
【コラム】 中1の私の愛読書『愛と誠』③
愛は平和ではない
愛は戦いである
武器のかわりが 誠実であるだけで
それは地上における
もっともはげしい きびしい
みずからをすてて
かからねばならない 戦いであるーーー
わが子よ
このことを覚えておきなさい

『愛と誠』の冒頭に書かれている詩である。
1930年代初頭に、インドのネール元首相が獄中から娘(インディラ)に送ったとされる。
若干13歳で『愛と誠』に熱中した私は、本のページをめくった瞬間に、この詩が目に飛び込んできた。
当時の私には、なんだかよくわからないままに、次のページに目を移した。
【コラム】中1の私の愛読書『愛と誠』①②に続けて、今回は、主人公の大賀誠・早乙女愛の「愛」の変遷について書いていきたい。
物語には 起承転結 がある。
なのでこの二人の恋愛を 起承転結 でまとめた。
◉起 運命の出会い
場所は、長野県蓼科高原のスキー場。
魔のスロープと呼ばれる急斜面に、誤って立ち入って制御不能となった愛に、自らの身体を張って加速するスキー板の先に飛び込む地元の少年がいた。
愛は無傷で助かるが、少年の額はスキー板が突き刺さって大量の流血をした。
これが愛と誠の、まさに衝撃の運命の出会いである。

出典:梶原一騎(原作)、ながやす巧(漫画)『愛と誠』 講談社コミックス(あるいは講談社文庫)より引用
こんなの平気だと誠はその場を去るが、想定外の大怪我だった。
貧しい誠の家庭では充分な治療も出来ず、治療費だけかさむ。不仲だった両親はさらに険悪な状態に陥り、やがて両親は離婚。
その後、母親は誠を捨てて家を出てしまう。
一連の出来事が誠のトラウマになり、親への不信、富裕層への僻みから、彼は手の付けられない不良となっていく。
◉承 残酷な再会
数年後に再会した愛は、誠の荒廃した生活を知る。
愛は父親に談判し、誠を矯正するための全面的支援を父親にしてもらえることになった。
早乙女財閥の力で、名門・青葉台学園に誠を転入させ生活支援も行い、更生に尽力する。
しかし誠は、愛の偽善的な態度だと感じ反発し、学園を恐怖で支配しようと暴れまくる。
結果的に、彼は青葉台学園を追放される。
愛を慕うクラスメイトの岩清水弘は、懸命に彼女の立場を守ろうとするが、一途な愛は、誠に続き学園を去る。

出典:梶原一騎(原作)、ながやす巧(漫画)『愛と誠』 講談社コミックス(あるいは講談社文庫)より引用
ここまでが、早乙女愛が夢見た明るい学園生活が、あっという間に崩壊する青葉台学園でのエピソード。
青葉台学園を追放された誠は、不良の巣窟である花園実業高校に転入した。
誠を追ってきた愛は、資産家の自宅を出て自ら同じ修羅の道へと進む。
小さなアパートを借り、喫茶店でアルバイトをしながら花園実業に通学していた。
花園の魑魅魍魎とした校風は、青葉台とは全く違う。相変わらず威勢よく暴れる誠は、どこか空回りしているように愛には見えていた。
愛は、高原由紀と出会う。
地獄のような学園でツルゲーネフの小説を携える彼女なら、話が合うかもしれない、理解してくれるかもしれないと、淡い期待を抱いた。
だが彼女こそ、悪の花園を司る影の大番長だった。

出典:梶原一騎(原作)、ながやす巧(漫画)『愛と誠』 講談社コミックス(あるいは講談社文庫)より引用
◉転 平和ではない愛
高原由紀の正体が判明してからは、誠との全面戦争が始まる。
投げナイフの達人である由紀に、容赦ない制裁を受ける誠だが、由紀は誠に制裁を加えながら、自分の全てを、彼に見透かされていることに気付く。
愛と岩清水は、傍らで何もできない。
息絶え絶えの誠は、自身と同じ壮絶な生い立ちの彼女に共感するも「お前にないのは誇りだ」と言う。
由紀はこの言葉で、自分は敗北したことを確信し、入水自殺未遂し顔に大きな傷を負う。
そして由紀は誠を愛してしまう。
事態の変化と、計り知れない謎の魅力を持つライバル由紀の出現に、尋常ではいられない愛。
座王権太の報復、第三勢力の砂土谷峻の出現で、誠への新たな攻撃が始まり激化する。
同時に、早乙女財閥の当主である愛の父親の逮捕や、権太の父親で財界ボス座王与平からの圧力。
これらに単身で応戦する誠の姿を見ていた由紀は、本当に彼に愛されているのは早乙女愛だと気付く。
誠が自分に向けているのは、施しや同情に過ぎない。
由紀は権太を利用して、愛に対する直接の攻撃を企てるが、権太の気紛れで失敗に終わる。

出典:梶原一騎(原作)、ながやす巧(漫画)『愛と誠』 講談社コミックス(あるいは講談社文庫)より引用
◉結 戦いを終えた愛と誠
一人娘(養女)の由紀を傷付けられた高原組の報復、砂土谷の加勢、早乙女財閥、座王与平に関連する政治家とのしがらみなど、様々な火種が一気に燃え上がってきた。
相変わらず一匹狼の誠は、あらゆる勢力に応戦し、力尽きる寸前になっていた。
そして自分の気持ちを、真っ直ぐ愛に向け始める。
彼は愛に「必ず行く」と約束する。
彼女は誠に「待っていていいのね」と応える。
激しい戦いを終えた誠は、愛の待つ場所へ命かながら向かう。
そしてやっと二人の姿は、一つの影になった。


出典:梶原一騎(原作)、ながやす巧(漫画)『愛と誠』 講談社コミックス(あるいは講談社文庫)より引用
ああ・・・
もう言葉など要らない。
余韻だけでいい。
願わくば、冒頭の詩をもう一度スクロールして読んでいただけたら、それでいい。
了
几戸姶洛