【私小説】アイラ–創る
「積極性がない」
何をするにもこの言葉が響いた。
“どうしてそんなに威張っているんだろう”
“どうしてそんなに何も考えていないの”
“訳も分からず叱られるのが怖くないの”
いつでも一歩引いていて、臆病な性格だった。
いきたい気持ちはあった。
いうべき言葉も浮かんだ。
それでも心臓は早鐘をうって、身体も口も思い通りに動かない。
いつでも一歩遅かった。
「積極性がない」
頭に残った言葉が、ワンテンポずれて僕を突き動かす。
伝わる。安堵する、安堵するんだ。
成長と捉えることは一切ない。
『ただ安堵している』
心に創られていく、小さな小さな擦り傷が重なって、痛みは無視できなくなる。
そんな僕を見かねて、野球を強制的にさせられた。
練習は嫌いだった。試合は尚更。
何につけても、叱られるのが嫌だった。
「積極性がない」
ここでもそれは僕を蝕み腐らせていく。
無理矢理実行して、褒められた。
まったく嬉しくない。
また、
『ただ安堵している』
ある休日に、仲間たちとBBQをすることになった。
心底行きたくなかった。
やけに明るい仲間たち、かったるさを隠すように貼り付けた笑顔の仮面をつける大人たち。
どちらにも無駄に気を遣って、『積極性』を出しては安堵し疲弊する。
培ってきた演技力を披露する、エチュード。
演技の幅を拡げる経験にはなっていたか。
「私の立場が悪くなるじゃない」
これもまた、呪いになった。
『あなたのために』を信条に、動いて擦りむいて心で泣いて笑顔を見せて創った、
『あなたのための僕』
いつしか俳優としての下地ができたのだろう。
応用がきくようになっていた。
雨の日を憎んで、悲しむふりをした。
晴れの日を喜んで、前向きなふりをした。
あなたは傷口に塩を塗ったくって、僕は血の滴りがシミになるまで泣いて、それは跡になった。
(続)
