
Wと何ともない日常
画面の向こうでは、日本代表のユニフォームを着た人たちが、同じユニフォームを着た選手たちを必死に応援している。
同じ服を身に纏うだけで、あんなにも強烈な一体感が得られるものなのだろうか。
テレビをつければ、そんなW杯の熱狂と、迫り来るW台風のニュースがひたすら繰り返されている。
僕はといえば、高校の体育祭で作ったクラスTシャツを着て、ソファに寝転がっている。
クラスの誰かが勝手に決めた色に、誰かが適当に考えた、これといって響かないデザイン。
特に思い入れもないそれは、高校を卒業した今、完全にただのパジャマだ。
あの時、「みんなで同じ服を着る」ことで、クラスの一体感とやらが得られたのかといえば、そんな記憶は一切ない。
……まあ、そう思っているのは僕だけなのかもしれないけれど。
外で生ぬるい突風が吹いて、窓がガタリと鳴った。
W杯。
W台風。
世間がふたつの「W」で埋め尽くされている今日という日に、僕だけが、誰かのセンスのままの、誰にも繋がっていないTシャツを着ている。
何かとんでもないことが起きているはずなのに、完璧に静かな日常。