に見た目・味・香りの3点においてみそ汁に違いを生み出す。
といっても、冷蔵庫を開けて、3つの具材を適当に選ぶわけではない。大きく3グループに分け、各グループから1つずつ選抜している。
なぜか?朝は時間がないからだ。「豆腐もいいな、油揚げもいいな」などと迷っている暇はない。判断が遅いと駅まで全力疾走する羽目になる。
それでは、みそ汁のゆかいな仲間たちをグループ別に紹介したい。
★グループ1(わかめ・ねぎ)
基本的に、わかめとねぎを日替わりでみそ汁に入れる。瞬間的に入れられるのがいい。タイパという言葉はあまり好きじゃないが、みそ汁に求めるのはタイパである。
・(乾燥)わかめ
私はみそ汁界のエースはわかめだと思っている。
みそ汁にパッパと振り入れるだけで勝手に水を吸って成長する。手のかからない優等生だ。
しかもどんな具とも合うし、食物繊維も摂れる。あと食感もしっとり、モキュモキュしてていい。
天は二物も三物もわかめに与えたもうた。
ただ一つ難点があって、うちの鍋の色が黒なので、側面や底にへばりつくと見えにくい。鍋を空にしたと思ったら潜んでいて、洗われて排水口に消えていったわかめを何度も見てきた。
・(冷凍)ねぎ
小ねぎもわかめに負けず劣らず、小回りのきくやつだ。冷凍庫から取り出し、パッパと振って、おわり。ねぎの風味はみそ汁にわずかに辛みを加え、香りを引き立てる。そう、君は香味野菜なんだ。
たまに長ねぎを切って入れることもある。
小ねぎより手間は増えるが、よりダイレクトにねぎの味がするので違いを楽しめる。
短所もあり、歯の間に挟まるところ。食後に口をモゴモゴさせて取らなくてはならない。
★グループ2(きのこ)
きのこの栄養価を全面的に信頼しているので、なるべく何かしら入れるようにしている。
みそ汁の風味を陰ながら支えてくれる、バンドで言うとベースのような存在。
・しめじ
みそ汁の具きのこ部門では、しめじが優勝だと思う。しっかりした噛みごたえ、くせのない味。肉厚でみそ汁のかさが増える。かさが増えるとうれしい。噛むとちょっと弾力があるのも歯にうれしい。手でほぐしやすいのもいい。
他のきのことの公平性のために欠点を挙げたいのだが、(私の中では)本当にない。しいて言えば、軸の部分が石づきの下にはみ出していることがあって、そのときは切りにくいくらい。
・えのき
えのきは強い旨味成分を持っているらしい。
えのきを入れたみそ汁は、それだけでワンランクおいしくなる。
あと、その白さがみそ汁に映えてビジュアルもよろしい。
しかし、みそ汁を器によそう時、えのきは猛威をふるう。熱い汁を含んだえのきが手に当たり、やけどしたこと数知れない。
私の身体操作性の悪さが原因だが、えのきを責めたくもなる。
あと、えのきもまた歯の間に挟まる。小ねぎが5なら20くらい強く挟まるのが困りものだ。
・まいたけ
まいたけの良いところは、まず香りだろうか。すごくきのこの香りがする。ほかの表現が見つからないが、好きな香りだ。食感もいい。傘の部分は柔らかくキュッとしていて、軸の部分はコリコリしている。
味は…きのこの中ではちょっと独特だ。苦味を若干含んでいて、クセがある。私はしめじの次に好きだけど、なぜおいしいのか説明ができない。
また、みそ汁に入れると汁が黒く濁る。
短所もあるが、総合的にはやっぱり好きだ。
1パックではちょっと足りない。もっとどっさりとみそ汁に入れたい。
★グループ3(大豆食品)
豆腐、油揚げ、厚揚げ。大豆食品であるみそに大豆を上乗せし、大豆イソフラボンを大量摂取する。実際、みそ汁を毎食の習慣にしてから、肌の調子が良くなった気がする。
似たもの同士だけあって、具としての味噌汁との相性も抜群だ。
・豆腐
みそ汁の具の王道をいく存在だと思う。
みそのしょっぱさを和らげる、いい意味で淡泊な味。
それを見越して、豆腐を入れるときはみそを多めにするのが好みだ。
あと見た目通り白さも極まっている。えのきはクリーム色がかっているが、純白である。みそ汁に気品を生み出してくれる。
私は絹豆腐のほうが好みだ。
・油揚げ
油揚げの入ったみそ汁って、なんであんなに美味しいんでしょうね。やはり油が出るからだろうか。
逆に油揚げがみそ汁を吸って、相互に高め合う。
噛むと、ふかふかしか食感とともにじゅわっと旨みが染み出て、なんとも幸せな気分になる。
浮島のように、みそ汁の水面に広がる様子もいい。
本音を言えば、毎日油揚げのみそ汁が食べたい。
油揚げになら安心して背中を任せられる。
・厚揚げ
去年からみそ汁の具に仲間入りした期待の新星。
なぜもっと早くから目をつけなかったのか、今となっては不思議で仕方ない。
豆腐を揚げたものなので、豆腐と油揚げのいいとこ取りをしている。
中身は木綿豆腐なので、ぎゅっと詰まっていて噛みごたえがある。
ふだんの絹豆腐とはまた違った食感が楽しめる(絹豆腐を揚げたものは「絹揚げ」というらしい)。
★その他、たまに登場する具たち
ここまで挙げた具で、すでに2×3×3=18通りの組み合わせができる。
でもたまにちょっと飽きてしまい、変化をつけたくなるときがある。
そんなときに彼らは颯爽と駆けつける。
・キャベツ
長く火を通してくったりさせたほうが好み。
根元より、葉の薄い部分をたくさん食べたい。
・玉ねぎ
同じく、長めに火を通して甘みを出したい。
朝から泣きたくないのであまり出てこない。
・なす
なすもなるべく火を通してとろとろにしたいが、朝はとにかく時間が足りない。
・にんじん
細く切らないと火が通らない。玉ねぎと同じく甘くて美味しいし、みそ汁に彩りを添えてくれる。
・もやし
正直、みそ汁との相性には疑問を呈したい。中華スープに入れてこそ輝くと思う。
★今後入れてみたい具たち
いつもの具で変わらない安心感を得る。
もちろんそれでもいいが、まだ見ぬ可能性を探し求めることも、みそ汁を極めるために必要なことだ。
・なめこ
割とメジャーな具だと思っているが、一人暮らしのときに入れそびれたまま、ここまで来てしまった。妻の嫌いな食べ物なので、半永久的に入れられないかもしれない。
・納豆
みそ汁がねっとりしてしまうのではないかと不安で仕方ないが、怖いもの見たさで入れてみたい気もする。そう思いながら、今日も納豆をごはんにかけている。
・ニラ
ニラは好きなのでぜひみそ汁に入れたいが、香りと苦味がどう作用するか不安だ。
卵と合わせて中華スープにするという大正解が目の前にあるので、どうしても尻込みしてしまう。
勇気を出して新たな地平を切り開きたい。
・エリンギ
入れたことがないのに、絶対合わないと直感でわかる。たぶんブヨブヨになって悲しい思いをするだろう。…と思ってネットで調べると、とても合うらしい。反省。まだまだ精進が足りない。
・キムチ
みそとキムチはどちらも発酵食品だし、腸が健康になりそう。身体もポカポカになりそうだから、冬になったらやってみたい。
味はあまり想像がつかないが、チゲ鍋風になるのだろうか。
おわりに
ここまでみそ汁の具について自分なりの考察をつづってみた。
しかし、まだまだ語り尽くせていない感覚がある。
それに、みそ汁を構成する要素は具だけではない。
水とみそ、それに出汁だ。
正直に言うと、これらに対しても私はぼんやりとしていて、現状語れることがあまりない。これから考察を深めなければならないだろう。
そのために、まずは目の前の一杯と向き合うことが大事である。
明日の朝から、みそ汁との対話がまた始まるのだ。

みそ汁職人の朝は早い