
ワイン選びは料理の油で考える➂
初回、オリーブオイルの料理には地中海のワイン、バターの料理には樽熟成したワインが合うという話をした。
そして続編ではアジア料理を取り上げた。
ここではもう少し植物油を掘り下げたい。
世界の料理で最も使われている油は植物油である。
日本の家庭料理も、中華料理も、韓国料理も、多くは菜種油や大豆油などの植物油を使っている。
オリーブオイルやバターほど個性が強くないため見落とされがちだが、ワイン選びにおいてはむしろ重要な存在だ。
植物油の特徴は主に「香りが少ない」ことにある。
オリーブオイルのような青い香りもなければ、バターのような乳脂肪の甘い香りもない。
だから料理の主役は油ではなく食材そのものになる。
肉野菜炒めなら豚肉と野菜。
青椒肉絲ならピーマンと牛肉。
回鍋肉なら味噌や豆板醤。
油は舞台裏に回る。
するとワインにも同じことが求められる。
樽香が強すぎるワインは少しうるさい。
アルコールが高く重たいワインも主張が強い。
むしろ果実味が素直で、酸があり、香りが整理されたワインの方が使いやすい。
イタリアならソアーヴェ。
フリウリのピノ・グリージョ。
フランスならロワールのソーヴィニヨン・ブラン。
赤なら軽めのサンジョヴェーゼやドルチェットあたりが面白い。
一方で、ごま油が登場すると話が変わる。
ごま油は植物油の仲間だが、特に太白でない場合、香りの強さではむしろオリーブオイル以上である。
ナッツや焙煎香に近い香りを持つため、軽い白ワインでは負けることがある。
中華料理や韓国料理でワインが難しいと言われる理由の一つはここにある。
例えば棒棒鶏。
よだれ鶏。
担々麺。
これらの料理は辛さよりも、ごま油や練りごまの香りの方が支配的だ。
こうした料理には樽熟成したシャルドネやヴィオニエのような、厚みのある白ワインが意外とよく合う。
赤なら果実味が豊かなグルナッシュ系も面白い。
油を見る。
それは単純なようでいて、実は料理の骨格を見ることでもある。
肉か魚か。
赤か白か。
その前に、どんな油で作られているか。
そう考えるだけで、ワイン選びは驚くほど簡単になる。
そしてこの考え方が最も面白く現れる料理がある。
天ぷらだ。
多くの人は天ぷらを魚料理、あるいは和食として捉える。
だから白ワインを選ぶ。
もちろん間違いではない。
しかし実際に口の中で存在感を示しているのは、海老や穴子だけではない。衣に含まれた油もまた、料理の重要な構成要素である。
次回は天ぷらを題材に、「和食だから白」ではなく「油から考えるワイン選び」をもう少し掘り下げてみたい。
写真:筆者