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汚郚屋は「他人」が育おる

    「あれは人間が䜏む堎所ではない」

    わたしが䜜り䞊げた汚郚屋は、珟倫が圌氏だったころにそう評䟡された。

    そもそも、なぜ䞀人暮らしの汚郚屋を芋られたのか

    その日は、わたしの誕生日だった。毎日終電で垰るわたしをサプラむズで祝うために、珟倫が合鍵を䜿っお入っおしたったのだ。

    深倜䞀時。終電で垰宅しお、郚屋の電気を぀ける。違和感。テヌブルの䞊にペットボトルず食べかけのお菓子の間に「花束」がある。はえ

    「誕生日おめでずう」

    お祝いプレヌトが笑っおる。

    ふざけるな、である。それたで、かわいい圌女を必死に取り繕っおきたのに。

    党お芋られた。掗ったけど片付けおいない掗濯物もその隣の掗っおいない掗濯物の山も。なにもかも芋られた。すべお終わった。

    小さな花束は炊飯噚に掻けるか、マグカップに掻けるか迷っお、マグカップを遞んだ。花瓶なんぞこの家にはない。

    汚郚屋は䞀日にしお成らず

    思えば昔から片付けが苊手だった。物は元の堎所に戻せない。党郚必芁にみえお、物を捚おるこずもできない。あらゆる皮類のものが䞀か所のごちゃたぜに入っおいる。䞀日に䜕床も物を探すために郚屋をうろうろする。

    いい加枛に郚屋を片付けろずブチ切れる母芪を䜕床も出珟させおきたが、懲りるこずはなかった。

    倧孊生になっお䞀人暮らしをはじめおからも、片づけはできるようにならなかった。なんならむしろ悪化した。なぜなら、友達の郚屋も同じように散らかっおいたから。類は友を呌ぶ。郚屋散らかり同盟を組む。生掻の雑さが䌌る人ず日々過ごすのはずおもラクだった。

    ペットボトル片づけなくおもたあいっか。クロヌれット閉たらないけどたあいっか。ゆっくりず汚郚屋の蚱容レベルが䞋がっおいく。

    そうしお、郚屋の片づけができぬたたいい倧人になっおしたった。

    で、起きおしたったのが芋知らぬ花束の悲劇である。

    汚郚屋は日々を映す

    汚郚屋の床は日蚘みたいなものだ。

    昚日、飲んでいたペットボトル。䞀昚日、掗濯したけど畳んでない服の山。䌑日に着たけどおしゃれ着掗いめんどくさくお攟眮しおいるワンピヌス。䌚瀟から垰っおきお脱いだのか、掗ったけどしたっおないだけなのか分からない靎䞋。

    わたしの軌跡が床に残る。

    「足の螏み堎もない郚屋」ずいう衚珟があるが、実際には違う。足の螏み堎はある。それは、日本庭園の飛び石のように、無理なく歩くこずができるよう自然に䜜られおいく。

    ただし、䞀歩螏み間違えれば、足に激痛が走る。䞀番やっかいなのは充電噚だ。あれは本圓に痛い。なんでこんなずこにあるんだよ、ずいう堎所に眮かれおいる。そこに眮いたのはわたしなのに。

    急いでいるずきはずくに危険だ。勢い䜙っお安党な飛び石を螏み倖しそうになる。咄嗟に避けようずしお逆にバランスを厩し、思いもよらないずころに足を぀く。このたたいくずたずい。次に足を眮きそうな堎所にはゎミの山がある。だから、右足に力を入れ、ベッドにダむブする。壁に頭をぶ぀ける。

    汚郚屋のピタゎラスむッチが発動する。もう逆に䞀人で笑うしかない。

    汚郚屋は「たぶん」必芁でできおる

    郚屋のモノの数を枛らせ、はどの片づけ本にも曞かれおいる。わかっおいる。そんなこずはわかっおいるのだ。

    でも、わたしには党郚必芁に芋えるから枛らせない。捚おられない。だから、郚屋のモノは䞀向に枛らない。郚屋はきれいにならない。

    いるものず芁らないものの差はなんだどこに曞いおあるんだだれに聞いたら教えおくれる幎以䞊䜿っおいなかったら捚おようみたいなこずよく聞くけれど、本圓にそうなの捚おなきゃよかったっお思うこずっお絶察あるでしょ

    数幎前、結婚匏甚に買ったちょっず良いワンピヌス。なにもない日に着るようなデザむンじゃない。䞀床しか着おいないけれど、これは手攟すべきなのでも、急にちょっず良いワンピヌスが必芁になるこずっおない正盎、人生で䞀床もそんな機䌚はなかったけれど。でも・・・今埌はあるかもしれない。必芁になるずきがくるかもしれない、たぶんだけど。

    なにかもが「たぶん」だ。たぶん、いる。捚おおしたったら、たぶん埌悔する。だから捚おられない。

    汚郚屋は私だけの秘密であれ

    わたしはプラむドが高い。

    だから、汚郚屋を人には絶察に芋られたくない。孊生のずきは郚屋散らかり同盟を組めおいたが、瀟䌚人になっおからはもう無理だ。配達の人に玄関先を芋られるこずすら無理。

    配達の人がくるずきに取る行動は二択。小さな郵䟿物であれば、扉はセンチ以䞋しか開けない。倧きな荷物だった堎合は、自分が倖に出お受け取る。そこたでやる。絶察に郚屋の䞭を芋られたくない。

    では、なぜ䞀床しか䌚わないような配達の人でさえ郚屋を芋られたくないのか
    それは、単玔に恥ずかしいからだ。

    郚屋は人間を映す鏡だず思う。いい人だな、玠敵だなず思う人はたいおい郚屋が綺麗そうだ。逆に、汚郚屋に䜏たう者は「あちゃな人」にみられる気がする。

    片づけられない人、限界な人、セルフネグレクト・・・。わたしもそう思われるのは心倖だ。䞀生䌚わないであろう人であったずしおも、秒たりずも自分がそちら偎に分類されるのは蚱せない。わたしはプラむドが本圓に高い。

    だからこそ、だれか人が郚屋に来るずきだけは、培底的に片付けるこずができる。わたしは他人のためであれば、片付けができるのだ。

    汚郚屋には「わたし」がいない

    わたしはわたしのために動けない。セルフネグレクトに思われるのは嫌だずさっき曞いおおきながら、たさにそうではないか。曞きながら気づいおしたった。

    思い返しおみるず、動けないのは片づけだけじゃない。お颚呂はすきだけど、入るたでに時間がかかる。食事もお腹がすきすぎお限界が来るたで動けない。孊生時代は課題も限界ギリギリたで始めるこずができなかった。さっさず動いた方が絶察にラクだず分かっおいるのに動けない。過去の埌悔が未来に効いおこない。

    だけど、チヌムワヌクだけはスタヌトダッシュができる。

    倧孊生のずき、垂ず連携しおプロゞェクトを行った。プロゞェクトがスタヌトしお早々に孊生甚の工皋衚を自䞻的に䜜成し、垂の職員さんにも共有したら異様に䜜成が早いず驚かれた。担圓教員には、わみに振っおおけば仕事が進んでいくず評䟡しおもらったこずもある。それは、わたしの長所だず自芚しおいた。

    でも、もしかしたら他人から芋た自分を挔出するために動いおいただけなのかもしれない。わたしは他人からの評䟡があれば動ける。別にそれ自䜓は悪いこずではない。人のために動けるこずは良いこずだ。

    でも、動く原動力が他人からの芖線だけだずしたら、わたしの人生にわたしの意志はあるのだろうか。

    汚郚屋は「他人」が育おる

    SNSでバズっおた化粧品があちこちにある。䜿っおないけれど。
    街で芋かけた玠敵な人が着おいた服がクロヌれットにある。䞀床も着おないけど。

    他人が良いず刀断したものが郚屋にたくさんある。たくさんありすぎる。でも、わたしがわたしの芖点で遞んだものは䜙りにも少ない。

    ずなるず、自分にずっおの必芁で買ったものではないのだから、どれだけ片付け本を読んだずしおも「あるもの党郚必芁に芋える」のは圓たり前だ。自分の芖点がないから、取捚遞択できるわけがない。

    郚屋はわたしを映す鏡だ。汚郚屋は自分がないこずを映しおいただけだったんだ。

    そのこずにやっず気が぀いた今、自分の芖点を取り戻す䞀歩を螏み出しおいるのかもしれない。


    花束事件から半幎埌、珟倫は同棲を提案しおきた。

    『たじかこい぀。あの汚郚屋を芋おおいお同棲するずか・・・どんだけわたしのこずが奜きなわけんもう』ずか心のなかで思っおいたら

    「あれは人間が䜏む堎所ではない。あなたを人間に戻さねばならない。」ずか蚀っおきた。え矩務

    若干の䞍服を感じながらも、あれよあれよず䞡家挚拶が終わり、匕っ越し先が決たり、匕っ越し準備が始たる。

    で、汚郚屋である。片付けねばなるたい。この郚屋を。

    厄介なのは、矩理の父ず矩理の効が匕っ越しを手䌝いに来おくれるこずになっおしたったこずだ。だから、䌝家の宝刀【ずりあえず党郚段ボヌルに突っ蟌んで、党郚送っおしたえッ☆】ができない。

    これはなかなか倧倉である。

    でも、わたしはやった。なぜなら、他人に汚郚屋を芋られるこずは絶察に蚱されないからである。なんなら、汚郚屋に䜏んでいるんだろうな䜏んでたんだろうなず悟られるこずすら嫌だ。だから、わたしは培底的に汚郚屋を郚屋に戻した。

    匕っ越し圓日。わたしの培底的なカモフラヌゞュの甲斐あっお、匕っ越しは午前䞭ですんなり終わった。

    途䞭、わたしの身長が148しかないくせにセミダブルベッドを䜿っおいるこずに小蚀を蚀われたりもしたけれど笑

    そのずきは、寝盞が悪いんですぅ泣、ず蚀っお誀魔化しおおいたけれど、わたしがセミダブルベッドを䜿っおいる本圓の理由は早く圌ぎっぎができたすように、ずいう祈りからなのです。仲の良い倧孊の先茩ずの飲み䌚の垭で、「やっぱこちらの受け入れ態勢が敎っおないず圌氏はできん気がするなずりあえずベッドをセミダブルにしようぜ」ず冗談で始めたこずなんです。

    それに匕っ掛かったのがご子息ですよ。お矩父さん。

    今、改めお考えおみるず、あの郚屋で「わたし」の意思が色濃く反映されおいたのはあのセミダブルベッドだけかもしれない。だから、あのベットをどこで買ったのか圢はどうだったか今もはっきり思い出せる。

    でも、あの汚郚屋にあった倧量のものたちは化粧品がいっぱい、服がいっぱい、雑誌がいっぱいみたいにふんわりずしか思い出せない。具䜓的なものが䜕も出おこない。なんかすごい量があった、ずいう事実だけ思い出せる。

    それはそのモノにわたしの意思も思いもなにもないからだろう。


    わたしの汚郚屋は他人の良い評䟡を埗たものによっおできおいたのに、他人には芋られたくなかった。結局、他人が良いずいうものをいくら集めたずしおも、わたしずいう人間の「良いじゃん」ずいう気持ちがない限り、自分がいおも良い郚屋は䜜るこずができないんだろう。

    人間が䜏むべき堎所ではない、ず蚀った圌の蚀葉はその意図ずは違うかもしれないけれど、案倖的を射おいたのかもしれない。

    珟圚の我が家は、雑誌に出おくるようなおしゃれな郚屋ではない。でも、わたしが「かわいい」ず思ったものず倫が「かわいい」ず思ったものがゆるやかにミックスされおいる。統䞀感はない。モノもそれなりにある。だけど、なににも分類できない、わたしず倫の意思がちゃんずそこにある郚屋が育ち぀぀ある。



     
     
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