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【掌編私小説】山下と田の中

    小学6年の頃、校内での朝のあいさつ運動を活発化
    させたい狙いか、大きめの女の子と小さめの
    男の子が並んだ、クレパスとカラー画用紙で
    出来ているやけに目が笑ってないキャラクターの
    パネルが校門入ってすぐのところに飾られた。
     二体揃って黄色い帽子と制服を身に着けている。

    …あいさつ奨励マスコットなんだから目が
    笑っている方が絶対的にいいんじゃないのか…?
    そして特段可愛くもないのだ。まぁいい。

    しかしその二体に名前を付けようという
    校内のデモクラシーの動きにより、
    ふたつの欄が設けられたアンケート用紙が
    配布された。全校生徒からキャッチーで
    スマッシュかつクリエイティビティに溢れた
    名前を募り、児童で構成された委員会が選定して、
    二体にそれぞれ命名するという。

    俺は本当にどうでもよかったので、
    女の子に「山下」、男の子に「田の中」と書いた。本当にどうでもよかった。4秒。

    週明け、晴れて命名を公開。
    女の子は「西子ちゃん」、そして男の子は
    「すっきりくん」に決定した。

    すっきりくんは恐らく、朝、気持ちよく元気に
    挨拶をするとすっきりした気分になるから的な
    アレだろうなって思った。フン、低学年だな。

    西子ちゃんに関しては、対になる男の子の
    名前ありきだったらしい。
    当校の名前は日西(ひにし)小学校(仮)。
    日西、をバラして二人に、日太郎くんとかの
    名前と対にする意図のあったネーミングの
    デザインだったらしい。

    その片割れが却下され、すっきりくんという
    30年前に一瞬発売された清涼飲料水の名前みたいな
    奴と隣合わせにされた。
    しなくていい感情移入を西子ちゃんにしてしまう。
    「すっきりくん」がいい抜け方をしてるから
    「西子ちゃん」が逆に変な名前になってる。
    対にしろよ。しないなら採用するな。

    もうこの際、「山下」と「田の中」が
    シンプルイズベストだったと思う。

    すっきり、というには、朝というものを
    背負い過ぎてる。

    …今でも採用されればよかったのにと思ってる。
    俺はそこですっきりしてない。


    終

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