
〜覚悟を決めた、あの夏〜
「スイカ、うんめ〜〜!」
僕は、志村みたいにかぶりつく。
「ゆっくり食べろよ」
兄は、いつも冷静。
だから、タネをとりながら食べる。
兄はこう続ける…
「おまえさ、スイカのタネ食べると
お腹の中で芽が出て、
スイカ人間になるって知らないの?」
「え?…もう全部飲み込んじゃったよ……」
暑くなってきましたね
夏も、もうすぐ。
梅雨が明けたら、もう夏。
そう、
夏の思い出といえば、
キンキンに冷えたスイカだ。
志村のスピードを超えるべく、
スイカは毎回高速で食べた。
スイカ=早食い。
そんな夏の風物詩。
食べちゃったものはしかたない
完全に飲み込んじゃってるから、
出すに出せない。
僕はもう、スイカ人間として生きていくんだ…
そう思っていた。
そして、いつか完全にスイカになった時、
僕は誰かに早食いされるんだ。
そんな未来しか、
考えられなかった。。
でも不思議なことに
なぜか
テレビで観ている志村はずっと志村だ。
不思議なことに、
スイカのタネを食べているはずの志村は、
いつまで経っても志村のままだった。
スイカ人間になる気配は……ない??
お父さん、実は僕ね
晩御飯を食べ終えて、
全てを父に打ち明けた。
スイカのタネを今までずっと
噛まずに飲んでいたこと。
いずれ僕はスイカ人間になること。
全身が、
緑と黒のしましまになってしまうこと……
それを聞いた父は、
アハハと笑ってこう言った。
「……んなわけねーだろ!」
兄は、
父のとなりでほくそ笑んでいた…
してやったりの顔をして……
また、やられた。。。
僕は恥ずかしくて、
顔がスイカの実くらいに赤くなっていた。
ーーーたぶん。
それから
僕はスイカをもう20年以上食べていない。
あの時のトラウマで…
というわけでもない。
何となくもう一生分食べたような気がして、
それからもう食べていない。
でも、夏になってスイカを見ると、
あの夏の出来事を思い出す…
スイカ人間になることを覚悟した、
あの夏の日を……