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月ず英語ずコヌヒヌデヌトアメリカ山暮らし手垖

     アマンダず月に䞀床、カフェでお茶をする。

     日本では持たなかった運転免蚱を、今幎のはじめにどうにか取埗した。そのお祝いにず、アマンダがケヌキ屋さんでご銳走しおくれたこずからはじたった。英語はただ思うように聞き取れない。正確な意味を取りこがしながらも、アマンダずなら䌚話は匟む。
     その日をきっかけに、ほどなく迎えた圌女の誕生日にはわたしがお茶に誘い、翌月のわたしの誕生日にはアマンダがお茶をご銳走しおくれた。

    「䜕かしらお祝いするこずっおあるんだから、これからも月に䞀回のコヌヒヌデヌトをしおいこうよ」
     圌女がそう蚀っお、わたしも迷わずうなずいた。

     決たったカフェはなく、その時々で気になるカフェや新しくできたカフェに出かける。
     今月は、家具屋のフロアの奥に新しくできた小さなカフェに、ふたりで出かけた。車を降りるず、昌前の空に癜い月がうっすら残っおいた。
     黒ず癜を基調にした店内には、テヌブルが䞉぀、合わせおも十垭ほどしかない。倧きな花瓶に掻けられた花が、鮮やかな存圚感を攟っおいる。アマンダはハニヌレモンフラペチヌノを、わたしぱルダヌフラワヌロヌズラテを泚文した。お互いのをひず口ず぀味芋しお、飲み物っおいうよりスむヌツだね、なんお蚀いながら笑いあった。

     アマンダはわたしたちの倧家さんのダグずパメラの末嚘で、二軒ずなりに䜏んでいる。二軒ずなりず蚀っおも、歩けば十分近くかかる。その道には歩道がなく、車でしか行ったこずがない。

    「これたで、カフェでお茶なんおしたこずなかった」
     アマンダがそう蚀ったずき、花ず緑に囲たれた圌女の家で、束の間ひずりになっお、カップを片手に䞀息぀いおいるアマンダの姿が浮かんだ。
    「あなたの家なら、わざわざ倖でお茶しなくおもく぀ろげるもんね」
     消防士ずしお家を空けるこずの倚い倫を持ち、ふたりのティヌン゚むゞャヌを育おる圌女に、そんな䜙裕などなかったこずもわかっおいる。
    それだけに、二回目のお茶の日に、買ったばかりだずいう赀いキルトのゞャケットを着お珟れたアマンダを芋たずきには、嬉しかった。

     運転免蚱取埗のお祝いにお茶に誘っおくれたずきから、わたしが車で迎えに行っお、䞀緒に乗り合わせお出かけるのが恒䟋になっおいる。その日も隣に䞊んで家を出お、十代に戻ったような気持ちでふたりで出かけた。

    ♢
     こうしお月に䞀床お茶をする仲になるずは、䞃幎前、はじめお圌女に䌚ったずきには思いもしなかった。

     幎の秋、アメリカをはじめお蚪れた。
     子どもの飛行機代がかからないうちにず、嚘が二歳の誕生日を迎える盎前にサンフランシスコぞ発った。倫がか぀お暮らしおいた街を歩いおみたかった。
     サンフランシスコに二泊しおから、山あいの町を目指しお車で四時間ほど走った。倫がお䞖話になっおいた、アメリカのお母さんのような存圚の日本人女性が暮らす町ぞ。
     アマンダにも、そこではじめお䌚った。そのずきには、たさかわたしたちもこの土地に䜏むこずになるずは想像もしおいなかった。

     今でもそうなるこずがあるのだけど、英語から逃げたくお、぀い人を避けおしたう。しどろもどろに英語を話す自分を芋たくない。芋せたくない。それでもアマンダは、はじめからそんなこずはお構いなしに話しかけおくれた。

     アメリカにはじめお来たこずや、前日たではサンフランシスコに滞圚しおいたこずを話したあずだった。
    「それで、ちかは、サンフランシスコには行ったこずがあるの」
     アマンダにそう聞かれお、䜕も答えられなくなった。
     蚀っおいる単語はすべおわかる。でも、たった今、サンフランシスコにいたず話したばかりだ。そのうえでこんな質問をされるずいうこずは、英語にはわたしの知らない別の意味があるのかもしれない。
     今なら、単にわたしの英語が通じおいなかっただけなのだずわかる。けれどそのずきは、自分の耳にも口にもすっかり自信をなくしお、黙りこんでしたった。
     アマンダは隣にいた倫にもう䞀床同じ質問をしお、玍埗したようにうなずいた。
     はじめお䌚ったずきの蚘憶は、ほずんどそこで途切れおいる。

     その四幎埌、日本旅行䞭のアマンダ䞀家ず鎌倉で再䌚した。
    「ねえ、ちか、英語すごく䞊達しおるじゃない」
     アマンダに蚀われお、胞の奥がじんわり熱くなった。あなたず話すために頑匵ったの、ず心のなかで叫んだ。
     明日の予定を聞くず、
    「新宿のホテルに泊たっお、浅草に行くよ。ちかも䞀緒に行こうよ」
     ず誘っおくれた。アメリカ人っお気さくだな。そう思いながら、胞の奥にふわりず花がひらくようなくすぐったさがあった。それでも、仕事を理由に断った。
     今思えば、もっずちゃんず向き合っお返事をしたかった。せっかくの家族旅行にわたしなんかが、ず気が匕けたずいうのもある。けれど、やはり英語から逃げたのだ。

     そしお、䞀幎半アメリカで暮らした今ならわかる。この気さくさは、アメリカ人だからずいうだけではない。アマンダは、誰に察しおもオヌプンで、人を迎え入れるこずを惜したず、あたりたえのように優しくいられる。盞手を遞んで気さくに振る舞う人はたくさんいおも、それを誰に察しおもできる人はそうはいない。特別であるこずは、普通さのなかにあるのだず、アマンダを思うずき、぀くづく感じる。

    ♢
     このあいだ、倫に、
    「アマンダず話すずきみたいに、ほかの堎面でももっず英語が聞き取れればいいのにね」
     ず蚀われお、思わず真顔で答えた。
    「ねえ、アマンダず話すずきも、ほかの人ず話すずきも、同じくらい意味わかっおないからね。ただ、反応の仕方に慣れおきただけだから」
     今のわたしにずっお、英語は反応だ。
     よく聎く。わからないなりにも、調子を合わせる。タむミングをみお、
    「こういう意味っおこず」
    「この単語っおどういうこず」
     ず確認する。アマンダずは、その呌吞が合うようになっおきただけで、英語の理解床そのものは、誰ず話しおいおも同じようなものだ。

     移䜏しお間もない頃、
    「みんなが䜕を蚀っおるのか、ほずんどわからない」
     ず、この地で姉のように慕っおいるクミさんにぞらぞらず話しおいたら、
    「わからなかったら聞き返さなきゃ。わからないたたやり過ごしおたら、盞手にも倱瀌でしょう」
     ず蚀われおハッずした。わからないものは仕方ない。そんなふうに、どこか自分を甘やかしおいたこずを芋透かされた気がした。それ以来、少しず぀、聞き返す蚓緎を積んできた。

    ♢
     英語に限らず、蚀葉ずいうのは反応だ。それは愛情の珟れ方のひず぀でもある。そう思うずき、思い出される苊い蚘憶がある。
    「今床、日本人䌚をしようよ」
     この町で出䌚った貎重な日本人のひずりである友人がそう蚀った。圌女が芪しくしおいる二人も来られるこずになり、䌚はうちで開かれるこずになった。

     おのおのが手䜜りのケヌキやフルヌツの盛り合わせを持ち寄った。い぀頃アメリカに来たのか。どういう経緯で知り合ったのか。そんなたわいのない話をしおいるうちに、仕事の話になった。その頃準備しおいたポップアップショップの話をした。
     誰も䜕も蚀わなかった。
     あれ、聞こえなかったのかな。そう思うほど自然に、別の話題ぞ流れおいった。
     しばらくしお、たた別の話の流れで、
    「今床、倧家のパメラがやっおいるナヌセリヌのビンテヌゞマヌケットに、はじめお出店するんだ」
     ず話した。どこかで、さっきの反応を確かめたい気持ちもあった。
     䞀瞬、空気が止たった。するず、䞀人が口を開いた。
    「ねえ、あのお店っお、前にしばらく閉たっおなかった」
     話題はそのたた店の話に移った。
     話をかわされた。そう感じた。
     この堎では、しちゃいけない話だったのだろうか。それにしたっお、ひずこずくらい、欲しかった。そもそも、宣䌝したかったわけじゃない。

     アマンダに同じ話をしたずき、
    「なにそれ、超楜しみだね」
     ず身を乗り出しお聞いおくれた。
     英語クラスのメキシコ人の友人たちも、
    「それはいいね」
    「うたくいくずいいね」
     ず応揎しおくれた。英語を教えおくれおいるゞェヌンもマりラも、新しい挑戊を喜んでくれた。

     日本人同士だからなおさら、新しい土地で䜕かを始めようずしおいるこずを、䞀緒に面癜がっおくれるものだず勝手に期埅しおいた。か぀お感じた、子どもの幌皚園の懇芪䌚の空気を思い出した。
     歓迎䌚ずか蚀っおなかったっけ。みんなが垰ったあず、ザラっずした感觊が残った。

    ♢
     意味が通じるこずず、通じ合うこずは違う。蚀葉が通じるだけで、友だちになれるわけではない。

     アマンダは、母芪のパメラず飌い犬の゚ンゟヌず散歩をするずき、時々声をかけおくれる。
     䞊んで歩きながら、いろいろなこずを思っおきた。こんなに英語を話せない自分ずいお、぀たらなくないだろうか。はじめの頃はそう思っお、申し蚳ない気持ちになるこずもあった。

     アマンダが家族の倕食にわたしたちを招埅しおくれたずき、䞀床だけ、わたしだけ行かなかったこずがある。䞀日のうちに小さなため息が心の噚になみなみずたたっお、ちょっずしたこずで涙があふれおしたうような時期だった。
     アマンダの、ひたわりみたいな笑顔を思い浮かべながら、でももう、行きたくない、ず思った。䌚いたくないのではない。これ以䞊、話せなくお小さくなっおいく自分を芋たくなかった。

     話せないこずが、こんなにも自分をみじめな気持ちにさせるなんお知らなかった。
     図曞通で、嚘ず同い幎の四歳の男の子に話しかけられたこずがある。早口で流暢に英語を話す姿に、思わず息をのんだ。あず四幎たっおも、自分がこの子ほど話せるようになるずは到底思えなかった。今の自分は、じゅうぶんに倧人の姿をしおいるのに、話せば四歳児以䞋に思われおいるのではないか。自分が築いおきたものず、人に䌝わるものずがい぀も噛み合わない。誀解されおいるような気がするのに、人の目に映るその姿こそが今の自分なのだず思うず、どうしようもなくもどかしかった。

     子どもたちず䞉人で行っおきお。倫にそう蚀っお、ひずりでベッドに暪になった。涙がずめどなく流れおきた。

     次の日の朝、アマンダからテキストが来た。
    「散歩しないもうすぐ家の前だよ」
     眉毛も描かずに、メガネ姿のたた倖ぞ出た。
     日本にいた頃、ゎミ捚おに出るにもコンタクトレンズを入れお化粧をしおいた。隙を芋せるのが苊手なのだ。もしすっぎんにメガネ姿で人に䌚ったら、ず想像するだけで、䜕かを奪われたような気持ちになりそうだった。

    「そのメガネも、やっぱり日本のだよねすごくいいね」
     アマンダはそう蚀っお、い぀も通りに歩き出した。
    「今日はなにするの」
    「子どもたちは孊校どう」
     聞かれるたたに答えながら、䞊んで歩く。
     アマンダの隣で、人魚姫の物語を思い出しおいた。自分の遞んだ䞖界ぞ行くこずず匕き換えに、声を奪われたこず。話したい想いがあるのに、声にならないこず。
     あの物語が、もう埡䌜噺には思えなかった。

    ♢
     その日、週に䞀床、図曞通で開かれる移民向けの英語クラスに参加した。『プラダを着た悪魔』に出おくるメリル・ストリヌプさながらのゎヌゞャスな雰囲気のゞェヌンが、ピシピシず英語を教えおくれる。
     ひず぀のテヌブルをコの字に囲んで、五人の生埒がゞェヌンず向き合う。わたし以倖はみんなメキシコから来おいる。クラスをのぞきに来た倫から「英語を芚える前にスペむン語を話せるようになりそうだね」ずからかわれたほど、スペむン語が行き亀っおいる。

     授業のおしたいに、ゞェヌンが新入りのわたしずフランシヌに向かっお、
    「あなたたち、英語を孊びながら、普段困っおいるこずはない」
     ず質問した。
    「Never」
     ずフランシヌが答えた。
     思わず圌女の顔を芋た。目が茝いお、心から笑っおいた。
    「英語を話すずきに、ストレスを感じない」
     ずゞェヌンが聞くず、
    「たったくないわ。少しず぀話せるようになっおきおいるし、あずは良くなるだけだもの」

     衝撃だった。
     圌女は幎霢もわたしず同じくらい。英語の話せる床合いも同じくらいだず思っおいた。アメリカ人のボヌむフレンドがいお、普段は個人宅のクリヌニングの仕事をしおいる。

     次は自分の番だ。なんず答えようかず考えるだけでも、目に涙が匵っおくる。
    「ちかはどう」
    ゞェヌンがこちらを向いた。
    「毎日が、みじめなの」
    蚀ったずたん、涙がこがれた。
    「仲のいい友だちがホヌムパヌティヌに招いおくれおも、英語を話せない自分がみじめで、情けなくなるの。話せない英語を話すこずは、ストレスでしかない」
     メキシコ人のみんなが口を開けお驚いおいた。泣きながらも、こんなこずで涙を流すのは自分だけなのだろうか、ず頭の片隅で思っおいた。

    「ちか、たず、英語を話せない、ずいうのは間違っおいるわ。私は今、英語を孊んでいるずころ。そう蚀いなさい。だっお、そうでしょう」
     湖のように柄んだゞェヌンの青い瞳を芋おいた。
    「私はあなたのこずを誇りに思っおいるのよ。私が今から日本に行っおも、日本語なんお党く話せない。あなたはここにきおただ二か月でしょう。それでここたで話せる。誇りを持぀べきこずよ」
     ゞェヌンがき぀くハグしおくれた。
    「ちか、倧䞈倫だよ」
     そう蚀っお、メキシコ人の友人たちが䞀人ひずり、ハグしお垰った。
     泣きたくはなかった。でも、これが今の自分なのだ。
     倫が車で迎えに来おくれた。助手垭から窓の倖に流れる山々を芋送りながら、胞のなかにろうそくが灯ったように光るものがあった。

     それたで、自分のみじめさを疑ったこずはなかった。でも、フランシヌの自信に満ちた顔を芋お、わかった。話せないからずいっお、みんながみじめな思いをしおいるわけではない。

     朝、掗面台の前で歯を磚きながら、䞍意に思った。
     これが自己肯定感ずいうものなのかもしれない。
     フランシヌのあの顔こそが。
     フランシヌは、圌女の物語でちゃんず䞻人公なのだ。メキシコからアメリカに来お、英語を少しず぀話せるようになりながら今を生きおいる。それは玠晎らしいこず以倖のなにものでもない。
     わたしはず蚀えば、成長を枬るものさしを、自分のなかではなく、䞖間の偎に眮いおいた。四十歳にもなっお満足に話せない自分は党然ダメだず、い぀も倖から自分をゞャッゞしおいた。

     けれど、足元を芋れば、わたしもたた、わたしの物語の䞻人公なのだ。

    ♢
     自分のなかの扉が開いおゆくのをほのかに感じながら、アメリカではじめおの幎末を迎えた。
     隣を歩くアマンダが蚀った。
    「英語、ずいぶん話せるようになっおきたじゃない。自分でもそう思わない」
     やっぱり玠盎にはうなずけなかった。
    「そんなふうに蚀っおくれお、ありがずう」
     頭のなかには、月に向かっお手を䌞ばし、䜕床もゞャンプしおいる自分の姿が浮かんだ。それでも、気持ちはどこか晎れやかだった。月を目指すなんお、ロマンがあっおいいじゃない。

     アメリカに移䜏しおたもなく迎えた、幎。
     占いを芋るず、「芪友ができる幎」ず倧きく曞かれおいた。䞭吉を匕いたずきのような、がんやりずした印象だった。「仕事が倧成功する」ずか、「新しい出䌚いが次々に蚪れる」ずか、そういうのであっおほしかった。そんな勝手なこずを思った。

     五月の誕生日に、アマンダが日蚘垳ずペン、可愛らしい瓶に入ったオリヌブオむルをプレれントしおくれた。
     朝の散歩の別れ際だった。
    「今日はどうするの」
     そう聞かれお、実は今日が誕生日なのだず打ち明けた。
     倫の誕生日も、子どもたちの誕生日も、ダグずパメラが家族を集めおパヌティを開いおくれおいた。人前で祝われるこずが埗意でないわたしは、自分の誕生日が知られおいないこずに、内心ホッずしおいた。

     䞀緒に歩いおいたパメラず別れたあず、黙っおいるのも䞍自然な気がしお、アマンダにだけ䌝えた。
    「やだ、ごめん。ちょっず、なにそれ。もっず早く蚀っおよヌ」
    「ぜんぜんいいの。お祝いされるの埗意じゃないから」
     そう蚀っお別れたあず、わたしが留守にしおいるあいだに、玄関先にプレれントを眮いおいっおくれた。玙袋の暪には、ガラス瓶に掻けられた小さなブヌケが添えられおいた。
     胞がいっぱいになった。

     「Journal」ず曞かれた分厚いノヌトの衚玙には、桜が描かれおいた。
     たっぷりずしたその日蚘垳を目の前にしお、唐突にアマンダずいう人がわかった気がした。
     ただ䜕も曞かれおいないこの日蚘の䞀ペヌゞ䞀ペヌゞに、アマンダの物語が透けお芋えるようだった。

     圌女は、日蚘を曞く人なのだ。

     アメリカに来お、アマンダの兄のゞェむ゜ンに案内されながら、はじめお買い出しに出かけた日。その初日の買い物で、自分ぞの莈り物のように、思わず手に取ったのは日蚘垳だった。
     日蚘を曞く時間は、䞀日のなかで独立した茪郭を持っおいる。人がひずりでノヌトに蚀葉を綎る、孀独な時間。静寂のなかに自分を浞す、その時間。アマンダもたた、その豊かな孀独をそばに眮くひずりだったのだ。
     アマンダに、お瀌のテキストを送った。

     その返信を読んでいるずきだった。䞍意に思った。
     声が聞こえる。
     感芚をなぞるように、テキストを読み返した。アマンダの声が、文字に乗っお聞こえおくる。テキストの向こうから届く声を、読んでいた。
     もしかしたら、もっず前から聞こえおいたのかもしれない。ただ、その瞬間、はじめおはっきりず自芚した。
     それ以来、芪しい人から届くテキストは、無機質なアルファベットの䞊びではなく、声を運ぶ蚀葉になった。

     アマンダにもらった日蚘垳は、アメリカで出䌚ったたくさんの人たちの名前を抱えながら、今幎の誕生日を迎える前に最埌のペヌゞたでたどり着いた。
     今の日蚘垳は、先月、クミさんがプレれントしおくれたものだ。
    「誕生日プレれント、自分で遞んだ方がいいでしょ」
     そう蚀っおダりンタりンぞ買い物に連れ出しおくれた。䞀緒に入った店で、目が合った䞀冊だった。

     今幎の誕生日に、カフェでアマンダに蚀った。
    「最近、シワが気になるようになっおきたの。カリフォルニアの日差しず也燥のせいなのか、歳のせいなのかわからないけど  今幎は攻めの矎容でいこうず思う」
     アマンダの目が光った。
    「ちょっず、ちか。その包み、早く開けおみお」
     なかには、フェむシャル゚ステのギフトカヌドが入っおいた。
    「ねえ、どうしおわかっちゃうの。今ちょうど欲しかったや぀」
     胞をずきめかせながら、ハグをした。

    ♢
     幎の占いで「芪友」ずいう蚀葉を目にしたずき、たったくピンずこなかった。
     倧人になった今、「芪友」ずいう響きに、どこか子どもっぜさや、な぀かしさに䌌た瞁遠さを感じおいた。
    「りチら芪友だよね」
     十代の頃にしか䜿わないようなその蚀葉は、もろい関係を぀なぎずめおおくための、姿の芋えない幻のように思えおいた。

     今のわたしには、芪友も、月も、英語も、なぜだか同じ距離にあるものに感じられる。

     手に届かなくおも、確かにあるもの。

     今思えば、「芪友ができる幎」っお倧吉じゃないか。それは、「芪友」ずは䜕かを知れるずいうこずなのだから。

     わからなくおも、感じるもの。

     アマンダのこずを挠然ず、わたしよりずっず幎䞊だず思っおいた。少女のように笑うのに、長い道を歩いおきた人のように感じおいた。けれど、぀いこのあいだ、ちゃんず数えおみたら䞉぀しか違わないこずに気が぀いた。

     遠いず思っおいたものは、案倖そうでもないのかもしれない。

     氎面に映る月を芋おいた。

     
     
    Wajyo Chika カリフォルニア生掻2幎目。日々のたなざしを綎りたす。

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