
「整う空間」が人を変える。心を揺さぶる空間作り、35年目の挑戦 ~有限会社bluelace 真名子庸子さん~
部屋に入った瞬間、なぜかホッとする場所があります。
光のやわらかさ、澄んだ空気感、心地よい静けさ。
空間は、私たちの心や身体に静かに影響を与えています。
千葉市中央区で店舗ディスプレイ会社「bluelace(ブルーレース)」を営む真名子庸子さんは、35年にわたり “心を揺さぶる空間” を作り続けてきました。
「空間を整えることは、人を整えること」
そう語る真名子さんに、お話を伺いました。

どん底から会社を立て直した「提案書」
お父様が事業を営んでいた影響で、幼い頃から「いつか自分のお店を持ちたい」と夢見ていた真名子さん。
大手流通業界で販売促進やディスプレイのキャリアを積んだのち、31歳で独立し、bluelace(ブルーレース)を立ち上げました。
まだ個人でディスプレイを手がける人が珍しかった時代。
人とのご縁に恵まれ、仕事が途切れることはありませんでした。

「はじめの頃、ある洋菓子店のディスプレイを任されました。店舗拡大の波に乗り、次々と支店も任され、順調そのものでした。
けれど、私は現状維持だけでは満足できないんです。常に新しい挑戦を求めてしまいます。
勢いのまま、東京・青山に出店したこともありました。しかし結果は3年で撤退。
その後も、大きな失敗を経験しました。
どん底におちた私を家族は『しょうがないな』と静かに見守ってくれていた。その温かさが救いでしたね」
窮地に陥った真名子さんが取った行動は、今振り返っても「我ながらすごい」と思うほど、大胆なものでした。
以前から取引のあった会社へ、一通の「提案書」を携えて直談判に向かったのです。
「その会社に足りないものを私が補い、売り上げに貢献できることを必死に伝えました。『自分には会社があるから、必要な時だけ行きます』なんて条件までつけて。今思えば生意気でしたが、とにかく必死だったんです」
その熱い思いは、相手の心を動かしました。
折しもその会社も必要な人材を探していた最中。
真名子さんは契約社員として籍を置きつつ、自身の会社も建て直すことができたのです。

「寄物陳思(きぶつちんし)」が教えてくれたこと
真名子さんが店舗ディスプレイを提案する時に大切にしていることがあります。
それは、万葉集に由来する「寄物陳思(きぶつちんし)」という考え方。
自然や物事に自分の思いを寄せ、形にして表現することを意味します。

単に美しく飾るのではなく、その空間にどのような物語を込めるのか。
そのために、クライアントの心の奥にある思い(コンセプト)をていねいに引き出すことから始まります。
「お相手は最初のうち、どこか殻をかぶっていて、なかなか本音をおっしゃいません。格好いいことばかり話されます(笑)。
でも、対話を重ねるうちに少しずつ心が解けて、その方の本当の願いや独自の世界観が見えてくる。
時間がかかりますが、それを形にできたとき、心に響く仕事になるのです」

真名子さんが「寄物陳思」の考え方に出会ったのは、日本古来の風習「室礼(しつらい)」を学んだことからです。
ひな祭りや端午の節句、お月見。
四季の移ろいを慈しみ、空間を整える暮らし。
この文化に触れるうちに、真名子さんは「水引」や「しめ縄づくり」といった手仕事の魅力に引き込まれていきました。

「水引細工の美しい『毬(まり)』をどうやって作るのか、好奇心から学び始めました。そこからご縁が繋がり、現在は出雲大社千葉総国講社(千葉市若葉区)に水引のアクセサリーを納めさせていただいています」
また、年末に開催するしめ縄作りのワークショップも、大切な時間です。
農家さんから譲り受けた藁(わら)を自分の手で綯(な)い、形作っていくうちに、不思議と心が穏やかに整っていきます。
「一年の締めくくりにふさわしい、自分自身を清める時間になりますね」

ご縁がご縁を呼ぶ、不思議なつながり
「室礼」が空間を整える作法であるならば、自分自身を整える装いもまた、大切な儀式の1つです。
bluelaceでは真珠(パール)などを扱うアクセサリーブランド「むす・ひ・つき」を展開しています。
「むす・ひ・つき」は縁を結ぶという意味で、自分らしく縁を繋いでいってほしいという願いを込めたそうです。

真名子さんが真珠のアクセサリーを手がけるようになるまでにも、不思議な「ご縁」の連鎖がありました。
「もともと事務所が広かったので、スタッフと トンボ玉(ガラス玉)を作り始めました。そのうちシルバーを扱うようになったある日、1人のジュエリー職人さんが『雇ってほしい』と私を訪ねてきたんです」
そうこうするうちに、今度はある宝石会社の社長と出会い、真珠も取り扱うようになりました。
すると、今度は台湾からの留学生が「真珠のアクセサリー作りを学びたい」とやってきて、彼女を雇用することになります。
「気づけば、台湾のデパートに私の作った真珠のアクセサリーが並ぶまでになったのです。
すべて、人が人を呼んで運んできてくれたご縁。不思議ですね」

どんなに苦しい時も、目の前のことに必死に向き合い、場を整えてきた真名子さん。
そんな彼女のひたむきさが、国境を越えたご縁を引き寄せたのでしょう。

本来の自分に戻れる場所。
それが「整う」ということ
今、真名子さんが力を入れているのは「心身を整える空間作り」です。
「部屋に入った瞬間、ホッとしたり、逆に『早く帰りたい』と思ったりした経験はありませんか? 空間が人の気持ちを左右するんですよね。だから、私はただきれいだけではなく、心や体が整う場所を作っていきたいのです」
真名子さんが考える「整う」とは、特別に何かを足すことではなく「元に戻ること」。
「深く呼吸ができる。身体が軽く感じる。気持ちが穏やかになる。
これらが本来の自分に戻っているサインです。
このとき、”空間”も大切な要素になります。
光のやわらかさ。素材の温もり。静けさや香り……。
五感の心地よさを重ねることで、空間はより深く『整う場所』へと変わるのです」

近年「ウエルネス(よりよく生きること)」への関心が高まっています。
体や心だけでなく、人との関係や環境まで含めて整えていこうという考え方です。
真名子さんが目指す「心身を整える空間」は、まさにこれからの時代に求められるものになっていくのではないでしょうか。

「今さら」ではなく「今から」
学び続ける覚悟
35年という実績を積み上げてもなお、真名子さんの歩みは止まりません。
その根底にあるのは「倫理」の学びに基づいた実践する姿勢です。
学びが悩みや迷いの解決の糸口になることが多く、実践する大切さをかみしめているとのこと。

「自分の中の何かが動き出した」
真名子さんのFacebookより引用
「成功ってなんでしょうね。
私には、まだできることがあると感じています。
私たちは役割を与えられて生かされています。
自分一人の力で勝手に生きているのではない。
やれることがあるなら、もっとやらなくてはいけない。
役割を全うするためにこれからも頭を柔らかくして学んでいかなければと思っています」
50代、60代は、培ってきた経験を携えて、本当の「自分の役割」へと踏み出す新しい時。
「今さら」ではなく「今から」。
まずは自分の周りの空間を整え、深く呼吸することから始めてみませんか。本来の自分に戻ったとき、あなたを待っている「役割」が見えてくるはずです。

「私を更新中。」このnoteでは、自分を更新し続けている人たちの物語をお届けします。
小さな一歩を積み重ねて、「さらに新しい景色を見にいこう」と歩み続けている人たちの等身大のストーリー集です。
あなたの熱い想いを形にするお手伝いをいたします。
ぜひお声がけくださいね。