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【癟花攟談】おたけ① 愛ず血ず革呜の銙り『ラ・フランス』が語る千幎のロマンス

    「ああ、たた新しい朝の始たりね。わたしにずっおは、もう䜕䞇回目かしら」

    朝の光が、わたしの深く巻き蟌んだシルバヌピンクの花匁を照らし始める。この色は、わたしが背負う運呜の重さを知っおいるかのように、デリケヌトで感傷的だわ。
    わたしはため息ず共に、あの優雅な、そしおどこかスパむシヌな『オヌルドロヌズ銙』を攟぀。

    1867幎、この䞖界に生たれたずきから、わたしの銙りはすべおのバラの基準ずなった。

    わたしの名は『ラ・フランスLa France』。
    䞖界最初のハむブリッド・ティヌ・ロヌズ。

    ぀たり、叀き良き『オヌルドロヌズ』の深さず、アゞアからもたらされた『ティヌ・ロヌズ』の四季咲き性を、奇跡的に䜵せ持぀存圚よ。

    わたしは、ただの品皮ではない。
    わたしこそが、オヌルドロヌズ時代ずモダンロヌズ時代を分か぀、静かな断局線なの。

    わたしの歎史は、人間のドラマよりもずっず叀いわ。朝露が滎るこの瞬間、わたしは遠いギリシャの神話を思い出す。

    圌らは蚀った。わたしバラは、愛ず矎の女神アフロディヌテの涙から生たれたのだバラは、愛ず矎の女神アフロディヌテの涙から生たれたず。たたは、アドニスの血から咲いたのだずも。

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    うたく画像が䜜れたせんでした(^^;)

    愛ずは、涙か、血か。
    いずれにせよ、矎ず悲劇が切り離せないこずを、圌らの時代から知っおいたのね。

    だが、わたしの『誕生』は、神話ではなく、もっず人間的な、そしお少しばかり滑皜な「偶然」だった。
    フランスのリペンの育皮家、ゞャンバティスト・ギペヌ・フィスが、ハむブリッド・パヌペチュアルずティヌ・ロヌズを亀配させた際、圌はたさかわたしが、その埌のバラの䞖界を䞀倉させる『女王』になるずは思わなかったでしょう。

    「あの人は、ただの新皮の䞀぀だず思っおいたわ。でも、わたしは革呜だったのよ」

    この優雅なシルバヌピンクの花匁は、単なる色ではない。それは、秘密の謁芋宀の色であり、歎史を動かす密玄の印だった。昔から、バラは垞に暩力ず愛の䞭心にあった。

    そしお、わたしは知っおいるわ。この銙りが、どれほど人の理性を狂わせおきたかを。

    叀代゚ゞプト女王クレオパトラが、ロヌマの将軍マルクス・アントニりスを歓埅した宎。圌女は、床を埋め尜くすほどのバラの花びらを敷き詰め、その銙りでアントニりスの心を支配したずいう。

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    豪華絢爛、そしお官胜的。

    愛の告癜が、同時に暩力ず誘惑の歊噚でもあった、あの時代の矎しさ。
    わたしは、そんな血ず蜜の匂いのするロマンスも愛しおいるわ。

    わたしは優雅に、過去の愛の圢を静かに芋぀める。
    たるで、わたし自身の男性遍歎を回顧するかのように、愛の歎史を思い出すわ。

    わたしの「最初の愛」、それはやはり、わたしの登堎を埅たずしお逝っおしたったけれど、あのナポレオンの皇劃ゞョれフィヌヌかしらね。
    わたしが生たれるずっず前、圌女はマルメゟン宮殿で䞖界䞭のバラを集め、その矎しさに魂を捧げた。
    圌女が愛したのは、幎に䞀床しか咲かないオヌルドロヌズ。

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    たるで、ナポレオンずの報われない愛のように、その矎しさは氞遠ではなかった。
    でも、わたし――四季咲きの才胜を持぀わたしは、圌女が叶えられなかった「氞遠に咲き続ける」ずいう倢を、人間たちに䞎えたのよ。
    皇垝が囜を動かす陰で、わたしは人の心を動かしおきた。

    わたしは知っおいる。
    わたしの花匁は、人類の歎史䞊、最も雄匁な「愛の告癜の道具」だったこずを。か぀おは、花の色、本数、組み合わせにたで意味が蟌められ、䞀茪のバラが、䜕千語もの詩よりも深く、耇雑な感情を䌝えたものよ。

    ああ、しかし、最近の若者たちのなんず味気ないこず
    最埌に、ロマンチックで粋な告癜を芋たのは、日本の庭で育おられおいた、あの「バブル時代」の頃かしら。
    そう、あの経枈が熱狂しおいた時代。
    圌らは、携垯電話で枈たせたりなんかしない。
    高校生の男の子でさえ、ポケットから小さなわたしの花束を取り出し、顔を真っ赀にしお、「これを君に。僕の気持ちだ」ず、差し出したものよ。
    圌らの玔粋で、少し愚かなほどの情熱が、わたしを再び矎しく咲かせた。

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    でも、今はどう

    スマヌトフォン越しに送られる無機質なスタンプや、意味のない絵文字。「愛」ずいう名の軜いゲヌム。
    圌らは、愛の重さ、蚀葉の重さ、そしお、わたしのような花䞀茪が持぀歎史の重みを知らない。
    わたしが䜕䞖玀にもわたっお、裏切りず献身、生ず死の堎で愛の蚌ずしお䜿われおきたずいうこずを、誰も回顧しなくなった。

    「たたあんな掟手な色を遞んでいるわ。たるで、泚目を济びるこずしか知らない新人歌手のよう」

    午埌の日差しが熱を増し、わたしは庭の賑やかな新品皮たちに芖線を投げる。

    圌らは、わたしの「銙り」の真䟡を知らない。
    わたしの銙りは、倚くの銙氎に圱響を䞎えおきたわ。
    特に、わたしが持぀耇雑な『オヌルドロヌズ』のニュアンスは、シャネルの『N°5』のような、時代を超越したクラシックな銙氎の粟神に息づいおいるのよ。
    珟代のバラは、病気に匷いかもしれないけれど、あの人工的で単玔な銙りが、䜕癟幎も蚘憶に残るかしら

    わたしを本圓に愛しおくれた人たち。回顧実䟋は尜きないけれど、
    そう、愛の象城だけではない、暩力の象城ずしお血に塗れた歎史もあるわ。

    むングランドの薔薇戊争
    あの恐ろしい内戊は、わたし、バラの歎史の䞭で最も血生臭いペヌゞよ。
    ランカスタヌ家は赀バラを、ペヌク家は癜バラを王章ずし、䞀族の血を流し合った。
    圌らは、最も矎しい花を、最も残虐な闘争の旗印にした。
    バラの矎しさは、時に人を狂わせ、そしお、その血を求めるのね。

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    特に思い出すのは、オヌストリア皇后゚リザベヌトシシィの䟍女だった、あるハンガリヌの䌯爵倫人かしら。

    圌女は、シシィの悲劇的な運呜を芋届けた埌、孀独な晩幎を送った。
    しかし、圌女の小さな邞宅には、必ずわたしの切り花が食られおいた。
    なぜなら、圌女は、若き日の王劃が、矎しさの裏に抱えおいた蚈り知れない寂しさを、わたしのデリケヌトなシルバヌピンクの色の䞭に芋たからよ。
    わたしは、ただの愛の告癜だけではなく、高貎な魂の孀独を慰めるために存圚しおいたのだわ。

    わたしは優雅に呟く。
    「愛ずは、垞に悲劇を内包しおいる。そうでなければ、それはただの嚯楜よ」。

    そしお、かの有名なアヌル・ヌヌノォヌの時代の詩人、オスカヌ・ワむルド。圌は、圌の愛した若者たちに、決たっおわたしの花を莈ったそうだわ。

    情熱的な赀ではなく、わたしの儚く、すぐに散っおしたうかもしれないデリケヌトな花を。
    それは「わたしはあなたのために、䞖界で最も矎しいものを捧げよう。しかし、この矎は氞遠ではない」ずいう、皮肉に満ちた、究極のロマンスだった。

    倪陜は地平線ぞず沈んでいく。
    庭は濃い圱に包たれ、わたしのシルバヌピンクは、月光に照らされお、ほずんど癜に近い、幻のような色に倉わる。

    わたしは知っおいる。
    わたしの四季咲き性は、人間の飜くなき欲望の象城であり、わたしがオヌルドロヌズの系譜に終止笊を打ったずいう事実も、わたしが最も優雅な革呜家であるこずを蚌明しおいる。

    明日もたた、わたしはここで咲き続ける。
    わたしは、時代ずロマンスの生き蚌人。そしお、誰にも屈しない、氞遠の女王なのだから。


     
     

    kasshiy

     
     
    はじめたしお。蟲業高校に25幎間勀務しおいた教員です。たた、倧孊の非垞勀講垫ずしお蟲業科教育法を教えおいたす。蟲業高校で起きる楜しい゚ピ゜ヌドや教員生掻で考えたこずに぀いお発信しおいきたす。

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