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総ルビタロット


タロットカードには、いろいろなものが描かれている。

杖。剣。冠。山。川。花。星。月。

どれもただの飾りではなく、それぞれに意味がある。

だったら、その意味を全部カードに書いてしまえばいいのではないか。

ついでに、全部ルビを振ってしまえばいい。

そう思った。

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総ルビタロット

ルールは簡単。

カードに描かれている象徴に名前を書く。

その名前にルビを振る。

意味もできるだけ簡単な言葉で書く。

そして――

読めるものにもルビを振る。

ここが重要である。

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0 愚者


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I 魔術師


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II 女教皇


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III 女帝


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IV 皇帝


このあたりまでは、まだ普通だった。

いや、普通ではないのだが、自分の中では普通だった。

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V 教皇



そして、ここで気づいた。

カード上部に、

ご
V

と書いてある。

Vにまで読み方を教えている。

親切である。

かなり親切である。

余計なお世話ともいう。

しかし、総ルビタロットなのだから仕方がない。

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VI 恋人


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VII 戦車



この頃から、妙なことが起き始めた。

タロットの絵に説明を書き込んでいるだけなのに、カードの意味がものすごく分かりやすい。

たとえば《戦車》。

スフィンクスが二頭いる。

色も違う。

向いている方向も違う。

それを一つの戦車で進ませる。

「戦車=前進」と覚えるより、

違うものを一つにして進む。

そう読んだほうが、ずっと絵と意味がつながる。

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VIII 力


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IX 隠者



《隠者》の灯りは、世界全部を照らすものではない。

次の一歩だけを照らす。

そう書いてみたら、急にこの老人が何をしているのか分かった気がした。

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X 運命の輪



もちろん、

じゅう
X

である。

もう後戻りはできない。

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XI 正義


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XII 吊るされた男


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XIII 死神


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XIV 節制


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XV 悪魔



《悪魔》の鎖は、よく見ると外せそうなくらい緩い。

だから、

鎖(くさり)
ゆるい
ほんとうは
はずせる

と書いた。

なんだか急に、悪魔が人生相談を始めた。

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XVI 塔



《塔》は少し苦労した。

最初は人が落ちていた。

直した。

別のところがおかしくなった。

また直した。

さらに別のところがおかしくなった。

最終的に、人間を全員クビにした。

すると、とても良い《塔》になった。

崩壊とは何か。

身をもって教えてくれたカードである。

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XVII 星


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XVIII 月



最初に作った《月》には顔があった。

妙に立派な顎だった。

見れば見るほど、アントニオ猪木さんに見えてきた。

月から猪木さんには退場していただいた。

すると、とても静かな夜になった。

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XIX 太陽



と思ったら、太陽に少し戻ってきた気がした。

気のせいということにする。

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XX 審判




にじゅう
XX

まで来た。

20くらい読ませてもいい気がする。

だが、ここまで来て甘やかすわけにはいかない。

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XXI 世界



最後は、

にじゅういち
XXI

そして《世界》にはこう書いた。

ぜんぶ そろった
……と おもったら
また 0(ゼロ)へ

世界で終わって、また愚者へ戻る。

22枚作って、ようやく最初の一枚につながった。

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作ってみて

最初は、ただの思いつきだった。

漢字という漢字にルビを振ったら面白いんじゃないか。

それだけだった。

ところが作っていくうちに、少し違うものになった。

タロットの絵には、意味のないものがほとんどない。

冠には冠の意味がある。

水には水の意味がある。

道には道の意味がある。

犬にも狼にも、二本の塔にも意味がある。

そこへ名前と短い説明を書き込むと、

「カードの意味を覚える」のではなく、
「絵を見てカードの意味を読む」

ようになった。

気づけば、22枚のタロット講座ができていた。

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もちろん、これだけは最後まで変わらなかった。

読めるものにも、ルビを振る。

親切とは、ときに過剰なくらいがちょうどいい。

たぶん。
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おわり(おわり)

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