
【短編小説】 2026 6/14
チャイムが鳴る。
その音を聞いた瞬間、生徒たちは一斉に走り出した。
私も走る。
息が切れる。
階段を駆け上がる。
誰もが焦っている。
遅れたらどうなるか知っているからだ。
教室の扉を開ける。
そこには教師はいない。
代わりに、教卓の上には巨大な機械が座っている。
黒い鉄の塊。
無数のネジと歯車。
まるで生き物のように低く唸っている。
教室の後ろの扉が開く__
カツ、カツ、カツ。
女の先生が入ってきた。
いつ見ても不気味だった。
笑っているのに、目だけが笑っていない。
まるで私たちを観察しているようだった。
先生は黒板も見ずに言った。
チャイムが鳴る。
その音を聞いた瞬間、生徒たちは一斉に走り出した。
私も走る。
息が切れる。
階段を駆け上がる。
誰もが焦っている。
遅れたらどうなるか知っているからだ。
教室の扉を開ける。
そこには教師はいない。
代わりに、教卓の上には巨大な機械が座っている。
黒い鉄の塊。
無数のネジと歯車。
まるで生き物のように低く唸っている。
教室の後ろの扉が開く__
カツ、カツ、カツ。
女の先生が入ってきた。
いつ見ても不気味だった。
笑っているのに、目だけが笑っていない。
まるで私たちを観察しているようだった。
先生は黒板も見ずに言った。
教室の空気が凍る。
機械が低く振動した。
私は机を握りしめる。
⸻
『図形の法則を答えなさい』
⸻
スクリーンに映し出された図形。
意味が分からない。
隣の席の子も青ざめていた。
先生は微笑む。
「制限時間、三秒」
機械が唸る。
⸻
三。
⸻
分からない。
⸻
二。
⸻
何だこれ。
⸻
一。
⸻
答えられない。
⸻
瞬間。
ガンッ!!
背中に衝撃が走った。
呼吸が止まる。悲鳴も出ない。
私は机から転げ落ちた。
背中が熱い。
恐る恐る触れる。
皮膚がない。
肉がない。
まるでブロックを切り抜いたみたいに、背中が四角く削られていた。
血は出ていない。
でも痛い。
吐きそうなくらい痛い。
⸻
「不正解」
⸻
先生は楽しそうに言った。
⸻
そして次の問題が始まる。
⸻
生徒の中では不正解の傷と
ショックで死に至る子もいた。
ネジが目に突き刺さった子。
首を貫かれた子。
机に伏したまま動かない子。
でも誰も騒がない。
当たり前みたいに受け入れている。
その光景が何より怖かった。
⸻
試験終了後。
私たちは別の教室へ連れて行かれた。
傷を負った者。答えられなかった者。脱落者。
そんな人たちが集められていた。
⸻
そしてチャイムが鳴る。
キーンコーンカーンコーン。
⸻
その瞬間だった。
皆が走り出した。
廊下へ。
外へ。
別の教室へ。
⸻
「よかったああ!!」
「無事だった!!」
「怖かった!!」
⸻
泣きながら抱き合っている。
友達。
恋人。
大切な人、?
⸻
私は立ち尽くしていた。
誰も来ない。
誰も探していない。
誰も来ない誰も私を待っていない誰も私を探してい…
呼吸が浅くなる。
その事実だけが、機械の傷より痛かった。
私はただ、その光景を遠くから見ていた。
まるでガラス越しに別世界を見るみたいに。
⸻その時だった。
駐車場を一台の車が走り抜けた。
女が二人乗っている。
運転席の女はカメラを構えていた。
何かを撮っている。
私たちを。
学校を。
空を。
⸻
ぞっとした。
⸻
何を撮ってるの?
⸻
気づいた時には走り出していた。
追いかけていた。
でも追いつけなかった。
気づけば車は消えていた。
⸻
…
それから何日後だったか。
何時間後だったか。
夢の中では分からない。
⸻
私は見てしまった。
⸻
高いビルの最上階。
ガラス張りの部屋。
スーツ姿の大人たち。
⸻
彼らは下を見ていた。
⸻
私たちを。
⸻
まるで蟻でも眺めるみたいに。
⸻
その時初めて思った。
⸻
これは授業じゃない。
試験でもない。
⸻私たちは観察されている。
______
またチャイムが鳴る。
その音を聞いた瞬間、生徒たちは一斉に走り出した。
巨大な螺旋状の通路を走った。
ぐるぐると続く坂道。
中心には巨大なジャングルジム。
避難所のように生徒が集まっていた。
⸻
水が配られる。
ペットボトル。
そのキャップにはラムネみたいな錠剤が付いていた。
⸻
「飲むな!!」
⸻
気づいた時には叫んでいた。
⸻
四人ほどが既に口へ入れている。
皆、不思議そうな顔をしていた。
⸻
なんで私は分かったんだろう。
⸻
ただ嫌な予感がした。
⸻
その時。
近くで話す二人組の女子の声が聞こえた。
幼なじみらしかった。
⸻
「あの問題さー」
「昔やったよねー」
「田口だったじゃん」
「よかったー」
⸻
私は凍りついた。
⸻
...田口
⸻
あの問題。
私が答えられなかった問題だった。
⸻
そういうことだったのか。
⸻
点が二つ。
図形を二つ組み合わせる。
田。
⸻
点が一つ。
図形一つ。
口。
⸻
田口。
⸻
分かってしまえば簡単である、
だがもっと複雑なものを考えていた
⸻
呼吸が浅くなる。、
悔しさ
羨ましさ__
⸻
私は背中を削られた のに。
⸻
その時だった。
ふと気づく。
⸻
…背中が痛…くない…
⸻
恐る恐る、触れる。
⸻
傷が消えていた。
まるで最初から無かったみたいに。
⸻
…痛みだけは脳裏から消えない、
⸻
その時、人混みの中から一人の女子が現れた。
いつも突然現れる。
陽キャでもない。陰キャでもない。
誰とでも話せる。
でも誰にも属していない。
⸻
私はその子が怖かった。
⸻
皆はそうでもなさそ…
誰かが叫んだ。
⸻
「捕まえろ!!」
⸻
その子は一瞬で人が変わるかのような、
まるで私たちを憎んでるような、そんな顔になり、
逃げた。
⸻
気づけば彼女はオレンジ色の球体になっていた。
おもちゃみたいな。
柔らかいゴムボールみたいな。
⸻
誰かがそれを掴み、
迷いなく力強く下へ投げ捨てた。
⸻その瞬間。
遠くから誰かが走ってきた。
⸻男の子だ。
彼は、誰…?
息が切れている。
顔中汗だらけ。
とにかく必死だった。
⸻
「聞いてくれ!!」
⸻何かを叫んでいる。
皆が集まる。
⸻その時。
上を見る。
ビルの大人たち。
⸻笑っている。
まるで、この瞬間を待っていたみたいに。
⸻
そして。
⸻
8
⸻
7
⸻
6
⸻空中に数字が浮かぶ。
カウントダウンだ
⸻爆発?処刑?終わり?
誰も動けない。
⸻
3
⸻
2
⸻
1
⸻0
何も起こらなかった。
⸻沈黙。
そして男の子が私を見る。
私は少し驚く。
⸻手を差し出した。
私は何故か迷うことなく彼の手を取った。
彼の手は汗で湿っていた。
そして、言葉では言い表せ無いほどの緊張と安心という感情が身体中にビリビリと走った感覚があった。
⸻その瞬間。
⸻世界が割れた。
学校。
問題。
機械。
女教師。
車の女。
傷。
ビルの大人。
⸻
バラバラだった全てが、
一本の線で繋がる。
⸻そして見えた。
大人たちが作った世界。
その外側。
さらに巨大な枠組み。
⸻さらにその外側。
⸻
無数の世界。
無数の教室。
無数の私たち。
⸻
男の子が言う。
微笑む。
「やっと見つけた」
⸻彼は
「ここからだよ」
と彼は言った。
胸の奥で何かがほどけていく、理由は分からない。
初めて会ったはずなのに、
なぜかずっと前から知っていたような気がした。
怖さは消えていない。
それなのに、その言葉だけは不思議と信じられた。
そして私は初めて、
もう一人じゃないのかもしれないと思った。
___
その瞬間。私は目を覚ました。
湯気の立つ浴室。
静かな朝。
スマホから流れる音楽。
♪ アニソンヒット曲2025版
さっきまで世界が終わりそうだった気がする。
私はしばらく動けなかった。
夢は目が覚めた瞬間から少しずつほどけていく。
教室も。
機械も。
ビルも。
あの男の子の顔さえ。
もううまく思い出せない。
それなのに、胸の奥には何かが残っていた。
誰かを置いてきてしまったような。
何か大切な約束を忘れてしまったような。
そんな感覚だけが。
あの世界は終わっていない。
なぜかそう思った。
理由は分からない。
夢だったのかもしれない。
全部ただの作り話だったのかもしれない。
それでも。
ひとつだけ、はっきり覚えている言葉があった。
「ここからだよ」
そう言ってくれた誰かの顔は、もう思い出せない。
でもその言葉だけは、不思議と消えなかった。
理由は分からない。
ただ、これから先も時々思い出す気がした。