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なぜ私は、こんなに手間のかかる作り方を続けているんだろう。


一本のお香ができるまでを、15秒の動画にしました。

マコモを洗い、乾かし、刻み、粉にする。
香木や漢薬などの植物原料を混ぜ合わせ、熟成させる。
水を加えて練り、さらに寝かせる。

そしてようやっと、
形にして、整えて、乾燥させ、
最後は一本ずつ手に取って仕上がりを確かめる。

成型の工程は、動画にするとたった15秒です。
でも、その15秒の外側には、映っていない時間がたくさんあります。

Instagramにこの動画を投稿したところ、思っていた以上にたくさんの方に見ていただきました。

自分でも何度か動画を見返しているうちに、ふと思いました。
私は、なぜこんなに手間のかかる作り方を続けているんだろう。


「手仕事」って、どこからが手仕事なんだろう

以前の私は、機械を使うことに少し抵抗がありました。

機械を使ったら、「手仕事」ではなくなってしまうような気がしていたんです。でも、実際にお香を作り続けてみると、そんなに単純な話ではありませんでした。

たとえば、マコモを粉にするとき。

乾燥させたマコモを細かく刻み、機械で粉砕し、ふるいにかける。
一度に粉砕できるのは、ほんの少しです。

それを何度も繰り返して、ようやくお香の原料として使える状態になっていきます。
機械を使っているのに、不思議なくらい手がかかる。

そして、お香の生地を作るときも同じです。
植物の粉末を量り、水を加え、練る。

数字だけを見れば、毎回同じものができそうに思えます。
でも、できません。


霧吹き一吹きでも、生地は変わる

お香に使う原料は、植物です。

だから、同じ原料でも毎回まったく同じではありません。

その日の気温も違う。
湿度も違う。
霧吹き一吹きの水で、生地の状態が変わることもあります。

柔らかすぎれば、仕上がったお香の強度が落ちる。
硬すぎれば、形を作りにくく、割れやすくなる。

だから、粘りが出るまでしっかりと練る。
触る。
水が素材全体に染み込むまで、待つ。
そして、また触る。

数字で測れるものは、もちろん測ります。
でも最後には、指先でしかわからないことが残ります。

生地を押したときの感触。
指に返ってくる弾力。
まとまり方。
粘り。

何度も作っているうちに、少しずつ手が覚えていきます。

結局、手だけが答えを知っている。
そんな瞬間があります。


押し出したばかりの陰陽香、これから乾燥を待ちます。

一本ずつ触れるのにも、理由がある

お香を形にするにも、小さな機械を使います。
1本1本の質感に目を配れるよう、あえて小さな機械を使っています。

押し出し、長さを揃え、形を整え、そして乾かす。
1本1本に手をかけることで、お香の繊細さが引き立ちます。

そして、形になったお香は、乾燥させて終わりではありません。
乾いたあと、一本ずつ手に取ります。

曲がっていないか。
欠けていないか。
表面に違和感はないか。

一本ずつ見て、触れて、確かめます。

もちろん、効率だけを考えれば、もっと違うやり方があるのかもしれません。
大型機械を使えば、半自動でもっとたくさんのお香をお届けすることもできます。

ただ、私は、非効率だから価値があるとは思っていません。
時間をかければ、必ず良いものになるとも思っていません。

手で作ったから偉いわけでもない。

それでも私は、自分が作ったものを、最後まで自分の感覚で確かめていたいのだと思います。

機械を使うか、使わないか。
今の私にとって、「手仕事」を分けるのは、そこではなくなりました。

機械に任せられるところは、機械の力を借りる。
それでも、その日の植物の状態を見て、触れて、判断することまでは手放さない。

どこまで自分の感覚を仕事の中に残せるか。
私にとっての手仕事は、たぶん、そこにあります。

1本1本、同じものはありません

見えない質感を、手で確かめる

使う人にわからなくても、作るたびに、その仕上がりには微細な違いがあります。

とはいえ、お香が完成したときには、途中で何回生地に触れたのかなんて、外からはわかりません。

マコモを何度ふるいにかけたのかも。
水を一吹き足すか迷った時間も。
一本のお香を手に取って、ほんの小さな違和感を確かめたことも。
全部、完成したお香の中に隠れてしまいます。

でも、見えなくなるからこそ、私はそこを雑にしたくないのかもしれません。

目には見えない、小さな違い。
触れたときにしかわからない質感。

言葉にするのも難しい感覚。
それを、ひとつずつ手で確かめていく。

今日も、出雲の小さな香房で、
練って、触って、待って、また触る。

そんな「見えない質感」の積み重ねが、最後には香りになる。

そこにかけた手間と時間は、必ず残り、ごまかせないから。

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