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変わらない味を、59年― 「お乳を飲む子」ままどおるが、世代を超えて愛される理由 ―

    ポリゴン

    ①出会い・背景
    1946年、福島県郡山市。池田惣助・トシイ夫妻が「不二屋」の屋号で小さな菓子店を開いた。戦後まもないこの時代、良質な原料を手に入れることさえ簡単ではなかったはずだ。それでも夫妻が掲げたのは『技術の前に良質な原料あり』という一貫した姿勢だった。
    1951年に発売した「銘菓三万石」が評判を呼び、1960年には洋風菓子「エキソンパイ」も世に送り出す。そして1967年、和と洋の調和を目指して生まれたのが「ままどおる」だった。バターをたっぷり使った生地でミルク味の餡を包み込んだこの菓子は、洋風菓子がまだ珍しかった時代に、たちまち評判となった。
    ②試練・葛藤
    一つの菓子を、何十年も「同じ味」であり続けさせることは、想像以上に難しい。原材料の価格は時代とともに変動し、バターや小麦の調達コストは上がり続ける。それでも三万石は、1991年から2018年までの実に27年間、ままどおるの価格を1個80円のまま据え置き続けた。
    これは単なる企業努力という言葉だけでは片付けられない。値上げをすれば売上は守れるかもしれないが、「気軽に買える福島の味」という存在意義そのものが揺らいでしまう。原材料費が上がるたびに、どこかで踏ん張り続けてきた日々があったはずだ。
    ③転機
    「ままどおる」という名前には、そうした葛藤の先にある想いが込められている。スペイン語で「お乳を飲む子」を意味するこの名前は、母性や温かさを連想させる響きを持つ。パッケージに描かれた、赤ちゃんを抱く母親のイラスト。手に取った瞬間から伝わるやさしい雰囲気は、偶然のデザインではなく、「変わらず優しい味を届けたい」という開発者の意図そのものだったのだろう。
    長年親しまれてきたCMソングでは、「まま まま ままどおる〜 ミルクたっぷり ままの味〜」というフレーズが歌われ続けた。この曲を口ずさめる福島県民は、今も数え切れないほどいる。
    ④結末
    2018年12月、ついに27年ぶりの値上げに踏み切る。1個80円から100円へ。原材料や包装材料の価格上昇という、避けられない現実があった。それでも、この価格改定が大きなニュースになったこと自体が、この菓子がいかに「変わらない」ことを期待され、愛され続けてきたかを物語っている。
    値上げ後も、ままどおるは福島土産の代名詞であり続けている。2012年には週刊文春の「おすすめ東北土産」特集で、宮城の「萩の月」、岩手の「かもめの玉子」に次ぐ第3位にランクインするなど、県外でも高い評価を得てきた。
    ⑤教訓・普遍的メッセージ
    「変わらない」ということは、何もしないことではない。原材料の高騰という試練の中で、できる限り価格を据え置き、味を守り続けるという選択そのものが、実は日々の小さな決断の積み重ねだ。
    母が子に注ぐ変わらぬ愛情のように、変わらない味を届け続けること。ままどおるという名前とパッケージに込められたイメージは、そのまま三万石という会社が59年間実践してきた姿勢と重なって見える。
    ⑥現代での語り継がれ方
    発売から59年目を迎えた今も、ままどおるは福島県民にとって帰省や出張の定番土産であり、県外の人にとっては「福島といえばこれ」という憧れの銘菓であり続けている。姉妹品の「チョコままどおる」も、10月から5月の期間限定販売という「待つ楽しみ」を伴いながら、冬の風物詩として親しまれている。
    一つの菓子の名前とパッケージに込められた「母が子を想う」というイメージは、世代を超えて、今も静かに受け継がれ続けている。
    三万石の店舗やオンラインショップでは、ままどおるやエキソンパイの詰め合わせも購入できる。福島を訪れる機会があれば、ぜひこの変わらない味を確かめてみてほしい。

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