おにぎりと嘘とお味噌汁
近所の居酒屋さんでは、お昼時に手作りのおにぎりを販売している。一つ300円と少々高価だが、明太子や鮭、ツナマヨといった定番の具材が入っている、大きくてどっしりした懐かしいおにぎりだ。
ある日その店の前を通りかかった時におにぎりたちに呼ばれたような気がして眺めていると、お店の中から「いらっしゃーい!」と元気なお母さんの声がした。思わず下町情緒にやられ、明太子とツナマヨをくださいと言った。
お母さんが「お味噌汁が付くよ、一人で食べる?二人?」と私に質問をした。
決してお味噌汁が二人分欲しかったわけではない。しかしとっさに「二人です」と答えていた。
なぜだ!なぜ私はこんな嘘をついたのだ!一人で二つ食べるのかと思われることが恥ずかしかったのか!?
そうではない。「この人、一人なんだ」と思われることが嫌だった。一人で可哀想だと思われたくなかったのだ。
その数日前にとある成功者の講演会に行った際に、直接質問をする機会を頂いた。
「どうしても湧き上がる怒りの感情が、積んだ(つもりの)徳を打ち消してしまう気がするのだが、どうすればいいでしょうか」といった、なんとも曖昧な質問をした。
その成功者は「全ては鏡。自分で現している現象だと気付きなさい。…根底にはさみしさが潜んでいて、それが原因になっているかもしれないね」と回答をなさった。
その時はわかったようなわからなかったような気分であったが、おにぎりの一件で確信に変わった。
そうか、私は怒っていたのではない。さみしかったのだ!
なぜなのか、何が原因なのかは時間をかけてゆっくり掘り下げる必要があるのだろう。
しかし心の奥底に沈んでいたもやもやにさみしさという名前が付いたことで、なんだか清々しい気分になれた。
お味噌汁を不当に二つもらってしまいごめんなさい。ありがたく、おいしく頂きました。