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小柄な体、大きな存在。

    ときどき高層ビルを見て、ふと中学時代同じ部活だったO君を思い出すことがあります。

    小柄で、最初は私より足が遅く、私と同じく補欠でしたが、いつの間にか彼がレギュラーになり、足も私よりずっと速くなりました。
    追いつけない背中を今も覚えています。
     
    彼の進学先はなんとなく覚えていましたが、最近その高校の偏差値が71と知りました。
    驚きました。
    進学先が本当にそこで合っていたならとてつもなく優秀です。
    勉強のできる人だと聞いた記憶がないので余計に驚きですが、思い出したことがあります。
     
    部活の監督が、初めてO君を公式試合のベンチ入りメンバーに選んだ時。
    「一件目立たないかもしれませんが、一番頑張っていると思います。」と言いました。
     
    ある時は、帰り道で家を通るといつも彼が自主トレをしていると言っていました。
    見えないところで努力ができる人。
     
    見えるところでも努力ができる人。
    ある時、彼一人が重点的にノックを受けた時があります(補足:野球部です。)
    白球が思い切り右に行き、全身を使って右に飛び込みます。
    べったりと土がつき、起き上がるとその瞬間には白球が左へ行く。
    今度は左へ全身を振り絞って飛び込んで、またべったり土がつく。
     
    直後に次の白球が右へ、すぐ起き上がり飛び込んだ直後にまた左、絶え間なく休みなく右へ左へ飛ばされ続け、時間がどれだけ経ったでしょう。
    彼への期待ゆえに課された猛練習だと思いますが…見ているだけで地獄でした。
    そんな日も、彼からは愚痴一つ聞いた記憶がありません。
     
    彼が本当に偏差値71の高校へ行ったか今となっては確かめようがありませんが…
    そこに行ける努力を出来る人だと思います。
     
    今、私が連日使う駅の一つは奇しくも彼の苗字と同じ名前です。
    だからといって日々思い出すというわけでもありませんが、駅を降りて街中に高層ビルが見えた時、ふと彼を思い出すことがあります。
    なぜビルを見た時なのでしょう?
    もしかしたら、高くそびえる大きさが、彼に重なるのかもしれません。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

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