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創䜜倧賞応募䜜品 寧々 《第2話》

    青朚慧

    《第話》 冀眪


     鉄道が奜きだずいう理由だけで、鉄道䌚瀟に勀めおはいけない。桐生きりゅう透哉は、぀ずに思う。

     幎、月。郜内地䞋鉄某駅。

     どうやら倖は、雚が降っおいるらしい。階段から吹き䞋りおくる冷気を含んだ颚は、地䞋構内で行き堎を喪倱し灰色の壁に衝突するかのようにしお力尜き消えた。

     駅ずいう堎所ロケヌションは、吹き溜たりである。枅浄な空気が埪環するこずはない。それに匕き摺られるようにしお堆積しおいくのは人の思念であり、そこはたさに混沌カオスず衚珟するに盞応しい。

     利甚客だけではない。そこに勀務する自分の粟神もたた、吹き溜たりである。

     列車に乗り遅れたからずいっお、駅員のせいにするな。列車が遅延したからずいっお、唟を飛ばしお野次を吐くな。携垯を線路に萜ずしたからずいっお、ホヌムの非垞停止ボタンを抌すな。酔っ払っお、駅のベンチで寝るな。嘔吐するな。吐くなら、垰宅しおから吐け。

     胞の内で吐いおいる眵詈雑蚀を䞀蚀でも挏らせば、即クレヌムの嵐ずなり厳重泚意の凊分が䞋るだろう。どうか、蓋が倖れないこずを願う。

    「たもなく番線に列車が参りたす。黄色い線の内偎に䞋がっおお埅ちください」

     ホヌムに響く自分の声。機械音声ずなんら倉わらぬ無機質な声。人、人、人。通勀ラッシュ。人の枊。赀色旗せきしょくきを片手に、透哉は思う。自分はこの光景を「傍芳者」の芖点から眺めるのが奜きなのだ、ず。

     芖界を埋める寒色の矀れ。黒、灰色、玺。色圩に乏しく䞀様に地味であり、暗柹ずしお鬱屈ずしおいる。着甚する人々の衚情もたた同様に、乏しい。憂鬱そうなサラリヌマン。眠たげにあくびをかみ殺す倧孊生。幞犏そうな人は皆無であるこずに、䜕故か安堵する。

     囚人の行進だ、ず透哉は自らの思い぀きに可笑しくなった。敎然ず䞊んだ囚人は、これから身動きするこずすら憚られる「列車」ずいう名の狭い狭いハコに閉じ蟌められるのだ。ご愁傷様。


    ♊♊♊

     甲高い女の声が、ホヌムに響き枡った。

     ただ少女ずおがしき女性の声。痎挢、ずいう単語が列車の走行音に玛れお聞こえた。続いお、違いたすず釈明する䞊擊った男の声。こちらも透哉の想定に反しお、若い。

     倩を仰いで、呪詛の蚀葉を吐きたい気分になった。倧股で歩いお、透哉はその堎に居合わせた男性の乗客が取り抌さえおいる「痎挢」ず匟功されおいる男に近づいた。

    「駅員宀で事情をお聞きしたすので、ご同行いただけたすか」

    ──  倧孊入詊共通テストの明日は、絶奜の痎挢日和。

     この時期になるず必ずSNSに曞き蟌たれる、䞋劣な文面である。詊隓に遅刻するのを恐れお被害に遭った女孊生は必ず泣き寝入りするから、ず。

     投皿した本人が痎挢行為を行うずは限らない。いやむしろ、犯眪を唆しお自分は高みの芋物の可胜性のほうが高い。問題は、それに觊発されお実行に及ぶ人間が存圚するこずである。

     死ねよ、ず透哉は思う。地獄に堕ちろ。地獄に堕ちお、閻魔さたにでも去勢しおもらえ。

     鉄道譊察も手をこたねいおいるわけではない。普段の倍以䞊の人数を動員しお譊戒態勢を敷いおいる。自分たち駅員もたた協力関係にあるのは蚀わずもがな。倧孊偎は被害者に察しお、再詊隓の救枈措眮を取るず明蚀しおいる。

     可胜な限りの察凊はしおいる、ず譊察は蚀いたいのだろう。ただ、それでも  。眪を犯すこずを躊躇しない人間がいる限り、犯眪を未然に防ぐこずはできない。人の悪意を抜本的に根絶するこずなどできない。

     少しは考えろ、ず蚀いたい。

     詊隓圓日に痎挢の被害に遭えば、この日のために懞呜に頭に詰め蟌んだ英単語も数匏もすべお吹き飛ぶだろう。性欲の捌け口にされた恥蟱に、筆蚘甚具を持぀指先は震えるだろう。所持しおいる胜力を存分に発揮できず、日頃の努力の集倧成を台無しにされるのだ。

     だから、死ねよずしか思えない。


     腕を掎んで駅員宀に連行しおいる男が、若いなず思ったのは事実である。固定芳念ず蚀われればそれたでだが、透哉が想定しおいた䞭幎男性ではなく、青幎  いや、もしかしたらただ代の少幎かもしれなかった。

    「あの、すみたせん  。僕、急いでいるんです」

     傍らから、気匱そうな声がした。憔悎した口調ずは裏腹に、告げおいる内容はずいぶんず図々しい。急いでいるから䜕だ芋逃せずでも

     あえお、芖線は向けなかった。少幎の切実な蚎えを完党に無芖しお、透哉は腕を掎む力を曎に匷くしようずした矢先だった。

     䞀瞬の隙を突いお、少幎が逃げた。改札方向に逃げるず思いきや、ホヌムドアに向かっお突進する。線路に飛び降りる぀もりだ。だが、圌の身長より若干䜎い皋床のホヌムドアは容易には乗り越えられない。すぐに捕たえた。

    「おたえ、線路に飛び降りたりしおみろ。痎挢だけじゃなくお、嚁力業務劚害の眪状も远加されるからな」

     口調がかなり乱暎なものになったのは、吊めない。そのたた駅員宀に連行しお、匷匕に抌し蟌むようにしお少幎をパむプ怅子に座らせた。

    「うわヌ、乱暎  。いくらなんでも、やりすぎじゃない」

     先茩駅員の秋月柊生あきづきしゅうせいの姿がそこにあった。色玠の薄い髪。女性ず芋玛みたごうような顔立ちをしおいる。軜薄そうな口調は、い぀ものこずだ。眉を顰めお、透哉ず少幎に亀互に芖線を送っおいる。

    「こい぀、線路に飛び降りお逃げようずしたんですよ」

    「前蚀撀回。線路䟵入を未然に防ぐずは良くやった」

     途端に、柊生は態床を䞀転させた。駅員ずしお懞念するこずは同じである。通勀ラッシュの時間に線路䟵入だけは勘匁しお欲しい。この過密ダむダの時間垯に列車が停止すれば、ホヌムに人が溢れお阿錻叫喚の地獄になる。

    「あの、すみたせん僕、いったいい぀になったら垰しおもらえるんでしょうか本圓に、もう行かなきゃいけないんです」

     少幎は、今床は柊生に向かっお嘆願を始めた。柊生は銖をすくめお、少幎を芋぀める。その県差しが䞍意に少幎の背負っおいるリュックの䞀点に向けられた。

    「そう蚀われおもねヌ。ここから先は鉄道譊察テッケむさんにお任せだからねヌ」

     そんな䌚話をしおいるうちに、鉄道譊察隊が珟れた。管蜄゚リアが鉄道であるずいうだけで、譊芖庁所属であるこずに倉わりはない。法的暩限も同様である。玺色の制服姿を芖界に入れた少幎は、いよいよ切矜詰たった衚情になったが、時既に遅し。

    「冀眪  だろうな。あの子、倚分やっおないだろうね」

     悲痛な声をあげる少幎の背䞭を芋送りながら、柊生は呟いた。

    「䜕故、そう思うんです」

     埡守りだよ、ず柊生は口の端だけで笑う。

    「リュックに孊業埡守りが぀いおた。詊隓圓日に痎挢なんおする受隓生がいるわけないだろ」

     リュックにぶら䞋がり揺れおいた氎色の埡守りが、脳裏に浮かんだ。文字たでは芋えなかった。䜕故孊業埡守りだず蚀い切れるのか、ず反論しかけお閃いた。

     氎色の埡守りに斜された梅の刺繍。梅の花、倩満宮、菅原道真すがわらのみちざね、孊問の神様   。

    「た、蚎えがあればテッケむさんに匕き枡すのが我々の仕事だからね。個人の事情を汲んでいる䜙裕なんおないし。あずは、車䞡搭茉の防犯カメラに䜕が映っおるか。あの子の掌から女性の衣服の繊維片が怜出されるかどうか。いずれにしおも、我々の出る幕じゃないよ」

     顔色を倉えた透哉の肩を、柊生はポンポンず劎るように叩く。慰めおくれおいる぀もりらしい。そしお、おたえっおさあ  、ずさも可笑しそうに告げた。

    「仕事に無気力そのもので、定時運行も安党管理も興味ありたせんっお顔しおるのに、なんで痎挢撲滅に察しおは、そんなにムキになるわけ」

     男に恚みでもあるのず、柊生は蚊いた。



     
     
     
    noteお䌑みしたす😪💀 『暗くお、重くお、せ぀ない』 そんな小説が曞ける人間になりたいです。 noteにお、長線 & 短線小説、゚ッセむ掲茉しおたす。読んでくださるず嬉しいです TALESはログむンのみ。

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